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エンゲージメントとは? – メリットから向上させる手法まで徹底解説!

2024/06/27

エンゲージメントとは? – メリットから向上させる手法まで徹底解説!
コミューン編集部

コミューン編集部

「集客はある程度できたが、顧客の定着率が悪い…」「もっと積極的な反応をもらってサービス改善に活かしたい…」「他社の商品だとかなりクチコミされているのに、自社の商品だと…」

このようなお悩みを解決するためには、”エンゲージメント”に注目すると良いかもしれません。

近年、顧客と強い関係を築くことの重要性は、あらゆる業界で指摘されています。しかし、重要だとわかってはいるものの、いまいち本腰を据えて取り組むことができていない企業も多いのではないでしょうか。

今回は、顧客との関係性を表す言葉である”エンゲージメント”について、一から詳しく解説いたします。ぜひ、自社と顧客の親密度を高めるための参考にしてください。

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは、『企業と顧客の関係性(主に親密度や信頼度)』のことです。”エンゲージメントが高い”ということは、その企業に対する親密度や信頼度が高いということを意味します。

「エンゲージメント(engagement)」という言葉は、直訳すると「約束」「契約」「婚約」になります。二者間の関係性、特に強い繋がりを表す言葉ですが、転じて、企業と顧客との間の関係性を示す言葉として使われるようになりました。

エンゲージメントが重視される理由とは

近年、さまざまなビジネスシーンでエンゲージメントの重要性が叫ばれるようになりました。多くの企業が、既存顧客とより長期的な付き合いができるよう、関係性を見直す必要に迫られているのです。

その背景として、以下のような事情が挙げられます。

コモディティ化

コモディティ化とは、市場における競合同士の製品が、機能や品質で差が付かなくなっている状態のことを言います。日本語では「一般化」と言ったりします。

特に成熟社会で起こりやすい現象です。インターネットが普及することで、情報が容易に流通するようになり、各社特有のビジネスモデルや技術が模倣されやすくなります。また、技術的な水準が高まることで、新しい技術を開発してもすぐに追いつかれてしまいます。

現在の日本では、あらゆる産業においてコモディティ化が進行していると言えるでしょう。始まりは洗剤や歯ブラシといった日用品分野でしたが、次第に牛丼やハンバーガーなどの外食チェーンといったサービス分野にも広がりました。21世紀に入ってからは特に顕著で、ITなどのハイテク産業であっても技術の普遍化・汎用化がみられるようになりました。

コモディティ化が進行すると、機能や品質といった面で付加価値をつけることが難しくなり、価格競争を余儀なくされます。海外からの低価格製品の流入は、さらにこの流れに拍車をかけています。日常生活を見渡してみても、「安くて良い」商品が溢れているのではないでしょうか。

こうした状況の中で競合製品と差をつけるためには、エンゲージメントで示されるような顧客との関係性が重要になってくるのです。日本は今後、少子高齢化によりますます人口が減少していく見込みです。市場の伸びがほとんど期待できない状態においては、「新しいお客様に買ってもらう」のと同じくらい「今のお客様に買い続けてもらう」ことが必須になるのです。

購買プロセスの複雑化

インターネットの普及により購買プロセスが複雑化していることも、エンゲージメントが重視されるようになった理由の一つです。

従来であれば、顧客の情報源はテレビや雑誌といったマスメディアがメインであり、購買は必ず実店舗や商談といったオフラインで行われていました。
しかし現在では、顧客は、オンライン広告WebメディアSNSなど多種多様な手段で情報を取得しています。ECサイトの利用も一般的になり、情報収集から検討、購買までインターネットで完結してしまうことも珍しくありません。

購買活動のデジタル化はBtoCのイメージが強いかもしれませんが、実はBtoBでも顕著です。必要な情報は自らインターネットで取得できるので、企業担当者と会う時点ですでに購買意思を決定しているというケースも多いでしょう。

このように企業側の見えないところで購買活動が進むようになったことで、顧客体験(関連記事を読む)に差がつきやすくなったのです。

顧客体験とは、顧客がサービスやプロダクトを知り興味を持ってから、購入後にアフタフォローを受けるまでの全ての体験を意味する言葉です。顧客が商品を購入し使用する間に限定されるものではありません。

オフラインでの接点が一度もないまま商品を購入することが可能になったことで、デジタル上でどれだけ適切な情報を適切なタイミング・手段で届けられているかが、顧客の意思決定に大きな影響を及ぼすようになりました。 また、購買活動のデジタル化が進んだからこそ、逆にオフラインでの顧客体験が際立つようになったとも言えます。

購買プロセスが複雑化したことによって、顧客体験の差が生まれやすくなったからこそ、エンゲージメントを意識する重要性が増しているのです。

ニーズの多様化

顧客がたくさんの情報に触れられるようになった、そしてオンライン上で購買活動ができるようになったということは、すなわち、顧客の持つ選択肢が増えたということを意味します。

例えば、服の購入をイメージしてみましょう。かつては、情報源がテレビ雑誌に限られていましたし、購入するためには実際に店舗に行かなければなりませんでした。なので、アメリカのストリートの流行を知ることは難しかったですし、原宿にしか店舗がないブランドの商品を買える人は限られていました。
しかし、現在では、企業に限らず多くの個人がSNS上で情報を発信しているため、いろいろなブランドや流行を知ることができます。また、ECサイトが発達したことで、足を運べる範囲で商品を選ぶ必要もなくなりました。日本にいながらイタリアの老舗ブランドの商品を買えるようになったのです。

このように顧客の持つ選択肢が増えるということは、ニーズが多様化することを意味しています。手段が豊富にあるのであれば、自分に最適な商品を選ぶようになるのは当然でしょう。

だからこそエンゲージメントが重要なのです。

単純に、良い商品を安く売るだけでは、顧客に振り向いてもらうことが難しくなっています。「〇〇を買うならあの会社」「あの会社の商品なら信頼できる」といった特別な信頼関係を結ぶことで、過酷な価格競争に巻き込まれることなく、顧客に選ばれ続ける企業になることができるのです。

エンゲージメントを高めるメリットとは

リピート率が向上する

エンゲージメントの高い顧客は、他社商品に見向きもせずに自社商品を選択してくれます。多少の価格差があっても関係ありません

市場における競争力の向上は売上増加に繋がり、更なる投資を可能にします。更なる投資は、より顧客体験を向上させ、信頼関係を強化することに繋がり、結果として、さらに競争力が向上するという好循環を生み出すことができるでしょう。

顧客ニーズをより理解できる

エンゲージメントの高い顧客は、自社商品やサービスに対して、積極的に意見を伝えてくれるようになります。信頼度や親密度が高いからこそ、「より良くなるよう貢献したい」という想いが生まれるのです。

なので、アンケートの回答率も高まるのに加え、長く使用しているからこその詳細なレビューも入手できるでしょう。ユーザー会やコミュニティなどで、直接的なコンタクトを取ることもできるはずです。

こうした顧客からのフィードバックは、今後の商品開発やマーケティング施策を決定する上で、非常に貴重な判断材料になります。

口コミによる宣伝を期待できる

エンゲージメントの高い顧客は、積極的にポジティブな口コミを発信してくれます。

同じ立場である第三者からの評価は、商品やサービスに対する印象にとても大きな影響を与えると言われております。 特に、近年はSNSやブログなどが発達したことにより、個人の発信する情報力が格段に大きくなりました。以前であれば家族や知人など周囲の人間にしか広がらなかった口コミが、今では数万人に広まるようになったのです。

つまり、エンゲージメントを高めることは、新規顧客を獲得することにもつながるのです。口コミによる宣伝は広告費がゼロなので、圧倒的なプロモーション力強化につながるでしょう。

似た概念との違い

①:顧客ロイヤルティ

エンゲージメントと似た概念として「顧客ロイヤルティ(関連記事を読む)」が挙げられます。

顧客ロイヤルティとは

顧客ロイヤルティ(関連記事を読む)とは、企業自体やプロダクト・サービスに対する顧客の信頼度や愛着度を示すものです。「Loyalty (ロイヤルティ)」という単語は、忠誠心や愛情を意味します。 ”顧客ロイヤルティが高い”ということは、企業やサービス・プロダクトに対して強い信頼や愛着を感じているということです。

両者とも、顧客と企業との関係性を表す言葉という点は共通しております。では一体どこに違いがあるのでしょうか。

感情か行動か

顧客ロイヤルティ(関連記事を読む)は顧客の”感情”に焦点を当てた概念であるのに対し、エンゲージメントは顧客の”行動”に焦点を当てた概念となります。

この違いは調査方法を見ることで、より理解しやすくなります。

エンゲージメント顧客が実際に起こした行動(購入回数や利用金額、利用頻度)によって測定

顧客ロイヤルティNPS®(ネットプロモータースコア)調査によって測定

NPS®(ネットプロモータースコア、関連記事を読む)とは?

顧客ロイヤルティの度合いを測る指標のこと。
計測方法は、「このプロダクト・サービスを友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいありますか?」と質問し0~10点の11段階で回答してもらう、というもの。
回答者を点数に応じて、「推奨者」「中立者」「批判者」の3つのセグメントに分類し、「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた値がNPS®のスコアになる。


以上のように、顧客ロイヤルティ(関連記事を読む)アンケートを元にして直接的に顧客の愛情や信頼を調べます。それに対し、エンゲージメントは、顧客の行動を元にして愛情や信頼を類推します。

そのため、多くの場合において、顧客ロイヤルティが高ければエンゲージメントも高い(逆も然り)と言えますが、中にはそうでないケースもあります。
例えば、高級スーパーカーなどの場合、購入には至らないもののものすごくファンであるという方もいるでしょう。この場合、顧客ロイヤルティは高いがエンゲージメントは低い、ということになります。
また、高頻度で利用するコンビニがあるが、理由が「近くに他にお店がないから」というものだったとします。この場合は、エンゲージメントは高いが顧客ロイヤルティは低い、ということになります。

②:顧客満足度

もう一つエンゲージメントと似た概念としてあげられるものに顧客満足度があります。

顧客満足度とは

顧客満足度(関連記事を読む)とは、サービスやプロダクト、あるいは認知キャンペーンやアフターフォローといった施策に対する顧客の満足度を示すものです。多くの企業が顧客満足度を重視しており、中には満足度調査を受けたことがあるという人もいるかもしれません。

関係性全体か利用したサービス・プロダクトに対してか

エンゲージメントと顧客満足度との違いは、評価が向けられる対象にあります。

エンゲージメントの場合、企業と顧客の関係性全体を評価します。顧客の行動を通して、その企業に対してどの程度信頼感や親密さを抱いているのか調べるのです。
一方で、顧客満足度の場合、製品や施策に対する満足感を調べます。エンゲージメントと比べ、評価対象がより具体的・限定的と言えるでしょう。

顧客満足度調査の例として、商品購入後に「この商品に満足していただけましたか?」というアンケートが届いたケースを想像してみてください。この場合、調査しているのはあくまで”購入した商品に対する満足感”です。企業全体への評価ではないので、仮に満足度が高かったとしても、次回以降の購入につながるかどうかは未知数です。


このような違いがあるため、顧客満足度は、ある特定の対象についての顧客の感想を知りたいときに有効です。例えば、新商品や限定の販促キャンペーンなど、ピンポイントで施策の評価をしたい場合などです。
エンゲージメントは、企業全体への関係性の評価になってしまうので、新商品や販促キャンペーンに対する具体的な意見を聞くことは難しいでしょう。

エンゲージメントを高めるために

①:前提として必要な認識

エンゲージメントは、顧客体験全体の結果として生まれるものです。

昨今の企業は、顧客と多種多様な接点を持つようになっています。中には、個人のSNSやブログにおける発信、クチコミサイトでのレビューなど、企業側がコントロールできない接点もあるでしょう。これら全ての接点が、エンゲージメントに影響を与える要素だということを認識する必要があります。


優れた顧客体験を提供するザッポス

優れた顧客体験を提供し、高いエンゲージメントを生み出している企業として有名なのがザッポスです。
ザッポスは、アメリカで靴をメインとしたECサイトの運営を行う企業です。顧客体験を何よりも重視した経営方針で、創業10年たらずで売上1000億円を達成し、「Amazon」がどうしても欲しかった企業として約800億円で買収され有名になりました。

送料・返品無料、返品は何回でも可能

例えば、ザッポスでは送料・返品無料で、かつ返品は何回でもできます。多くの方が、靴を買う前に試着し、サイズ感や履き心地を試したいと思うでしょう。通常、ネット販売されている靴を試着することは難しいですが、ザッポスであれば1度に10足もの靴を同時に送ってもらうことが可能です。配送コストはとても重いものですが、最良の顧客体験を提供するためなら必要経費だとザッポスは考えます。

こだわりのWebサイト&翌日配送を可能にする倉庫業務

また、お客様との最初の接点としてWebサイトにもこだわりを見せています。業界最高水準の応答速度を保てるようサーバーチューニングは欠かさず、掲載商品の全てに対して8アングル+動画を撮影し、正確で高品質な情報提供がなされています。
お客様と直接的な接点ではありませんが、商品を保管・管理する倉庫業務も徹底されています。65,000種類もの商品全てに対し固有番号が割り振られ、自律的に最適軌道を走るネットワーク型ロボットが商品を運搬します。これにより、広大な国土を持つアメリカでは商品配達まで数日かかるのが一般的ですが、翌日配送を可能にしています。

感動体験を提供するコールセンター

そして何より、ザッポスの顧客体験へのこだわりを象徴するのが、24時間365日対応のコールセンターです。ザッポスは、一般企業が広告・宣伝に投下している費用を、ほとんど全てコールセンターにおける顧客対応に投下しています。自前で巨大なコールセンターを有し、総勢500名を超える精鋭オペレーターを配置、彼らが日々顧客と丁寧に向き合い感動体験を提供しているのです。

例えば、ラスベガスを旅行していた観光客から、以前ザッポスで購入したお気に入りの靴を忘れてしまい同じものを探している、という連絡が入りました。残念ながら在庫切れだったのですが、担当者は近くのお店に片っ端から連絡を入れ、直接靴を買いに行き、観光客の宿泊先のホテルにまで届けたといいます。ザッポスにはこのような伝説が数限りなく存在します。

エンゲージメントを高めることこそが戦略

このような対応は、多くの企業にとっては過剰だと思われるかもしれません。しかし、ザッポスの場合、「ザッポスで買って良かった」と心から思ってもらい、顧客自身にザッポスを広めてもらうことが戦略であり、哲学なのです。だからこそ、電話を顧客の注意を集められる貴重なブランディングの機会と捉えられており、顧客が喜ぶためなら社員一人一人の判断で何でもして良い、とされているのです。

卓越したカスタマーエクスペリエンスは、たくさんのリピート顧客好意的な口コミを生み出します。ザッポスの場合、顧客のリピート率は75%、新規顧客のうち口コミによる獲得は43%と言われており、間違いなく事業成長の鍵となっています。

ザッポスの社員は、ザッポスのことを「たまたま靴を売っているにすぎないサービスカンパニー」だと考えています。つまり、「顧客の感動体験」こそが売り物だということです。

②:ステップ


カスタマージャーニーマップを作成し、顧客接点を洗い出す

先ほど述べた通り、エンゲージメントは顧客体験全体の影響を受けます。店舗やECサイトでの購買体験だけではありません。商品やサービスを知るきっかけとなるテレビCMや大規模広告、Web広告に始まり、詳しい製品情報を知るため調べたホームページや口コミを調べたSNS、商品の配達フローやアフターフォロー、メンテナンスなど、認知から使用に至るまでの過程全てです。

従って、エンゲージメントを高めるためには、全ての顧客接点を把握し一つ一つの接点における顧客体験を向上させる必要があります。

顧客接点を把握し分析するための有効な手法はカスタマージャーニーマップの作成です。カスタマージャーニーマップとは、顧客の行動思考感情の変化を時間軸に沿って明らかにし、購入までの意思決定のストーリーを顧客視点でたどる手法のことです。

カスタマージャーニーマップを作成するメリットは、顧客視点を得られることです。

商品・サービスを利用し、その価値を判断するのが顧客である以上、顧客視点に立った施策が求められるのは当然のことです。
しかし、実際に顧客視点に立ち「どのような商品・サービスを欲しているのだろうか」とシンプルに考えることは難しいものです。

カスタマージャーニーマップを活用することで、顧客がどのように認知しどのチャネルでどの情報に触れどのような思考で購買に至ったのかを理解できます。全体のプロセスを俯瞰することができるので、顧客の実際の感覚から乖離することなく、チャネルやタッチポイントごとに適切なアプローチを実施できるのです。

顧客接点をデジタル化&徹底的にモニタリングして、データを取得する

カスタマージャーニーマップで顧客接点を洗い出したら、次は各接点における顧客の思考・行動の解像度を上げると良いでしょう。感覚だけでなくデータをしっかりと集めることで、より効果的に顧客体験を向上させることができます。

昨今、インターネットが普及したことによって、よりユーザーの行動データを細かく追跡することができるようになりました。特に、従来は接点を持ちづらかった認知の段階においても、Web広告SNS広告が主流になったことで、定量的に分析することができるようになりました。

顧客を知る上では、直接モニタリングすることも有効な手段です。実際の店舗でのやりとりや、プロダクトを操作している様子などを観察することで、きっと思わぬ発見があるはずです。

また、直接的なモニタリングでなくとも、SNSクチコミサイトの投稿にも多くのヒントが存在しているでしょう。企業と関係のないところでの発信であるほど、顧客の本心が現れやすいと言えます。

真実の瞬間を見極める

真実の瞬間とは、顧客が企業に対して何らかの印象(肯定的・中立的・否定的)を抱くきっかけとなる出来事のことです。

エンゲージメントが高まる瞬間というのは、顧客が企業や商品・サービスに対して感動した時、すなわち真実の瞬間を迎えた時です。

カスタマージャーニーマップで確認したあらゆる接点が真実の瞬間となる可能性があります。真実の瞬間での対応に失敗すると、他の接点においてどれだけの努力をしたとしてもあまり意味をなさず、顧客は2度とその企業の製品・サービスを購入しなくなってしまうでしょう。そして、ネガティブな印象ほど、広まるスピードは早いものです。

「真実の瞬間」という言葉を提唱したのは、1981年にスカンジナビア航空のCEOに就任し、赤字体質に陥っていた同社をたったの1年で再建に導いたヤン・カールソンです。
ヤン・カールソンは、顧客の航空会社に対する印象は、顧客と直接接する最前線の従業員の最初の15秒の接客態度によって決まる、ということを突き止めました。これこそが、スカンジナビア航空における真実の瞬間です。

スカンジナビア航空の例も然りですが、真実の瞬間というのは細かい顧客対応の差異によって決定するということが往々にしてあり得ます。対人のやりとりというのは、それだけ大きな印象を与えるものなのです。

例えば、ある家電メーカーでは、修理対応が真実の瞬間だということを発見しました。担当者の細かいコミュニケーションの有無が、顧客の印象を分ける要因ということが明らかになったのです。
修理が完了するまでに長期間かかってしまうことを伝えたかどうか、期日までに作業が終わらなかった場合それを事前に伝えたかどうか、によってNPS®のスコアに大きな差が出たのです。

大切なのは、真実の瞬間を組織内で共有し、そこに意識を集中させることです。

③:ポイント


ストーリーテリングを意識

ストーリーテリングとは、伝えたいことを物語として語ることで聞き手に強いインパクトを与える手法のことです。

アメリカの認知心理学者であるロジャー・C・シャンクが『観念的に言えば、人は論理を理解するようにはできてはいない。人はストーリーを理解するようにできている』と語っている通り、物語には「人の注意を惹きつけ、感情を動かし、記憶に残る力」があります。
ストーリーテリングの具体的なメリットは以下の通りです。

感情を動かすことができ、印象付けられる

「歴史の教科書をもとに人物や出来事を覚えるのは大変だが、大河ドラマなら一度見ただけで忘れない」という経験に共感できる人は多いのではないでしょうか。
人間の記憶能力には限界があるため、常に情報は取捨選択されています。事実のみの無機質な情報は、重要ではないと判断されることが多いのですが、その一方で人間味のある物語は、聞き手にとっては「体験」であるため、記憶に結びつきやすいのです。

スタンフォード大学経営大学院教授のジェニファー・アーカー教授の研究においても、人間は論理的な事実に比べて物語の方が22倍も記憶に残りやすいとの結果が出ています。
※参考:Harnessing the Power of Stories

ストーリーテリングによって、顧客に強い印象を残すブランディングに成功した例としてあげられるのが、アメリカでオンラインアイウェアショップを展開する「ワービー・パーカー」です。

ワービー・パーカーの創業メンバーは、「旅行先でメガネを失くしてしまい新たに買おうとしたが高価で買えなかった」という体験からメガネ業界の寡占に気づき、『メガネ業界に革命をもたらす』という信念のもと、設立当時95ドルでメガネを購入することができるオンラインストアをスタートしました。

ワービー・パーカーでメガネを購入すると、以下のような短い紹介文がついてきます。

昔々、ある青年が飛行機にメガネを忘れた。彼は新しいメガネを買おうとした。けれど新品は高価だった。

「お金をかけずおしゃれなメガネを買うのはどうして大変なんだろう?」。青年は疑問に思った。学校で友達に話してみた。「かっこいいメガネを手頃な値段で売る会社を作ろうよ」。一人が言った。「メガネを楽しく買えるようにしたい」。二人目が言った。「メガネが一つ売れたら、もう一つは必要としている人にあげよう」。三人目が言った。

それがいい!こうしてワービー・パーカーは誕生した。

一般的な企業紹介と比べて、印象に残りやすいことに頷けるのではないでしょうか。

商品の価値をより深く伝えることができる

ストーリーテリングは、具体的なイメージを喚起できるため、商品価値をより深く伝えることもできます
特に複雑性の高い商品や、前例のない商品などの場合は効果的でしょう。

iPhone発売時のブランディングは好例です。

スティーブ・ジョブズは仕様や機能の詳しい説明、スペックの優秀さを押し出すことはありませんでした。 代わりに、「これまでの携帯電話はキーボードが邪魔だった」「音楽プレーヤーを別に持ち歩かなければならなくて不便だった」と聞き手が共感できる不満を並べた上で、それらを全て解決できる画期的な製品としてiPhoneを紹介しました。そして、「これは電話の再発明だ」という印象的な表現をし、新たな価値観を提示したのです。

これを「パソコンに電話機能をつけたデバイス」と表現していたら、きっとiPhoneの価値は伝わりきらなかったでしょう。
新たな価値観をストーリー仕立てで背景から順に紹介することで、iPhoneならではの特徴や個性を効果的に訴求できたのです。

オンラインでのパーソナライズ化

エンゲージメントを高める上で、パーソナライズというのは大きな武器になります。実生活においても、友人や恋人と長期的な関係を維持するためには、相手の感情に寄り添ったさりげない言葉やプレゼントが大きな効果を発揮するはずです。

これと同じことが企業と顧客の関係についても言えます。テレビCMやラジオCMといった1対N型のメッセージよりも、パーソナライズされた1対1のメッセージの方が、はるかに企業に親近感を抱くでしょう。

現代の企業は、アプリやECサイト、SNSなど顧客と多くのデジタル接点を持つことができます。こうしたデジタル接点における行動履歴を収集し、パーソナライズされた適切なアプローチを取ると良いでしょう。

行動履歴に基づいたレコメンド機能は一般的ですが、ほかにも、顧客のニーズに合わせてメールマガジンを送付したり、誕生日にスペシャルオファーを送ったりといったやり方が存在します。

オフラインでの感動体験

あらゆる接点がデジタル化されていくからこそ、かえってオフラインの属人的な顧客接点の重要度が増しています
インターネットやメディアなどのバーチャルな体験と比べ、オフラインでの体験は、五感をフルに使用するため非常に印象に残りやすくなるからです。

だからこそ、エンゲージメントを高めるためには、来店時の丁寧な接客や、購入後の高品質なアフターフォローを強く意識する必要があります。

オフラインでの感動体験を提供する企業として有名なのが、スターバックスです。店内には、高級感がありつつも落ち着きを感じさせるような空間演出がなされており、高いホスピタリティを備えた従業員が迎えてくれます。注文時におすすめのドリンクを教えてもらったり、ちょっとした会話を楽しんだことがある人も多いのではないでしょうか。

こうしたインテリアを含めた店内の雰囲気や従業員の丁寧な対応が、スターバックスという強力なブランドを作り上げているのです。

顧客とつながり交流する方法は、数十年前と比べて劇的に増加しています。だからこそ、エンゲージメントを高めることが、競合企業との強烈な差別化につながるのです。
そのために、顧客体験を改善し、あらゆる接点において優れた体験を提供するよう意識しましょう。

 

 

顧客のエンゲージメントと関連して、「ロイヤルユーザーを増やすには… 知っておきたいファンマーケティングとは?」の資料を以下のフォームからダウンロードいただけます。ぜひ、ご参考にしてください。

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