同社の商品ユーザーだけでなく、ヘアケアに関心のある幅広い層を対象に、ヘアケアお役立ち情報やお悩み相談の場を提供しています。同社の施策としては珍しく、ファン招待型のオフラインイベントも開催し、ユーザーとの絆を一層深めることに成功するなど、コミュニティの成果と今後にかかる期待について、CX革新本部の荒岡倫代様とビューティ・パーソナルケア事業部ビューティブランドマネジメント部コミュニティマネージャーの嵯峨亜弓様にお話を伺いました。
パナソニック株式会社
顧客との絆を深め、ロイヤルカスタマーを育む。新たな顧客体験を提供するパナソニックの挑戦




- 概要
- パナソニック株式会社は、「未来の顧客体験」をCXの観点から商品(UX)と顧客体験(CX)を融合した新たな価値創造とユーザーとより密接な関係性の構築を目指し、ユーザー同士が美容の情報を交換し合うコミュニティ「ヘアサプ by Panasonic Beauty(以下、ヘアサプ)」を立ち上げました。
同社の商品ユーザーだけでなく、ヘアケアに関心のある幅広い層を対象に、ヘアケアお役立ち情報やお悩み相談の場を提供しています。同社の施策としては珍しく、ファン招待型のオフラインイベントも開催し、ユーザーとの絆を一層深めることに成功するなど、コミュニティの成果と今後にかかる期待について、CX革新本部の荒岡倫代様とビューティ・パーソナルケア事業部ビューティブランドマネジメント部コミュニティマネージャーの嵯峨亜弓様にお話を伺いました。
- 企画構想
- CX革新本部がリードし、ビューティ・パーソナルケア事業部 ビューティブランドマネジメント部(以下、事業部)と共同で推進
- 運用体制
- ・事業部がコミュニティ企画立案、4名体制で日々の運営を担当
- 導入の決め手
- ・事業戦略に基づくコミュニティ設計提案と充実したサポート体制
・BtoC領域におけるCommuneの豊富な導入事例とノウハウの提供
・コミューン社の組織全体が持つ「サポートする姿勢」への信頼感
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課題
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- 一方通行の情報発信だけでは、顧客と深い接点が作れなかった
- 顧客の生の声やフィードバックを直接収集する手段が限られていた
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活用方法
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- 月間テーマ設定による双方向のコミュニケーション促進
- 商品使用方法や手入れ方法に関する情報共有
- オフラインイベントとオンラインコミュニティの連携
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成果/これからの目標
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- コミュニティ会員様の商品に対する深い愛着と高いロイヤルティの醸成
- コミュニティ内での会員様同士の自発的な交流の活性化
- 顧客の商品に対する意識変革(諦めていた美髪への挑戦意欲の向上)
- 新たな顧客体験(CX)戦略の可能性を見出す
- オフラインイベントの開催によってコアユーザーのファン化を促進
※記載の所属及び記事内容は2025年5月現在の情報です。

パナソニック株式会社
CX革新本部 戦略企画センター
主幹
荒岡 倫代様

パナソニック株式会社
ビューティ・パーソナルケア事業部
ビューティブランドマネジメント部
コミュニティマネージャー
嵯峨 亜弓様
お客様同士が商品の価値を共創する未来を見据えて
貴社の概要とお二人の役割について教えてください。
荒岡様(以下、敬称略):私が所属するパナソニック(株)CX革新本部では、商品体験に加え、顧客体験全てを設計することで総合的な満足度を高めていく活動を担っております。
今回、未来の顧客体験を創造するプロジェクトの一環で、継続的に顧客との接点としてコミュニティの立ち上げを行うこととなりました。様々な商品がある中で、特に美容家電「ナノケア」の「モノ体験」に加え、「コト体験」を通じた愛着・興味関心の増進、他商材や「美」全体へのテーマで展開できるのではないと考え、事業部と共同でヘアケアに関するコミュニティ「ヘアサプ」を設立しました。
嵯峨様(以下、敬称略)私は「食」「家事」「美容・健康」といった人々のくらしに直接かかわる家庭用電化商品を主に扱うパナソニック くらしアプライアンス社の中でビューティブランドマネジメント部でパナソニックビューティの国内マーケティングを担当しています。その中で、コミュニティ立ち上げ後の運営を主に担当しており、お客様との接点を継続的に作る役割を担っています。

未来の顧客体験を創るために、コミュニティが必要だと判断したのはなぜですか。
荒岡:かつては、商品を購入いただいたら、そこでメーカーの役割は完了していたように思います。しかし今後、お客様とつながりつづける関係を築くには、私たちとお客様、またお客様同士の情報交換の場が必要であり、その一つの形がコミュニティだと考えたからです。特に美容の分野では、「美しさを追求したい」というお客様同士で情報を交換しながら商品を選ぶ場面がすでに多く見られるため親和性が高いことが予想できました。
美容商品を担当するビューティ・パーソナルケア事業部も、単に商品を提供するだけでなく、お客様との継続的なつながりを創出したいという想いがあり、コミュニティ立ち上げの提案に賛同してくれました。
戦略に基づくコミュニティ設計提案や支援体制に信頼
コミューンを選んでいただいた経緯をお聞かせください。
荒岡:複数のサービスを比較検討する中で、まずは当社が求めるセキュリティレベルに対応しているかが重要となり、そのうえで幅広いAPI連携が可能かどうかが検討のポイントとなりました。こうした観点から見ると、Communeはコミュニティ内で取得できるデータも多く、連携できるサービスも充実していました。
事業戦略に基づいたコミュニティ設計の提案があり、支援体制が整っていたことも大きかったです。BtoCでの豊富な導入事例、特に同じ美容分野でのコミュニティ運営の実績も参考になりました。最終選考の際、コミューンの代表である高田さん自ら、力強い言葉で全力でサポートする姿勢を見せてくれたことも最終的な決め手になりました。
はじめてのコミュニティ運営に不安はありましたか。
荒岡:率直に言って不安でした。当社のような大きい組織は、きめ細かな対応が求められるコミュニティ運営は得意だとは言えません。そのため当初は試験導入期間として半年間に限定して運用を開始しました。ただコミュニティに加わってくださるお客様が増えてくるとともに、手応えを感じられるようになり本導入に至りました。
美容というジャンル特性上、ユーザーの様々な書き込みが法的な抵触に発展する事態を懸念しておりました。しかし、コミューンさんでは万一の時に備えての24時間の見守りの運営体制や他社で培ったノウハウが整っているため、その不安は払拭されました。
コミュニティの役割として重要なのは、まず熱心なファンが増えることですが、もちろん一朝一夕にはできません。だからこそ、売り上げのような即物的なKPIを設定するのではなく、まずは積極的に発信してくれるアンバサダーと呼ばれる存在の登場を重視しています。
交流を純粋に楽しめる場づくりがお客様から好評
改めて、貴社のコミュニティ「ヘアサプ」の特徴をお聞かせください。
嵯峨:「ヘアサプ」は、弊社商品のユーザーだけでなく、ヘアケアに興味がある方、お悩みがある方など、幅広いヘアケア関心層に開かれたコミュニティです。会員の皆様に積極的に発言いただける環境を大切にしています。
恒例企画として「みんなで髪悩みの月間トーク」と題し、皆さんからテーマを投稿していただいています。投稿いただいたお悩みに基づく発信には、解決方法やアイディアをたくさんコメントいただいています。弊社からも、機器のお手入れ方法など、会員様のお持ちの商品に関する有益な情報を提供しており、そこにも好意的なコメントをいただいています。
また、「弊社運営の人柄」を伝えるような投稿をしているため、運営メンバーにも親しみを持っていただけているのも特徴だと思います。メンバーの仕事風景や日常を紹介するような投稿にも温かい反応が多いです。最近は会員様同士のやりとりにも発展し、心温まる交流が育まれていて非常にありがたく感じています。
日頃のコミュニティ運営で心がけていることはありますか。
嵯峨:コミュニティの場を純粋に楽しんでいただくことを重視しています。メーカーの立場として、商品の宣伝をしたいという気持ちがないわけではありません。しかし、ECサイトのバナー掲載も月に数回程度にとどめ、「売る」を目的にせず、あくまでお悩みに寄り添った商品を「紹介」する形を大切にしています。弊社が伝えたい新商品情報よりも、会員様の声や会員様の求めている情報にこそ価値があると考え、専門家のヘアケア情報や機器の使い方のTIPSなどを中心に紹介しています。

オフラインイベントについても、詳しくお聞かせください。
荒岡:2024年4月に表参道のパナソニックビューティショールーム(Panasonic Beauty OMOTESANDO)に約10名のお客様をお招きして、商品体験と髪のスペシャリストである美容師さんによるノウハウ紹介を行いました。事業部が直接お客様をご招待するイベントは、今回のコミュニティが初の試みでした。事業部の活動を通して見ても、ほぼ前例のない取り組みだと思います。
コミューンさんは、リアルイベントの経験も豊富で、事前準備から当日の運営まで多くサポートいただきました。そのおかげもあり、お客様に大変満足いただき、イベントは大成功でした。
嵯峨:その後、7月に新商品ラインの発表とコミュニティグランドオープンを記念した招待イベント、11月には弊社提供の美容専門番組「BeauTV~VOCE」の公開収録招待イベントも開催しました。両イベントの直後から、コミュニティの内部も非常に活発になった結果、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が約9倍に増え、会員様同士のコミュニケーションの増加にも直結しています。コミュニティに顔見知りができたことで、より投稿しやすくなったという声をたくさんいただいています。
11月の公開収録イベントは、新規会員の獲得を目指し、コミュニティ外でのSNS等での告知を実施した効果で、1週間で100名も会員様が増えるという成果もありました。リソース面の課題もありますが、今後はできればイベント回数を年3回から5回程度まで増やしたいと考えています。
コミュニティがロイヤルティ向上につながっていると実感
コミュニティ運営の成果を感じるのは、どのようなときでしょうか。
嵯峨:商品がとある賞を受賞することとなった際に、私たち以上に会員の皆様が一緒に喜んでくださったり、新聞やニュースなどをチェックして運営より先にコミュニティへ投稿してくださる会員様がいるなど、熱量の醸成を感じられた時です。実際にオフラインイベントでお会いした際には、これほど熱量の高い会員の皆様にご支持いただいているのだということを実感して、感動のあまり涙が出るほどでした。
また、ヘアケアを楽しんでいる様子が投稿やコメントから感じられるときは嬉しくなりますし、弊社や弊社商品へのロイヤルティも確実に高まっていると実感しています。
コミューンのサポートに対する評価をお聞かせください。
嵯峨:カスタマーサクセスチームの親身にサポートする姿勢が素晴らしいと思います。一度、社内からコミュニティの意義に疑問の声が出た際も、他社の事例も含めた資料をまとめて、社内の理解を促すための支援をしてくださいました。この課題解決力の高さは、魅力だと感じています。
荒岡:先ほどもお話したように、すべての投稿内容をNGワードの設定によって24時間365日チェックする機能は、安定運用を担保するうえで非常に助かっています。
一方でコミュニティで課題に感じていることはありますか?
嵯峨:ライト層のコミュニティへの参加をもっと促し、アクティブな会員様の割合を拡大することは、取り組みたい課題のひとつです。ただ、アクティブ化は、無理強いすべきことではないとも考えています。実際に、会員様へインタビューを行うと、「見ているだけでも十分に楽しい」「他の方の投稿にコメントすることで満足している」といった声も聞かれます。数値には現れにくいのですが、個別の満足度やロイヤルティの向上をこれからも大事にしたいと思います。
今後に向けた展望をお聞かせください。
嵯峨:東京以外でもイベントを開催したいですね。また、社内の広報部門など他部署との連携を強化し、ヘアサプを革新的な顧客接点として社内外に発信する活動も進めています。

嵯峨:立ち上げから約1年ですが、これからが本番だと思っています。お客様との継続的なつながりを作り、ロイヤルティを高める手段としてコミュニティの寄与度をしっかりと上げていくことで、社内でもっと「ヘアサプ」がなくてはならない存在となることを目指しています。また、会員様からのご意見や気づきを商品開発にフィードバックすることで、より良い商品作りにもつなげていきたいと考えています。
コミュニティ導入を検討している企業へのアドバイスをお願いします。
荒岡:コミューンさんは、多くの会社のコミュニティ運営実績からナレッジが豊富です。他社事例に基づく数値感やアドバイスは、コミュニティ運営だけでなく、社内への説得材料としても非常に役立ちます。やってみたいけれど社内の理解が得られないという方は、まず相談してみるのがいいと思います。
嵯峨:短期間で成果を求めるのではなく、時間をかけた投資として捉え、一歩一歩進めていくことが大切だと思います。お客様との関係性を築き、認知変容そして行動変容を起こすには当然時間がかかります。ただ、少しずつでも確実に芽は出てきていますので、粘り強く取り組むことをお勧めしたいと思います。
未来の顧客体験を見据えた熱意ある取り組みを、今後も全力でサポートさせていただきたいと思います。今日はありがとうございました!
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