コラム
マーケティング
コミュニティと言葉:他動詞的発想と負のメタファーについて
更新日:2026/06/08

マーケティングでお困りの方へ
マーケティングでお困りの方へ
施策は実行している。CSにも取り組んでいる。
それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?
施策は実行している。CSにも取り組んでいる。
それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?
目次
「今月の投稿数を増やすために、メンバーに投稿させる施策を考えよう」「今回のキャンペーンのターゲットはこのメンバー層だ」
コミュニティ担当者であれば、こうした言葉を一度は使ったり、聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。日々の業務のなかで、ごく自然に、何の違和感もなく口にしているかもしれません。これらの言葉は、ビジネスの現場で効率的に物事を進める上で問題のない言葉とされています。
しかし、今回はその言葉を少し深く考えてみたいのです。その裏側には、どのような「思想」や「前提」が隠れているのでしょうか。そして、その言葉は、私たちが築きたいコミュニティの「文化」や「雰囲気」に、どのような影響を与えているのでしょうか。
私はこれまで、数多くのコミュニティ立ち上げ・運営を支援する中で、成功するコミュニティにある種の共通点があることを見出してました。それは、運営チームが「言葉」を大切にしている、という点です。
この記事では、コミュニティ運営において無意識に使われがちな「言葉」に焦点を当てます。特に、「投稿させる」のような他動詞的な発想がなぜ危ういのか、そして「ターゲット」のようなマーケティング用語がコミュニティという文脈においてどのようなネガティブなニュアンスを持ちうるのかを深掘りします。
私たちが日々使う「言葉」は、私たちの思考そのものを映し出す鏡です。言葉選びを変えることは、コミュニティとメンバーへの向き合い方、その関係性の捉え方そのものを、より良い方向へと変えていくことです。
それではいきましょう!
「他動詞」に潜むコントロール思考
コミュニティ運営のミーティングを少し覗いてみましょう。「どうすれば、もっとメンバーを動かせるか?」 「休眠メンバーを掘り起こし、アクティブにさせる必要がある」 「もっとイベントに参加させるために、リマインドメールを送ろう」
これらの言葉に共通するのは、「運営がメンバーを動かす」という構造です。主語は「運営(私たち)」であり、メンバーは目的語、つまり操作の対象として位置づけられています。私たちはこれを「他動詞的発想」と呼んでいます。
もちろん、企業のミッションとしてコミュニティを運営している以上、事業目標やKPIの達成は不可欠です。その目標から逆算して「メンバーにこう動いてほしい」と考えること自体は、決して間違いではありません。短期的な成果を求めるのであれば、インセンティブを設計し、行動を「させる」というアプローチは、むしろ効果的に働く場面もあるでしょう。
しかし、この他動詞的発想に無自覚でいることには、大きなリスクが伴います。なぜなら、コミュニティの本質は、人と人との有機的なつながりの中から、予測不能な価値が生まれることにあるからです。それは、本来は誰かが意図して「コントロール」できるものではありません。
まるで、庭師が植物を育てるプロセスに似ています。庭師は、植物に「咲け!」と命令することはできません。できるのは、良い土を耕し、適切な量の水と太陽の光を与え、風通しを良くするといった「環境を整える」ことです。植物が自らの生命力で花を咲かせるのを、信じて待つ。コミュニティ運営も、本質的にはこれと同じではないでしょうか。
「投稿させる」という発想は、短期的には投稿数を増やすかもしれません。しかし、そのキャンペーンが終わった後、何かが失われてはいないでしょうか?メンバーは、運営のKPI達成のために動かされていることを敏感に感じ取ります。その感覚は、運営とメンバーの間に見えない壁をつくり、長期的な信頼関係の構築を妨げる要因になってしまうかもしれません。
では、どうすればこの罠から抜け出せるのでしょうか。 それは、思考の起点を「他動詞」から「自動詞」へと転換させてみることです。
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「投稿させる」にはどうすれば?
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→ 「メンバーが思わず投稿したくなるのは、どんな瞬間だろう?」
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「イベントに参加させる」にはどうすれば?
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→ 「メンバーが『ぜひ参加したい』と感じるイベントとは、どんな企画だろう?」
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「コミュニティを活性化させる」にはどうすれば?
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→ 「メンバー同士の会話が自然と生まれるには、どんなきっかけがあれば良いだろう?」
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問いの立て方を変えるだけで、思考の矢印が「運営→メンバー」という一方通行から、メンバーの内面や感情へと向き始めるのがわかるでしょうか。この視点の転換こそが、メンバーをコントロールの対象ではなく、一人の主体的な意志を持った人間として尊重する発想につながるのです。
撃ち抜く対象としての「ターゲット」という言葉
次に、マーケティングの世界では当たり前のように使われている「ターゲット」という言葉について考えてみましょう。この言葉もまた、コミュニティの文脈で使う際には、細心の注意が必要な言葉の一つです。
「ターゲット」という言葉の語源は、言うまでもなく「標的」です。マーケティング戦略において、限られたリソースを効率的に投下し、最大の効果を得るために「狙うべき顧客層」を定めることは、非常に合理的です。広告を「撃ち」、メッセージを「届け」、顧客を「獲得する」。そこには、ハンターと獲物のような、ある種の非対称な力関係が暗黙の前提として存在します。
危険なメタファーは「ターゲット」だけではありません。私たちの周りには、企業側の都合を優先する一方的な思想が染み付いた言葉が、実は数多く存在しています。
例えば、「囲い込み」という言葉。 顧客を自社のサービスや経済圏に囲い込んで離脱させない、という戦略を指す言葉ですが、コミュニティの文脈でこの言葉を使うことの危うさは、想像に難くないでしょう。コミュニティは、メンバーが「ここに居たい」という自発的な意志によって成り立つ空間です。それを、まるで柵の中に閉じ込めるかのような「囲い込み」という発想で捉えてしまうと、運営の施策は、メンバーの自由な活動を促すものではなく、いかにして彼らを縛り付けるか、という方向に向かいがちです。それはもはや、コミュニティではなく「檻」と呼ぶべきものかもしれません。
あるいは、「刈り取る」「獲得する」といった言葉はどうでしょうか。 「質の高いリードを刈り取る」「新規顧客を獲得する」。ビジネスの成果を語る上で、ごく普通に使われる表現です。しかし、これらの言葉は、メンバーとの関係性を「一度きりの収穫」や「所有物の入手」として捉える視点を内包しています。コミュニティとは、本来、長期的な関係性を育み、時間をかけて価値を「共創」していく場であるはずです。それを、畑の作物を収穫するかのように、あるいは戦利品を手に入れるかのように考えていては、持続可能な関係は築けません。
「ターゲット」「囲い込み」「刈り取り」。これらの言葉に共通するのは、企業が主体となり、メンバー(顧客)を客体として操作しようとする、一方的な力関係の構図です。マスマーケティングの時代には有効だったかもしれないこの構図は、対話と共創を前提とするコミュニティという場とは、根本的に相容れないのです。
あなたが誰かから「ターゲット」として見られ、「囲い込まれる」対象として扱われていると感じたら、どんな気持ちがするでしょうか。おそらく、自分という個人としてではなく、ある属性に分類された「記号」や「数字」として扱われているような、少し寂しい気持ちになるのではないでしょうか。心を開いて対話し、本音を語り合おうという気持ちには、なかなかなれないはずです。
こうした言葉を使い続けることは、運営者の無意識に影響を与えます。メンバーを「攻略すべき対象」「獲得すべき数字」として捉える思考のクセがついてしまうのです。すると、メンバー一人ひとりの顔や名前、その人自身の物語が見えにくくなり、代わりに「30代女性、未就学児あり、購入頻度は月1回」といったデータ上の存在として認識してしまいがちです。
コミュニティとは、企業と顧客という従来の枠組みを超え、同じ興味や価値観を共有する「仲間」として、新しい関係性を築くための場所です。それは、企業が一方的に価値を提供するのではなく、メンバーと共にブランドを育て、新しい価値を「共創」していくパートナーシップの関係です。
言葉は、世界をどう見るかという「フレーム(枠組み)」を規定します。メンバーを「ターゲット」と呼ぶか、「パートナー」と呼ぶか。その小さな違いが、運営チームの行動や意思決定に大きな影響を与え、結果としてコミュニティ全体の文化を形作っていくのです。
言葉が「場」の空気をつくる
ここまで、コミュニティ運営者が陥りがちな「他動詞的発想」と「負のメタファー」について論じてきました。最後のセクションでは、より具体的に、メンバーにとって居心地の良い「場」をつくるための、ポジティブな言葉選びについて考えていきましょう。
コミュニティの「空気」や「居心地の良さ」は、非常に曖昧で捉えどころのないものに思えるかもしれません。しかし、その正体は、日々交わされる一つひとつの「言葉」の積み重ねによって作られています。運営からの発信、メンバーへのコメント、メンバー同士のやり取り。それらの言葉が、そのコミュニティの文化そのものなのです。
① 歓迎と承認の言葉を惜しまない
コミュニティに初めて参加したメンバーが、最初に目にするのはどんな言葉でしょうか。それが、システム的な定型文だけだとしたら、少し寂しいものです。
「〇〇さん、はじめまして!コミュニティへようこそ!」 「△△のテーマにご興味があるのですね、素敵な投稿を楽しみにしています!」
運営から、あるいは他のメンバーから、こうしたパーソナルな歓迎の言葉がかけられるだけで、新しく参加したメンバーの安心感は大きく変わります。自分がその他大勢の一人ではなく、一人の個人として歓迎されている、という感覚。これが、コミュニティへの定着と、その後の発言へのハードルを大きく下げてくれます。
また、既存メンバーの投稿に対しても、「承認」の言葉は非常に重要です。
「いつも素敵な情報をシェアしてくださり、ありがとうございます!」 「その視点は無かったです!とても勉強になります」
特に、勇気を出して初めて投稿してくれたメンバーに対しては、たとえそれが短い一言だったとしても、運営が誰よりも早く、そして丁寧に見つけて承認のコメントを返すことが、コミュニティ全体の「発言しやすい空気」を醸成します。運営の姿勢は、他のメンバーにも伝播します。「このコミュニティでは、どんな投稿も温かく受け止めてもらえるんだ」という安心感が、次の投稿、また次の投稿へとつながりを生んでいくのです。
② 多様な背景に配慮した言葉で話す
企業が運営するコミュニティで、ついやってしまいがちなのが、企業側の論理や業界の専門用語をそのまま持ち込んでしまうことです。
運営チーム内では当たり前に使っている言葉でも、メンバーにとっては「何のこと?」となってしまいます。こうした「内輪の言葉」は、メンバーとの間に見えない壁を作り、「自分は部外者だ」という疎外感を与えてしまいます。
メンバーと対話する際は、常に「この言葉は、専門知識のない人にも伝わるだろうか?」と自問自答する癖をつけましょう。専門用語は、誰もが理解できる平易な言葉に翻訳する。それは、メンバーの知識レベルを低く見ているわけでは決してありません。むしろ、多様な背景を持つ全てのメンバーに対して、敬意を払い、誠実に向き合う姿勢の表れなのです。
③ メンバーが使っている言葉に耳を澄ます
コミュニティが成熟してくると、メンバー同士の会話の中から、独特の愛称や言い回し、共通の「お約束」のような言葉が自然発生することがあります。
例えば、ある製品の愛称をメンバーが独自につけて盛り上がっていたり、特定のメンバーの口癖がみんなに伝染していたり。これらは、コミュニティに愛着が生まれ、文化が育っている素晴らしい兆候です。
運営の役割は、こうしたメンバー発の言葉を、誰よりも早く見つけ、面白がり、そして公式の発信にも積極的に取り入れていくことです。運営がその言葉を使うことで、メンバーは「私たちの言葉をちゃんと見てくれているんだ」「ここは自分たちの場所なんだ」という強いオーナーシップを感じることができます。
それは、トップダウンで与えられた文化ではなく、ボトムアップで育まれた、そのコミュニティだけの唯一無二の文化です。その言葉が使われるたびに、メンバー同士の連帯感は強固なものになっていくでしょう。
おわりに
この記事では、コミュニティ運営における「言葉」という、非常に繊細でありながら、極めて重要なテーマについて考えてきました。
「投稿させる」といった他動詞が、いかに運営側のコントロール思考を反映しているか。「ターゲット」というメタファーが、いかにメンバーとの対等な関係構築を阻害しうるか。そして、日々の小さな言葉選びが、いかにコミュニティの空気や文化を形作っていくか。
私たちの思考は言葉によって作られ、私たちの行動は思考によって方向づけられます。つまり、使う言葉を変えるということは、コミュニティへの向き合い方、その哲学そのものを問い直す営みなのです。
コミュニティ運営は、短期的な成果を追い求めるあまり、ついメンバーを「数」や「リソース」として捉えてしまいがちです。しかし、その先に長期的な成功はありません。コミュニティの真の価値は、効率やコントロールからは最も遠い場所にある、一人ひとりのメンバーとの人間的な信頼関係の中にこそ宿るからです。そして、その信頼を育む上で、私たちが毎日使っている道具が「言葉」なのです。
マーケティングでお困りの方へ
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その違和感は、顧客との関係性が
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それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
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