多拠点・現場中心の事業では、本部で生まれた情報が現場へ届くまでに時間がかかり、組織内に温度差が生まれがちです。
QB HOUSEの運営母体であるキュービーネットホールディングス株式会社様では、従来の紙の社内報を中心とした社内広報では企画開始から配送までに約2ヶ月半を要し、現場に届く頃には情報鮮度が落ちてしまう課題を抱えていました。
加えて、店舗スタッフの多くがPCやメールアドレスを持たない環境では、情報の抜け漏れや認識のズレが生じやすい構造的な難しさもありました。
こうした課題に対し、同社はスマートフォンを起点に情報と人をつなぐ社内コミュニティアプリ「Qプラ」を導入。店舗スタッフが「今知りたい」情報を「今この瞬間」に受け取れる環境を整え、情報到達までのリードタイムは2ヶ月半から最短1週間へと大きく短縮されました。
さらに、コメントやリアクションを通じて現場の反応が可視化され、オフラインの取り組みや熱量をオンラインへと循環させる運用も回り始めています。
本記事では広報およびQプラ運営に関わる広報担当マネージャー 平山貴之様、広報・Qプラ運営担当 宮城志歩様のご両名にお話を伺いながら、この情報伝達改革がどのように実現されてきたのかを整理します。
紙の社内報が抱えていた構造的なタイムラグ
──キュービーネットホールディングス様は、どのような事業を展開されていますか?
平山様:弊社は、全国および海外に店舗を展開するヘアカットサービスを提供しています。サービス品質の中心にいるのは、現場で働くスタイリストです。国内外に740店舗と、拠点数が多いからこそ、どうやって会社としての一体感をつくるかは常に重要なテーマとして向き合ってきました。
日々の店舗運営という現実に根ざしながら、社員一人ひとりが安心して働き続けられる環境や仕組みづくりにも取り組んでいます。
──そうした事業環境の中で、なぜ紙の社内報から「Qプラ」へ移行されたのでしょうか?
宮城様:以前の社内報は2ヶ月に1回の発行で、企画・取材・撮影・編集・校正・印刷・配送までを含めると、情報が現場に届くまで約2ヶ月半かかっていました。結果、タイムリーに情報が届かず、機会損失につながっていることが少なくありませんでした。
加えて、紙面にはページ数の制約があるため、掲載できる情報は厳選せざるを得ません。丁寧に作り込める一方、「今、伝えるべきことを、今の温度感のまま」届けることには限界を感じていました。Qプラはこうした構造的なタイムラグを解消し、現場にとっての”今”を扱える状態をつくるための選択でした。

──現在の運営体制について、お二人以外にも運営に関わっている方はいらっしゃいますか?
平山様:基本的な運営は、私たち二人が中心になっています。加えて社内イベント「QBフェス」を担当している責任者や、最近関わり始めた人事のメンバーが一部協力してくれている、という体制ですね。
もう少し運営メンバーがいれば、細かいところまで手を入れられるのかなと思うこともあります。ただ広報自体もこの規模で二人体制なので、なかなか簡単に増やせるものでもないんですよね。
宮城様:だからこそ、最近は「どこまでを運営とするか」という線引きを少しずつ変えています。たとえば私がマネージャーに個別でヒアリングをして、「その声を使って次の店長会の内容をQプラに上げてみよう」と決めることもあります。外から見ると運営側が決めたように見えるかもしれませんが、実際には現場の声を拾って反映している形です。

導入後の変化:「反応が見える」ことで改善が回り始めた
──Qプラ導入後、どのような変化を感じていますか?
平山様:大きかったのは、情報が現場に届くまでのスピードです。Qプラ導入後は、カットコンテストの結果なども最短1週間で共有できるようになりました。また、投稿に対するコメントやリアクションが可視化されたことで、反応が継続的に集まる状態が生まれています。
これまでは「読まれているのかどうか分からない」感覚がありましたが、今は現場の反応を実感しながら運用できるようになりました。
──変化の中で、特に印象的だった点はありますか?
平山様:単に情報が早く届くようになっただけでなく、現場の反応がその場で返ってくるようになったことが大きいですね。コメントやリアクションを見ることで、企画の良し悪しが肌感覚で分かり、改善につなげやすくなりました。
さらに、閲覧傾向を分析する中で、現場スタッフが会社の数字、決算の話などにも関心を持っていることが分かりました。「現場は自店の売上以外、数字に興味がないのでは」と思い込んでいた部分もあったのですが、そうではなかった。この気づきは、情報の出し方を見直すきっかけにもなっています。
──その気づきは、運用面にどのような影響を与えましたか?
平山様:決算に関する投稿は、これからも継続的に書いていこうと思っています。あとは、やっぱりもっと巻き込んでいく必要はあるんだろうなと。例えば来年のQBフェスでどんな取り組みをやったらいいと思いますか?といった投げかけをしてみてもいいのかな、と考えています。
業種関係なく、店舗展開をしている企業の店舗スタッフは、会社全体で何が起きているか興味を持ちにくいのが実情だと思います。そうした情報をもっと厚くしていけると、結果的に愛社精神みたいなものも湧いてくるんじゃないかと思っています。
現場を巻き込む設計が、熱量を次へつなげる
──立ち上げ後、現場の反応で印象的だったことは?
平山様:直近では、テレビ東京さんのドラマとのタイアップ企画をきっかけに「何ができるんだろうね」と現場から集める投稿を行ったところ、すぐにコメントが集まり、こちらが想定していないような企画案まで自然に出てきました。反応がまとまって出たことで、運営側も「巻き込めている感」が得られたと言っています。
紙の社内報では”作って届ける”が中心でしたが、Qプラでは”投げかけて返ってくる”が成立します。反応があるから、企画の熱が冷めないまま次の行動へ移れる。ここが、運用の推進力になっています。
宮城様:昨年のQBフェスでも効果を実感しました。イベント当日はYouTubeでの生配信も行っていましたが、現場には「店舗のバックヤードでは、休憩中であっても視聴できない」「音を出せない」といった理由からリアルタイム視聴が難しいスタッフも一定数います。
そこで、会場の様子や進行状況をリアルタイムでQプラ上に投稿したところ、「見ているだけで参加意欲が湧いた」「一緒に参加している気持ちになれた」といった声がアンケートでも多く寄せられました。オフラインとオンラインを掛け合わせるために、WEB化してすごく良かったなと思いましたね。
平山様:もう一つ印象的だったのが、QBフェスで実施した「QBあるある展示」です。「QBスタイリストあるある」は社内報で取り上げたことがありましたが、お客様向けのテーマを扱ったのは今回が初めて。
お客様視点の「あるある」をQプラで募集し、共感できたものにリアクションを残してもらった結果、想像以上に参加者が多かったのです。数字として反応が可視化されることで、「こういう内容にここまで反応があるんだ」という気づきを得ることができました。さらに、選ばれた上位作品をオリジナルのイラスト付きでQBフェスでリアルに展示することでまたQプラにも巻き込む、まさに相乗効果を感じる結果となりました。


「Communeの協力なしでフェスは成立しなかった」
──弊社の支援(伴走)で助かった点はどこですか?
平山様:QBフェスに関しては、御社の支援がなければ成立しなかったと言っても過言ではないです。
宮城様:本当に助かりました。写真を撮るだけではなく投稿までしていただいたこと、事前・事後のヒアリングまで含めて、かなり深く関わっていただきました。弊社の社員と対話し「この情報はどのくらいの温度感で出すべきか」をしっかり掴んでいただけた、とCommuneの弊社担当である佐藤さんから聞いています。
ここまで親身になって関わってもらえるのであれば「もう少しエンジンをかけてやっていきたいな」と思えました。QBフェスに至るまでの過程でも、いろいろな施策を提案してくださって。たとえばトップページのバナーで写真をスライド表示する案などもありました。今回はタイミング的に実現できなかったのですが、今年バージョンの写真もできたのでいずれやりたいなと思っています。
印象に残っているのは、「これ、やりたいな」と私がぽろっと言ったような一言を、すごく早いスピードで形にしてくださる点です。そのスピード感には、本当に助けられています。サポートという意味では、正直申し分ないなと思っています。
──過分なお言葉、本当にありがとうございます。宮城様は、契約企業様の分科会にも参加いただいているということですが、その価値はどこにありましたか?
宮城様:社内コミュニティは性質上かなりクローズドなので、他社の事例を見る機会があまりありません。そうした中、実際に他社の取り組みを知れるという点は大きな価値があると感じています。
もう一つは、人のつながりですね。たまたま世代感や立場が近い方が多く、広報や情報発信の文脈で気軽に相談できる仲間ができたのは、大きな副産物でした。社内にいるだけでは得られなかった関係性だと思います。分科会に参加するたびに学びがあり、その内容を平山へ共有するのですが、興奮が冷めやらずずっと私が喋ってるというか(笑)。「できそう、やってみたい」と思うことが次々と出てくるんですよね。
社内コミュニティが進んでいる先行事例を知ることで、「次の課題はここかもしれない」「今のフェーズではここが大変なのだろう」と、自社の立ち位置を客観的に捉えられるようになりました。フェーズや立場の異なる人たちが交流できる場として、分科会はとても貴重な存在だと感じています。

社内コミュニティ運営で感じている成果
──社内コミュニティ運営の中で、「これは成果だ」と感じたエピソードはありますか?
平山様:全店が40ブロックほどに分かれているのですが、ブロック専用の部屋を作成したことにより、誰がどんなコンテンツを見ているか可視化されるようになった点ですね。これを細かく見ていくことにより、将来的には退職の兆しや、疎外感を感じている人を早めに察知できるのではないかと考えています。
経営層にもこの仕組みは、退職止めにも使える可能性がありますと話したことがあります。疎外感を感じている人が見えてくればフォローすることもできますし、結果として退職を防げる可能性もあると思っています。
やむを得ず退職するケースもありますが、完全に縁が切れるのではなく「退職者の部屋」のような形でゆるくつながりを保ち、将来的に時短勤務などで復帰してもらうといった可能性も考えられると感じています。Qプラには、まだまだ使い方の余地があると思っています。
──今後の活用を考える中で、特に大切にしたい考え方はありますか?
宮城様:最近、マネージャーへのヒアリングの中で「業務連絡だから見てほしい」ではなくて「面白いから見たほうがいい」と勧められる記事があると助かる、という話がありました。
立ち上げから半年ほど、どうしても業務連絡系の投稿が増えてきています。ただ、現場が求めているのはどんな仲間が働いているのか、どんな人が店長になっているのか、どうやってキャリアアップしていくのか、このままこの会社で働き続けていいのだろうかといったことに応える情報だと思います。そうした情報も、もっと届けていきたいと考えています。
Qプラの手軽さを活かして、社員を巻き込んだ簡単な社員紹介も増やしていきたいと思っています。社員の顔が見えて、少しワクワクできる。そうした積み重ねが、結果的に退職率の低下にもつながっていけばいいですね。
平山様:Qプラのコンセプトに「ワクワク」という言葉を入れていますが、採用活動にも活用できると思っております。会社説明会などで「Qプラ」に触れていただき、社員感を疑似体験していただきたいと考えており、最終的には「QB HOUSEにはQプラがあるから入社してみたい」と思ってもらえる状態を目指したいですね。
同業他社ではフランチャイズ比率が高く、こうした取り組みをやりたくても難しいケースも多いと思います。弊社は9割以上が直営店舗のため、社員に直接アプローチできることは強みです。この強みを活かし、他社にはできないコミュニティの形をつくっていきたいと考えています。

社内コミュニティを検討される企業様へ
──社内コミュニティの導入を検討している企業に向けて、アドバイスがあれば教えてください。
平山様:私たちは、ボトムアップに近い形でここまで進めてきました。正直なところ最初は「何ができるのか」もよく分からないまま、手探りで始めています。
これから導入する企業には、分科会のような場には必ず参加したほうがいいと伝えたいですね。成功事例だけでなく、失敗事例を知れること自体が大きな学びになります。
宮城様:例えばフォトコンテストひとつ取っても「投稿させるのか」「フォームに飛ばすのか」「どちらが盛り上がるのか」といった判断には必ずメリット・デメリットがあります。判断材料が少しでも共有されているだけで、導入のハードルは大きく下がると感じています。
あとはツールそのものだけでなく誰が使うのか、現場の主役は誰なのかをきちんと考えることだと思います。私たちはスタイリストが主役の組織なので、スマートフォンで直感的に使えること、横スクロールなどの操作が自然であることはかなり重視しました。
一つ付け加えると、オリジナルアプリにできたことも私たちにとっては大きかったです。自社のロゴがスマホのトップ画面にあるだけで、「会社の正式なツールなんだ」という安心感が生まれます。
社内コミュニティは導入して終わりではなく、どう育てていくかがすべてです。だからこそ、自社の現場や文化に合った形で、伴走しながら一緒に設計してくれるパートナーを選ぶことが、何より大切だと思います。

