イベントレポート
社内コミュニティ
トリドールが挑む、EXとCXの連続的成長モデル。「ハピ→カン!コミュニティ」が生んだ“信頼起点経営”
2025/11/07

2025年秋に開催された「Biz/Zine Day 2025 October」では、トリドールホールディングス様(以下、トリドール様)と当社コミューンが登壇し、「従業員体験(EX)を軸にした経営変革」をテーマにセッションを行いました。登壇者は、トリドールホールディングス ハピカン推進部 部長代行の成宮徹氏と、当社 Commune for Work事業責任者の髙原颯起です。
トリドール様は、丸亀製麺をはじめとする20ブランド・約2,000店舗を世界29の国と地域で展開するグローバルフードカンパニーです。国内だけでも、11ブランド・約1,100店舗を展開し、店舗スタッフを含めた従業員数は約4万人にのぼります。
飲食業界においては、全国に点在する店舗で日々感動的な接客や仲間を支える行動が生まれている一方で、それらが他店舗や他ブランドに共有されにくいという課題がありますが、多様な人材とブランドを抱えるトリドール様においても同様でした。
現場で生まれる価値が“つながらない”という構造的な課題を解決し、従業員一人ひとりの心理的エネルギーや内発的動機を働く人の幸福と事業成長の源泉に変える――その挑戦を支える仕組みとして、当社の「Commune for Work」を活用いただいております。
本レポートでは、イベント当日を振り返り、全従業員が理念を体感しながらつながる新たな場づくりについて解説いたします。(編集:澤山モッツァレラ[コミューン株式会社])
社内SNS、「雑談だけ」になってませんか?
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- 日報・雑談までは根づいたが、ナレッジや学びに繋がらない
- EXの盛り上がりを、業績や店舗改善まで結びつけられない
- ログインはされるが、「見て終わり」
- 拠点やブランドをまたいだ“斜めのつながり”を増やしたい
Commune for Work は、社内SNS・全社ポータル・ナレッジ基盤を一体で構築し、EXとCXが連続して高まる「信頼起点経営」の土台をつくります。
Commune for Work は、社内SNS・全社ポータル・ナレッジ基盤を一体で構築し、EXとCXが連続して高まる「信頼起点経営」の土台をつくります。
目次
経営思想の変遷──「感動経営」から「心的資本経営」へ
トリドール様は、これまで「食の感動でこの星を満たせ」というスローガンのもと、顧客体験(CX)の向上を企業理念の中心に据え、感動を提供する“感動経営”を推進されてきました。五感に訴える店舗体験や、人だからこそ提供できる接客サービスを通じて顧客に感動を届ける。その姿勢は、創業以来一貫しています。
しかし、成宮氏は「顧客体験だけを中心にしても、事業の成長には限界がある」と語ります。お客様に感動を届けるには、まずその感動を生み出す従業員が幸せであること。「店舗で働く一人ひとりが、仲間やお店、そして自分の仕事に誇りを持てる状態をつくることこそが、持続的な成長の条件だと気づいた」といいます。
この考えのもと、同社が新たに掲げた方針が「心的資本経営」です。人の“心”を資本とみなし、従業員の心理的エネルギーやモチベーションを測定・育成・活用していくことで、企業の持続的成長を実現しようという考え方です。成宮氏は「一人ひとりの成長が店舗の成長となり、やがて事業の成長につながる。その好循環を経営として仕組み化したい」と語りました。
具体的には、働く人の幸福(ハピネス)を構成する4つの要素「安心感」「つながり感」「貢献実感」「誇り」に着目。これらを高める職場文化とコミュニケーション施策を設計し、「会社が好き」「お店が好き」「仲間が好き」といった前向きな感情の連鎖を生み出すことを目指しています。
この4つの要素が満たされる状態こそ、従業員の幸福が持続する基盤であり、企業文化の原点であると位置づけています。成宮氏は「この4要素をアプリの設計思想に落とし込み、従業員が自然にポジティブな気づきや発信を行えるよう工夫した」と語りました。
髙原は「CXを支えるのはEX。企業と人との間に信頼があるからこそ、感動は持続する。トリドール様の挑戦はまさに“心を資本に変える経営”の実践例ですね」と振り返ります。“顧客に感動を届けるために、まず従業員を幸せにする”――トリドール様の経営思想は、確実にその軸足を内側へと移しつつあります。
「ハピ→カン!コミュニティ」誕生──4万人をつなぐ“心のインフラ”
2024年7月、トリドール様は当社の「Commune for Work」を活用し、全従業員を対象とした社内SNS「ハピ→カン!コミュニティ」を正式に立ち上げました。対象は、正社員・パート・アルバイトを含む約4万2,000名。全国1,100を超える店舗をつなぎ、理念「ハピネス感動経営(ハピカン)」を体感的に浸透させるための“心のインフラ”として機能しています。
※「心的資本経営」は、社内ではよりキャッチーに「ハピカン」と呼ばれています
コンセプトは「ハピネス(幸福)→KANDO(感動)=ハピ→カン!」。単なる事務的な情報共有の場ではなく、「従業員一人ひとりが、ハピネスと感動を循環させる場所」を目指しました。成宮氏は「店舗やブランドを越えて“人と人がつながる実感”を持てる仕組みをつくりたかった」と語ります。
特徴的なのは、業務モードを離れた“心のゆとり”を感じられる設計です。Teamsなどの業務連絡ツールとは異なり、スマートフォンでいつでも気軽に使えるUI/UXを採用。個人がプライベートSNSのような感覚で発信やリアクションができるよう設計されています。投稿画面やアイコンデザインなども、トリドール様らしい明るさと温かみを大切にし、見るだけで少し前向きになれる世界観を意識したといいます。
髙原は、「グローバルブランドとしてのスケール感と、現場で働く方々の親しみやすさ。この両方を同居させる世界観を設計しました」と振り返ります。“心の距離を縮める社内SNS”。 ハピ→カン!コミュニティは、単なるツールではなく、働く人の幸福を企業文化として育てるための基盤として誕生したのです。
投稿がつなぐ「ハピネスと感動」──社内SNSのリアルな熱量
「ハピ→カン!コミュニティ」では、6つの主要トークルームが設けられています。
まず「社長日記」では、代表・粟田氏が日々の学びや出店エピソードを発信。創業時の想いや現場への感謝、海外出店の裏側などが綴られ、経営層の言葉を“日常の声”として従業員が直接感じ取れる場となっています。
次に「ハピネスルーム」。ここでは、誕生日会やチームでの取り組み、仲間を助けたエピソードなど、店舗で生まれる“心温まるエピソード”が共有されます。投稿の多くは写真付きで、感謝や笑顔にあふれた内容ばかり。日常の喜びや幸せが次々と可視化されていきます。
「KANDOルーム」では、お客様から寄せられた感謝の言葉や、トリドール社内外での「感動体験」に関する事例が共有されます。日々社内の素晴らしい接客事例や、海外の先進的な顧客体験事例などを目にすることで、「感動創造」の共通イメージを持つことにつながります。
さらに、社内ニュースや社員インタビューをまとめる「TORIDOLL Times」も人気のルームです。創業40周年イベントの様子や新たな挑戦を紹介する記事が投稿され、「自分の会社がどんな未来を描いているか」「どんな従業員が働いているのか」を実感できる情報発信の場になっています。
そして「なんでも掲示板」や「ブランドルーム」では、自由な意見交換やブランドごとの交流が並行して行われています。社員とアルバイト、店舗と本社、ブランドとブランド――さまざまな垣根を超えたやり取りが自然に生まれているのが特徴です。
こうした投稿には、「いいね」や40種類以上のスタンプでリアクションが寄せられ、コメントによる双方向のコミュニケーションも活発に行われています。特に印象的なのは、アルバイトの方が社長投稿にコメントしたり、「丸亀製麺」のスタッフに「コナズ珈琲」や「やきとりとりどーる」の仲間がコメントを寄せるといった“縦・横・斜め”のつながりが当たり前のように生まれていることです――これまで交わらなかった人々の間に、“共感の連鎖”が確実に広がっています。
成宮氏はこう語ります。
「これまで現場の努力は、目の前のお客様には届いても、社内では埋もれてしまうことが多かった。今はそれが可視化され、称賛し合う文化に変わってきています」
日々の投稿が、“ハピネス”と“感動”を結ぶ新たな文化を育てています。
壁を越える──立ち上げ時の苦労と突破口
ハピ→カン!コミュニティの立ち上げは、順風満帆なスタートではありませんでした。成宮氏は率直にこう振り返ります。
「最初は“使ってもらうこと”自体が難しかったです。従業員の年齢層も幅広く、店舗によってITリテラシーにも差がある。さらに、投稿文化がまだ根づいていない中で、“何をどう発信すればいいのか”が分からないという声も多くありました」
同氏によると、初期の課題は大きく3つ。
- 利用促進・定着の難しさ
- 投稿文化の醸成
- 現場との温度差・ITリテラシーの格差
どれも、全国規模で展開する企業特有の壁でした。この状況を打開するために、まず着手したのが「運用ルールの策定」です。
「どんな投稿を歓迎するのか、どんな価値を生みたいのかを、最初にしっかり整理しました。安心して使ってもらえるように“投稿時の心構え”を全員で共有することで、リスクや不安を減らしたのです」
「続いて、社内浸透に向けてブランドリーダーや役員が率先して発信しました」
「顔の見えるメッセージが大事でした。知らない人から『使ってください』と言われても動かない。でも、普段一緒に働いている事業会社の社長やリーダーが『一緒に盛り上げよう』と言うと、現場はすぐに反応してくれる。人が人を動かすのです」
また、リスク対応の仕組みも同時に整備しました。「みんなが安心して発信し、楽しめるようモニタリング体制を構築したことで、投稿の量・質を担保することにもつながっている」と成宮氏は強調します。
現場との距離を縮めるため、ハピカン推進部のメンバーが店舗やイベントに直接足を運ぶことも続けてきました。アプリ操作の説明や成功事例の紹介を通じ、現場に寄り添う姿勢を貫いたことが、信頼形成につながっています。
髙原は、こうしたプロセスを「まさに人の力による変革」と表現します。
「トリドール様の取り組みは、ツール導入の成功事例ではなく、“人が人を動かす”コミュニケーション変革そのものです。テクノロジーはあくまで媒介。信頼を軸にした対話の積み重ねが、文化を作り出していくのです」
ルールと仕組みを整え、人の想いで現場を動かす。トリドール様が越えた立ち上げの壁は、“信頼が文化を育てる”という真理を体現しておられます。
可視化された効果──EXが業績を変えた
ハピ→カン!コミュニティの運用が本格化して1年。トリドール様では、数字の上でも確かな変化が現れています。成宮氏はこう語ります。
「導入当初は、“続けられるのか”という不安も正直ありました。でも今では、社長日記へのリアクションが1投稿あたり平均500件、従業員による投稿・コメントは月間4,000件を超えています。アクティブユーザー数も月1.5万人に達し、全社的に“つながる文化”が根づいてきました」
その成果は、定性的なつながりにとどまりません。
「アルバイトから社員に登用された方が前年比で150%増えました。これは“自分の働く会社が好きになれたから、もっと貢献したい”という意識変化の結果だと思います。さらに、社員の離職率は1.3ポイント、パート・アルバイトは10ポイント以上改善しました」
投稿文化が定着したことで、現場の努力や感動体験が全社に共有され、称賛と学びの循環が生まれています。
「称賛が称賛を生むサイクルができました。現場で起きた小さな善意が、別のブランドや店舗にも波及し、お客様の感動体験にもつながっています」
また、EXの向上が企業全体の信頼や業績にも直結し始めています。
「“お客様からのお褒めの声”の件数は前年比22%増。永年勤続者も正社員で10%、アルバイトでは36%増加しました。現場のモチベーションが可視化され、長く働きたいと思える会社になってきたと感じています」
こうした成果をさらに発展させるため、トリドール様では「ハピネススコア」と「感動スコア」の導入を進めています。従業員エンゲージメントと顧客満足度を統合的に分析し、EXとCXの連動をデータで把握する仕組みです。
数字の裏側には、人の感情と信頼の積み重ねがある。ハピ→カン!コミュニティは、EXの改善が経営成果へとつながることを、確かな形で証明しつつあります。
「学びの場」へ進化する社内SNS
ハピ→カン!コミュニティは、称賛と共感の場から、次のステージへ進もうとしています。今、トリドール様が掲げているのは「学びの循環」を生み出すこと。成宮氏はこう語ります。
「ここまでで“投稿する文化”は根づいてきました。これからは、その投稿から“学びが生まれる仕組み”を作っていきたい。称賛や感謝のストーリーを、現場改善のヒントとして再利用できるようにしたいと考えています」
今後の重点目標は2つ。 1つ目は、ログインユーザー数の最大化です。
「対象は4万2,000人。まずは全員が一度はログイン経験を持つこと。そして、アルバイトも含める全社員の月間アクティブ率を50%まで引き上げるのが目標です。すでに社員のアクティブ率は90%近くまできているため、いかにアルバイトの方に参加していただけるようになるかが課題です。ただ、アプリを開くのが“義務”ではなく“日常””楽しみ”になるような存在にしたいですね」
2つ目は、ナレッジの再活用。
「投稿をただ流すのではなく、現場の成功事例をナレッジ化し、別の店舗でも活かせるようにする。1カ月あたり100件以上の“再利用される事例”を生み出せる仕組みを目指しています」と成宮氏は続けます。
髙原は、この方向性を「ナレッジマネジメントへの拡張」と捉えています。
「ハピ→カン!コミュニティが、称賛や感謝、発見を体系化し、現場の知を共有するプラットフォームへと変わり始めています。働く人のリアルな経験が“学びの資産”として循環することで、組織の成長スピードは確実に上がっていくはずです」
EX×CX=“信頼の資本”を育てる経営
セッションの締めくくりで、髙原はこう語りました。
「EX(従業員体験)とCX(顧客体験)の改善は、別のものに見えて、実は表裏一体です。働く人の内的動機をどう喚起し、ワクワクできる世界観をどうデザインするか――そこに経営変革の本質があります」
トリドール様の取り組みは、まさにその考えを体現しています。従業員の幸福が企業の信頼資本となり、その信頼が顧客の感動体験へと波及していく。ハピ→カン!コミュニティは、EXとCXが連続して作用する“信頼の好循環モデル”を証明しようとしています。
「今では、上司や同僚だけでなく、異なるブランドや店舗のスタッフともつながる関係が自然に生まれています。縦・横・斜め――すべての線が交わるところに、信頼が生まれている。これが現場の原動力になっていると思います」
この“つながりの多層化”こそが、トリドール様の経営の核です。従業員が「誰かに見てもらっている」「誰かに支えられている」と感じることで、称賛が広がり、自己効力感が高まり、次の挑戦が生まれる。人が人を信じる力が、組織のエネルギーとして蓄積されていくのです。
ハピ→カン!コミュニティは、社内SNSという枠を超え、従業員の心と心を結び、信頼を生み出す社会的な装置へと進化しました。 EXとCXを隔てる壁を取り払い、人の感情と経営成果をつなぐ――その試みは、これからの日本企業における新しい経営のあり方を示しているといえるでしょう。
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