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ブランディングとは?企業ブランディング完全ガイド(手順・費用・事例・ROI)

2025/04/22

ブランディングとは?企業ブランディング完全ガイド(手順・費用・事例・ROI)
コミューン編集部

コミューン編集部

ブランディングとは、企業や製品・サービスが持つ価値・世界観・約束を一貫したメッセージと体験でユーザーに伝え、“選ばれる理由” を継続的に強化する経営活動です。

企業が持続的な成長を遂げるためには、ブランディングの観点がどうしても欠かせません。それは、われわれの認知機能が「知っているもの」「好感を抱いているもの」を選好するという特性を持っているためです。
 
例えばある台所用洗剤同士の品質について、われわれ一般消費者が細かい機能の優劣まで判断した上で購入に至ることはなかなか難しいはずです。どうしても、そこには「すでに知っている・購入したことのあるブランド」「好感を持っているプロダクト」が有利になります。「このサービス・プロダクトを通じて、どんな便益を得られそうか」が明確にイメージできるためです。
 
しかしブランディングという言葉は聞いたことがあっても、その具体的な手順や方法がわからない、という方は多いのではないでしょうか。
 
本記事では、ブランディングの基本から具体的な手順、成功事例、さらによくある質問や注意点まで、包括的に解説します。読み終わった後には、自社のブランディングをどのように進めるべきか、その全体像がクリアになるはずです。

目次

第1章:ブランディングとは何か?
ブランディングが重要な理由
第2章:ブランディングの全体像と種類
2-1. 企業ブランディングと商品ブランディング
2-2. インナーブランディングとアウターブランディング
第3章:ブランディングを始める前に
3-1. 現状分析とブランド課題の特定
3-2. ビジョン・ミッション・バリューの整理
3-3. ブランディングの目的を明確化する
第4章:ブランディングの具体的手順
STEP1:ブランドの現状分析と課題の言語化
STEP2:ブランドコア(アイデンティティ)の確立
STEP3:ターゲット定義とブランドポジショニング
STEP4:ブランド要素の開発(ロゴ・カラー・デザインなど)
STEP5:インナーブランディング(社内への周知・浸透)
STEP6:アウターブランディング(社外への訴求)
STEP7:ブランド体験の整備と顧客接点の最適化
STEP8:ブランディング効果の測定と改善
第5章:ブランディングを成功に導くポイント
5-1. 一貫性の維持
5-2. 顧客視点を忘れない
5-3. 社員一人ひとりがブランドを体現
第6章:ブランディングの成功事例
6-1. スターバックスの事例
6-2. ユニクロの事例
6-3. カルビーの事例
第7章:ブランディングにおけるよくある質問(FAQ)
第8章:ブランディングで陥りやすい落とし穴と対策
第9章:ブランディングを定着させるための組織づくり
第10章:まとめ

第1章:ブランディングとは何か?

ブランディングとは企業やプロダクト、サービスが持っている価値やイメージを、市場や顧客に対して「一貫して」伝え、認識してもらう活動全般のことを指します。その結果として顧客のロイヤルティが高まり、競合他社よりも優先的に選ばれるようになることが期待されます。

ブランディングというと、ブランドロゴや商品パッケージといったデザイン部分に着目されることが多いですよね。でも、実際に重要になるのはそれだけではありません。企業が提供するメッセージ、さまざまな接点(タッチポイント)における顧客の体験(CX)、社員の実際の行動様式など、あらゆるファネルを通じて企業や商品への印象を形成していくことが必要になります。

華々しいイメージを持たれる「ブランディング」ですが、実は地道な作業の積み重ねという側面も持っているのです。

ブランディングが重要な理由

では、なぜこれほどブランディングが重要視されているのでしょうか。考えられる理由はいくつかあります。

  • 価格競争に陥りにくくなる
    要するに「指名買い」されやすくなるということです。ブランドを確立している企業は、値下げなどの価格競争に巻き込まれづらくなります。顧客は「安いから」ではなく「この企業(ブランド)だから」選んでいるため、多少の値上がりがあっても許容されることが多いです。ブランドを確立した企業は、価格以外の「付加価値」において勝負できるようになります。
  • ロイヤルユーザーを獲得しやくなる
    ブランドを確立することで、長期的なファン(ロイヤルユーザー)がつきやすくなります。単発的なキャンペーンや販促ではなく、サービス・プロダクトなどのブランド体験を通じて「ブランド自体のファンになっている」からです。応援してくれるユーザー基盤を築くことは、ビジネスの安定性にも直結します。
  • 採用活動や、社内コミュニケーションの活性化にもプラスになる
    近年は、ブランディングを企業の内側にも活用する流れが強まっています。いわゆる「インナーブランディング」と呼ばれる活動です。自社のビジョンや価値を明確化し、それを社員全員が理解・共感し、日々の業務におけるコミュニケーション一つ一つに浸透させる営みを指します。インナーブランディングが浸透することは、例えば採用活動や社員のモチベーション向上にも好影響をもたらします。採用広報や面談、面接において候補者は入社を検討するだけでなく、「発信している内容と実際の様子が異なっていないか」を無意識に見極めるものです。自社が盛んに発信するメッセージと、実際の社員の様子に落差があれば応募そのものをやめてしまうかもしれません。

第2章:ブランディングの全体像と種類

2-1. 企業ブランディングと商品ブランディング

ブランディングには大きく分けて、企業全体のブランドイメージを構築する「企業ブランディング」と、特定の商品(サービス)のブランドを確立する「商品ブランディング」の2種類があります。

  • 企業ブランディング企業理念やミッション、ビジョンなどを軸に、企業そのものの価値を高める活動。企業ロゴの刷新やコーポレートメッセージの統一など、企業としての一貫性を重視します。
  • 商品ブランディング企業が提供する特定の商品やサービスのブランド価値を高める活動。ターゲットに合わせた商品コンセプト設計やマーケティング戦略などが中心となります。

どちらが正しいというより、企業の成長段階や目的によって重点を変える必要があります。大企業であれば企業ブランディングを強固にするメリットが大きい場合もありますし、そこまで著名でない企業ならば特定サービス・プロダクトの認知度を高めるために商品ブランディングに注力することもあります。

あるサービスがブレークしたことで、社名をプロダクト・サービスの名前に統一するケースは後者に該当すると言えるでしょう。例えば労務管理クラウドで有名なサービス「SmartHR」を運営する株式会社SmartHR様は、2013年の創業時には「KUFU」社という名前でした(2017年4月1日より社名変更)。

2-2. インナーブランディングとアウターブランディング

先ほども述べましたが、もう1つ重要な区分としてブランディングを「社内」に向けて行うインナーブランディングと、「社外」に向けて行うアウターブランディングがあります。

  • インナーブランディング社員やステークホルダー向けに、自社のブランドの意義やビジョンを伝え、理解・共感を深める活動。従業員エンゲージメントを高め、社内の足並みをそろえる効果が期待されます。
  • アウターブランディング顧客や一般消費者、取引先など、企業外部の人々に向けてブランドを訴求する活動。広告やSNS、プレスリリースなど、様々な接点を通じてブランドイメージを伝えていきます。

いずれにせよ、ブランディングを成功させるには、社内外ともに一貫したメッセージを発信することが重要です。インナーブランディングとアウターブランディングがバラバラに進んでしまうと、企業全体としてのメッセージにズレが生じ、結果的にブランドイメージの統一感を失います。

第3章:ブランディングを始める前に

3-1. 現状分析とブランド課題の特定

ブランディングを始める前にまず行うべきなのが、現状の詳細な分析です。以下のような観点で自社の置かれている状況を客観的に把握し、言語化していくことが必要です。

  • 自社の商品・サービスの強みは何か?
  • 競合他社との違いは明確か?
  • ターゲット顧客はどのような層で、どんなニーズを持っているか?
  • 現在の顧客や社外ステークホルダーが抱いている企業イメージは?
  • 従業員の自社理解や、ブランド理解の度合いはどうか?

たとえば、アンケート調査やインタビューなどを通じて、顧客や従業員が抱く「自社イメージ」を客観的に確認してみましょう。意外なギャップが発見できることもあります。また、競合がどのようなブランディングを行っているかの分析も欠かせません。定性・定量の双方から調査を行なっていくことが重要です。

3-2. ビジョン・ミッション・バリューの整理

ブランディングの土台になるのが、企業のビジョン(将来像)やミッション(使命)、バリュー(価値観)です。これらは、それぞれの英語の頭文字を通って「VMV」と呼ばれます(Vision、Mission、Value)。

ブランドを形作るうえで「われわれはどんな企業なのか」「どんな企業を目指しているのか」「社会に対してどんな価値を提供したいのか」が明確でなければ、表面的なデザイン変更に留まってしまいます。ロゴやデザインは、どんなに洗練されていても識別記号の一つに過ぎません。

  • ビジョン企業が将来的に目指すゴールや姿。例:「世界中の誰もが使いやすいプロダクトを提供し続ける」
  • ミッション企業が果たすべき使命。例:「テクノロジーで日々の生活を快適にする」
  • バリュー企業が大切にする価値観。例:「常にユーザー視点を忘れない」「革新と創造にチャレンジし続ける」

これらを言語化し、社内で共有する作業は時間がかかることも多いですが、インナーブランディングの第一歩でもあります。

3-3. ブランディングの目的を明確化する

ブランディングの最終的なゴールは、企業ごとに異なります。たとえば、以下のように目標を設定するとわかりやすくなります。

  • 売上向上や利益率の改善:ブランド力を高めることで、価格競争から抜け出し、利益率を上げたい
  • 顧客ロイヤルティの向上:リピート率を高め、ファン化を促進したい
  • 採用力の強化:魅力的な企業ブランドを打ち出し、優秀な人材を採用・定着させたい
  • 認知度の向上:スタートアップや新規事業など、まだブランド認知が低い領域を伸ばしたい

こうした目的を明確にしておくと、ブランディングの戦略や施策を選択するときにブレが少なくなります。

第4章:ブランディングの具体的手順

ここからは、実際にブランディングを推進する際の代表的な流れを、STEP形式で解説します。企業規模や業種によって若干のアレンジは必要ですが、基本的には以下の流れを押さえておけば大きく外すことはありません。

STEP1:ブランドの現状分析と課題の言語化

まずは第3章で述べたように、現状分析を徹底的に行います。顧客や社内へのアンケート、ヒアリング、競合調査などを駆使し、現在の自社ブランドイメージの強み・弱みを洗い出します。そのうえで、どこに課題があり、今後どう変えていきたいかを言語化します。

  • 例:
    • 「製品自体の性能評価は高いが、企業のイメージが無難すぎてワクワク感が足りない」
    • 「コストカットに力を入れてきたことで、『安価だが魅力が薄い』という印象を与えてしまっている」

こうした課題感を明確にしておくことで、後続のステップで行なうブランド戦略策定が実効性の高いものになります。

STEP2:ブランドコア(アイデンティティ)の確立

次に、企業としてのブランドコアを定義します。ブランドコアとは、ブランドが持つ核となる価値観や世界観、信念などです。これはVMV(ビジョン・ミッション・バリュー)と密接に関わっており、例えば以下のようにまとめることが多いです。

  • ブランドパーソナリティ
    • ブランドを人に例えたときの性格や特徴(例:「好奇心旺盛で革新的」「誠実で安心感がある」など)
  • ブランドコンセプト
    • ブランドをひと言で表すなら何か(例:「革新的な技術で、人々の生活を豊かにするカンパニー」)
  • ブランドバリュー
    • そのブランドが提供し得る最高の価値(例:「時間を有効に使える便利さ」「洗練されたデザインが与える優越感」)

ここで重要なのは、社内外のステークホルダーに納得感を持ってもらえるかという点です。表面的に格好良い言葉を並べるのではなく、自社が本当に信じている価値・強みを反映させることが大切です。

STEP3:ターゲット定義とブランドポジショニング

ブランドコアを定義したら、どのような顧客層に対して、どんな独自の価値を提供するかを明確にします。これにはマーケティングフレームワークであるSTP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)が役立ちます。

  1. セグメンテーション:市場を細分化し、顧客層ごとの特徴やニーズを把握する
  2. ターゲティング:自社にとって最も有望な顧客層を選定する
  3. ポジショニング:ターゲット顧客の頭の中で、自社ブランドがどう位置づけられたいかを設定する

ブランドポジショニングを的確に行うことで、競合との明確な違いや、自社の強みを最大限活かせる立ち位置を固めることができます。

 

STEP4:ブランド要素の開発(ロゴ・カラー・デザインなど)

ブランディングを視覚的・感覚的に訴求するために、以下のような**ブランド要素(Brand Elements)**を開発・整備します。

  • ブランドネーム:企業名や商品名を再検討する場合も
  • ロゴ・シンボルマーク:ブランドの象徴
  • カラー・タイポグラフィ:ブランドカラーや書体、デザインの統一
  • スローガンやタグライン:ブランドの世界観を端的に表現するフレーズ

ここで重要なのは、一貫性を持たせることです。チラシ、ウェブサイト、SNS、名刺、パッケージなど、あらゆる接点で同じブランド要素を使うことで、ターゲット顧客の脳裏にブランドイメージを刷り込む効果が高まります。

STEP5:インナーブランディング(社内への周知・浸透)

ブランド要素が決まったら、社外へのアピールに先駆けて社内への周知徹底を行いましょう。具体的には以下のような手段があります。

  • 社内報やイントラネットでの告知:ブランドのコンセプトやストーリーをまとめて発信
  • 社内イベント・研修:ワークショップ形式でブランド理念を共有し、社員の理解度を深める
  • ガイドラインの作成:ロゴの使い方やメッセージの文言、配色ルールなどをまとめたブランドガイドラインを整備

従業員一人ひとりがブランドの「中の人」として同じ価値観を共有していなければ、外部への訴求にもブレが生じてしまいます。インナーブランディングをしっかり行うことで、全社的にブランドを体現できる組織風土をつくりましょう。

STEP6:アウターブランディング(社外への訴求)

インナーブランディングがある程度進んだら、いよいよアウターブランディングを本格化させます。社外へのブランド発信では、以下のようなチャネルや手法が考えられます。

  • 広告・PR:テレビCM、新聞・雑誌広告、Web広告、プレスリリースなど
  • SNS活用:Twitter、Instagram、Facebook、LinkedInなどでブランドコンセプトを伝える
  • オウンドメディア運営:コーポレートサイトやブログで、ブランドの世界観や価値を訴求するコンテンツを発信
  • イベント・展示会:リアルな場でブランド体験を提供し、顧客の感情に訴求

大切なのは、一貫したブランドメッセージをすべてのチャネルで届けることです。デザインだけでなく、文章表現やキービジュアル、使用する言語スタイルなども統一感を持たせましょう。

STEP7:ブランド体験の整備と顧客接点の最適化

ブランディングはロゴや広告だけで成り立つわけではありません。顧客が実際に商品やサービスを利用した際に得られる体験もブランドの重要要素です。たとえば以下のような点を見直しましょう。

  • 接客やカスタマーサポートの品質:企業のブランドを最前線で体現するのはスタッフの対応
  • 購入・利用プロセスのユーザビリティ:ECサイトのUIや店舗の導線など、ストレスなく利用できるか
  • 製品・サービスの品質保証:言葉だけでなく、実際にユーザーが「この企業の商品なら大丈夫」と思える品質を提供

ブランド体験がポジティブなものであればあるほど、顧客はブランドを信頼し、リピート購買や口コミでの拡散につながります。

STEP8:ブランディング効果の測定と改善

ブランディングは一度実施して終わりではなく、継続的に効果測定と改善を行う必要があります。KPIとしては以下のような指標を設定することが多いです。

  • ブランド認知度:SNSフォロワー数、検索数、アンケート調査での認知度指標など
  • 顧客ロイヤルティNPS(ネット・プロモーター・スコア)、リピート購入率、解約率など
  • 売上や利益率:価格競争に左右されにくくなったかどうか
  • 採用指標:応募数や内定承諾率の変化

定期的にこれらの数値をモニタリングし、必要に応じて施策を修正していきましょう。競合環境の変化や顧客ニーズの変化に合わせて、ブランド戦略もアップデートが欠かせません。

第5章:ブランディングを成功に導くポイント

5-1. 一貫性の維持

ブランディングで最も大切なのは、全てのタッチポイントで統一した世界観を醸成することです。ロゴや色使いが統一されていなかったり、広告のメッセージと実際の接客対応が矛盾していたりすると、せっかくのブランドイメージが崩れてしまいます。ブランディングガイドラインを定期的に見直し、社内周知を徹底することで一貫性を保ちましょう。

5-2. 顧客視点を忘れない

自社の都合だけを優先すると、単なる自己満足のブランディングに終わるリスクがあります。大切なのは、顧客がどんな価値を求めているかを起点に考えることです。顧客の声を定期的に収集し、ブランドメッセージや顧客体験の改善に活かすサイクルが不可欠です。

5-3. 社員一人ひとりがブランドを体現

どれだけ優れたコンセプトやデザインを打ち出しても、実際に顧客と接する社員がそれを理解していなければ、ブランディングは失敗します。インナーブランディングを通じて、社員がブランドの価値を自分事として捉えることが大切です。研修や評価制度の中にブランド関連の項目を組み込むなど、仕組み面でのサポートを行いましょう。

第6章:ブランディングの成功事例

ここでは、実際の企業がどのようなブランディング戦略を実施し、どのような成果を上げたのか、いくつかの成功事例を紹介します。具体的な事例は企業規模や業種などによって参考にできるポイントが異なるため、ぜひ自社の状況に合わせてヒントを得てください。

6-1. スターバックスの事例

スターバックスは「単なるコーヒーショップ」ではなく、「心が豊かになるサードプレイス」を提供するブランディングを行い、世界的な成功を収めました。以下のポイントが参考になります。

  • 一貫性のある顧客体験:店内の雰囲気や音楽、接客スタイルに至るまで、世界中どの店舗でも共通のブランドイメージを再現
  • 社員教育:バリスタの研修を徹底し、商品知識だけでなくブランド価値への共感を醸成
  • ロゴの進化:時代の変化に合わせてロゴを刷新しつつも、アイコニックなマーメイドのシンボルは継承し続ける

6-2. ユニクロの事例

ユニクロは「高品質だけどリーズナブル」で「シンプルだけど機能的」というブランドイメージを確立。もともと「安さ」を武器にしていた時代から、質とデザインで世界と戦う姿勢にシフトしました。

  • グローバル展開と統一ブランドメッセージ:海外でも「LifeWear」というコンセプトを掲げ、各国でブランディングを一貫
  • 店舗体験の重視:大型路面店でのディスプレイ、商品の陳列方法などを通じて、シンプルかつ機能的なブランド世界観を体現
  • コラボ戦略:著名デザイナーやブランドとのコラボによって「安いだけじゃない」ブランド力を訴求

6-3. カルビーの事例

カルビーは、「かっぱえびせん」や「ポテトチップス」などのロングセラーブランドを多数展開し、多くの消費者から長年愛されてきた菓子・食品メーカーです。近年では熱狂的なファンとオンラインで直接繋がり、商品開発やブランド体験をより深める取り組みに注力しています。

  • 熱狂的ファンとのオンライン接点
    「絶品かっぱえびせん」のファンコミュニティを立ち上げ、ファン同士が晩酌の様子を共有したり、社員も加わったオンライン飲み会を開催。ブランド担当者と消費者が直接コミュニケーションを図ることで、通常のアンケートでは得られないリアルな声を吸い上げています。
  • ブランド体験へのこだわり
    オンラインコミュニティでは新商品の開発過程や舞台裏など、ファンが興味を持つ情報を積極的に公開。企業とファンの距離を近づけることで、商品に対する理解と愛着を深め、ブランドの推奨意向も高めています。
  • 商品共創の推進
    ファンからアイデアを募集し、オンライン投票や試食会を行うなど、商品開発を共に進める試みを実施。こうした共創のプロセスを通じて、熱量の高いユーザーが自発的にブランドを応援する仕組みを構築し、新商品のリピート購入やブランド全体の価値向上に繋げています。

第7章:ブランディングにおけるよくある質問(FAQ)

ここでは、ブランディング担当者や経営者がよく抱きがちな疑問にお答えします。

Q1. ブランディングとマーケティングはどう違うの?

  • ブランディング:企業の価値や世界観を明確化・発信し、顧客からの信頼や愛着を獲得する活動
  • マーケティング:商品やサービスを顧客へ届け、需要を創出・拡大する活動

両者は密接に関わり合いながら、相乗効果を生むことが重要です。ブランディングによってブランドイメージを高めることで、マーケティング施策(広告、販促など)がより効果的になります。

Q2. ロゴを変えるだけでブランディングは完了するの?

ロゴの刷新はブランディングの一部に過ぎません。ブランドの世界観や顧客との接点、社員への浸透など、多方面の施策と一貫性が取れて初めてブランディングが成立します。ロゴだけ変えて、企業文化や顧客体験が変わらなければ、根本的なブランディングにはなりません。

Q3. ブランディングにどれくらいの期間がかかる?

ブランディングは一朝一夕で完成するものではありません。短期的には数ヶ月〜1年でロゴ変更やメッセージ統一などの施策を一通り実施できますが、顧客や社会の認知が変化し、ブランドイメージが定着するにはさらに時間がかかるケースが多いです。中長期的に継続して取り組む意識が大切です。

Q4. 社内にブランディングの専門家がいない場合はどうすれば?

自社内に専任のブランディング担当者がいない場合、まずは上層部や経営者がリーダーシップを発揮し、必要なリソース(予算や人員)を確保しましょう。外部のコンサルティング会社やブランディングエージェンシーの力を借りるのも有効です。ただし、全てを外注するのではなく、自社の理念や文化をきちんと伝える工夫が必要です。

第8章:ブランディングで陥りやすい落とし穴と対策

8-1. ブランドメッセージと実態が乖離してしまう

ブランディング施策で掲げたメッセージやコンセプトが、実際の企業行動や商品品質と伴わない場合、かえって信頼を失います。たとえば、「高品質」を謳っているのにすぐに故障する製品を売っていたら逆効果です。ブランドの約束(ブランドプロミス)と企業活動を常に一致させる仕組みを整備しましょう。

8-2. 短期的な成果だけを求めすぎる

ブランディングは、広告のように一度のキャンペーンで成果が目に見えて測定しやすいものではありません。短期的な売上アップだけをKPIに設定してしまうと、「ブランディングは効果が出ない」と判断されて途中で止まってしまう可能性があります。中長期的な視点を持ち、ブランド認知度やファン数などの指標を追いかける姿勢が重要です。

8-3. インナーブランディングを軽視する

外部のイメージアップばかりに注力してしまい、社内がブランド理念を理解していない状態では、結局「上っ面だけ」のブランディングで終わってしまいます。インナーブランディングの予算や時間を十分に確保し、社員がブランドを体現できる体制を作ることが欠かせません。

第9章:ブランディングを定着させるための組織づくり

9-1. ブランドマネージャー(担当部署)の設置

ブランディングを継続的に推進するには、ブランドマネージャーやブランド戦略担当部署の設置が効果的です。マーケティング部の一部門として立ち上げる場合もあれば、経営企画室や社長室直下に置くケースもあります。ブランド関連の予算や施策を横断的にコントロールできるようにしておくと、全社的な一貫性が保ちやすくなります。

9-2. 評価制度やプロセスにブランド視点を組み込む

社員がブランディングの重要性を理解し、自分自身もブランドの一部であると認識するには、評価制度業務プロセスの中にブランド視点を取り入れることが有効です。たとえば、

  • 社内プロジェクトにおけるブランド審査:新商品の立ち上げや広告制作の際に、ブランドガイドラインやブランドコンセプトに合致しているかをチェック
  • 社員評価項目にブランド理解を含める:接客やSNS発信など、ブランド理念を体現しているかを評価する指標を設置

こうした仕組みによって、ブランド戦略が「やりっぱなし」で終わらず、継続的に運用されるようになります。

9-3. 定期的なブランドレビュー

一度作ったブランド戦略が時間の経過とともに陳腐化することもあります。定期的にブランドレビューを行い、環境変化に合わせてブランドメッセージやターゲット、施策内容を見直すプロセスを設定しておきましょう。特に、競合企業が新たな戦略を打ち出したり、消費者の嗜好が大きく変化したときは要注意です。

第10章:まとめ

ブランディングは、「ロゴの刷新」や「広告を打つ」だけで一足飛びに成果を得られるものではありません。企業が培ってきた歴史や文化、商品・サービスの価値、社員の想いなど、あらゆる要素が結びついてはじめて、強固なブランドが形成されていきます。

  • ブランディングとは何か、その種類や重要性を理解すること
  • ブランドコアを明確にしてから施策を実行すること
  • 一貫性のあるブランド体験を作り上げること
  • インナーブランディングとアウターブランディングを両立させること
  • 組織的な体制づくりと評価制度の整備によってブランディングを定着させること

これらすべてを地道に実行し、継続して改善を繰り返すことが、ブランディング成功への近道です。短期的な効果よりも、中長期での企業価値向上を目指し、「自社がどうありたいか」「顧客に何を届けたいか」を軸に、ぶれないブランディングを進めていきましょう。

最後に、ブランディングはあくまで手段であり、その本質は「企業と顧客(社会)の関係性をより良いものにしていく」ことです。そこに社員が共感し、顧客や社会の支持を得られるブランドこそが、長く愛され、選ばれ続ける存在となるのです。

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