コラム
マーケティング
『コミュニティ経営の教科書』の執筆で読者体験(Reader Experience)と向き合った話
更新日:2026/06/08
マーケティングでお困りの方へ
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施策は実行している。CSにも取り組んでいる。
それでも、どこか噛み合わない。
その違和感は、顧客との関係性が
積み上がっていないことかもしれません。
顧客との関係性を「面」として設計するために、
コミュニティという選択肢を検討しませんか?
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本が形になるまでの舞台裏
2025年10月20日に、『コミュニティ経営の教科書』という本が出版されました。わたしが所属するコミューン株式会社としての初の書籍として、執筆だけで1年かかった渾身の作品です。社内外の方と対話しながら、「コミュニティ」という言葉が、現場でどう理解され、どんな誤解をされているのかを観察し続ける日々でもありました。
おかげさまで2025/12/06時点で48件のレビューをいただき、その平均値は4.8とありがたい高評価をいただいています。星の数そのものよりも、「どんな人が、どんな背景で読み、どんな言葉で感想を書いてくれているのか」を一つひとつ読むのが、著者としては何よりのご褒美です。
レビュー欄を眺めていると、経営者の方、マーケティング担当の方、コミュニティマネージャーの方、さらには学生の方まで、想定していた以上に多様な方々が手に取ってくださっていることが伝わってきて、「コミュニティ」というテーマの広がりを実感します。
書いた文字数は、ボツになった文章も含めて合計20万字ほど。1日1000字書けば200日で書けるので、大した分量ではないと思われるかもしれません。しかし実際には、「書く」より「消す」作業のほうが多かったように感じます。書きながら、「これはこの流れで伝えるべきことなのか」「この話題は別の章に回したほうが読みやすくなるのではないか」と自問自答し続け、何度も章構成を並べ替えました。ときに、大きな変更は外科手術のような難しさもあります。ドキュメント上では、わたしだけが知っている幻の章構成がいくつも残っています。
読者体験(Reader Experience)へのこだわり
そのプロセスで感じたのは、本を書くということの難しさです。それは、1冊の本を通じて読者に何を感じてもらい、どんな行動につなげてもらうのかを設計しなければならないところです。いわば読者体験(Reader Experience)、つまりRXを考えて書かなくちゃいけないのです。
セミナーやワークショップであれば、その場の空気感を見ながら内容を微調整できますが、本は一度刷られてしまうと読者の手元で一人歩きします。だからこそ、「1章を読み終えたときに、読者はどんな表情をしているだろう」「第3章まで読み進めたときに、何か一つでも自社に持ち帰りたくなるアイデアが浮かんでいるだろうか」と、紙面の向こう側にいる読者の姿を想像しながら調整する必要がありました。
ブログであればそれぞれの記事が独立していてもいいのですが、書籍では一本の背骨を通す必要があるのもまた難しさの1つです。ある程度つまみ読みすることも想定はしていますが、やはり最初から最後まで読み通す読者を想定して作ることになります。
その「背骨」をどう定義するかが、今回の執筆で一番悩んだポイントでした。コミュニティの理論はたくさんありますし、現場の事例も山ほどあります。その中から、「経営にとって本当に本質的なポイントはどこか」「今の日本の企業をとりまく市況や社会情勢の中で、何を強調すべきか」を整理し、一つのストーリーラインに落とし込んでいく作業は、まさに編集と設計の連続でした。
一番重要なのは、誰を読者と想定するのか、です。ここ次第では書き方や内容がなるっきり変わってきますから。『コミュニティ経営の教科書』は、経営やビジネスにコミュニティを活用する企業が増えてほしいという想いで書くに至っているので、対象は経営層を含めたビジネスの最前線で活動するビジネスパーソンの皆さん。
したがって、専門書のように学術的な厳密さを最優先するのではなく、「忙しいビジネスパーソンが、移動時間や夜の30分で読んでも、何か1つでも得られることを意識しました。一方で、「教科書」と名乗る以上、単なるノウハウ集で終わらないよう、概念の定義や歴史的な流れにも一定の紙幅を割くようにしました。このバランスをどこで取るかは、最後の最後まで悩み続けたテーマです。
読者の皆さんには、この本を読む過程でその抽象的な理論と具体的な実践をインプットしていただき、コミュニティを経営やビジネスに取り入れてほしい。そのための工夫として、コミュニティキャンバスというフレームワークを導入してみたり、物語調でイメージしやすいセクションも加えました。
フレームワークの導入については、「フレームワークがあるからこそ議論が前に進む」という現場での感覚が背景にあります。経営会議や社内のディスカッションの場で、「なんとなくコミュニティが大事そう」というレベルから、「自社のコミュニティの目的は何で、どのステークホルダーを中心に据えるのか」といった一段深い対話へと進めてほしい。そのときに、同じキャンバスを見ながら話せる状態をつくりたい、という願いを込めました。
また、物語調のセクションは、「概念はわかったけれど、明日から何をすればいいのかがわからない」という声に応えるための工夫です。仮想の企業や登場人物を設定し、彼らが試行錯誤しながらコミュニティを立ち上げていく姿を描くことで、読者自身が登場人物と自社の状況を重ね合わせやすくなるように設計しました。
おかげさまで、「コミュニティキャンバスを使ってワークショップをやってみようと思います!」「ストーリーがあるおかげで自社でコミュニティを運営するイメージがふくらんだ」といった反響がありました。
こうした感想をいただくたびに、「フレームワークやストーリーが、現実の組織やチームの会話を少しだけ前に進めるきっかけになっているのだ」と実感し、書き手冥利に尽きる思いです。
全体の一貫性を維持しつつ、こうしたタネや仕掛けをしていくことが、書籍を作っていく上で大切。一冊の本は、単なる情報の寄せ集めではなく、読者との対話のシナリオのようなものだと考えています。どのタイミングで少し息を抜いてもらうか、どこで「うちの会社にも当てはまるかもしれない」と立ち止まってもらうか、そのリズムを整えることが、結果として読み切ってもらえる確率を高めるのではないかと思っています。
チームで磨き上げた「共同執筆」としての一冊
振り返れば、産みの苦しみというのもありました。社内から書籍の原稿にフィードバックを募ったところ100件以上のコメントが寄せられ、それらを整合性を持たせて反映させる作業は困難を極めましたし、出版プロジェクトチームで原稿に赤入れした箇所は合計600箇所ほどになったと記憶しています。コメントの中には、「もっと専門的に踏み込んでほしい」という声もあれば、「専門用語が多くて読みづらいかもしれない」という逆方向の指摘もありました。その両方をどう統合していくかは、まさに「誰のための本なのか」を再確認するプロセスでもありました。
また、言葉のニュアンス一つで、コミュニティに対するスタンスが誤って伝わってしまう可能性もあるため、「この表現は、現場でコミュニティを支えている担当者の方が読んだときにどう感じるだろう」と何度も立ち返りながら、細部まで言葉を磨いていきました。
それはもう大変でしたが、こうしてできあがった書籍が実際に書店に並んだときは嬉しかったですね。書店巡りして書店員さんにOKをもらって撮影してまわりました。
自分の名前が印刷された表紙が、他の著者の方々の本と並んで棚に差さっている光景は、何度見ても不思議な感覚があります。「この棚の前で、どんな人が手を伸ばしてくれるのだろう」「どのタイミングで、この1冊がその人の仕事やキャリアの転機につながるのだろう」と想像しながら、つい長居してしまうこともありました。
本を出すことで、いろいろな方面からお声がけいただくようになりました。一人歩きした本が、いろいろな読者と出会い、その出会いを著者にまでつなげてくれるような現象が起きています。
これから本を手に取ってくださる方へ
まだお手にとっていない方はぜひ、立ち読みでもいいのでまずはページを開いてみてください。本をきっかけにコミュニティを検討するときには、いつでもお声がけいただけたらと思います。
もし実際に読んでくださることがあれば、「どこが刺さったか」「どこが腑に落ちなかったか」をぜひどこかで教えていただけると、とても励みになります。そのフィードバックこそが、次の発信や研究、そして新たな一冊へとつながっていくからです。
『コミュニティ経営の教科書』が、みなさんの組織や事業にとって、「コミュニティをどう位置づけるか」を考えるための一つの伴走者のような存在になれれば、著者としてこれ以上うれしいことはありません。
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