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アドボカシーマーケティングとは? – 0からわかるカスタマーサクセス用語集
2024/07/22
最近注目を集めている「アドボカシー・マーケティング」について解説します。
アドボカシー・マーケティングの定義からメリット、求められるようになった背景と取り組み方や注意点まで、本記事を読むと「アドボカシー・マーケティング」について理解することができます。
目次
アドボカシー・マーケティングとは
「advocacy」は「支持・権利擁護」と訳され、「advocacy marketing」は、顧客からの強固な信頼関係を築くことにより、長期的な利益を獲得するというマーケティング手法を指しています。
日本では、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のグレン・アーバン教授の著書『アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業』(2006年/英治出版)の翻訳本が出版されたことなどから広く普及し始めたといわれています。
アドボカシー・マーケティングのメリット
アドボカシーマーケティングとは、企業が顧客に商品を売り込むのではなく、顧客が自発的に製品について語り、他者に製品を推奨して、実質的に企業と同じようにマーケティングをしてもらう手法です。
企業による言葉よりも、顧客自身による推奨は、企業にとって何にも代えがたい最強のマーケティング効果を持ちます。
目先の利益ではなく本質的な顧客への価値を追求する
「徹底した顧客第一主義」を採用し、顧客にとっての最大の利益を追求することを前提としているため、時には一時的に自社の不利益となるような「他社製品の推奨」をすることさえあります。顧客からの声を真摯に受け止め、常に改善の努力をすることが以前にも増して求められるようになったといえるでしょう。
アドボカシー・マーケティングが広まった背景
インターネットとSNSの普及によって、消費者は企業から発信される情報に頼らない強固な情報網を得ました。それにより、商品情報の詳細を手に入れられることはもちろん、他店との価格比較、購入者やサービス利用者の率直な口コミを調べることも容易です。中には同様の商品をフラットな視点からランキング形式で格付けしているものもあり、企業側がいかに価値を訴えても情報をそのまま受け取られることは少なくなりました。
また、こうしたインターネットの普及によって大きく変化したものの一つにサブスクリプション型のビジネスモデルがあります。かつてはソフトウェアを購入、インストールして買い切ることが一般的だった多くのサービスは、クラウドやアプリを利用する月額課金制へと変化していきました。価値は「所有」から「体験」へと変化し、少額で親密、常に更改・最適化を続ける「伴走型」のサービスへと舵を切りました。
サブスクリプション型ビジネスモデルでは、所有権ではなく利用権を購入するため、一回あたりの売上は少額ですが、契約を続ける限りLTV(Life Time Value:顧客生涯価値。ある顧客から生涯にわたって得られる利益のこと)が上がり続けるというメリットがあります。こうした大きな二つの潮流を受け、「顧客に真に寄り添う」ことが求められるようになったのです。
アドボカシーマーケティングが目指すのはロイヤルティのはしごを上った状態
アドボカシー・マーケティングが目指すのは「顧客ロイヤルティ(関連記事を読む)」が極限まで高まった顧客です。顧客ロイヤルティにはそれぞれ段階があるとされ、これをマーケティング業界では「ロイヤルティのはしご」と呼んでいます。
まず、消費者が自社製品・サービスを選んでくれると、この消費者は「顧客」になります。次に、継続して商品・サービスを選択してくれるようになると、この顧客は「リピーター」に変化します。その後、長期的な信頼関係を築いていくことで、「リピーター」はやがて「サポーター」へと変化していきます。この段階になると、商品やサービスを自分が購入・利用するだけでなく、他者への推薦も惜しみません。そしてさらにロイヤルティが高まった状態になると、自発的に多くの人に企業や商品の魅力を紹介したり発信したりしてくれる存在となっていきます。これがロイヤルティが極限まで高まった顧客です。アドボカシー・マーケティングはこの状態の顧客を増やすことで、自社の支援者を増やしていくという考え方に基づいています。
顧客ロイヤルティの測定
顧客ロイヤルティを図る指標として、「ネットプロモータースコア(NPS)®」などが知られています。企業に対する信頼度や愛着といった要素を数値化する指標とされ、幅広い業界で採用されています。
具体的には「このサービスを身近な人に紹介する可能性はどのくらいありますか?」といった質問項目に対して0~10までの11段階で回答してもらうという手法で、0~6点を「批判者」、7~8点を「中立者」、9~10点を「推奨者」として分類します。
推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値をNPS®と呼んでいます。例えば「推奨者が全体の40%」、「批判者が全体の20%」だった場合は、NPS®=20ptとなります。
NTTコムオンラインの「NPS業界別ランキングトップ企業 2021」(*)によると、NPSの業界平均値は対面証券部門で「−57.9pt」、大手携帯キャリアで「−51.9pt」、人材派遣(BtoB)部門で「−44.4pt」、生命保険部門で「−49.1pt」、クレジットカード部門で「−38.6pt」、アパレルEC部門で「−21.7pt」、ネットスーパー部門で「−19.7pt」などになっています。
これらの数値を定期的に集計・分析することで、改善に役立てていくことも重要です。
*参考:NPS業界別ランキングトップ企業 2021
https://www.nttcoms.com/service/nps/report/ (参照 2021-12-06)
アドボカシー・マーケティングに取り組むステップ
アドボカシーマーケティングを実践するために、どのような取り組みが必要になるのでしょうか。ポイントをいくつかお伝えします。
信頼関係を構築するために重要なアクション
情報の開示
SNSやインターネットを通じてあらゆる顧客体験は赤裸々に共有され共感されていく時代です。従って最も重要なことは、情報の透明性となります。メリットだけでなくデメリットも正直に伝えることが重要で、他社製品も踏まえてどの製品を購入することが顧客の利益に資するかを真剣に考えて情報を提供することが必要になってきます。そこで一時的に他社製品に流れて失った利益は、この取引で培った信頼によって「次の取引」へと繋げることとなり、この信頼関係に基づいた取引が誰かに共有されることで「別の取引」を生み出すことができます。逆に不利益になる情報を隠したところで、消費者はいつかその情報を手に入れ、真実を知るに至るため、情報を秘匿することは最終的に自社のメリットにはなりません。
価値の創造
価格に見合った価値を提供できているかを常に考慮する必要があります。
常にプロダクトを改善し、サービスの利便性を向上させていくことで、顧客満足度を高めることができます。顧客とともに商品やサービスを作っていくという意識も重要で、問い合わせに24時間体制で即時レスポンスを心がける、クレームをはじめとした消費者のネガティブな意見にも真摯に耳を傾け、改善する努力をすることも必要です。
アドボカシーマーケティングを実施する上での注意点
アドボカシーマーケティングは顧客からの推奨だけでなく、企業の社内連携や社内リソースが得られなければ、効果的なものになりません。自社の経営幹部に対し、顧客からのコメントやフィードバックを共有することで、口コミしたいファンがいることを伝えたり、メリットを理解してもらう必要があります。
また、一過性のものにせず、継続して続けることが重要です。「信頼」や「ロイヤルティ」という長期的な指標を用いることで、継続的な利益の最大化を狙いましょう。
まとめ
消費者の発言力が増した現状は企業にとっては脅威であるとともに、強固な支援者が独自に宣伝活動を行ってくれる可能性も孕んでいるという点で大きなチャンスともいえます。
サブスクリプション型のビジネスモデルが浸透していることからもわかる通り、顧客とは細く長く付き合っていくことが求められる時代です。目先の利益に惑わされることなく、顧客と真摯に向き合い、本当に顧客の利益となることは何なのか、を追求していくことが自社の最大の武器となり、大きな収益を生み出すこととなるでしょう。
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