イベントレポート
コミュニティマーケティング
コミュニティマーケティングの現在地 ー事例から学ぶ、脱“一方通行”マーケティング
更新日:2026/06/25

本記事は、2026年6月17日開催のコンテンツ東京におけるセッション「コミュニティマーケティングの現在地 ー事例から学ぶ、脱“一方通行”マーケティング」のイベントレポートです。最後に、当日会場でお答えしきれなかったご質問への回答を載せていますので、ぜひご覧ください。
【登壇者】
小島 英揮 氏(モデレーター):一般社団法人コミュニティマーケティング推進協会 代表理事
小父内 信也 氏:株式会社Asobica 取締役副社長
杉山 信弘 氏:コミューン株式会社 執行役員CMO/CPO
目次
オープニング
小島:皆さんおはようございます!今日は日本で一番コミュニティマーケティングの事例を知っているお二人、Asobicaの小父内さんとコミューンの杉山さんにお越しいただいています。
小島:実はセッションの前に会場を見たら、スライドに「撮影録音禁止」って書いてあったんですよ。でも、今日はまさに「双方向」な話をしようとしているのに、それは全然ダメだなと思って。さっき事務局にお願いをして、急遽オッケーにしていただきました!写真撮影もSNSへのつぶやきも全部オッケーですので、皆さんどんどん流していただければと思います。
それでは、早速ですが自己紹介をお願いします。
小父内:株式会社Asobicaの取締役副社長の小父内と申します。元ラッパーでマイクが大好きなんですが、今日は控えめにいきたいと思います(笑)。前職のSansan・Eight時代に、当時200万人のユーザーの中からコアな20人くらいに直接お会いしてコミュニティを立ち上げた原体験があります。

Asobicaは「顧客中心の経営をスタンダードにする」というビジョンを掲げており、略して「コキャチュウ」と呼んでいます。我々は「coorum(コーラム)」というプラットフォームで、アンケートには出ない「本音データ」を集めて分析し、顧客中心の業務改善を支援しています。


小島:では次、杉山さんお願いします。
杉山:コミューンの執行役員CPO/CMOの杉山と申します。私はマーケティング歴が長くて、最初は博報堂で大手企業様を広告宣伝領域で支援し、その後フラーというアプリ制作会社のCMOを経てコミューンに入りました。弊社は「あらゆる組織とひとが融け合う未来をつくる」というビジョンを掲げておりまして、私自身も青森県の観光ファンコミュニティの運営支援をやっていて、ねぶた祭りでチラシを配ったりして、ユーザーと融け合うことの楽しさに気づき始めました。


弊社は、一番大事な指標として「信頼起点経営」を大事にしています。昨年総額55億円の資金調達をしたタイミングから標榜している言葉で、信頼を蓄積することで会社事業を伸ばしていくご支援をしています。

小島:エンゲージメントって中間指標になりがちだけど、もっと真ん中に持っていこうということですね。
そして、私は元AmazonでAWSのマーケティング責任者として、ユーザーコミュニティ「JAWS-UG」の立ち上げもやっていました。当時「クラウドを業務で使うなんてありえない」と言われていたのが今や普通になったのは、先行して使い始めたユーザーが周りを説得してくれたからです。

そんなコミュニティマーケティングの実態調査をまとめた「コミュニティマーケティング白書(アンケート対象2,000名以上・全64ページ)」の無料版も公開していますので、ぜひご覧ください。

なぜ「一方通行のマーケティング」は限界なのか?
小島:これまでのマーケティングから見た時に、コミュニティマーケティングはどういう立ち位置なのかというところで、まずビジネスの現場で起こっていることを整理したいと思います。これまで長く広告マーケティングをやってきた杉山さんから見て、最近の潮目の変化は感じますか?

杉山:かなりありますね。現場で言うと「CPA(顧客獲得単価)がとても上がった」と。取りやすいリーチは取り切って、認知率は一定あるのに、なぜか選好されなくなっているという相談を多くいただきます。一方通行のマーケティングばかりやっていて、信頼が積み上がっていかないんです。
小島:「知られている」と「選ばれる」は違うんですよね。人口も減る中で繰り返し選ばれるLTV(顧客生涯価値)が大事になっていますが、小父内さんのところでもLTVへの効果は出てきていますか?
小父内:時間はかかりますが、最初の半年は見えなくても、1年、2年と続けていくともう明らかに上がってきます。キャンペーンの効果も良くなりますね。既存顧客を意識したナーチャリングをしないと選ばれ続けないです。
小島:あと3つ目として、この1〜2年でAIがお客さんの行動やブランド選びにかなり影響を与えているなと思っています。これまでの検索は結果が縦に並ぶため、たとえ10番目であっても選ばれる可能性がありましたし、その先のコンテンツが良ければ価値を感じてもらえました。しかしAIに聞くと、「あなたに良いのはA、B、Cの3つです」というように、ヒントではなく完結した答えを出してきます。そのため、その回答にあらかじめ入っていないと、そもそも選ばれる土俵にすら立てないのではないかと感じています。
杉山:そうですね、そこは私たちも研究している領域なんですが、まさに「頭とお尻がAI」になっているなと感じます。最初は「この業界ってどういう構造なの?」といった、全体を把握する抽象的な質問をまずAIにして、そこで出てきた強い会社を指名検索で調べる。そして、最終的に「うちに合うのはどこか」という意思決定の直前の質問をまたAIにして、それから問い合わせてくる、という順番になっているんです。ですので、一般ワードはどんどんAIに食われているなという感じがしていますね。
小島:うちの娘も「全部AIに聞こう」という世代なんですよ。まずAIに聞いて、そのアクセスした先がたまたまソーシャルだったりブログだったりする感じで、もう完全にAIが主体になっている状況です。だから、今までのマーケティングのように、企業からの一方通行で「直接お客様を説得できるはずだ」という前提で作られたコンテンツは、通用しなくなってきています。結局のところ、その中で「選ばれ続ける」ということがものすごく大事になるわけです。
では、選ばれる環境を作るものは何なのか。その答えの1つは、おそらくコミュニティであり、つまり「発信者や推奨者の多さ」だと思うんですよね。聞きたい人と教えられる人がいる状況がある。この発信者と受信者の関係性こそがコミュニティなのだと思いますが、お二人はどうですか?

小父内:まさにその通りだと思います。企業とお客さんが分断しているというより、本当にコミュニティで「融け合う」ようなイメージに近いです。そこに、心地いい場所が存在しているという感覚ですよね。
小島:心地いい場所があるみたいな、そんなイメージがありますよね。
杉山:スライドに示している2つの矢印の両方が、「アンド(両方同時)」で揃っているかどうかが非常に重要になります。
小島:アンドでね。片方だけではちょっと不十分ですよね。
杉山:おっしゃる通りです。まず、企業と顧客という縦の矢印があり、これが1つ目の双方向です。そしてもう1つが、発信者と受信者という、大体お客様同士の横のつながりです。お客様の中のプチインフルエンサー的な、少し先行して使っている方やナレッジのある方が、これから使う方に教える。この両方が揃っているという点が、1to1マーケティングとは異なる部分です。コミュニティマーケティングではこの2つの双方向があるということが、本日のセッションでも非常に重要なポイントだと考えています。
小島:はい。ただ私は、これはもういわゆる1to1マーケティングの次、あるいは進化系なのだと思っています。1to1マーケティングが可能になったのは、デジタルで「個」を判断できるようになったからですが、それであっても企業からの一方通行であることには変わりありません。
やはり、知り合いから「これを使った方がいいよ」と勧められたり、皆さんも「ランチはここに行った方がいいよ」と誰かにお気に入りを紹介されたりすることこそが、究極の1to1ではないでしょうか。結局のところ、その「N対Nで会話する」という仕組みが、従来型の1to1マーケティングを大きく凌駕していくのだと思います。さらに、その会話を観察することで顧客理解も進みます。この構図こそが、これからのマーケティングの理想像であり、一方通行から2つの双方向の線を作っていくことが、大切なポイントだと考えています。
コミュニティマーケティング相談の背景に多いのは?
小島:コミュニティマーケティングのご相談の背景に多いのは、どのようなものでしょうか?

杉山:これは小島さんの作成された資料を引用したものなのですが、まず「可視化」「理解」「育成」「創造」という4つのステップがあります。企業からいただくご相談も、このいずれかのフェーズが課題になっているケースが非常に多いです。
最初は、ファンのお客様がどこにいるのか分からないので「可視化」したい。その次は、ファンがいるのは分かるけれど、なぜ好きでいてくれているのか理由が分からないという「理解」のフェーズ。そして、もっとお客様と仲良くなってLTVを上げたいという「育成」。最後は、お客様は非常に熱狂的なのに口コミが広がる動きがないという「創造・共創」のフェーズです。
ここで、一番左の「可視化」だけが課題である会社さんは、データを抽出するだけなら他にも色々な手法があるため、コミュニティ施策はやらなくても良いと考えています。また逆に、顧客理解ができていないのにいきなり「育成」や「創造」へとステップを飛ばそうとする会社さんは、まずは手順を踏んだ方が良いとお伝えしています。ですので、コミュニティに向いている会社、向いていない会社というのは、この「フェーズ論」で非常に語りやすいのではないでしょうか。
この4つのステップは時間軸になっていて、顧客理解ができていないのに関係構築ができるわけがありませんし、関係構築ができていないのに、新しいお客様を連れてきてくれるわけでもありません。このステップ論をしっかりと意識することが、コミュニティマーケティングにおいて非常に重要なポイントだと思っています。
小島:余談ですが、コミュニティがうまく回って顧客との共創が進むと、最近では企業のIR資料にもコミュニティに関する記載が出てきていますよね。
では、小父内さんにもお伺いしてみましょう。
小父内:はい、こちらはワードクラウドですね。

こちらは、過去の私が対応した商談すべてをデータソースに入れて作ったワードクラウドなのですが、やはり「事業貢献」や「売上拡大」「ROI」といった言葉が非常に大きく出ています。皆様、コミュニティが事業とどう結びつくかという点に課題を感じて、ご相談をいただくケースが非常に多いです。そのため、まずは目的をどう明確化するか、そしてコミュニティをあくまで手段としてどう活用するかが重要なのだと思います。
小島:単に「コミュニティを作りましょう」という話ではなく、「この目的を達成するために、コミュニティを活用して近道をしましょう」というアプローチが増えてきているということですね。
コミュニティマーケティング成功企業と失敗企業の違いは?
小島:コミュニティをやっている会社の話はよく聞きますが、「では、どのような企業が成功して、どのような企業がうまくいかないのか」という点についてもお話ししたいと思います。これは、企業が求めている効果に沿っているかどうかという話だと思うのですが、先ほどご紹介した「コミュニティマーケティング白書」を見ると面白いデータがあります。

目的としては非常にストレートで、やはり「売上拡大」を求めている企業がとても多いのです。それから「ロイヤリティ向上」(どれくらいエンゲージメントが高くなっているか)や「口コミ促進」、あとは商材にもよりますが「顧客との共創」に対する期待値も高くなっています。これを見ると、最初からいきなり究極のゴールを設定しすぎている気もするのですが、実際のクライアントでもこうしたケースは多いですよね。
小父内:そうですね、そこは事業にもよると思います。先ほど杉山さんがおっしゃっていたように、やはりフェーズによって異なるのだなと強く感じます。まだお客様の基盤がない状態であれば、まずは「可視化」であったり、そこからどうお客様を「理解」するかという話になります。一方で、「すでに顧客基盤はあり、色々なデータも持っているけれど、散らばっていてどう活用したらいいか分からない」という状態であれば、それは「育成」や「共創」のフェーズになります。そうしたステップを適切に踏んでこそ、最終的な売上拡大という成果に繋がってくるのだと思います。
小島:なるほど。それでは、成功する企業とうまくいかない企業を分けるポイントがどこにあるのか、お二人にいただいたスライドを見ながら掘り下げていきましょう。

小父内:はい。まさにここがベースだと感じていまして、一歩目はここからだなと。可視化も育成も理解もすべて大事ですが、まず一番最初に、どれだけ良い関係性を築けているか。ここで信頼を築けるかどうか、本当に顧客中心になれているかどうかという「姿勢」が問われます。それがないと、やはりお客様と長くお付き合いしていくのは難しいですし、まずはここが肝になると感じています。
小島:そうですね。良い関係性というのは、言葉で言うのは簡単ですし、どの企業も「お客様は大事です」とおっしゃいます。ですが、本当にそういう良い関係性を目指せている会社の特徴には、どのようなものがあるでしょうか。
小父内:やはり、お客様にちゃんと向き合えているかどうかは非常に大きいですよね。一人ひとりの声をただデータとして見ているだけではなく、「しっかりと耳を傾けているか」という部分です。
小島:なるほど、企業側に「聞く耳」がきちんとあるかどうかですね。まさに先ほど挙がった「双方向」という話につながると思います。
杉山:そうですね。コミュニティを運営していくプロセスの中で、企業側のスタンスがどんどんお客様と向き合う方向へと変わっていく会社は、やはりコミュニティもうまくいきますし、事業も成長しているなと感じます。
分かりやすい例を挙げますと、ある食品メーカーさんの事例なのですが、途中からコミュニティマネージャーの方が顔出しをすることに決めたのです。
小父内:それまでは出していなかったのですか?
杉山:はい、それまではいわば裏側でファシリテートをしていたのですが、「私です」と個人が前に出るようにして、プロフィールも開示するように変更しました。そうしたところ、ファンの方々がそのコミュニティマネージャーさん個人にもついてくださるようになり、結果としてブランドのことももっと好きになってくれたのです。イベントを開催した後の発話(投稿)も、ものすごく伸びました。やはり、お客様と向き合うためには、まず企業側から自分たちをさらけ出すことが大切なのだと実感しましたね。それができる会社の方が、やはりコミュニティマーケティングには向いているのだと思います。
小島:そうですよね。こちらは影に隠れたままで「皆さんは顔を出してください、発言してください」というのも、少し難しい話ですよね(笑)。
良い関係性というのは、信頼をはじめ様々な言葉で表現されますが、お客様がオープンに発信してくれたことに対して、企業側もオープンに何かをきっちりと返す、という「双方向性」そのものなのだと思います。
小父内:その良い関係性から生まれた成功事例として、大手お菓子メーカーさんの事例があります。お客様と共創して毎年パッケージやフレーバー(味)を開発しているのですが、やはりお客様と一緒に作った商品はファンの気持ちをしっかりと形にしているため、通常の1.5倍も売れるのです。本社でお客様をお迎えし、中の人とたくさん対話しながらこうした商品企画を一緒に進めることで、お客様が「これは自分が作ったんだ」と誇りを持ってSNS等で発信してくださり、口コミが自然と広がっていきます。
小島:もはや単なる消費者ではなく「エア社員」というか、一緒に事業を考える提供側のメンバーのような扱いですね。企業側が机の上でフィールドリサーチを行うよりも、よっぽど価値のある声を吸い上げられていると思います。
杉山:オタフクソースさんの事例も非常に面白いです。こちらは元々、リアルでのコミュニティ活動をずっと大切にされてきた会社で、お好み焼きを作って広げていくために、全国の様々な場所でお好み焼き教室を開いていらっしゃいました。それがコロナ禍をきっかけに開催が難しくなり、オンラインコミュニティの開設を検討・実施されたという経緯があります。
オタフクソースさんは、「どれだけソースを使う料理を作って食べるか」が売上に最も直結するため、そこをKPI(重要業績評価指標)に設定しています。
実際にコミュニティに入った方は、お好み焼きを作る調理頻度が圧倒的に上がるのです。普通、家で作るお好み焼きって、すごく美味しいけれど普段の食卓の風景に馴染みすぎていて、わざわざスマホで写真を撮る機会って意外と少なかったりしますよね。
しかし、コミュニティに投稿すると、オタフクソースの中の人がものすごく褒めてくれるのです。さらにポイントが貯まったり、オリジナルグッズの「ヘラ」がもらえたりします。それが嬉しくて「今日も作ろう、写真を撮ろう」という最高の動機付けになります。カメラロールに料理の画像が残るため、結果として外部のSNSにも自発的にアップされるようになるのです。そこからお友達紹介を通じて、さらにコミュニティの輪が広がっています。
お好み焼きという存在自体が、ひとつの小さなコミュニティというか、その場でみんなで作り上げるものだからこそ、この施策と非常に相性が良かったのだなと感じています。
小島:確かにそうですね。あと、新メンバーの獲得率が非常に高いという点も大きなポイントだと思います。単に参加している方が投稿するきっかけを作るだけでなく、それによって新しいメンバーが増えているわけですよね。ファンコミュニティの母数がどんどん大きくなっている。
杉山:そうなんです。コミュニティ内では、新しく入会された方を対象に、抽選でお好み焼きの初心者セットのようなものが当たる仕組みを用意しています。そうすると、「紹介してくれた人と一緒に、届いたセットでお好み焼きを作って食べよう」という流れが自然と生まれるのです。そうしたサイクルで「ぐるぐる回る」ことで、自発的にお好み焼きを作る方が増えていく形になっています。
小島:その「ぐるぐる回る」っていう表現は大事ですね。よくある「今投稿してくれたらこれをプレゼントします」というキャンペーンは、それが終わるとそこで関係も終わってしまう。プレゼントをあげるというのは最初のきっかけとしては良くても、その後の投稿に反応があったり、他の人の投稿を見たりすることでずっと次の行動へと促され続けますね。
杉山:そうですね。企業が毎回新しく外部へのリーチを獲得していくのは、コスト的にもパワー的にも非常に大変なことだと思います。ですので、キャンペーンで一度反応していただいた方には、まずはコミュニティという「関係性を継続できる場所」に入ってもらう。そして、また次の企画があれば、必要に応じてそこからご案内していく。新規獲得のキャンペーンとコミュニティの運営を切り離して分断させない、という意識が非常に重要なことだと考えています。
小島:なるほど。成功する企業とそうでない企業の違いとして、まず成功する企業はゴールが明確であり、自分たちが今どのステージにいるのかを理解している。そして、単発のキャンペーンとの違いや、そこからどうコミュニティへと繋げていくかの全体像を理解している会社ですね。
小父内さん、やはりこうした施策を積み上げていく「ストック型」の思想がある企業は、成功しやすいのでしょうか。
小父内:そうですね。この手の施策は、1回やって終わりのような「フロー型」のキャンペーン思考だと、どうしても一過性で終わってしまいます。そうではなく、施策の一つひとつを積み上げて「ストック」にしていく。この思想を良しとする企業は、非常に成功しやすいと感じています。やはりお客様との信頼関係は一朝一夕で築けるものではありませんので、中長期でどう関係構築していくかが重要です。
例えば、年1回の大きなイベントを開催したり、季節ごとのイベントを企画したり、あるいは「毎週月曜日はみんなで集まってワイワイ話しましょう」という定期的な場をオンラインやオフラインで用意したりする。そうした施策同士のつながりをどれだけデザインできているか。それらを点ではなく線で繋げていくことで、結果的にお客様と長く深く繋がることができるのだと思います。
小島:施策がしっかりと上に積み上がっているのですね。「これに参加したお客様は、次はこれが欲しくなるだろう」という視点で、単発のイベントが横に並んでいるのではなく、垂直に積み上がっていく。その考え方がある会社は、コミュニティマーケティングの持つ本質的な価値を再現しやすいです。逆にそれがないまま、同じツールを導入して同じような真似事をしても、なかなか運用はうまくいかないですよね。
小父内:うまく機能しないケースは、まさにその逆だと思います。本当に短期的な目線ですぐにROI(投資対効果)を求めようとすると、小島さんがよくおっしゃる「Sell to the Community(コミュニティの参加者に直接売りつけようとする形)」に陥ってしまいます。そうではなく、「Sell through the Community(コミュニティのファンを通じて、その先にいる人たちへ自然に価値を広げてもらう形)」へシフトしていくべきです。これはまさに、短期の数字だけを追い求めるのではなく、良い関係性をストックしていく姿勢が不可欠である、ということですね。
杉山:失敗してしまうケースとしては、やはりコミュニティの運営体制を、当初決めたマニュアル通りにガチガチに縛ってしまって、双方向の対話になっていない点が挙げられます。状況に応じてアジャイル(機敏)に変化していくことこそが、コミュニティ施策の醍醐味であるはずです。
小島:そうですよね。せっかくお客様から「これは良い」「これはあまり良くない」といった貴重なリアクションを直接いただける場なのですから、その声に合わせて運営側が柔軟に変化していけばいいわけです。それなのに「いや、社内のルールでこう決まっていますから」と突っぱねてしまっては、対話が成立しなくなってしまいます。
杉山:おっしゃる通りです。「お客様との対話によって、私たち企業側もこのように変化しましたよ」という姿勢をしっかりと見せること。それが非常に大切であり、その「余白」がないとコミュニティ運営はなかなかうまくいかないのではないかと思います。
小島:もちろん、これまでの従来型のマーケティング施策も必要ですので、それらとコミュニティ施策をどう適切に掛け算していくか、という視点がこれからの時代は大切になってくるのではないでしょうか。
なぜ、今“脱一方通行”なのか?
小島:ではなぜ“脱一方通行”なのか?というところで、おもしろいスライドをいただきました。

小父内:私はコミュニティの理想像を「DX版の八百屋さん」とずっと表現しているんです。昔の商店街の八百屋さんって、お客様の家族構成までしっかり理解した上で、「今日はこれが良いよ」と勧めてくれたりしましたよね。これをデジタル技術を活用してスケールさせていくことこそが、コミュニティのあるべき姿であり、これからの時代に必要な「脱・一方通行」なのだと考えています。

ある全国チェーンのスーパーさんの事例なのですが、POSデータを確認すると「唐揚げを若い主婦層が買っている」ということまでは分かりますが、データとしてはそこ止まりなのです。しかし、コミュニティを開設したところ、そこでは「部活帰りの息子が、冷えた状態で食べても美味しいと言ってくれた」という生の声が出てきました。これは企業にとって、ものすごいヒントになりますよね。「冷めても美味しい」というキャッチコピーを店頭につけることもできますし、別の例で、おばあさんが「おじいさんと二人で食べるにはサイズが大きすぎるから、半分に切って出しています」と投稿してくれれば、最初からハーフカットの商品を用意すれば良いという施策が見えてきます。こうしたリアルな本音が見えてくるのはコミュニティならではの強みだと思いますね。

小島:特に商品開発を担当している方にとっては、そうした本音、インサイトは喉から手が出るほど知りたい情報ですよね。そのために、わざわざ多大なコストをかけてグループインタビューやパネル調査を実施しているわけですから。
ただ、皆さんも経験があると思いますが、改まって質問されると、どうしても無意識に「良い人」を演じて回答してしまいませんか? 例えば、「普段から健康に気をつけていますか?」と聞かれたら、つい「もちろん気をつけています」と答えてしまうのですが、実際は夜中にラーメンを食べていたりするわけです(笑)。インタビューは傾向を見ることはできるけれど、建前が多い。その点、リアルな声が収集できる場があるのは強いですね。
従来のインタビュー調査は大枠の傾向を掴むことはできても、どうしても建前の回答が多く混ざってしまいます。その点、構えられていない自然な生活者のリアルな声が、日常的に収集できる場があるというのは非常に強力です。
杉山:音楽のライブを例に挙げても、一番観客のテンションが上がる熱狂の瞬間というのは、ただステージを見ているだけの時ではないんですよね。例えば、アーティストから「ビッグサイトー!」と会場に向けて呼びかけられたり、コールアンドレスポンスで観客自らが発声したり、あるいは客席の照明を消してみんなで合唱するタイミングであったり。アーティストと目が合った瞬間などもそうですが、ユーザーやお客様が「クリエイティブの主体に一部入り込む」という体験をした時に、最も熱狂が高まる仕組みになっているのです。
これはWeb上のコミュニティでも同様で、ユーザーさんが投稿した内容に対して、運営側が1日以内に丁寧なレスポンスを返してあげると、そのユーザーさんのエンゲージメント(企業への愛着)が、その後約1ヶ月ほど持続するというデータがあります。

小島:それは非常にコストパフォーマンスが高いレスポンスですね。運営側の稼働としても、非常に割に合っている素晴らしい仕組みだと思います。
Q&A
「インナーブランディング」と「ファーストピン」の探し方
小島:いくつか質問をいただいているので取り上げたいと思います。まず、顧客向けではなくインナーブランディング(社内活性化)を担当している方から、「今日の内容は、社内向けコミュニティ(eNPS向上)にも応用できますか?」という質問です。
杉山:サントリーさんやトリドールホールディングスさんなどの事例があります。規模が大きく、かつ拠点が多い企業様ですね。ここでの取り組みをあえて型化すると、トップダウンの社内報だけでなく、ボトムアップで発信できる場という、両方を連動させることが重要なポイントになります。例えば、社長のブログに対して新入社員がコメントをして、それをさらに店長クラスの人が称賛するような環境を作れるかどうかです。とても忙しいタイミングでも、半分プライベートな時間として自発的に参加したくなると思えるような環境づくりが、従業員を会社のファンにする上で非常に大切です。
小島:ありがとうございます。次はターゲティングについて。「最初のファーストピン(初期のコアユーザー)の見つけ方のコツはありますか?」ということで、小父内さんいかがでしょうか?
小父内:私はまず担当者の方に「ファンの方やロイヤルカスタマーの顔、パッと浮かびますか?」と聞いています。もし「いや、ちょっと分からないです」と言われたら、「では、まずは可視化してお客様のことをしっかり見ましょう」という話をします。
お客様の声が集まるチャネルはいろいろありますよね。例えばお客様相談センターもそうなのですが、何万件も届くために普段は見切れていなかったりする。逆に、市場調査のアンケートで何十万、何百万という一斉データを取ると、今度は個人の顔が全く分からなくなってしまいます。そこを一人ひとりつぶさに見にいってみた時に、「このキーワードで、すっごく良いことを言っているな」という方が見つかる。それが、ターゲットの母集団をキュッと絞り込む第一歩になります。
具体的な事例を挙げますと、ある大手外食企業でお手伝いした際、一緒に「入部届」というものを作ったのです。コミュニティの参加用に入部届を出すというアクションを用意して、その中にフリーテキスト(自由記述)の欄を設けておきました。そこで「フリーテキスト欄に200文字以上書いたかどうか」、これがファーストピンとなるコアな方を探す大きな肝になりました。
小島:なるほど。それだけの文字数を書くということは、その人の熱量がそれだけ高いということですよね。
小父内:そうなんです。たくさん文章を書いてくれる人というのは、やはり熱量が圧倒的に高いんですよね。
小島:本音の抽出のようなことですね。
小父内:これは私が以前、名刺アプリの『Eight』にいた時にも実践していた方法で、その時は「150文字以上」という基準にしていました。150文字以上でしっかり書いてくれたら「この人は良いな」と判断して、その方を優先してまずお話を聞きに行くのです。
その際、よくある1対1のインタビューではなく、「2 on 2」の形式で実施しています。企業側2人と、お客様2人の計4人で会話をするようにしたのです。
小島:プレッシャーというか、負担が少ないですよね。
小父内:そうなんです!1対1だと、ちょっとお互いの相性もありますしね。でも、この4人で集まると、その場でもう小さなコミュニティができちゃうんですよ。ここが基盤になります。すでにこの4人のコミュニティができた状態で、口コミを広げてもらったり「類は友を呼ぶ」で友達を誘ってもらったりして、4人、8人、12人と増やしていく。これが、コアなターゲットの広げ方ですね。
小島:無料コンサルティングをありがとうございました(笑)。杉山さんはどうですか?
杉山:BtoBの場合であれば、NPSアンケートの自由記述の多さもそうですし、「プロダクトに対して、特に見返りもないのに定期的にフィードバックをくれる人」がまさにヒーロー(コアユーザー)ですね。「こういう機能があった方がいいよね」とか「今回のアップデートが良かったよ」と熱心に声を届けてくれる方々です。
そういう方々を、弊社では最初は「分科会」という形で集めて、同じ課題や同じ業界の人たち同士で横並びで相談し合えるような、共通体験を持ってもらうところからコミュニティを育てています。
AI時代における“脱一方通行”の重要性
小島:ご質問をたくさんいただいているんですけども、最後のトークテーマに進みたいと思います。AI時代ということで、これからは『脱・一方通行』が重要になるんじゃないかということで、何やら意味深なスライドをいただきました。

小父内:これだけ大きな会場でコミュニティマーケティングのイベントをやらせていただいて、一方で世の中ではAIがこれだけ台頭してきている。その中で、やっぱり「最後は人間らしくあるかどうか」がすごく大事だなと思っているんですね。
どれだけ効率化が進んでAIが強化されても、最後に意思決定をするのは人間じゃないですか。自分たち自身なので、今はむしろ「人間らしさを取り戻す機会」だなとも思うんです。そういった意味でも、やっぱり双方向でお互いを知るという「脱・一方通行」が重要になってくるのかなと。それに関連して、次のページがこちらですね。

最近「フィルターバブル」という話がすごく話題になっていると思います。情報がコモディティ化して(どこでも手に入るようになって)、パーソナライズとか1to1のレコメンドをAIがどんどん推奨していくようになると、自分が選ぶものや目にするものが、もの凄く狭まっていってしまうんですよね。ほぼ「これが答えです」と出されてしまうので。
これがフィルターバブルと言われるもので、要は自分の興味関心がどんどん「ガラパゴス化」していってしまうんです。私がこれをすごく危惧しているのは、「セレンディピティ(偶発的な新しい出会い)」の機会を損失しているな、ということなんです。「本当はもっと違う可能性や、面白いものがあるかもしれないのに」という部分を、自分で狭めてしまっている。これって、なんだか人間らしくなくて悲しいなと思うんですよね。ここはぜひ、今日お集まりの皆さんに問いかけたいなと思っているところです。
小島:実際に「AI検索になると、具体的にどんな感じになるのか」というのをお話しいただければと思います。
小父内:はい、あるコミュニティの中で「柚子ジャムを作る際にお茶パックを使うと便利である」というテーマのトークがありました。すると、そのニッチな情報がAIに拾われるのです。つまり、コミュニティの中だけで情報が閉じているわけではなく、現在はすでに「AIに検索され、AIから直接ユーザーに推奨される世界」へと変化しています。
Googleが重視している検索評価基準「E-E-A-T」の中に、「エクスペリエンス(体験)」という要素がありますよね。まさにそのリアルな体験がそのままコンテンツになりますし、コミュニティはユーザー自身が文章を書いたり読んだりするため滞在時間が非常に長くなります。結果としてコンテンツの質が上がり、AIからも選ばれやすくなるのだと考えています。

小島:AIがダイレクトに、コミュニティ内の個々のコンテンツに飛び込んでくるようになっているのだと思います。これについて、杉山さんもおもしろいデータを出してくれていますね。
杉山:私たちが運営を支援している青森県の観光コミュニティ「青森びいき」のデータです。グラフの青色の部分が検索ランク1位から3位のゾーンですが、これほど上位になると大体50%程度はAIオーバービュー(AIO)に引用されて表示されます。一方、赤色の部分は4位から10位のゾーンで、これは検索結果のファーストページ(1ページ目)にあたります。ここにランクインしていると安定した流入が期待できるのですが、この2つのゾーンが2025年の7月頃から急激に伸びています。Googleの検索ロジックが変わった影響もありますが、企業側が作ったコンテンツではなく、リアルなUGC(ユーザー投稿)が蓄積されてきたことが大きな要因です。実際に観光を体験されたエンドユーザーの投稿が直接検索に引っかかるようになり、AIにも選ばれるようになってきました。該当するキーワード自体はまだかなりロングテール(ニッチ)なものばかりですが、それでも確実にお役に立てるようになってきています。

私も含め、5年から10年前にSEOに携わっていた方であれば、かつては情報の「網羅性」が最重要だったことをよく覚えているかと思います。
小島:そうですね。当時は文字量や、あらゆる情報をカバーする網羅性が重視されていました。
杉山:そうですよね。しかしAIに関しては、人間と比べて検索・処理できる量が圧倒的に多いため、記事側で網羅性を自ら担保する必要がなくなりました。だからこそ、先ほどお話に出たE-E-A-Tの「エクスペリエンス(体験)」が極めて重要になります。これは数年前に新しく追加された評価基準ですが、「体験」は人間にしかできません。AIは体験が含まれるコンテンツを優先して抽出し、大々的に提示するようになってきているため、体験ベースのコンテンツを生み出せないとトラフィック(アクセス)を得られない時代が到来しています。
小島:先ほどセッションの前に少しお話しした際にも、「これからは量ではなく質の時代である」という話題になりました。インターネット上の情報をコタツ記事のようにまとめただけでは通用せず、生身の人間が「思った・感じた・行動した」という一次情報こそが強みになる時代ですね。
杉山:まさにその通りです。コミュニティ内の個々の投稿を一つひとつ見ていくと、それ単体ではそこまで網羅性があるわけではありません。
小島:単体の投稿だけを見ると一見ピンとこないかもしれませんが、検索しているユーザーそれぞれの文脈(コンテキスト)に最適なものを、AIが自動的にマッチングして届けてくれるということですね。
杉山:おっしゃる通りです。ですので「体験」の重要性は非常に高まっており、必然的に人間の体験談が集まる場所が、結果としてAIオーバービューでも通常のSEOでも強くなっていくという構造です。それを企業側がうまく集約し、バフ(効果を増幅)をかけてあげる。このアプローチが、特にAI時代のコンテンツマーケティングにおいては非常に不可欠であると考えています。
2026年に始めるならオウンドコミュニティとアーンドコミュニティ、どちらがオススメ?
小島:ありがとうございます。その「人と経験に基づいたコンテンツ」を増やすべきだという点はベースにありますが、実際に取り組む際、自社でしっかりとコミュニティを保有すべき(オウンド)なのか、あるいは外部のコミュニティやSNSなどの界隈へ積極的に展開していくべき(アーンド)なのか。一言で表現するといかがでしょうか。
小父内:結論としては両方です。ただ、このイベントの場であれば、やはり「オウンド」とお答えすべきですね(笑)。
小島:そうですね。自社のオウンドコミュニティがなければ、先ほどお話に出た「人とその経験に基づくコンテンツ」を、特定の方向性を持って蓄積していくことは難しいと思います。杉山さんはどのようにお考えですか。
杉山:私も、まずはオウンドコミュニティであると考えています。コミュニティを通じて得られた知見を、どれだけ外部(アーンド)に展開し、活用できるかという点を考えても、やはり自社の資産として抱えておかなければその後の展開が非常に難しくなります。
というのも、アーンドメディアというのは、結局のところ「他社が保有するオウンドプラットフォーム」に過ぎません。施策のたびにプラットフォーム側のルールや他社にお伺いを立てながらマーケティングを進めるのでは、従来の媒体を購入して行う一方通行のマーケティングと、本質的には何も変わらなくなってしまいます。だからこそ、自社でしっかりとデータを蓄積し、場を維持していくという「覚悟」を持つことが極めて重要であると考えています。
小父内:アーンドが持つ高い拡散性をうまく活用しながら、オウンドとの間で相互にユーザーを「ぐるぐる回す」サイクルを作ることですね。オウンドが中心となって話題や体験を生み出し、アーンドがそれを広く拡散していく。この2つを掛け算するアプローチは非常に有効です。価値を「ストックしていく」という意味でも、非常に分かりやすい構造ではないでしょうか。
小島:熱気あるQ&Aも含め、本日はありがとうございました!

会場でお答えしきれなかったご質問にお答え!
Q:BtoBの事例もあれば教えていただきたいです
小島:B2Bは「他社のユースケースを知りたい」というニーズが強く、むしろB2Cよりもコミュニティ参加の動機がはっきりしている場合も多くあります。よく知られた事例では、サイボウズ社、楽天(EC事業者向け)、セールスフォース、AWS(アマゾンのクラウド事業)などがあります。
また、コミュニティマーケティング白書では、コミュニティマーケティングを実践中の企業は、B2Bの企業の方が圧倒的に多いという調査データが出ています。(アンケート調査ベースなので、日本の全体の平均値とは限りませんが)
■コミュニティマーケティング実施企業の内訳
- B2B(法人向け):63.5%
- B2C(消費者向け):25.8%
- B2B2C:10.8%
※コミュニティマーケティング白書
https://report.communitymarketing.jp/
小父内:BtoBもコミュニティは非常に効果的です。
- SaaS/業務支援なら、ユーザー会(職種別)、運用Tips共有会、成功事例の深掘り、Q&Aコミュニティなどを通じて、つながる場を作ると継続しやすいです。
- KPIは参加者数より、定着・活用度・アップセル兆候・問い合わせ削減など業務成果に寄せるとBtoBで説明しやすいです。
- オンボーディングの手段としてコミュニティで育成フローを構築するなど業務プロセスに組み込まれているケースも多くあります。
サイボウズ株式会社様のコミュニティ事例
https://coorum.jp/case/it/cybozu/
杉山:BtoBにおいても、コミュニティは非常に高い効果を発揮します。
目的としては顧客育成に特化することが多く、顧客同士のコミュニケーションを育成のドライバーにするか否かで大きく方針が変わる。(ドライバーにしない場合は、Q&Aからの延長のフォーラムっぽいモデル、する場合はToCのコミュニティに徐々に寄っていきます。)
また顧客育成を「解約率の低減」でおく場合は成果が出るまでに長時間かかり、「複数商材の購入」におく場合はチャレンジを早く行うことができます。
Sansan様のコミュニティ事例
https://commune.co.jp/case/20260406_11823/
Q:ファンマーケティングの対象は会社単位ですが、熱量の高いユーザ様がキーとなる認識です。熱量の高いユーザ様を生み出してく上で、やはり施策は個人レベルでの検討が重要になるのでしょうか?
小島:はい。B2Bであっても、コミュニティに参加するのは企業ではなく「人」になりますので、その人の熱量や資質は重要な要素になります。
そのため企業単位の課題だけでなく、
- 学びたい
- 成長したい
- 他社事例を知りたい
といった個人の動機も重要になります。
こうした個人の動機にフォーカスすることはもちろんですが、B2Bコミュニティの場合、その個人が会社や組織でどのような役割や責任を負っているかにも強く関係しますので、その点は留意する必要があります。
小父内:はい、個人の体験設計が非常に重要です。ただし運用を“個別対応だらけ”にするのではなく、熱量が高まりやすい導線を用意するのがポイントです。
①最短で価値が出る初回体験(オンボーディング)②称賛・可視化③役割付与(出番)④ユーザー同士のつながり⑤共創(意見が反映される)の順に設計すると強いです。
- 「会社単位の成果」は、結果としてキーパーソンの行動変容から起きる、という整理が分かりやすいです。
- より質の高いインサイトを得るためにN1での深掘りや施策も重要ですが、ある一定の条件でグルーピングして、そのグループに対して施策のPDCAを回して顧客体験を最適化していく試みがポイントです。
杉山:個人単位、そして組織の中での個人の単位と、個人を2つのメガネで見ることが重要だと考えております。
例えばNPSを取得する場合も、個人の回答の総和と、企業単位での紐付けたデータの2種類を分析することが重要です。
その上で施策で動いてくださる個人をいかに組織にプロモーションできるかが重要です。
Q:友人紹介獲得率の分母はなんでしょうか?
小父内:弊社では、分母=コミュニティメンバーで計測しています。さらにコミュニティメンバーをアクティブベースでグルーピングして、それぞれのレイヤーにおける紹介率を把握するようにしています。
杉山:コミュニティの登録者を分母としております。
Q:私は顧客向けではなく、インナーブランディングを担当しています。インナーマーケティングとして社内向けのポータルサイトの活用、メルマガ配信、動画配信をしながらスタッフのファン化を進めています。発信内容を元に、社員同士の相互作用を加速させ、社員のeNPSを上げていくためのなにかヒントが貰えると嬉しいです。
小島:社員のファン化やeNPS向上を考える場合も、社員同士のつながりや共通体験を増やすことが重要です。情報発信だけでなく、社員同士が反応し合ったり、参加し合ったりする機会を作ることで、帰属意識や共感が高まりやすくなります。それらを進めるうえでも、コミュニティマーケティングの手法は有効です。
社内コミュニティでも、まずは積極的に発信する人(リーダー)と、それに共感して参加する人(フォロワー)の関係を作ることが重要です。
リーダー、フォロワーの重要性については、こちらのスライドが参考になるかと思います。
https://www.docswell.com/s/hide69oz/5Q21LV-CMC_Osaka_10#p23
小父内:まさに今回のテーマである一方通行の発信だけではなく、相互作用が自然に起きる仕組みを組み込むのが有効です。ファンコミュニティと同様にインナーブランディングでも「ファン」の考え方が重要になりますので、まずは社内の味方(ロイヤル社員)を発見し積極的に巻き込んでいく姿勢が重要です。
具体的な打ち手例:
- 小さな共創:「社内の困りごと募集→上位テーマを改善→改善ログを公開」のサイクルを回す
- 部署横断の小集団:少人数の活動単位(サークル/分科会/部活動)を作り、活動をポータルで可視化する
- 参加の心理的ハードルを下げる:投票・スタンプ・一言フォームなど、短い反応で参加できる導線を標準化する
杉山:質問会でお答えした、トップダウンとボトムアップの両方が大切です。特にボトムアップの「新入社員やアルバイトの方が自発的に参加できるくらいハードルの低い施策」があると裾野が広がりトップダウン施策も浸透しやすくなります。
Q:メーカーで製品マーケティングをしています。コミュニティを立ち上げる際、最初にどのようなターゲットを設定されているのでしょうか?また、そのターゲットはどのような考え方で選定されていますか?
小島:最初は「誰に来てほしいか」から考えるのがおすすめです。
例えば、
- 長年使っているユーザー
- SNSで発信しているユーザー
- 友人に勧めてくれるユーザー
などです。
それを決めるためには、そもそもコミュニティのゴール(Objective)は何か、その達成のためにはどんな人(Who)を対象にすべきか、の順で設計するのが鉄則です。
また、コミュニティ内での行動や想起の連鎖が起きやすいように、Whoを「リーダー層」と「フォロワー層」に分けて設定することが重要です。
コミュニティマーケティング推進協会では、この考え方をOWWH(Objective = Who x What x How)でご説明しています。詳しくはこちらのスライドが参考になるかと。
https://www.docswell.com/s/hide69oz/5Q21LV-CMC_Osaka_10#p21
小父内:コミュニティ立ち上げのターゲットは、「インセンティブなしでも参加してくれる熱量の高い既存顧客」に絞るのが鉄則です。理由は以下の2点です。
- 良質な文化の醸成: 特典目的の層が多いと対話が生まれません。愛着の強い顧客を中心にすることで、自発的な会話や独自の文化が育ちます。
- 質の高いインサイトの獲得: 幅広く集めると表面的な声(ノイズ)が増えます。愛用者に絞ることで、意思決定に直結する深い「ホンネ」が集まります。
最初は実購買を条件にするなど、あえて参加ハードルを設け、「多く集める」よりも「小さく濃く始める」ことが成功の秘訣です。文化が定着してから段階的に広げていきましょう。
杉山:
- ビジネスモデル
- コミュニティで出したい成果
によって変わるのですが、濃いところから拡げるというのは共通項でありそうです。
その、「濃い」を購買金額で取るのか、蓄積年数でとるのか、施策反応率で見るのかは目的に依存します。
Q:ファンやロイヤル顧客という母数だと多くの数がいると思うのですが、そこからどうターゲットを狭めるとよいですか?
小島:全てのファンを対象にする必要はありません。
最初は、
- 発信してくれる人
- 人を誘ってくれる人
- コミュニティ活動を支えてくれる人
など、コミュニティの成長に大きく貢献してくれる方から始めることが多いです。
人数よりも「どの順番で、誰を集めるか」が重要です。
小父内:「熱量」だけでなく、貢献可能性(発信・学び共有・周囲への影響)で絞ると立ち上げがスムーズになります。
絞り込みの軸:
- 行動:参加頻度、投稿、レビュー、質問の質
- 影響:紹介、UGC、社内外での共有
- 課題:困りごとの強さ・解決インパクト
運営上は、まず上位10〜20人程度に絞って“顔が見える運営”をすると成果が出やすいです。この辺りは、小島さんの書籍で言及されている「焚き火理論」が参考になります。
杉山:コミュニティ・交流へのお誘いということだけでハードルが一定高かったりしますので、母集団が当初目的の3倍くらいまででしたら登録するしないでセグメントを切ってしまうのもアリかと思います。
Q:コミュニティはオンラインコミュニティが必須なのでしょうか
小島:オンラインの環境が「必須」というわけではないかと思いますが、オフラインの場だけですと開催頻度や、参加できる人数、エリアに制約がでてきます。
オフラインの会合と、オンラインで継続的、非同期に交流できる環境をミックスして運用するのがバランスとれるのでお勧めです。
小父内:必須ではありませんが、目的次第です。オンラインとオフラインが双方あることで、さらに効果的なファンとの接点が構築できるようになります。
- オンライン向き:継続運用、Q&A、ナレッジ蓄積、遠方含むスケール
- オフライン向き:関係性の立ち上げ、信頼形成、熱量の点火
オフラインで熱量が高まった状態をオンラインで保温&加熱していくイメージがわかりやすいです。弊社でよくある成功ケースで、オンラインで先に出会い、オフラインの場で再会して一気にロイヤルティが向上することが多くあります。
杉山:必須ではないです。
オフラインで自発的にコミュニティが形成されることもあると思います。(例えばラインのトークルームなど。)事業活動としてトラッキングしていく上ではオンラインコミュニティを用意されるのが簡易な手段だと思います。
Q:ファンミーティングをリアルイベントで実施する場合募集・イベント内容などどのような仕立てにするとファンのロイヤリティ向上に繋がるでしょうか。(フードコートにあるようなフード系の事業で一定数コアなファンが存在しております。)
小島:共通の関心軸の設定や、参加者同士がコミュニケーションしやすい「共通体験」が設定されると、コミュニティの場に参加したくなる力が働きますが、ロイヤリティにつなげるのであれば、やはりその場を肯定する話がたくさん聞ける、話せる状況をセットするのが良いかと思います。
具体的には、商品の話だけをするよりも、「その商品が好きな人同士が話したくなるテーマ」を作ることが重要です。
小父内:ロイヤリティ向上には過度な「おもてなし」ではなく、参加者とフラットな関係性を保ちながら、ファンが主役になる体験設計が重要です。
例:
- 募集:先着だけでなく、招待枠・推薦枠を混ぜて特別感を作る
- 内容:裏側共有(こだわり/開発秘話)+体験(試食等)+交流(参加者同士)+共創(投票で決める企画)
- 余韻:モノより、称号/限定ロール/次回優先権など継続特典を残す
フード系なら「推しメニュー総選挙」「新作の先行試食&改善会」「おすすめの食べ方交換会」などが相性良いです。自らがまるで運営側になったような仕組みづくりが成功しやすいです。
すかいらーく「しゃぶ葉」さんのファンとの共創事例:
https://coorum.jp/news/media/syabuyo_20240515/
杉山:少ない人数に限定するのか、ある程度間口を広げるのか次第ではあるのですが「ファン同士の交流」を目的にしない方が基本的には良いです。
また、イベントに参加される方はすでにロイヤルティが高いので、ロイヤルティの向上ではなく維持、もしくはロイヤルティの高いユーザーの紹介で、ロイヤルティが高くないユーザーも参加してもらうなどの仕掛けが必要になるパターンが多いです。
Q:新規事業・新製品の初歩のマーケティングから、その後の実証・新たな仮説立てのご相談などもできますか?
小島:コミュニティマーケティング推進協会では、個社向けのコミュニティマーケティング研修をご用意しており、その研修内で、個社ごとのコミュニティマーケティングの設計図(OWWH)を作るワークショップを提供しています。
■個社向けコミュニティマーケティング講座
https://communitymarketing.jp/service/education
小父内:可能です。コミュニティは集客だけでなく、仮説検証を高速に回す基盤として活用できます。
進め方の例:仮説(誰の何の課題か)→小さく検証(試作/インタビュー)→コミュニティで反復(反応ログ)→示唆を製品・施策に反映、のループです。
例えば自社のPOSデータやCRMとコミュニティ活動を結びつけて、一人ひとりの行動変容を可視化して、次の有用な施策に活かすことが可能になります。
杉山:もちろん可能です。コミュニティという手法が適している場合とそうでない場合がありますのでお気軽にご相談ください。
Q:自社でコミュニティを構築するだけでなく、SNS上や、他プラットフォーム等、既に存在している外部のコミュニティを活用していく方法もあると思います。まず手を出すべき領域を定めるにあたり、どういう考え方で検討を進めていますでしょうか。
小島:いわゆる「オウンドコミュニティ」と「アーンドコミュニティ」のどちらを選択するか、だと思います。
どちらの手法もあり得ますが、そもそものコミュニティ施策での「ゴール」設定が重要で、どちらが近道になるか? という視点で選択するのが良いかと思います。どちらか一方ではなく、組み合わせるケースも多いです。
オウンド、アーンドのメリット、デメリット比較については、こちらのスライドが参考になるかと思います。
https://speakerdeck.com/akiko_nagahashi/20260617-huankomiyuniteimaketeinkuexpo-chang-qiao-ming-zi-shi-hou-gong-kai?slide=28
小父内:まず「どこにいるか」より、何を確かめたいか(目的)で領域を決めるとスムーズです。
- 認知拡大:SNS(高い拡散性)
- 学習・仮説検証:オウンドコミュニティ/ユーザー会(生の声が集まる)
結果的には両方のメリットを活かしてシナジーを生んでいく仕組みづくりが重要になります。
杉山:目的次第ではあるのですが、オウンドでコミュニティを立ち上げる際に、お声掛けして喜んでいただける方を想像できる場合は、オウンドで。そうでなければアーンドでというのがわかりやすいかもしれません。


