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VoC(Voice of Customer)とは? 活用メリット・収集〜分析手順・成功事例を完全解説

2024/08/21

VoC(Voice of Customer)とは? 活用メリット・収集〜分析手順・成功事例を完全解説
コミューン編集部

コミューン編集部

VoC(Voice of Customer)とは、文字どおり「顧客の声」を指し、企業に寄せられる意見・要望・期待を総称した概念です。電話やメール、チャット、SNS、アンケートなど収集チャネルは多岐にわたり、これらの声を体系的に集めて分析し、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上へつなげる一連の取り組みを「VoC 活動」と呼びます。
 
本記事では、VoC の基本概念から実践に役立つ収集・分析手法、そして成果へ結び付ける運用ポイントまでをわかりやすく解説します。

VoCとは? ── 定義と注目される背景

VoC(Voice of Customer)の定義

VoCとは、顧客が製品・サービス・ブランドに対して抱く期待・不満・要望・感情を定性的・定量的に捉えた「声」の総体を指します。近年はアンケートやインタビューに加え、SNS投稿・チャットログ・コールセンター音声など多様な一次データをリアルタイムで統合し、AIで構造化する手法が主流になっています。

CS/CX/NPSとの違い

  • CS(Customer Satisfaction)は購入・利用後の満足度指標で、結果を点数で測るのが特徴です。

  • CX(Customer Experience)はタッチポイント全体の体験価値を扱い、感情曲線やジャーニーマップを用いて改善します。

  • NPS(Net Promoter Score)は「他者に薦めたいか」を0〜10で問う単一指標のことです。

VoCはこれら三つを包含し、顧客の“言語化された一次情報”に直接アクセスする点が異なります。

2020年代後半にニーズが急伸した3つの理由

  • CAC(顧客獲得コスト)の高騰
    広告競争が激化し、既存顧客の深耕がROI面で優位に。

  • プロダクト主導成長(PLG)の定着
    開発⇄利用データのフィードバックループを高速で回すためには実ユーザーの声が必須。

  • 生成AI・テキストマイニングの民主化
    かつては専門部署が必要だった分析が、SaaSツールで月額数万円から実装可能に。

VoCを活用すると何が変わる?【4大メリット】

  • 離脱率・解約率の低減
    シグナルを早期に察知し、個社別の解決策を講じられる。

  • アップセル・クロスセルの精度向上
    「欲しい機能」「拡張ニーズ」を定量化し、新パッケージ開発や価格設計に活用可能。

  • プロダクト改善サイクルの高速化
    バグ報告や要望をエンジニアへ即時エスカレーションし、リリース優先度をデータドリブンで決定。

  • 部門横断の共通KPI化
    CS・マーケ・開発が同一ダッシュボードを参照し、意思決定スピードが向上。

VoC 収集チャネル完全リスト【一次&二次データ】

VoCの収集方法

定量チャネル

アンケート、アプリ/Webログ、購入履歴、NPS調査など。高頻度でサンプリングできる一方、数値だけでは背景文脈が読み取りづらい。

定性チャネル

ユーザーインタビュー、SNS投稿、コミュニティ掲示板、サポートチケット、コールセンター音声など。潜在ニーズを発掘できる反面、サンプルバイアスと解釈コストに注意が必要です。

収集時の留意点

  • プライバシー規制(GDPR、改正個人情報保護法)への適合

  • サンプリングフレームの偏りを可視化する重み付け

  • タグ付け・メタデータ設計を最初に統一し、後工程の集計負荷を削減

分析フレームワークとツール選定

カテゴリ分類から因果推定まで

VoC データを活用する際は、まずテキストマイニングで形態素解析を行い、頻出キーフレーズや共起語を抽出して論点を可視化します。

続いて感情分析を適用し、ポジティブ・ネガティブ・ニュートラルのスコアを時系列で追うことで、機能追加や価格改定など外部要因に対する顧客感情の揺れを定量的に把握します。

最後に因果推定フェーズへ移行し、抽出したインサイトを基に A/B テストや疑似実験を設計して施策と指標の因果関係を検証します。こうした三段構えにより、「声」を単なる意見集ではなく ROI に直結する意思決定材料へ昇華できます。

代表ツール比較(例示)

統合プラットフォームを求める場合は Qualtrics XM がアンケート収集からレポーティングまで一気通貫で月額十万円前後と安心感があります。既存の Zendesk チケットを起点に AI 要約を掛け合わせたいなら、Synap を噛ませる構成が八万円程度で導入しやすく、CS 部門の現場負荷を抑えられます。

自社でデータレイクを保有し高度な分析を望むなら、LangChain と BigQuery を組み合わせた OSS スタックが候補になります。従量課金ゆえ運用コストはケースバイケースですが、プロンプト設計から可視化まで自由度が高く、技術リソースを確保できる企業にとっては最も柔軟です。

KPIツリー例

VoC 施策が企業価値にどう跳ね返るかを追跡するためには、最上位に ARR 増分を置き、その直下に施策実装数を紐づけます。実装数はインサイト抽出数の質と量に依存し、さらにインサイト抽出数は VoC 改善率──つまり有効なフィードバックをどれだけ収集できたか──に連動します。

部門ごとに異なる指標を共通ツリーへ統合すれば、マーケティング・開発・CS が同じダッシュボードを見ながら議論でき、改善サイクルの速度と透明性が大幅に向上します。

AI活用TIPS

最新の顧客の声を常に反映させるには、RAG(Retrieval-Augmented Generation)を採用し、データベースから関連発話を動的に取得して生成 AI に要約させる手法が有効です。

さらにトピックモデリングを組み合わせれば、製品リリースやキャンペーンと連動した「声のトレンド」を季節変動やイベントごとに可視化でき、経営会議資料へそのまま転用できます。こうした AI レイヤーを重ねることで、分析工数を削減しつつ意思決定の鮮度を維持できます。

VoCの成功事例4選

顧客の声を効果的に収集・活用し、製品やサービスの改善に成功した4つの事例を紹介します。オンラインコミュニティ運営、音声分析、SNSモニタリング、顧客調査など、多様なアプローチでVoCを活用し、具体的な成果につなげた企業の取り組みをご紹介します。

ファンコミュニティを活用したVoC収集と商品開発 -カルビー株式会社「絶品かっぱえびせん」の事例

カルビー株式会社は、複数の VoC (Voice of Customer)チャネルを組み合わせることで、商品開発と顧客理解を飛躍的に深めました。

まず、お客様相談室への問い合わせを分析した結果、「箱買い」「品切れ店舗を巡る」など熱量の高い購買行動を把握しました。次に実施した消費者調査では、利用シーンの写真提供を依頼し、たとえば「ビールのお供に楽しむ」といった具体的な食卓シーンを可視化しました。

さらに、洞察を拡張するためにオンラインコミュニティを開設し、日常的な商品レビューや開発担当者との対話の場を用意しました。開発の裏話や試行錯誤も包み隠さず共有する双方向コミュニケーションによって、従来の調査では得られなかった“本音”を引き出すことに成功しています。

この取り組みの集大成として、コミュニティ内で 50 件以上のアイデアを募集し、投票と試食会を経てファンと共創した新商品を発売しました。デビューシリーズにもかかわらず、高いブランド推奨意向を獲得し、VoC 活用の有効性を実証しています。

ファンコミュニティを活用したVoC収集と商品開発 -カルビー株式会社「絶品かっぱえびせん」の事例

オンラインコミュニティ活用による継続的VoC収集 -日本ケロッグ合同会社「オールブラン」の事例

日本ケロッグ合同会社は、オールブランの熱心な愛用者から学び、継続的な喫食を後押しするためにオンラインコミュニティ「オールブラン腸活部」を立ち上げました。

まず約 70 名の限定メンバーで土台を固め、その後「オールブランすっきりチャレンジ」など参加型イベントを定期開催しながら、朝食シーンの写真投稿やオリジナルのアレンジレシピといった質の高い VoC を日常的に収集しています。

コミュニティでは「オールブランを混ぜ込んだお好み焼き」のように開発側では想定していなかった活用法も生まれ、メンバー同士の共有を通じて食べ方の幅が大きく拡張しました。その結果、参加者の喫食回数は参加前比で 1.6 倍に増え、全 5 種類のうち 3 種類を購入するメンバーが 44 %に達するなど、買い回り率の向上にもつながっています。

さらに、新商品開発時にはコミュニティを通じてスピーディーに顧客インサイトを取得できるため、企画サイクルの短縮にも寄与しています。

オンラインコミュニティ活用による継続的VoC収集 -日本ケロッグ合同会社「オールブラン」の事例

リアル店舗とオンラインの相乗効果によるVoC活用 - 株式会社大丸松坂屋百貨店「World Wine Now!」の事例

株式会社大丸松坂屋百貨店は、年に 2 回開催する催事「世界の酒フェス」だけでは顧客との接点が限定的であるという課題を解消するため、ワイン愛好家向けオンラインコミュニティ「World Wine Now!」を開設しました。

当初は新規顧客の獲得を狙っていましたが、運営を進めるうちに既存顧客との関係深化とVoC(顧客の声)収集のプラットフォームへと方針を転換。セミナーやイベント参加後の感想、店頭商品の反応、個々のワイン嗜好など、従来は把握できなかったインサイトを継続的に蓄積しています。

この取り組みにより、「カリフォルニアワインの愛好家はオーストラリアワインにも好意的」といった嗜好傾向や、「ドロップストップ」のような想定外の関連アイテムへのニーズを発見できました。さらに、コミュニティ内での商品紹介が実店舗への来店を促進し、セミナー参加者による体験投稿が新たな来店動機を生むなど、オンラインとオフラインを相互に強化する効果も生まれています。

リアル店舗とオンラインの相乗効果によるVoC活用 - 株式会社大丸松坂屋百貨店「World Wine Now!」の事例

*株式会社大丸松坂屋百貨店「World Wine Now!」の事例を見にいく

コミュニティの投稿をきっかけにユーザーの行動がリアルに波及

多角的なVoC収集による製品改善と顧客理解 - 株式会社SHARP「ホットクック」の事例

株式会社 SHARP は、自動調理鍋「ホットクック」に関して、従来のカスタマーサポートだけでは拾い切れない顧客の声を集めるため、オンラインコミュニティ「ホットクック部」を開設しました。

注目すべきは、購入検討期・導入期・熟練期という製品ライフサイクルの各段階で異なる VoC を体系的に収集できている点です。購入検討者からは具体的な購入障壁や比較検討の悩みが寄せられ、初心者ユーザーからは操作方法への不安や日常での困りごとが挙がります。さらに、ベテランユーザーからは詳細な改善要望に加え、「大量購入した肉の下処理」や「離乳食づくり」のような想定外の活用アイデアも届けられました。

この多面的な VoC は、製品価値の再発見と新機能の着想源となっています。また、新機能リリース時にはコミュニティでリアルタイムに反応を収集し、改善点を即座に開発チームへフィードバックする体制を構築。これにより、顧客ニーズをダイレクトに製品改良へ反映させる高速な PDCA サイクルが実現しています。

多角的なVoC収集による製品改善と顧客理解 - 株式会社SHARP「ホットクック」の事例

よくある質問(FAQ)

Q1. VoCとNPSはどちらを先に導入すべきですか

現状把握のスピードを優先するなら NPS から着手するのが手軽ですが、解約要因の深掘りやアップセルのインサイトまで取りに行くなら、多面的に収集できる VoC 基盤を初めから構築したほうが再設計の手間を抑えられます。理想は、NPS を早期警報装置、VoC を原因分析装置として併用することです。

Q2. 小規模組織でもVoC運用は可能か

従業員 50 名規模でも、収集チャネルをサポートメール・アンケート・SNS の 3 つに絞り SaaS ツールを活用すれば、月額数万円で運用を開始できます。重要なのはデータのタグ付けルールを統一し、隔週で分析を回す習慣を埋め込むことです。

Q3. コンプライアンス上の注意点は何か

個人情報は識別子をハッシュ化したうえで保存し、利用目的をプライバシーポリシーに明記する必要があります。EU 圏ユーザーが含まれる場合は GDPR に準拠した同意取得が必須で、日本国内でも改正個人情報保護法のガイドラインに従って第三者提供の有無を開示してください。

Q4. 生成AIはいつ導入すべきか

月間フィードバックが 1,000 件を超え、ルールベースでは分類精度が頭打ちになった段階が目安となります。まずは要約タスクから始め、精度検証を終えたら感情分析やトピックモデリングへ拡張することで費用対効果を高められます。

Q5. BtoBとBtoCで運用は何が違うか

BtoB では契約単価が高く、意思決定者と利用者が異なるため、アカウント単位で集計し、関係者ごとの声を階層的に可視化する必要があります。一方 BtoC ではデータ量が多いため、セグメント別に感情スコアを時系列で追い、パターンを抽出するアプローチが有効です。

まとめ

VoC(Voice of Customer)活動は、顧客との関係を深めながら製品・サービスを磨き上げるうえで欠かせない取り組みです。現在はアンケート、コールセンター、SNS、口コミサイトなど多様なチャネルで声を集められる一方、チャネルごとに運用が分断されているとデータ統合や分析が難しくなり、真に価値のある顧客インサイトを取りこぼす恐れがあります。

そこで近年注目を集めているのが、ファンコミュニティを基盤にした VoC 活動です。カルビー株式会社や日本ケロッグ合同会社の事例が示すとおり、コミュニティでは継続的かつ双方向の対話が行われるため、従来手法では得にくかった深層ニーズを把握できます。ユーザー同士の自然な会話から想定外の活用アイデアや新商品のヒントが生まれるほか、改善要望をリアルタイムで収集できるため、開発サイクルも加速します。

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