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「サードプレイス」から「サードスペース」へのトレンドシフト

更新日:2026/06/08

「サードプレイス」から「サードスペース」へのトレンドシフト
コミューン編集部

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マーケティングでお困りの方へ

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施策は実行している。CSにも取り組んでいる。
それでも、どこか噛み合わない。

その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。

顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?

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近年のブランドマーケティング領域では、「エクスペリエンス(体験)」という言葉が飛び交うようになりました。多くの企業が消費者のための特別な体験づくりに力を入れていますが、実際のところそうしたブランド発の体験が若い世代の心に残るケースは決して多くないそうです。では、次に企業が注目すべきものは何でしょうか。本記事では、そのヒントとして今「サードプレイス」ではなく「サードスペース」が新たなキーワードになっている理由を探ります。

※関連記事: Brands Should Fund Third Spaces

「何もしなくてもただ存在できる余白」としてのサードスペースが求められるようになったのはなぜか。そして、なぜ企業はこのサードスペースに目を向けるべきなのか。それがブランドにもたらす長期的な価値とは何か。本記事では最新の調査データや具体例を交えながら考察していきます。

それではいきましょう!

Z世代・ミレニアル世代の孤独

まず背景にあるのは、若い世代の深刻な孤独感です。都市部に暮らすZ世代・ミレニアル世代は、「友達が欲しい」と願いながらもそれを実現できていない人が大勢います。マッチングアプリBumbleの調査では、回答者の60%が新しい友人を作りたいと望んでいる一方で、52%の人は過去1年間に一人も友達ができなかったと報告されています。

※関連記事: Bumble For Friends Data Shows Importance of New Friendships, Including Those Made Online, to Combat Loneliness

孤独感に関する別の調査では、過去1年間に「孤独を感じたことがない」と答えたGen Z(Z世代)はわずか15%に過ぎず、同じ設問でベビーブーマー世代は54%だったというデータもあります。つまり若い世代の大半は何らかの孤独を感じており、特に男性に至っては約15%が「親しい友人が一人もいない」とさえ答えているという報告もあります。

※関連記事: Men’s Social Circles are Shrinking

こうした状況下で、友情の持つ意味合いが大きく変わってきました。友人関係が文字通りステータスシンボル化しつつあるのです。かつては裕福さやモノがステータスとみなされましたが、現代の若者にとっては「気の置けない友達がいること」こそが一種の豊かさの証と言えるのです。

人々がつながりを求め殺到する現象

孤独を埋めるために、若い世代は新しいつながりを求めて様々な場に群がるようになっています。その顕著な例が各地で起こっているイベントへの殺到です。イギリス・ロンドンでは、映画館チェーンEveryman Cinemaが開催した無料野外映画上映会が予想をはるかに超える来場者であふれ、一部の上映が安全上の理由から中止に追い込まれました。

※関連記事: Canal-side cinema is coming back to London this summer – and it’s totally free

ニューヨークでも昨冬に話題となったとあるそっくりさんコンテストがSNSで拡散されすぎて混乱をきたすなど、似たような現象が起きています。また、イギリスのウェルネスブランドであるFree Soul社が主催した「パデル×ピラティス」の無料セッション(アサイーボウル付き)は、チケットが即完売し参加希望者から「まるで人気歌手のコンサート並みに入手困難だ」と言われたほどでした。

こうしたイベントはいずれも「一人ではないと感じられる場所」への渇望が背景にあります。

どれも一見すると特別な趣向の体験イベントですが、参加者にとって最大の魅力は最新映画や有名人そのものより、そこに集う人との出会いや一体感だと言えるでしょう。今や都会の若者は読書会からスポーツ・趣味の集まりまで、あらゆるリアルな交流のチャンスに飢えています。

SNSで自主的に集客されたサウナ愛好会やチェスクラブ、お笑いのオープンマイクといったコミュニティ主導のイベントが各地で満員御礼になるケースが増えています。フィットネスアプリのStrava利用者の84%が「運動する主な理由は人とのつながりだ」と答えているデータもあり、誰かと一緒に何かをしたいという思いが高まっていることが伺えます。現代の若者にとって、そこに「行けば誰かに会える」「自分も受け入れられる」と感じられる場の魅力は計り知れないのです。

※関連記事: Strava Year In Sport Trend Report: Insights on the World of Exercise

サードプレイスとサードスペースの違い

では冒頭に述べた「サードスペース」とは何でしょうか。従来言われてきたサードプレイスとの違いを整理してみます。サードプレイス(第3の場所)という概念は、1980年代に社会学者レイ・オルデンバーグが提唱した言葉で、家庭でも職場(学校)でもない「居心地の良い第三の居場所」を指します。

典型例としては行きつけのカフェやバー、公園や美容院、コワーキングスペースなど、人がくつろぎ交流できる場所が挙げられます。企業文脈では、ブランド主催のポップアップストアや期間限定イベント、ファンコミュニティ向けオフ会なども広義のサードプレイスと捉えられてきました。これらは何らかの目的やテーマが設定され、企業側が設計した「体験の場」と言えます。実際、サードプレイスでは多かれ少なかれ飲食や買い物などの消費行動が発生し、演出されたイベント性があります。

一方でサードスペースという言葉が強調される背景には、「何もしないことが許される場所」への希求があります。サードスペースとは明確なアクティビティの目的がなくても、人々がただそこに「存在できる余白」のある場のことです。例えば、街角の小さな図書館や誰でも自由に使える公共スペース、若者が集える広場やコミュニティセンターなどが該当します。それは創作してもよし、体を動かしてもよし、ただ座っているだけでもよしという空間です。何か生産的なことをしなくても疎外感を覚えずに済む居場所。これこそが忙しくデジタル疲れした若者たちが本当に求めているものなのです。

サードプレイスが目的ありきの演出された場なのに対し、サードスペースは無目的でいられる自然な場と言えるでしょう。この違いは微妙ですが重要です。もちろん、企業が用意するサードプレイスにも人々は集まります。しかしそこには「主催者の意図」や「商業的な匂い」がつきまといがちです。それよりもむしろ、人々が自発的に集まり結果として交流が生まれるような環境こそが持続的な価値を生む、と若者世代は感じ始めています。「誰にも強制されずにただ一緒に過ごせる場所」が少ないからこそ、それがあれば人々は殺到するのです。

消えゆく居場所

ところが、その肝心のサードスペースが今、各所で失われつつあります。都市の若者に人気だった小規模なライブハウスやコミュニティスペース、公共図書館の分館などが資金難で閉鎖に追い込まれるケースが増えました。

経済的な理由に加え、都市構造の変化も背景にあります。地価や家賃の高騰で「お金を落とさない人が長居できる場所」が維持しにくくなっているのです。また、パンデミック以降のリモートワーク普及で人々が街に出なくなり、一部のサードスペースは利用者減に陥りました。

皮肉なことに、若者の孤独感が高まって需要はあるのに、それを受け止める場が足りないというミスマッチが起きています。資金的な脆弱性により存続が危ぶまれる場所が多く、気軽に集まれる公的スペースが減れば若者は行き場を失ってしまいます。自宅と職場(学校)の往復だけでは新たな出会いは生まれません。結果として、一部のパブリックイベントに人が集中し過ぎたり、逆に家に閉じこもって孤独を深める人が増えたりと、都市生活に歪みが生じています。

このような状況は一企業の力で根本解決できるものではないかもしれません。しかし実は、企業がサードスペース維持に協力することで状況を好転させるチャンスが存在しています。十分な予算を持ちながら若者からの関心が薄れつつあるブランドにとって、資金不足のコミュニティを支援することは双方にメリットがある取り組みになり得るのです。次に、その具体的な役割と効果について考えてみましょう。

ブランドがサードスペースを支援する

企業がサードスペースを支援する理由はマーケティング戦略です。既存のコミュニティ活動にそっと加わり、その場をより良くするサポートをするのです。ポイントは、主役になろうとしないことです。

例えば、パリにあるユース向け文化センター「Union de la Jeunesse Internationale」は若者のクリエイティブ活動を支える無料の場として知られています。ここではペインティングのアトリエやZINE作りワークショップ、インディー映画の上映会などが定期開催され、多くの若者が集まっていました。

※関連記事: Union de la Jeunesse Internationale

そのセンターが地元のセレクトショップThe Archivistと協働で開催したスニーカーのビンテージ即売会に、世界的ブランドであるNike(ナイキ)がスポンサーとして参画した例があります。ナイキは自社主導で派手なイベントを開くのではなく、地元に根付いた場に資金や物資を提供し、若者の創造活動を後押ししたのです。このようにコミュニティが本来持っている魅力や機能を損なわない範囲でブランドが伴走する形が望ましいでしょう。

他にも、ブランドが裏方に徹した好例があります。スキンケアブランドのAesop(イソップ)は毎年プライド月間にあわせて「クィア・ライブラリー」という企画を実施しています。

※関連記事: 東京・大阪の「イソップ」でLGBTQ小説を無料でお持ち帰りいただける「クィアライブラリー」イベントが開催

期間中、店舗から商品をすべて撤去し、その代わりにLGBTQ+コミュニティに関連する書籍を自由に持ち帰れるようにするのです。これは販売促進とは一線を画し、店舗という空間そのものをコミュニティのために開放する試みでした。結果として、多様な人々が店を訪れ交流し、本を通じた対話が生まれるきっかけとなっています。Aesopのように自社商品を売らない場をあえて作る決断は、短期的な売上よりも長期的な信頼関係づくりを優先した象徴的な取り組みと言えます。

また、デーティングアプリHinge(ヒンジ)は「友達作り」の難しさに着目し、ニューヨークの読書コミュニティ「Page Break」とコラボレーションしました。お互い初対面の15人が週末に集まって輪読会を行うという企画で、参加者は順番に同じ本を声に出して読み進めます。これは「友達を作らなきゃ」という気負いを減らし、読書という共通の行為に没頭しながら自然と親近感が芽生える導線を作る狙いがありました。

Hingeは出会い系サービスとして前面に出るのではなく、あくまで人々の交流を陰から支える立場をとったのです。このように趣味や関心事ベースの集まりにブランドがさりげなく関わり、場を提供・改善する手法は、押し付けがましさがなく若者にも受け入れられやすいのです。

記憶に残る体験

ブランドがサードスペース支援に乗り出す際、社内では投資対効果(ROI)の議論が必ず出るでしょう。確かに、第三の空間を提供・支援しても短期的な売上増加やKPIに直結しないかもしれません。しかし、それでもなお長期的には計り知れない価値を生む可能性が高いのです。実際、ライブイベントへのスポンサー参加が購買意欲につながるという調査結果もあります。

Spotifyの調査によれば、Z世代の49%が「好きな音楽イベントを支援する企業の商品なら購入意欲が上がる」と回答しています。表面的な広告よりも、彼らのリアルな体験に寄り添う形でブランドが存在していることが重要なのです。

※関連記事: Culture Next: Spotify's annual Gen Z trends report

それ以上に、サードスペースへの関与はブランドへの信頼醸成につながります。居心地の良い場で生まれた思い出や感情的なつながりは、人々の記憶に強く刻まれます。その場を陰ながら支えてくれた企業に対しては、「あの楽しい時間を支援してくれたブランド」として確かな好意が残るでしょう。それは広告で得られる一時的な注目とは異なり、年月を経ても色褪せないロイヤルティの源泉となりえます。

もちろん、こうした取り組みを社内で正当化するのは簡単ではありません。直接的な売上指標に結び付きにくいため、短期志向の経営層には理解されにくい部分もあるでしょう。それでも、静かに若者からの支持を広げているブランドが既に存在するのも事実です。彼らはバズ狙いの奇抜なキャンペーンではなく、地に足の着いたコミュニティ支援を選びました。その結果、生まれたつながりが口コミとなってブランドストーリーに厚みを与え、気づけば競合他社には真似できない信頼資産を築いているのです。

おわりに

現代のブランド戦略においてキーとなるのは人々が自然に集まりたくなる“居場所”をいかに提供・支援できるか、と言えるでしょう。自社主導でイベントを演出することも重要ですが、陰ながら人々の交流を支える名脇役になることも求められる場面が増えていくのだと考えられます。

オンライン全盛の時代に逆行するようですが、人間はやはりリアルな触れ合いの中で最も強い信頼と共感を育みます。誰もが孤独を感じがちな時代に、一人じゃないと感じられる場所を提供してくれるブランドがいたら、人々はきっとそのことを忘れません。それは短期的な売上には表れにくいかもしれませんが、長期的に見ればブランドと顧客の関係を根底から支えるものとなるはずです。

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