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パーセプションとは?「認識」の本質と実践

2025/06/24

パーセプションとは?「認識」の本質と実践
コミューン編集部

コミューン編集部

あなたは自社の商品やブランドが、顧客や市場からどのように“認識”されているか、正確に把握できていますか? たとえ優れた品質や豊富な広告予算をもってしても、消費者とのあいだに「パーセプションギャップ」があるままでは、思うような成果に結びつかない可能性があります。
 
本記事では、マーケティングにおいて重要性を増している「パーセプション」の基本概念から測定手法、さらにはパーセプションフロー・モデルを用いた実践的なアプローチまでを詳しく解説し、“選ばれる商品・ブランド”を構築するためのヒントをお届けします。

第1章:パーセプションとは何か

パーセプションとは、消費者がブランドや商品・サービスに対して抱いている認識や印象のことを指します。

日本語では「知覚」「認識」「認知」などと訳されることが多く、現代のマーケティング領域では、この「パーセプション」が極めて重要な概念として位置づけられるようになっています。なぜなら、企業が伝えたいと思っているブランドイメージと、実際に生活者が抱いている印象との間にズレ、すなわち「パーセプションギャップ」が生じることによって、広告や広報などのマーケティング活動が期待通りに機能しないというケースが少なくないからです。

たとえば、企業が「自社製品は高級感がある」と信じてPRしていたとしても、実際の消費者が「値段相応で、むしろ安価な印象がある」と感じていた場合、そのズレがブランドの魅力を曇らせ、売上の伸び悩みにつながることがあります。こうした事態を防ぐためにも、企業はまず生活者のパーセプションを的確に把握し、その上でブランド戦略を練り直す必要があります。

つまり、パーセプションを理解することは、単に商品やサービスを認知させるというだけでなく、「どうすれば選ばれるか」「どうすれば好意を持たれるか」といった本質的な問いへの出発点となるのです。

第2章:パーセプションが注目される背景

なぜいま、パーセプションがこれほどまでに注目されているのでしょうか。かつては「知名度さえ高まれば売上は自然と伸びる」と考えられており、認知拡大を目的とした大量のテレビCMや雑誌広告などがマーケティングの主戦場となっていました。しかし現代においては、単に名前を知ってもらうだけでは購買行動に結びつかないという現実が、あらためて顕在化しています。こうした背景のもと、「パーセプション=生活者がそのブランドや商品をどう捉えているか」という視点が、マーケティング戦略において不可欠な鍵となりつつあるのです。

1. 市場の成熟と競争の激化

あらゆる業界において商品やサービスが溢れ返り、もはや「新しいだけで売れる」という時代は終わりを告げました。機能やスペックによる差別化が限界に達している今、消費者が「その商品にどのような価値を見出しているか」、すなわちどんなパーセプションを抱いているかが、購買の可否を決定づける要因となっています。

2. 情報接点の分散と多様化

SNS、レビューサイト、YouTube、TikTok、そしてUGC(ユーザー生成コンテンツ)など、消費者が情報を得るためのチャネルはかつてないほど多様化しています。企業が発信する公式情報よりも、他者の体験や口コミ、視覚的な印象といった「企業の手が届かない情報源」によって形成されるパーセプションの方が、購買意思決定に与える影響が大きくなってきているのです。

3. “名前を知っている”だけでは不十分な時代

かつてのように、限られた情報の中で「知名度の高さ=売れる理由」とされた時代には、「名前を聞いたことがある」だけでも一定の信頼につながっていました。ところが現代は、モノも情報も溢れる飽和状態。生活者は「その商品がどんな価値を提供するのか」「自分にとってどんな意味を持つのか」といった“背景情報”まで含めて認識しなければ、関心すら持たないケースが増えています。つまり、知っているだけでは足りず、知ったうえでどう感じるか=パーセプションの質が問われる時代なのです。

4. 成功事例が示すパーセプションの転換力

男性用コスメや冷凍食品といった、長らく固定化されたイメージを持たれていたカテゴリーでも、ここ数年で新たな成長を遂げている企業が目立ちます。これらの企業に共通するのは、旧来のネガティブな印象や先入観を覆し、ポジティブで共感性の高いパーセプションを築き上げることに成功した点です。つまり、従来の「常識」を再定義し、生活者の認識を書き換えることが、まだ見ぬ市場を切り開く原動力となっているのです。こうした背景を踏まえると、パーセプションの理解とコントロールは、単なるブランドイメージの話にとどまらず、マーケティングそのものの設計思想に直結するテーマであるといえるでしょう。

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第3章:ブランドイメージ・認知度との違い

パーセプションという言葉は、しばしば「ブランドイメージ」「認知度(知名度)」などと混同されがちです。しかし、これらは互いに密接に関連しながらも、狙うゴールやアプローチが異なります。

1. ブランドイメージとの相違

  • ブランドイメージ:
    「そのブランド自体に抱くイメージや連想」を指す。たとえば「高級感がある」「親しみやすい」といった印象を形成する際に使われる概念。パッケージデザインや広告表現次第で比較的短期に変わりやすい側面がある。

  • パーセプション:
    「ブランドや商品の価値・存在意義に対する認識」。ブランドイメージに比べて、体験や口コミなど生活者との接触点の積み重ねで深く形成されることが多い。簡単には覆りにくいが、逆に言えば強固に根付けば大きな武器になる。

たとえばトヨタのクラウンがSUV仕様を打ち出し見た目のイメージが変わっても、多くの消費者に「高級車」というパーセプションが根強く残るように、**ブランドイメージ(外観の変化)パーセプション(本質的価値)**は別物として考える必要があります。

2. 認知度(知名度)との違い

  • 認知度:
    「その名前を知っているかどうか」というレベル。極端に言えば“記号として知っている”段階にすぎない。

  • パーセプション:
    名前に“意味”が紐づいている状態。「あのブランドは〇〇という価値がある」と理解・評価されている。
    ある専門家は「認知度=知名度+パーセプション」と表現しており、「名前を知っているだけ」から「価値まで理解している」状態へ引き上げることが、マーケティング成功のカギだと指摘しています。

3. パーセプションギャップの弊害

  • 「企業が『高品質』だと信じている」商品でも、実際のユーザーは「可もなく不可もない普通の商品」と見ているケースがある。

  • ギャップが大きいまま放置すると、広告メッセージに共感が得られず、プロモーション費用対効果が悪化する。

  • 「本当は優れたサービスなのに認識されない」「市場から安物扱いされている」などの悩みの原因になる。

4. 統合的アプローチの必要性

パーセプション、ブランドイメージ、認知度はそれぞれ別の概念でありながら相互に影響し合います。認知度を高める施策と合わせて、どんなパーセプションを抱いてほしいのかを明確に定め、ブランドイメージを適切に演出する統合的アプローチが重要です。

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第4章:パーセプションを測る・把握する手法

パーセプションは目に見えない認識や感覚の集合ですから、定量化しにくい面があります。しかし、ある程度の客観的把握をすることが不可欠です。ここでは代表的な3つの方法を紹介します。

  1. アンケート調査

    • 定量アンケートで回答者数を確保すれば、全体的な傾向を数値化できる。

    • 定性アンケート(自由回答など)を組み合わせると、言語化されにくい印象や感情面が見えてくる。

  2. インタビュー・ヒアリング調査

    • 消費者やクライアント、メディア関係者などを対象に対面やオンラインで深掘り質問を行う。

    • 「なぜそう思うのか?」を追求することで、パーセプション形成に影響した具体的経験や心理を探索できる。

  3. UGC(ユーザー生成コンテンツ)の分析

    • SNS投稿や口コミサイト、ブログ、レビューなどを調査し、実際にどんな言葉で商品やブランドが語られているかを把握する。

    • 数だけでなく「内容の質」が重要。肯定的・否定的それぞれの理由を細かく分析することでギャップや期待値が浮かび上がる。

  4. 重要性と留意点

    • 調査によって判明した認識が「パーセプションのすべて」ではないかもしれない。多角的に検証し、継続的に追う姿勢が求められる。

    • 「ネガティブな声がほとんどない=ポジティブ認識が高い」とは限らない。無関心状態も潜在的なリスクとして捉えるべき。

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┗UGC分析や定性調査など、パーセプション測定手法の“より実務的”な応用例を学べます。

第5章:パーセプションを活用したマーケティング:フローモデルの概要

近年注目を集めているのが、「パーセプションフロー・モデル(以下PFモデル)」です。これは消費者の購買行動を8つ程度の段階に分割し、それぞれでどんな認識の変化が起きるかをマッピングするアプローチ。カスタマージャーニーマップ(CJ)と似ていますが、より「認識の流れ」に着目している点が特徴です。

1. パーセプションフロー・モデルとは

  • 概要:
    消費者が最初に商品を知る前の段階(「現状」や「潜在的欲求」)から、購入、使用、リピート、口コミに至るまで、各フェーズで「どんなパーセプション変化が起きるか」を可視化するフレームワーク。

  • 8段階と5つの軸:
    一般的には「現状→認知→興味→購入→使用→満足→再購入→口コミ」など8つの行動フェーズと、「行動・パーセプション・知覚刺激・KPI・メディア」の5要素を組み合わせて分析する。

  • 目的:
    企業と消費者のギャップを埋め、マーケ施策を一貫性のある設計図として落とし込むこと。誰がどこを担当しても、パーセプション変化という視点から迷いなく施策を進められる。

  • カスタマージャーニーマップとの違い:
    CJは「過去から現在の行動の流れ」を視覚化しやすいが、PFモデルは「未来の認識変化」を設計しやすい。行動をなぞるだけでなく、「ここでどんな認識をもってほしいか」を起点に逆算して施策を検討するという発想が特徴的。

2. PFモデルがもたらすメリット

  1. 認識のズレを解消
    どのフェーズでどんな価値訴求が必要か、ギャップがあるのかが明確になる。

  2. マーケティング全体を俯瞰
    メディア選定やKPI設定までひとつのフレーム内で検討するため、施策の重複や漏れが減る。

  3. 社内連携の促進
    共通言語としてPFモデルを使えば、開発・宣伝・営業など部門の連携がスムーズになる。

3. 設計のステップ

  • ブランドの方向性・戦略定義:まずは「どんな価値を提供したいか」「どんなパーセプションを目指すか」を言語化する。

  • 消費者行動の具体化:各フェーズで顧客が取る行動を想定し、同時に「どんな認識が必要か」「競合はどうか」を検証する。

  • 知覚刺激の開発:広告、SNS、店頭POP、パッケージなどで、目指すパーセプションが形成されやすい「きっかけ」を用意する。

  • KPIの設定とモニタリング:認知率や再購入率、口コミ投稿数、推奨意向など各フェーズごとに指標を定め、継続的にチェックする。

4. 成功事例の一端

  • 男性用BBクリーム(UNOなど)
    「男性が化粧品を使うのは抵抗がある」という既成概念を、「身だしなみを整える手軽なアイテム」に変え、新市場を開拓。

  • 名刺管理サービス
    「名刺は溜めておくしかない」という認識から、「組織の資産としてデジタル管理が必要」という新たな価値を提示し導入率を伸ばした。

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第6章:パーセプションチェンジを成功に導くポイント

実際のマーケティングでは、「すでに世の中に固定化してしまった認識」を変えること(パーセプションチェンジ)が求められる場合があります。ネガティブイメージの払拭だけでなく、まったく新しい用途を提案する「価値再定義」も重要です。

1. 現状の認識把握が出発点

  • まずは消費者が実際にどんな認識を持っているかを正確に知る。そこに思い込みがあると、的外れな施策を打ってしまう。

  • カテゴリー全体へのイメージ(例:冷凍食品は手抜き、不動産サイトは情報が多くて探しづらい)を把握することも欠かせない。

2. コア価値の再定義

  • 「自社商品は何のために存在し、どんな強みがあるのか」を見直す。

  • 例:冷凍食品→「手抜き」から「時短で生活を豊かにする」へ認識転換した事例では、「凍らせることで鮮度が保たれ、忙しい人でも美味しく食べられる」というコア価値を前面に打ち出した。

3. パーセプションチェンジの施策設計

  • 狙うパーセプションを具体化
    「○○で時短になり、日々の家事負担を軽減できる」といった、消費者が抱いてほしい明確なイメージを設定する。

  • AISASやパーセプションフロー・モデルを駆使
    消費者の興味喚起から購入後の満足・口コミ拡散まで、段階的に認識を変える。

  • 共感ドミノ(ユーザーベネフィットの波及)
    「あ、これなら私にも必要かも」という共感を連鎖的に起こす施策を考え、SNSや口コミを巻き込むことでパーセプションチェンジを加速。

4. 成功事例から学ぶ共通点

  • 100円ショップ
    「安いから品質もそれなり」というイメージを「生活のアイデアが見つかる楽しい空間」に変えた。

  • 男性向け化粧品
    「男性がメイク?それは違和感」という常識を崩し、「誰でも手軽に清潔感や自信を得られるツール」にポジティブ転換。

  • 冷凍食品
    「手抜き」→「時間を有効活用し、家族との時間を増やす手段」。生活者が感じるメリットを具体的に言語化し、広告・パッケージデザイン・レシピ提案などで一貫性を保った。

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第7章 よくある質問(FAQ)

Q1. パーセプションとブランドイメージは同じ意味ですか?

いいえ。ブランドイメージは「そのブランドに抱く印象や連想」を指し、広告やデザインなど比較的短期で変化しやすい要素です。一方パーセプションは「生活者がブランドや商品をどう“価値づけ”しているか」という深層的な認識で、体験や口コミの積み重ねによって形成されるため、より本質的で長期的な概念です。

Q2. パーセプションギャップが生じると何が問題なのですか?

企業が伝えたい価値と生活者が感じ取っている価値にズレがあると、広告や販促に投資しても共感が得られず、購買やリピートにつながりにくくなります。結果として ROI が低下し、競合に顧客を奪われるリスクが高まります。

Q3. パーセプションを数値化して測定する方法はありますか?

代表的なのは (1) 定量アンケートで認識や印象をスコア化する、(2) インタビューで深層心理を掘り下げる、(3) SNS や口コミなど UGC をテキストマイニングしポジ・ネガ傾向を可視化する、の3手法です。複数の手段を組み合わせて定量と定性の両面から把握すると精度が上がります。

Q4. パーセプションフロー・モデル(PFモデル)とは何ですか?

消費者の購買行動を「現状→認知→興味→購入→使用→満足→再購入→口コミ」などの段階に分け、それぞれで“どんな認識変化が起きるべきか”を設計・可視化するフレームワークです。マーケティング全体を一貫したストーリーで組み立てられるため、部門横断の施策連携や KPI 設定が容易になります。

Q5. 既存のネガティブなパーセプションをポジティブに変えるコツは?

まず現状の認識を調査で正確に把握し、次に「本来提供したい価値」を再定義します。その上で、共感を呼ぶストーリーや体験を提供し、広告・パッケージ・UGC などあらゆる接点で一貫したメッセージを発信することが重要です。小さな成功体験(共感ドミノ)が連鎖する設計にすると、認識の書き換えが加速します。

Q6. パーセプション改善と認知度向上はどちらを先に行うべきですか?

相互補完関係にありますが、まず「目指すパーセプション」を明確に定め、その価値が伝わる形で認知を拡大するのが理想です。単に知名度だけを先行させると誤った認識が固定化され、後から修正コストが増大する可能性があります。

Q7. パーセプションを継続的に管理するにはどんな体制が必要ですか?

(1) 定期調査でギャップをモニタリングする仕組み、(2) マーケ・CS・開発など部門横断で PFモデルを共有し施策を連動させる体制、(3) VOC(顧客の声)や UGC をリアルタイムで収集・分析するデジタルツールの導入、の3点を整えると PDCA を回しやすくなります。

まとめ/次のアクション

パーセプションは、企業が抱いてほしい理想の姿と、消費者が現実に感じ取る価値との懸け橋となる概念です。商品やブランドの根源的な存在意義を的確に捉え、それを生活者視点でどう認識してもらうかが、マーケティングの核心と言っても過言ではありません。

  • パーセプション理解がもたらす価値
    単なる知名度向上を超えて、「どうすれば選ばれるか」を構造的に考えられるようになる。

  • フローモデルで全体像を設計する
    認識の流れを可視化するパーセプションフロー・モデルを活用すると、ギャップの発見や施策の連動がスムーズになる。

  • 調査と検証の継続
    アンケート・インタビュー・UGC分析を組み合わせ、定期的にパーセプションの変化をチェック。小さなギャップでも放置せずPDCAを回す。

  • パーセプションチェンジで市場を拓く
    カテゴリーの常識やネガティブイメージを覆すと、新しい需要やターゲット層が生まれる可能性が大きい。

パーセプションを戦略に組み込むことで、企業活動はより明確な方向性をもって展開できるはずです。もし今「広告費はかけているのに売上に直結しない」「高品質を自負しているのに市場評価が追いついていない」といった課題を感じているなら、まずは自社のパーセプションを正しく把握し、理想とのズレを埋める施策設計を始めてみてください。ターゲットが抱く価値認識を深く理解し、その認識を変える方法を体系的に考える――それが“選ばれる”ブランドへの最短ルートとなるでしょう。

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