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ファンマーケティングを成功させるソリューション選び。活用戦略から事例まで

2025/05/21

ファンマーケティングを成功させるソリューション選び。活用戦略から事例まで
コミューン編集部

コミューン編集部

ファンマーケティングとは、ユーザーを単なる顧客ではなく“ファン”として巻き込み、共感とロイヤルティを育むアプローチです。
 
SNSとオンラインコミュニティの浸透によって、企業と消費者が密接につながる現代になりました。口コミやレビューが瞬時に拡散する環境では、熱心なファンの推奨がブランド信頼度や売上を大きく左右します。ファンマーケティングの利点は、中長期的な安定売上だけでなく、自発的な口コミ拡散や商品開発に直結するリアルなフィードバックが得られる点にもあります。
 
しかし、採用すべき施策やツールは企業規模や目的によって大きく異なります。本記事では、ファンコミュニティの立ち上げ手法とユーザー共創の実例を軸に、最新ファンマーケティングソリューションを選ぶ際の視点と成功の秘訣をわかりやすく解説します。

ファンマーケティングとは何か

ファンマーケティングとは、ファンを主役に据え、ファンとの継続的な接点やコミュニティを通してブランド愛を育む手法です。

企業が一方的に発信するだけでなく、ファンが主体的に参加してコンテンツを作り上げる・発信する点が特徴です。SNSの普及や口コミサイトの活性化など、デジタル社会がさらに進化するなか、この手法はいっそう注目されています。

従来型マーケティングとの比較

従来のマーケティングでは、「ターゲット顧客」を大量に集めて広告で訴求し、購入してもらうことまでがゴールとされがちでした。ファンマーケティングでは「既にブランドを愛するファン」に焦点を当て、ファンがファンを呼ぶ仕組みづくりをデザインします。これにより、限られた広告予算でも大きな効果を生み出す可能性があります。

ファンがブランドにもたらす価値

ファンは、単に繰り返し買ってくれる顧客ではありません。

  • 口コミを拡散するSNSやコミュニティで商品やサービスを推奨し、自然な口コミを増やしてくれる
  • 商品開発に協力するファンコミュニティを通じてアンケートや座談会などに参加し、改善点やアイデアを提案してくれる
  • イベントへ積極的に参加するファンイベントやオフ会などを開催すると、高い熱量で盛り上げてくれる。
  • 他の顧客をファン化する既存ファンが周囲を巻き込むことで、新規ファンを自然に増やせる。

ファンを巻き込む重要ポイント

ファンマーケティングを成功させるには、以下の3つのポイントが必須です。

  1. “売り込み”より“巻き込み”
    強引に物を売り込むのではなく、ファンが自発的にブランドへ協力したくなる仕掛けが重要。
  2. コミュニティの活性化
    ファン同士が交流し、情報や感動を共有する場を整備することで、ブランドに対する愛着が高まる。
  3. 継続的なコミュニケーション
    短期キャンペーンだけに頼らず、定期的にイベントやオンライン企画を打ち出して、飽きさせない仕組みを作る。

ファンマーケティングに役立つソリューション

ソリューションの主な種類

ファンマーケティングには、さまざまなソリューションやプラットフォーム、サービスが存在します。ここでは代表的な4つのカテゴリを紹介します。

  1. コミュニティ構築型プラットフォーム
    独自のコミュニティサイトやファンクラブを構築し、ファン同士が交流できるようにするSaaS型サービス。ユーザー投稿やチャット、バッジ機能、ランキングなどさまざまな機能を備え、ファン育成を支援する。
  2. SNSキャンペーン支援ツール
    TwitterやInstagramなどのSNSでフォロワーを増やすためのフォロー&RTキャンペーン、投票、ユーザー投稿企画などを手軽に運用できるツール。ハッシュタグの追跡やリーチ測定など分析機能を提供する。
  3. メール/アプリ/LINE連携型ソリューション
    アプリ会員向けのプッシュ通知やLINE公式アカウントを活用した顧客とのコミュニケーションを強化するツール群。クーポン発行やアンケート、ゲーミフィケーションなど多彩な機能を備える。
  4. UGC(ユーザー生成コンテンツ)活性化ツール
    ユーザーが投稿する写真や動画、レビューを収集・分析し、自社サイトやSNSで二次利用できる。ファンを巻き込みつつ、視覚的にもインパクトある宣伝が可能。

ソリューション選定のチェックリスト

数多くのファンマーケティング向けツールやソリューションが存在する中で、どれを選ぶべきか悩む企業も多いでしょう。選定の際は、以下のチェックリストを意識することが重要です。

  1. 目的と機能のマッチ
    コミュニティ強化に注力したいのか、SNSでフォロワー拡散を狙いたいのかなど、目的によって必要な機能が異なります。自社が重視する機能にどれだけ対応しているかを比較検討する。
  2. 分析レポート機能
    KPIを追いかけるうえで欠かせないのが、データの可視化とレポーティング機能。ファンの行動履歴やエンゲージメントを計測し、施策効果を分析しやすいサービスを選ぶとよい。
  3. ユーザビリティとカスタマイズ性
    運用担当者にとって使いやすい管理画面であること、また必要に応じてデザインや機能の拡張が可能かも重要。自社の状況に合わせて柔軟に調整ができるか確認する。
  4. 導入コストとROI
    導入費用や月額利用料はもちろん、運用にかかる人的コストや学習コストも含めて試算が必要。ROIを説得力ある形で社内に提示できれば、長期的投資として納得を得やすい。
  5. サポート体制
    ファンマーケティングは長期的に運用するほど効果が期待できる。そのため、導入後のサポート・コンサルが充実しているかも大切なポイントとなる。

ソリューション導入前に整理しておくべきこと

ツールを導入する前には、自社内で以下の準備をしておくとスムーズです。

  • “ファン”の定義を明確化するどの顧客層を「ファン」と見なし、どう育成・アプローチしていくかをチームで認識合わせしておく。
  • 目標設定(KPI/KGI)を策定するフォロワー数やエンゲージメント率、LTV(顧客生涯価値)向上、リピート率など、具体的な測定指標を決めておく。
  • 運用体制の確認:ファンとのコミュニケーションは継続的に行う必要があるため、担当者や運営手順をしっかり固めておく。

ファンマーケティングの成功事例 ~国内外の活用ケース~

サントリー「ほろよい部」のファンマーケティング

サントリーの低アルコール飲料「ほろよい」は、発売から15年以上経った現在も若年層やお酒が苦手な層に支持されるロングセラーブランドです。同ブランドではファン参加型のSNS戦略として、公式X(旧Twitter)アカウント名を「ほろよい部」とし、SNSネイティブ世代を巻き込む姿勢で運用しています。

具体的にはGIFゲームやキャッチコピー募集など、ユーザー参加型のコンテンツを頻繁に投稿し、ファンとの継続的なコミュニケーションを図っています。また、ハッシュタグを付けていない一般ユーザーの投稿にも公式がコメント付きRT(リツイート)するユニークな施策により、ファンは企業に見てもらえた喜びやブランドとの距離の近さを感じます。

その結果、ファンは公式からのRTを期待して自主的に投稿するようになり、キャンペーンに頼らずともUGC(ユーザー生成コンテンツ)が活発化する好循環を生んでいますこうしたファンとの双方向のやり取りによってブランドへの愛着が高まり、口コミ効果も広がりを見せています。

■関連記事:
ターゲット年齢の戦略的高年齢化とTwitterUGC促進が得意な『ほろよい』(リンク

カゴメ「&KAGOME」ファンコミュニティの成功事例

食品メーカーのカゴメは、自社商品の熱心な愛用者と長期的な関係を築くため、2015年4月にファンコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を開設しました。背景には全売上の3割を支えていたコアファン(顧客全体の約2.5%)の存在に着目し、彼らのロイヤリティ強化を図る狙いがありました。

同コミュニティでは会員数拡大自体を追わず、「既存顧客との着実なファン化」を重視する戦略が取られています。実際、派手な会員募集キャンペーンは行わず、既存の接点(自社メルマガや店頭など)から地道に参加者を募りました。

サイト上ではレシピ投稿や商品のアイデア共有、スタッフによるコンテンツ発信、「トークルーム」での自由交流などを展開し、ファン同士・企業との双方向の対話を促進しています。さらに工場見学ツアーやキッチンイベント等のオフライン施策も実施し、オンラインコミュニティと連動させることでファンとの絆を一層深めました。

こうした取り組みの結果、&KAGOMEは開設当初50~60代中心だった参加層が現在では30代まで広がり、会員数も約3万人規模に成長しています。アクション率(一人当たりの投稿・反応率)は10%を超え、ファンからは「カゴメらしさ」を愛する前向きな声が数多く寄せられています。

カゴメはこのコミュニティを通じて得られたファンの意見を製品開発やマーケティングに活かし、熱狂的な支持層を着実な売上に結びつけることに成功しています。

川崎ブレイブサンダースのファンマーケティング(Bリーグ)

プロバスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースは、観戦体験以外でのファンづくりに挑み、デジタル施策によって熱狂的なファンベースを拡大した成功例です。

2018年頃、同クラブのホームゲーム平均入場者数は約3,700人まで伸びていましたが、アリーナ定員5,000人を満たすには至らず、更なる集客には新たなアプローチが必要とされていました。そこで川崎ブレイブサンダースはSNSやオンライン媒体を駆使したファンエンゲージメント戦略を展開。具体的には、YouTubeやTikTokなど計6種類のSNSで情報発信を強化しつつ、以下のような施策を実施しました。

  • X(旧Twitter)で試合のリアルタイム実況や練習前の様子を配信

  • 選手とファンが直接対話できるオンラインサロン(会員制交流企画)の開設

  • 日々の練習風景や選手同士・スタッフとの裏話、監督の想いなどをライブ配信で共有

試合がない日やオフシーズンでもファンとチームが身近に繋がる機会を増やしたことで、ファンの熱量は大きく高まりました。その結果、2019-20シーズンのホーム戦平均来場者数は4,732人とリーグ全体で2位となり、ほぼ毎試合を満員にすることに成功しました。さらにコロナ禍で入場制限があった2020-21シーズンも平均2,353人を動員し、この年リーグ1位の集客力を記録しています。

■関連記事:
ファンをつくる、川崎ブレイブサンダースのSNS戦略(リンク

再春館製薬所「ドモホルンリンクル」ファンコミュニティ

基礎化粧品「ドモホルンリンクル」を展開する再春館製薬所では、顧客一人ひとりとの絆を大切にする企業理念のもと、熱心な愛用者が交流できる公式ファンコミュニティを立ち上げました。コミュニティ運営にはファンコミュニティプラットフォーム「commune(コミューン)」を活用しており、オンラインとリアル双方でファン体験を充実させている点が特徴です。

具体的な施策としては、全国各地でファン同士や社員と交流できるお客様交流会(オフ会)を開催し、それらリアルイベント参加者や地方在住のファンが継続的につながれる場としてオンラインコミュニティを連動させました。コミュニティ内の構成は「イベント」「お知らせ」「フリートーク」の3つに絞ったシンプルな設計とし、ユーザー同士が気軽にコミュニケーションできるよう工夫されています。

また、コミューン社から提示された「ファン同士の対話で熱量を高める場」というコミュニティビジョンが自社方針と一致し、単なるツール提供に留まらない伴走支援によって円滑な運営が実現しました。こうした取り組みの成果は顕著で、コミュニティ開始後は新規顧客の紹介数やギフト購入数が前年の2倍に増加し、SNS上のポジティブな口コミも拡大しました。

ファンコミュニティ上で可視化されたファンの熱い想いは社内にも共有され、誕生日のお祝い企画などでは参加者から感動の声が相次ぐなど大きな盛り上がりを見せています。再春館製薬所の事例は、リアルとオンラインを融合したファンマーケティングにより顧客ロイヤルティと紹介促進を成功させた好例と言えるでしょう。

ファンマーケティングを成功させるKPIと運用ポイント

5-1. KPIの設定例

ファンマーケティングでは、従来のマーケ指標だけでなく、ファン特有のエンゲージメント指標を追う必要があります。代表的なKPIは以下のとおりです。

  • エンゲージメント率SNS上のいいね数、コメント数、シェア数、フォロワー増減など。
  • ファンコミュニティのアクティブ率コミュニティサイトのログイン数、投稿数、滞在時間。
  • LTV(顧客生涯価値)リピート購入頻度、定期購入継続率など。
  • NPS(ネットプロモータースコア)顧客が自社を他者に薦める意向がどれくらい高いかを測定する指標。

ファン施策の目的に合わせて、具体的な数値目標を設定することが大切です。例えば、「1年後までにコミュニティ内の月間アクティブユーザー数を5,000人にする」「SNSキャンペーンでフォロワーを5万人に増やす」など、数値化によって進捗をモニタリングしやすくなります。

5-2. 成果測定と改善のサイクル

ファンマーケティングの特性上、短期間で劇的に売上が伸びるケースは限られます。むしろ1~2年以上の長期視点で運用し、徐々にファンを増やしていく仕組み作りが王道です。そこで重要なのが、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)の確立です。

  1. Planファン施策の目的とKPI設定を明確化。
  2. DoSNSキャンペーンやイベント、コミュニティ運営を実践。
  3. Check設定したKPIをもとに成果を分析。ユーザーアンケートやエンゲージメント率、購買行動などを把握する。
  4. Act効果の高い施策は強化し、劣後した部分は改善策を立案する。

5-3. 継続運用のためのリソース確保

ファンコミュニティを盛り上げるには、日々の投稿対応やイベント企画、ユーザーとの対話が欠かせません。企業規模に応じて、以下のような運用体制を検討しましょう。

  • 専任担当者の配置コミュニティマネージャーやSNS担当者が必要。
  • 外部パートナーとの連携運用ノウハウやクリエイティブ支援を外注し、社内リソースを補う。
  • ユーザー参加型運営:熱量の高いファンを「アンバサダー」や「モデレーター」として任命し、一部の運営をファンに任せる手法もある。

よくある課題と失敗を回避するコツ

6-1. 短期的に成果を求めすぎる

ファンマーケティングは「一度のキャンペーンで売上が急増」という類の施策ではありません。短期的に成果を求めすぎて投資をやめてしまうと、せっかく育ちかけたファンコミュニティが崩壊しかねません。中長期視点でROIを捉え、徐々にファンの数と熱量を高める姿勢が必要です。

6-2. ファン視点をないがしろにする

企業都合ばかり押し付けるような内容(セール情報のみの発信、自己満足のキャンペーンなど)では、ファンは興味を失いやすいです。ファンのニーズや楽しみを優先する「巻き込み型」の企画を意識し、定期的にファンの声を吸い上げるアンケートや座談会を行うことが大切です。

6-3. コミュニティが排他的になる

既存ファンが古参化しすぎると、新規ファンが入りづらい空気になることがあります。こうなるとコミュニティの拡大が止まり、内輪感ばかりが高まってしまうリスクが。新規ユーザーにも気軽に参加してもらえる導線や歓迎ムードを整備し、定期的に運営方針を見直すことで、コミュニティをオープンに保ちましょう。

6-4. 運営担当者の疲弊

ユーザー数が増えるほど問い合わせや要望も増え、運用担当者が疲弊するケースも。自社のリソースを考慮したツール選定と運用体制づくりが必要です。また、先述したように熱心なファンに協力を募る方法も有効です。

ファンマーケティングは、ブランドと顧客が互いに価値を高め合う共創型の取り組みです。

SNSへのコメント返信やライブ配信といった小さな接点でも、双方向コミュニケーションを続ければ熱量が循環し、推奨行動が自然に広がります。まず既存顧客やフォロワーをライト・ミドル・コアに分類し、誰に何を届けるかを再定義しましょう。

次に、クローズドコミュニティ構築かSNS拡散かという目的に合わせ、最適なプラットフォームを選定して導入計画を立てます。そしてエンゲージメント率・LTV・NPSなど長期指標を設定し、週次・月次で確認しながらPDCAを回してください。その際、UGCを公式コンテンツ化し、ファン同士が語り合える場を用意すると効果が加速します。

さらにブランドのストーリーを明確にし、ベータ版先行体験や限定グッズなど特別な機会を提供すればロイヤリティが飛躍的に向上します。小さな成功を積み重ねれば、ファンはやがて最強の広告塔となり、ブランドとともに成長してくれるでしょう。

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