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ARRとは?役立つ場面から算出方法まで徹底解説! – 0からわかるカスタマーサクセス用語集
2024/07/01
ARR(Annual Recurring Revenue)とは、毎年決まって得られる1年間分の収益を表す指標です。日本語では年間経常収益と言います。
事業状態を評価する際には「成長性」「効率性」「顧客ロイヤルティ(企業自体やプロダクト・サービスに対する顧客の信頼度や愛着度)」の3つの観点に注目することが非常に大切ですが、この3つのうち「成長性」を測るうえで有効な指標となるのがARRです。ARRは、収益のうち継続的かつ安定しているものをベースに算出しているため、来期以降の収支のシミュレーションに役立つのです。
目次
企業にとって売上の予測や経営状態の評価は欠かせません。現状の把握や将来の予測をする指標はたくさんありますが、その中でもARRは成長性を理解することに役立つ指標です。
本記事では、ARRを0から理解できるよう、定義や算出方法、増加・減少の要因などをわかりやすく解説します。
ARRとは?
ARR(Annual Recurring Revenue)とは、毎年決まって得られる1年間分の収益を表す指標です。日本語では年間経常収益と言います。
「毎年決まって得られる収益」であり、初期費用や追加購入費用、コンサルティング費用などは含みません。そのため、月額費用の変動が大きいビジネスや年間契約がないビジネスの場合は、指標として相応しくないでしょう。
事業状態を評価する際には「成長性」「効率性」「顧客ロイヤルティ(企業自体やプロダクト・サービスに対する顧客の信頼度や愛着度、関連記事を読む)」の3つの観点に注目することが非常に大切ですが、この3つのうち「成長性」を測るうえで有効な指標となるのがARRです。ARRは、収益のうち継続的かつ安定しているものをベースに算出しているため、来期以降の収支のシミュレーションに役立つのです。
経常収益と非経常収益
売上は大きく経常収益と非経常収益の2つに分類することができます。
①毎期決まって発生する売上(経常収益)
経常収益とは「会社の本業から毎期継続的・反復的に得られる収益」のことです。会社の本業とは、例えば、書店なら書籍の販売、配達業者なら配達サービスというように、その会社の中心となる事業活動のことを指します。
そもそも「経常」とは常に一定の状態で変わらないという意味で、「臨時」に対する言葉として使われます。
つまり、経常収益とは、企業が得る収益のうち、一過性の強い「臨時」の収益を除き、本業から毎期繰り返して得られる収益というわけです。経常収益はまさにその会社の実力をあらわしていると言えるでしょう。
経常収益の例:
動画配信サービスを利用するAさんは、年間契約で登録しており、会費として毎月1,000円、1年で合計12,000円を支払っています。事業者側からすると、何か予期せぬ事態が起きない限りは毎年Aさんが支払う12,000円は収益として見込めるので、この12,000円は経常収益となります。
②一時的・臨時的に発生する売上(非経常収益)
非経常収益とは「会社の本業以外で発生した一時的、または臨時的な収益」のことです。基本的に、通常の運営をしている過程でこれらの収益が再び起こることはないと想定されます。
非経常収益の例:
動画配信サービスを提供するA企業が上映会を企画し、一枚2,000円のチケットを50人に売ったとします。この時の収益は、合計で100,000円となります。
しかし、A企業は上映会を主として行う企業ではない上に、もし翌年に似たような上映会を開催しても、同額の収益を得られるという保証はありません。そのため、上映会で得られた100,000円は非経常収益となります。
ARRとMRRの違い
MRR (Monthly Recurring Revenue)とは、毎月決まって得られる1ヶ月分の収益を表す指標です。日本語では月間経常収益と言います。
ARRとMRRはどちらも経常収益(Recurring Revenue)を表す指標ですが、ARRは1年間分の収益を表すのに対し、MRRは1ヶ月分の収益を表すという違いがあります。MRRを12倍すればARRを算出することができます。
一般的に、音楽や動画配信サービスなど、月単位で契約することが多く毎月の契約や解約が一定数発生するビジネスの場合はMRRを、企業向けのSaaSといった年間契約が発生しやすいビジネスではARRを指標として用いるケースが多いです。
ARRが役立つ場面
ARRはどのような時に役立つのでしょうか。例えば以下の2つのような場合が考えられます。
SaaSビジネスにおける売上のトップラインを把握する
SaaSビジネスの場合、損益計算書における会計上の売上高では、トップラインを示す指標として不適切である懸念があります。
売り切り型のソフトウェアであれば、基本的に売上は販売した時点で一括計上されますが、SaaSの場合は、利用月ごとに按分されて計上されます。
例えば、3月決算で、3月に240万円分のソフトウェアを販売したとすると、売り切り型の場合は240万円の売上がその期に計上されますが、SaaSの場合、年間契約だとすると、その期に会計上の売上として計上されるのは1ヶ月分の20万円のみになります。
つまり、会計上の売上は、期末時点におけるSaaS企業の実力値を正しく評価しづらい遅行指標になってしまうのです。そのため、SaaSビジネスでは、トップラインを測る指標としてARRを用いた方が、その時点における事業の実力値を適切に評価できるでしょう。
ちなみに、ARRに非経常収益は含まれないので、ARRと損益計算書上の売上高とは一致しない点には注意が必要です。
バリュエーションを算定する
投資家は正確に将来性を予測できる指標を好みます。ARRは、事業の成長性を確認でき、将来予測の確実性も高いので、企業価値評価のベースになることが多いです。
多くのスタートアップが、VCなど投資家からの出資による資金調達を必要としますが、その際、スタートアップと投資家が相対で交渉して、会社の時価総額(バリュエーション)を算定することになります。こうした場面においてはARRが使われることが多く、特に資金調達を必要とするSaaS企業にとってはARRは非常に重要な指標と言えるでしょう。
ARRの算出方法
ARRはMRRを12倍することで計算できるため、まずはMRRを計算します。
MRRは一般的に以下の4つの要素に分解できます。
(A)New MRR:当月の新規顧客からのMRR
(B)Expansion MRR:前月の顧客がプランをアップグレードし追加したMRR
(C)Downgrade MRR:前月の顧客がプランをダウングレードし損失したMRR
(D)Churn MRR:当月に顧客が解約し(チャーン)損失したMRR
これら4種類を元に、MRRは以下の計算式で算出します。
当月MRR = 前月のMRR+{(A)+(B)-(C)-(D)}
ARRは、このMRRをもとに以下の式で求めることができます。
ARR=MRR×12
月ごとのMRRの数値にばらつきがある場合はARRを算出する基準にする月をどの月にするかによって、算出されるARRの数値が大きく異なることになるので注意が必要です。
このような月ごとの売上の変動の影響を少なくするために、四半期ごとのMRRに基づいてARRを計算することもできます。
ARRを増加させるには
ARRを増加させるには、以下の3つの方向性が考えられます。
新規顧客を増やす
既存顧客からの収益拡大を狙う
既存顧客からの収益を拡大することもARRを増加させる一つの方法です。上記計算式における(B)の数値を大きくすることに値します。
既存顧客に対し、さらに上位のサービス・プロダクトに乗り換えてもらうことをアップセル(関連記事を読む)、別のサービス・プロダクトをセット、或いは単体で購入してもらうことをクロスセル(関連記事を読む)と言います。
「新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストの5倍かかる」という「1:5の法則」からもわかる通り、ある程度成熟したサービスであれば、アップセル・クロスセル(関連記事を読む)を狙った方が新規顧客を獲得するよりも効率的にARRを増やせるでしょう。
顧客の継続力を高める・解約率を下げる
顧客数を維持することができれば、毎月顧客数は積み重なっていくため、ARRは自然と増加していきます。上記計算式における(C)(D)の数値を小さくすることに値します。
サービスを継続的に利用している顧客の割合のことをリテンションレートと言います。リテンションレートを増加させるためには、ユーザーが感じるストレスを減らすことが大切です。人は幸福感よりも不快感に敏感に反応するため、継続して利用してもらうためには、まずは「利用することで嬉しいことがあった」と感じる回数を増やすことよりも「利用することでストレスが溜まった」と感じる回数を減らすことが重要になるからです。
まとめ
売り切り型のビジネスモデルでは売上高が指標として用いられますが、継続的に収益が発生するリカーリングビジネス、特にサブスクリプションビジネスではARRが重要な経営指標として活用されています。
ARRを把握することで、将来的な売上予測が立てられるようになり、経営上の計画を立てやすくなります。
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