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カスタマーサクセス
LTVとは?重要視される背景や計算方法、向上のための施策例を解説 – 0からわかるカスタマーサクセス用語集
2024/06/27
様々な社会背景から新規顧客の獲得が難しくなり、既存顧客からの売上を安定 / 拡大させることの重要性が増す中、LTVが注目されています。本記事では、LTVの定義や重要視される背景、計算方法、向上させるためのアプローチ例を解説します。
目次
LTVが重要視されるようになった背景
市場の飽和に伴い新規顧客の獲得が難しくなってきた
日本においては人口減や高齢化などの社会的要因により市場自体が縮小するにつれ、新規顧客の獲得は難しさを増してきており、この傾向は今後も続くことが予想されています。
従来の成長市場においてはビジネスを拡大するためのアプローチとして、新規顧客を獲得することが多くの場面で最適解とされてきました。そのため、新規顧客を獲得するために有効な単発のキャンペーン施策や刈り取り型の広告へ投資することが合理的となるケースが多くなっていました。
しかし近年になって市場が縮小するにつれ、次第に新規顧客の獲得効率が悪化してきています。その中で持続的にビジネスを拡大するためのアプローチとして重要視されるようになったのがLTVです。
LTVの計算方法
LTVには様々な計算方法が存在しますが、ここではビジネスモデルを下記のように大きく2つに分けた上でそれぞれの計算方法をご紹介します。
①サブスクリプションモデル(定期的に売上が発生するモデル)の場合
②不定期に売上が発生するモデルの場合
サブスクリプションモデル
LTVの計算式は、SaaSのようなサブスクリプションモデルのビジネスでは下記のように定義されます。
LTV = ARR ÷ チャーンレート
※ARR(Annual Recurring Revenue:アニュアルリカーリングレベニュー、関連記事を読む)とは、年間経常収益、あるいは年間定額収益と訳され、毎年決まって得られる1年間分の収益(売上)を表す指標です。
※チャーンレート(Churn Rate、関連記事を読む)とは、解約率と訳され、一定期間内にサービスを解約してしまった人 / 企業の割合を表す指標です。
例えば、ARRが300万円、チャーンレートが年次で6%だとすると、LTV = 300万円 ÷ 6% = 5,000万円と計算されます。
不定期に売上が発生するモデル
LTVの計算式は、不定期に売上が発生するモデルでは下記のように定義されます。
LTV = 平均顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間
例えば、平均顧客単価が30万円、購買頻度が1年に7回、継続期間3年の場合、LTV = 30万円 × 7 × 3 = 630万円と計算されます。
LTVと関連する指標
LTVは売上に関する指標ですが、ビジネスを安定 / 拡大させるためにはコスト面も正しく評価する必要があります。ここではコスト面を表す指標としてCAC(関連記事を読む)、そしてLTVとCACから算出されるUnit Economicsという指標についてご紹介します。
CACとは
CAC(Customer Acquisition Cost:カスタマーアクイジションコスト、関連記事を読む)とは、顧客獲得単価と訳され、一人あるいは一社の顧客を獲得するために費やしたコストを表す指標です。計算方法は下記のように定義されます。
CAC = 顧客を獲得するために費やしたコスト ÷ 顧客獲得数
コストには広告費用やセールス / マーケティングの人件費など、顧客獲得に費やしたすべてが含まれます。
Unit Economicsとは
Unit Economics(ユニットエコノミクス)は主にSaaSなどのサブスクリプション型のビジネスにおいて使用される、事業の健全性を示す指標です。計算方法は下記のように定義されます。
Unit Economics = LTV ÷ CAC
事業のフェーズなどにもよりますが、概ねUnit Economicsが3以上になっていれば事業として健全であると評価されます。
利益を最大化するためには
利益を最大化するためには、LTVを最大化すると同時にCACを最小化するアプローチが有効です。
LTVを上げるアプローチ
平均顧客単価を上げる
平均顧客単価を上げられればLTVは向上します。顧客単価を上げるための取り組みとしてはアップセル(関連記事を読む)やクロスセル(関連記事を読む)が挙げられます。
既存の取引がある顧客に対して、より上位の商材やサービスを紹介し乗り換えてもらうことをアップセル(関連記事を読む)と言います。
アップセル(関連記事を読む)が巧みな例として、オンラインストレージの「Dropbox」が挙げられます。2GBまでは無料で使用することができるフリーミアムモデルを採用しており、空き容量が少なくなってきた段階で有料プランへのアップグレードを勧める仕組みとなっています。ユーザーとしては既にある程度サービスを利用し、価値を実感できていることが想定されるタイミングでアップグレードの提案を受けることになるため、スムーズに提案を受け入れることが想定されます。
既存の取引がある顧客に対して、導入済みの商材やサービスとの関連性が高い商材を追加導入してもらうことをクロスセル(関連記事を読む)と言います。
この方法を実践している企業でお手本とも言えるのがAppleです。iPhone、MacBook、iPad、AirPods、Apple Watchなど、様々な製品が用意されています。製品間の拡張性 / 利便性の高さやブランドの魅力に惹かれて、身の回りをApple製品で固めているという人も多いのではないでしょうか。
購買頻度を高める
購買頻度を高めることによってもLTVは向上します。購買頻度を高めるために有効な取り組みとしてはリテンション施策が挙げられます。具体的にはメールマガジンやSNSによる発信はもちろん、ユーザーコミュニティを通じて既存顧客と双方向に交流することが有効です。ユーザーコミュニティを活用したマーケティング手法は、コミュニティマーケティング(関連記事を読む)と呼ばれています。
契約期間を延ばす
継続期間を延ばすことによってもLTVは向上します。「1:5の法則」や「5:25の法則」、そして「2:8の法則」からもわかる通り、既存顧客の維持が利益に大きな影響を与えることはよく知られています。また、それらを実現するためのアプローチとしてカスタマーサクセス(関連記事を読む)が注目されています。
1:5の法則(関連記事を読む)とは、新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるという法則です。新規顧客獲得には既存顧客維持よりも5倍高いコストが必要なので、仮に売上は同額であっても、新規顧客獲得の方が利益率が低くなるということです。
5:25の法則とは、顧客離れを5%改善すれば、利益は25%改善されるという法則です。1:5の法則で触れたように、既存顧客維持は新規顧客獲得よりコストが低いため、顧客離れを少し改善するだけでも利益に大きな影響が出ます。
上位2割の既存顧客によって全体の8割の売上が生まれるという法則です。ビジネスを拡大する上で新規顧客を増やすことはもちろん重要ですが、同時に既存顧客と長く取引を続けるための取り組みをすることで、効率良く収益を上げることができると言えます。
▶︎関連記事を読む <「1:5の法則」「5:25の法則」とは?メカニズムから実用の注意点まで徹底解説!- 0からわかるカスタマーサクセス用語集>
◆カスタマーサクセス
業種を問わず、既存顧客に対して様々な支援を行うカスタマーサクセスという役割が重要性を増してきています。カスタマーサクセス施策を通しビジネスを拡大するという視点で意識したいのは利益率ですが、そのためには顧客ごとに濃淡をつけた上で施策を進めることが重要となります。
CACを下げるアプローチ
CAC(関連記事を読む)を下げるための取り組みとしては、広告費用を適正化することと、セールス / マーケティングリソースを最適化することが挙げられます。
広告費用を適正化する
◆CPAを圧縮する
CPA(Cost Per Acquisition:コストパーアクイジション、関連記事を読む)とは、CACと同じく顧客獲得単価と訳されますが、指標としての意味は異なります。CACが一人あるいは一社の顧客を獲得(受注)するために費やしたコストの総量を表すのに対し、CPAは一人あるいは一社のリード(コンバージョン)を獲得するために費やした広告費用を表す指標です。計算方法は下記のように定義されます。
CPA = 広告費用 ÷ コンバージョン数
CPAを圧縮することで、予算内でより多くのコンバージョンを獲得できるようになります。
◆オーガニックチャネルを強化する
広告費用を適正化するためには、CPA圧縮と並行してオーガニック(非広告)チャネルでのコンバージョン獲得施策を進めることも重要です。オーガニックは広告と比較すると即効性に欠けますが、広告費用がかからないというメリットがあります。長い目で見るとやっておくべき施策と言えるでしょう。
◆広告費用自体を削減する
CPAが圧縮でき、オーガニックチャネルも育ってくると、いよいよ広告費用自体を削減することも選択肢に入ってきます。広告費用はコスト全体に占める割合が大きい場合が多いため、広告費用を削減することでCACも大きく下がることが期待できます。
セールス / マーケティングリソースの最適化
◆CRMとは
CRM(Customer Relationship Management:カスタマーリレーションシップマネジメント、関連記事を読む)の略で、顧客管理システムと訳されます。 CRMは既存顧客や見込み顧客の情報を一元的に記録 / 管理するためのツールです。顧客との関係性を構築し、より良好な関係へと発展させるために有効です。
従来は各営業がそれぞれに担当顧客を持ち属人的に対応するスタイルが主流でしたが、これは組織全体の営業効率の観点で望ましい状態ではありませんでした。
具体的には顧客への対応漏れ / 遅延が発生したり、属人化している案件に対してマネージャーが適切なマネジメントやサポートを行えないがために、本来であれば受注し得たはずの案件が受注できないというような機会損失が発生しやすい構造になっていたのです。
CRMを適切に活用することで上記のような機会損失を減らすことができるようになり、セールス / マーケティングリソースが最適化、圧縮されることで、CACも下がることになります。
おわりに
今回は、これからの時代に意識すべき指標としてLTVをご紹介しました。
今後、新規顧客の獲得がますます難しくなっていき、既存顧客からの売上を安定 / 拡大させることの重要性が増していきます。そのために有効な施策「コミュニティマーケティング」の実施をサポートするため、弊社ではコミュニティサクセスプラットフォーム”Commune”を提供しております。
LTVと関連して、「ロイヤルユーザーを増やすには… 知っておきたいファンマーケティングとは?」の資料を以下のフォームからダウンロードいただけます。ぜひ、ご参考にしてください。