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ミスコミュニケーションとは?原因・影響・防ぎ方を徹底解説

2025/05/24

ミスコミュニケーションとは?原因・影響・防ぎ方を徹底解説
コミューン編集部

コミューン編集部

ミスコミュニケーションとは、端的にいえば“行き違い”のことです。「あの資料、“なるべく早く”って頼んだはずなのに……」「言った/聞いていない」といった言葉が飛び交い、会議が果てしなく続く……ほんの小さな勘違いがプロジェクト遅延や顧客クレームを呼び込み、やがては会社の信頼・売上までも揺るがしかねない。ミスコミュニケーションは今や、ビジネスにおける大きなリスクと言っても過言ではありません。

本記事では 「ミスコミュニケーションとは何か」 を出発点に、その発生メカニズム、もたらす影響、そして個人と組織が取るべき具体策までを体系的に解説します。明日から使えるチェックリストや実例ベースのケーススタディも盛り込み、現場で即役立つヒントをお届けします。

1. ミスコミュニケーションとは何か

ミスコミュニケーションとは、情報の送り手と受け手の認識が食い違い、意図どおりに伝達・理解されていない状態を指します。会話・メール・チャットなど手段を問わず起こりやすく、当事者同士は「伝えたつもり」「分かったつもり」でいる点が厄介です。

類似概念との違いは次のとおりです。

  • ミスコミュニケーション
    認識ズレが発生している状態。
    例)締め切りの「今週中」が、ある人には金曜、別の人には日曜を指す。
  • ディスコミュニケーション
    そもそも意思疎通が行われていない状態。
    例)必要な報告や相談が一切ないまま作業が進む。
  • コミュニケーションギャップ
    文化・世代・バックグラウンドの違いが前提の食い違いを生む状態。
    例)海外チームと「報連相」の感覚が合わず誤解が生じる。

特にビジネス現場では、ミスコミュニケーション=直接的なコストと覚えておきましょう。行き違いの修正にかかる時間や再作業費用、さらには信頼失墜による機会損失まで含めれば、その影響は決して小さくありません。

2. ビジネスに潜む五つの典型原因

情報の省略

口頭やチャットで「例の件よろしく」とだけ伝える――これは5W1H(Who・What・When・Where・Why・How)の大半が欠落した状態です。依頼された側は「何を・いつまでに・どの程度の品質で」やればいいのか手探りになり、最終的に“思っていたアウトプットと違う”というズレが発生しがちです。

さらに、メンバーが経験や背景知識で勝手に補完するため、同じ案件でも複数の“解釈ブランチ”が生まれやすいのが厄介なポイント。結果として再作業や追加確認が必要になり、納期遅延やコスト増を招きます。対策は、依頼時に5W1Hをテンプレ化し、最低限「目的・成果物・締め切り」を明文化することです。

情報の歪曲

情報は人から人へ伝わるたび、“バケツリレー”のように形を変える性質があります。受け手は自分の価値観や過去の経験で意味づけを行うため、「部長が○○に関して懸念と言っていたらしい」が「部長はプロジェクトを白紙に戻したがっている」にまで膨らむことも。

こうした歪曲は噂話として爆発的に拡散し、組織の士気を下げたり、取引先に誤情報が流れて信用を失うリスクを生みます。特に階層の多い大企業や部門横断プロジェクトでは“伝言ゲーム劣化”が深刻です。歪曲を防ぐには、一次情報へのアクセス権を広く与え、要点をメモや録画で残す仕組みを整えることが不可欠です。

情報の一般化

「普通はこうでしょ?」「常識的に考えて……」という言葉に潜む罠が“情報の一般化”です。例えば締め切りの「今週中」――システム開発者は金曜日17時、営業担当は日曜日24時をイメージするかもしれません。また、品質基準でも「きれいに仕上げておいて」は、DTP担当なら1mm単位の微調整を想定し、営業はレイアウトさえ崩れなければ合格と思う場合があります。

このように“自分の当たり前”を他人も共有していると信じ込むことで、無自覚の認識ギャップが生じます。国籍・世代・職種が違えば“当たり前”は多様であることを前提に、数値・イメージ画像・プロトタイプなど具体物で認識を合わせる習慣が必要です。

確認・傾聴スキル不足

伝え手がダラダラと背景から語り、結論を最後にぼそっと言う――聞き手が途中で情報過多に陥り要点を取りこぼす典型例です。逆に、受け手は分からない箇所があっても「今さら聞き返したら怒られるかも」と遠慮し、そのまま作業を開始してしまうことが少なくありません。

この双方向のスキル不足が重なると、最終成果物のズレ・再説明・やり直しの悪循環に突入します。傾聴面では「要約して返す」「わかったフリをしない」などコーチング手法が有効。伝達面では結論→理由→詳細のPREP法で話す、視覚補助資料を添えるなど、相手の情報処理負荷を意識した話し方が鍵となります。

心理的安全性の欠如

「質問したら無能と思われるのでは」「忙しそうでチャットを投げにくい」――こうした空気感が、組織内に暗黙の“質問禁止バリア”を作ります。その結果、メンバーは推測で行動し、誤解が温存されたまま進行。最終段階でミスが発覚すると、責任のなすり合いが起こり、さらに安全性が低下する負のスパイラルに陥ります。

Googleが提唱した“心理的安全性”は、高パフォーマンスチームの必須条件。上司が「分からないことは必ず聞いて」と明言し、指摘や質問をポジティブに評価へ結びつけることが、ミスコミュニケーションを根本から減らす近道です。

 

これら五つの要因はいずれも無意識で発生するため、「自分のチームは大丈夫」と構えた瞬間が最も危険です。日常業務のなかでチェックリストを活用し、継続的に“ズレの芽”を摘む仕組みを持つことが、ビジネスリスクを最小化する鍵となります。

3. 行き違いが招く損失とリスク

工数・コスト増

ミスコミュニケーションが発生すると、まず真っ先に跳ね返ってくるのが手戻りの工数です。例えば要件を誤解したまま3日かけて作った資料が使えず、一から作り直し――その時点で作業時間は単純に倍、残業や休日出勤が発生し、人件費はあっという間に膨らみます。さらに修正を確認するための追加会議・レビューも必要になり、ミーティングコストや管理職の拘束時間が増加。こうした目に見えにくい「間接コスト」まで合算すると、当初見込んだコストを数倍オーバーするケースも珍しくありません。

品質低下・納期遅延

誤った仕様のままプロセスが進行すると、「完成直前でやり直し」「テストでバグが大量発生」といった事態に直結します。結果としてリリース延期や品質基準の妥協が必要となり、顧客の期待値を下回るプロダクトが市場に出ることも。納期遅延が連鎖すると、販売計画の見直しや追加プロモーション費用が発生し、最終的には顧客満足度の大幅低下につながります。BtoB取引では納期遅延が違約条項に抵触し、ペナルティ費用が発生するリスクも見逃せません。

信頼失墜・機会損失

一度の行き違いでも、顧客や取引先は「この会社は約束を守れない」「担当者同士で話が通じない」と評価を下します。信頼回復には時間とコストが掛かるうえ、競合に乗り換えられるチャンスを与えることになりかねません。また、社内でも「情報共有が甘いチーム」とレッテルを貼られると、重要案件から外される、提案が通りにくくなるなど将来のビジネスチャンスを失う機会損失が発生します。数字に現れにくい損失ほど長期的に重く響くことを忘れてはいけません。

チーム士気の低下

「言った言わない」の水掛け論が続く環境では、メンバー同士の信頼が削られ、心理的安全性が急速に低下します。互いにミスを恐れて質問や意見が出にくくなり、イノベーションは停滞。ストレスを抱えたメンバーは心的負担から生産性が下がり、最悪の場合は離職へ――採用・教育コストが再び発生する悪循環に陥ります。加えて、ネガティブな空気は新規採用の応募者にも伝わり、人材の質・量の確保が難しくなるという副次的リスクも生みます。

 

ミスコミュニケーションとは、ビジネスリスクです。手戻り工数や残業代といった目先のコストだけでなく、品質・信頼・人材など長期的な資産が蝕まれる点が最大の脅威です。だからこそ、原因分析と仕組み化による根本対策に投資する方が、長期的にははるかに低コストで済む――これを経営レベルの共通認識として持つことが、組織の持続的成長には不可欠です。

4. 今日からできる個人レベルの改善策

5W1H+数字で語る

「なるべく早くデータをください」では、相手は“いつ・何を・どれくらい”を自分の経験値で補完するしかありません。「5月24日17時までに、PDF形式で10ページのレポートを提出してください」と具体化すれば、期限・形式・分量が一意に定まり、解釈の余地はゼロ。5W1H(Who・What・When・Where・Why・How)に“数値・単位”を添えるのがポイントです。

共通理解の“チェックバック”

伝えた内容が本当に届いているかを確認する最短ルートは復唱です。会話の終わりに「では、〇〇という認識でよろしいですか?」と聞き、相手に要点を口に出してもらいましょう。医療や航空といった命に関わる現場でも採用される“チェックバック”は、ビジネスでも絶大な効果を発揮します。

確認を恐れない

質問は「理解できなかった自分の落ち度」ではなく、品質保証のプロセスです。誤解したまま進めた作業の手戻りコストは質問の数十倍。もし聞き返しにくい空気があるなら、「確認させてください」が組織ルールになるよう上司へ働きかけを。

資料・図解で補完する

口頭説明は流れ去る一方通行。フロー図・箇条書き・スクリーンショットなど視覚情報を添えるだけで、記憶定着率が跳ね上がります。特に複雑な工程や数値の多い仕様は、ドキュメント化して共有リンクで残すのが鉄則です。

主観語を捨て、定量化する

「多めに発注」「早めに返信」「価格は安く」――こうした主観語は人によってレンジが異なるため、後から必ず揉めます。「発注個数は前月比15%増」「24時間以内に返信」「単価は上限2,000円」と数値・期日・基準で言語化すれば、余計な解釈は入りません。

これら五つを日常のルーティンに落とし込むだけで、ミスコミュニケーションによる行き違いは驚くほど減少します。今日のチャット、メール、会議からさっそく試してみてください。

5. 組織として取り組む仕組み化ポイント

1. コミュニケーションルールの策定
まず土台になるのは、誰が読んでも迷いなく使える共通ルールです。

  • 依頼テンプレート:依頼内容・目的・締め切り・添付資料欄などを標準化

  • 議事録フォーマット:決定事項/To-Do/担当/期限を一目で把握できる形に統一

  • チャット利用ガイドライン:「相談」「承認」「FYI」などタグ付けルールを明文化
    ルールを“紙”で終わらせず、社内ポータルやSlackのピン留めに常時掲示し、検索しやすい状態を保ちます。

2. 質問歓迎文化と心理的安全性の醸成
ルールより強いのは“空気”です。上司やプロジェクトリーダーが

「分からないことは必ず聞いてください。質問は評価ポイントです」
と公言し、実際に質問・指摘をプラス評価へ反映します。失敗を責めず、学びとして共有する姿勢が定着すれば、確認コストより手戻りコストの方が高いことを全員が肌感覚で理解できます。

3. 記録が残るツール活用
「言った/言わない」を根絶するには、口頭+テキストの二重化が効果的。

  • チャットで要点を抜粋して残す

  • タスク管理ツールで期限と担当を紐づける

  • 重要決定は議事録リンクを貼って周知
    口頭だけで済ませる文化をなくし、「議事録リンクが貼られるまで完了しない」を合言葉にします。

4. 失敗事例の共有と学習
毎月1回、部署横断で**“今月の学び”ミーティング**を実施。

  1. 発生したミスコミュニケーション事例

  2. 根本原因

  3. 再発防止策
    を3スライドにまとめて共有し、社内ナレッジベースへ蓄積。次回以降、同じミスが起きた瞬間に「解決策リンク」が提示できる状態を目指します。

5. 継続的モニタリングと改善
プロジェクト単位で認識齟齬チェックリストを運用し、終了時にKPT(Keep・Problem・Try)で振り返り。

  • Keep:機能したルールやツール

  • Problem:齟齬が起きたポイント

  • Try:次サイクルで試す改善策
    を記録し、次プロジェクトのキックオフで必ず参照。これを回すことで、ルールは生きた仕組みへアップデートされ続けます。

鍵は「人に依存しない再現性」です。明文化されたルールとログが残るツールを組み合わせ、誰が入っても同じ水準でコミュニケーションが取れる――そんな“ミスが起こりにくい環境”を組織全体で作り上げましょう。

まとめと次のアクションプラン

ミスコミュニケーションは誰でも、どこでも、いつでも起こり得る普遍的リスクです。しかし

  • 5W1Hと数値で語る
  • 復唱でチェックバックする
  • 質問を歓迎する文化を作る
  • ルールとツールで仕組み化する

――たったこれだけの“基本”を徹底すれば、行き違いは大幅に減り、仕事のスピードと信頼は劇的に向上します。

まずは今日、あなたのチャットやメールから曖昧語を取り除き、最後に「認識に誤りがないかご確認ください」と一文添えてみてください。小さな一歩が、大きなトラブルを未然に防ぐ第一歩になります。伝える勇気と確認のひと手間――それが、組織を強くする最も確実な投資です。

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