コラム
マーケティング
Enshittification (メタクソ化)でコミュニティを自社運用する価値が高騰する
更新日:2026/06/08
マーケティングでお困りの方へ
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施策は実行している。CSにも取り組んでいる。
それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?
施策は実行している。CSにも取り組んでいる。
それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?
目次
日常的に使っているプラットフォームが少しずつ使いにくくなっていると感じたことはないでしょうか。検索しても広告ばかりが目につく。フォローしているアカウントの投稿がなぜか表示されない。以前は無料だった機能に課金を求められる。
もしそう感じているなら、それは気のせいではありません。
この現象には名前がついています。Enshittification(エンシティフィケーション)、日本語では「メタクソ化」と訳されるこの概念は、カナダの作家・活動家であるコリイ・ドクトロウが2022年に提唱したものです。2023年にはアメリカ方言学会の「今年の言葉」に選ばれ、2024年にはオーストラリアのマッコーリー辞典でも年間最優秀語に選出されました(Enshittification – Wikipedia)。
いまや学術論文でも使われるほど、この言葉は現代のデジタル経済を読み解くキーワードになっています。
この記事では、メタクソ化が企業のマーケティングやブランディングにどのような影響を及ぼすのかを整理したうえで、「だからこそ、自社でコミュニティを運用する価値が高まっている」という視点をお伝えします。
それではいきましょう!
メタクソ化とは何か?
ドクトロウが定義するメタクソ化はシンプルです。
プラットフォームはこうやって死んでいく。まず、ユーザーにとって良い存在になる。次に、ビジネス顧客にとって良い存在になるためにユーザーを虐げる。最後に、ビジネス顧客を虐げて、すべての価値を自分たちに向ける。そうして死んでいく。
この3段階を、もう少し具体的に見てみましょう。
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第1フェーズ:プラットフォームは利用者を集めるために、便利さや快適さを惜しみなく提供します。Amazonはかつて原価割れで商品を販売し、送料も度外視していました。Facebook は友人や家族の投稿を正確に届けてくれるプラットフォームでした。
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第2フェーズ:十分な利用者が集まると、今度はビジネス顧客(広告主や出品者)を優遇し始めます。その過程で、利用者の体験は少しずつ犠牲になります。Facebookのフィードに知らないアカウントの投稿が混ざり始め、Amazonの検索結果に広告が増えていったのがこの段階です。
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第3フェーズ:ビジネス顧客も囲い込みに成功すると、プラットフォームはその価値を株主に集中させます。Amazonではマーケットプレイス出品者が販売価格の45%以上を手数料として支払わされるようになり、検索結果の上位は「最も高い広告費を支払った商品」で埋め尽くされるようになりました。
利用者もビジネス顧客も「ロックイン」されているために、サービスが劣化しても簡単には離脱できない点です。
ドクトロウはこのプロセスを「twiddling(ツイドリング)」と呼んでいます。プラットフォーム側がパラメータを絶え間なく微調整し、利益を最大化しつつ、利用者が「もう限界だ」と思う直前で踏みとどまらせる。その結果、利用者は「不満はあるが離れられない」という状態に置かれ続けるというのです。
いま、何が起きているのか?
メタクソ化は机上の空論ではなく、いま目の前で進行している現実です。企業のマーケティング担当者やブランディング担当者にとって、以下の事実は見過ごせないものでしょう。
まず、Facebookのオーガニックリーチ(広告費をかけずに投稿がフォロワーに届く割合)が低下しています。2012年時点でFacebook自身が認めていた平均オーガニックリーチは約16%でしたが、2024年にはわずか1.37%にまで落ち込んでいます。
企業が投稿しても、フォロワーの100人中1人にしか届かない計算です。投稿を届けたければ広告費を払うしかなく、しかもその広告費は年々高騰しています。
Instagramも同様の軌跡をたどっています。2018年にマーク・ザッカーバーグが「友人や家族とのやりとりを優先する」と宣言したアルゴリズム変更以降、ブランドのオーガニックリーチは急落しました。2024年にはリテールブランドのオーガニックエンゲージメントが3か月で30%低下したという報告もあります。
X(旧Twitter)では、イーロン・マスクの買収以降、APIの事実上の有料化、サードパーティアプリの締め出し、そしてフォロワーへの投稿配信の大幅な制限が行われました。ドクトロウ自身、50万人のフォロワーを持ちながら、かつて数十万から数百万に達していた閲覧数が数百から数千に激減したと報告しています。投稿を届けたければ課金しろ、という構図がここでも生まれています。
メタクソ化が企業にもたらす「見えないコスト」
では、こうしたプラットフォームの劣化は、企業にとって具体的にどのような問題を引き起こすのでしょうか。
①顧客接点のコントロールを失う
SNSやプラットフォームを介した顧客とのコミュニケーションは、あくまで「借り物の土地」の上に成り立っています。アルゴリズムの変更ひとつで、昨日まで届いていたメッセージが届かなくなるかもしれない。この不安定さは、ブランドにとって致命的なリスクです。英語圏のマーケティング業界では、これを「building on rented land(借地にビルを建てる)」と呼んで警鐘を鳴らしています。
②データが他社に帰属する
プラットフォーム上でどれだけファンを集めても、そのデータはプラットフォーム側に帰属します。メンバーがどんな話題に関心を持ち、どのような行動をとっているか。そうしたインサイトにアクセスできなければ、マーケティングの精度は上がりません。
③ブランド文脈の毀損
メタクソ化が進んだプラットフォームでは、ブランドの投稿の前後に低品質な広告やスパムコンテンツが並びます。「どのような環境で自社のメッセージが受け取られるか」を企業が制御できない状態は、ブランドの毀損に直結します。
④交渉力の喪失
プラットフォームへの依存度が高まるほど、値上げ交渉力を失います。これはまさにドクトロウが描いた「ビジネス顧客の囲い込み」そのものです。他に顧客接点を持たない企業は、プラットフォームの値上げを受け入れるしかありません。
自社コミュニティがメタクソ化への構造的カウンターになる
ここまで読んで、「では企業はどうすればいいのか」と感じた方も多いでしょう。私が提示したいのは、「自社でコミュニティを運用することが、メタクソ化への構造的なカウンターになる」という視点です。
メタクソ化の本質は「プラットフォームが仲介者として両面市場を支配し、企業と顧客の間を流れる価値を吸い取る構造」にあります。自社コミュニティは、この仲介構造そのものを迂回する手段です。
自社コミュニティでは、企業がメンバーに直接メッセージを届けることができます。アルゴリズムに表示を絞られることも、広告費をかけなければリーチできないということもありません。メンバーが「見たい」と思ったコンテンツは、そのまま届きます。これはドクトロウが理想として掲げる「エンド・ツー・エンド原則」、つまり「発信者のメッセージが受信者に確実に届く」という設計思想そのものです。
さらに、自社コミュニティで蓄積されるデータは企業のものです。メンバーがどんな話題に反応し、どの投稿にコメントし、どの程度の頻度で訪れているか。こうしたファーストパーティデータは、広告プラットフォームのブラックボックス的なレポートとは比較にならない精度と深度を持っています。
そして何より重要なのは、自社コミュニティにおける「信頼」の蓄積は企業の資産になるということです。プラットフォーム上で築いた関係性は、プラットフォームの方針変更で一夜にして毀損されえます。しかし、自社の空間で丁寧に育んだメンバーとの信頼関係は、外部の変数に左右されにくい。これは経営資源として極めて価値が高いものです。
事例に見る「自社コミュニティの実効性」
実際にこの戦略が機能している事例も見ておきましょう。
完全栄養食を展開するベースフード社は、自社コミュニティの活用によってサブスクリプションの解約率を大幅に改善しました。同社の解約率は過去最低の4.2%にまで低下しています(参照:ベースフード、解約率を半減させた「コミュニティー」改善素早く – 日本経済新聞)。コミュニティ内でメンバー同士がレシピを共有し、使い方のコツを教え合うことで、商品への理解と愛着が深まる。これはSNSのアルゴリズムに依存せず、企業とメンバーの直接的な関係性が生み出した成果です。
ネスレ日本は「ネスレ Ken人こみゅ」というブランド横断のファンコミュニティを運営しています。県民性、健康、社会貢献、豆知識といった多様な切り口でメンバーが交流し、生活がちょっと楽しくなる情報を共有する場として機能しています。将来的には共創の場への発展も視野に入れているとのことです(参照:ネスレ日本コミュニティ開設プレスリリース – PR TIMES)。
カルビーの「絶品かっぱえびせん」ファンコミュニティでは、2022年の開設以降メンバーが1,000名を超え、コミュニティの声から共創商品の第2弾が開発されるまでに成長しました(参照:カルビーコミュニティプレスリリース – PR TIMES)。メンバーの声を商品開発に直接反映するこのプロセスは、プラットフォーム上のアンケートや「いいね」の集計では到底実現できない、深い顧客理解に基づくものです。
こうした事例に共通するのは、「プラットフォームを介さずに企業とメンバーが直接つながっている」という構造です。メタクソ化が進む外部環境のなかで、この構造的な優位性は今後ますます際立っていくでしょう。
メタクソ化時代のコミュニティ運用の3つの視点
とはいえ、自社コミュニティを立ち上げさえすれば万事解決、というわけではありません。メタクソ化への対抗手段としてコミュニティを運用するなら、いくつかの視点を押さえておく必要があります。
1つ目は、「アルゴリズムに代わる編集力」を持つことです。プラットフォームではアルゴリズムがコンテンツを選別してくれますが、自社コミュニティではその役割を運営者が担います。メンバーにとって本当に価値のある情報を見つけやすくする導線設計、タイミングのよい話題の提供、適切なカテゴリ分けといった「場の編集力」が、コミュニティの質を左右します。
2つ目は、「データを活かす仕組み」を最初から設計することです。自社コミュニティの最大の武器はデータですが、それを事業に活かすパイプラインがなければ宝の持ち腐れです。メンバーの行動データや発言の傾向をどのように集約し、プロダクト改善やマーケティング施策にフィードバックするか。このサイクルを回せるかどうかが分かれ目になります。
3つ目は、「メンバーの自発性の発揮」です。メタクソ化したプラットフォームの根本的な問題は、「利用者が見たいもの」ではなく「プラットフォームが見せたいもの」を優先する点にありました。自社コミュニティで同じ過ちを犯してはなりません。企業側のメッセージを一方的に流すだけの場は、形を変えたメタクソ化です。メンバー同士が自発的に交流し、価値を生み出す余白を残すことこそが、コミュニティを「生きた場」にする条件です。
おわりに
メタクソ化は、特定のプラットフォームだけの話ではありません。ドクトロウが2024年にフィナンシャル・タイムズ紙に寄稿した言葉を借りれば、「メタクソ化はあらゆるものに押し寄せてくる」のです(Enshittification – Wikipedia)。
両面市場の構造を持つプラットフォームが、利益最大化のために利用者とビジネス顧客の体験を犠牲にする。これは個別の企業倫理の問題ではなく、プラットフォーム資本主義に組み込まれた避けられない重力のようなものです。
まとめイラスト
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その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?
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それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
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