コラム
社内コミュニティ
「非購買行動」こそブランド理解のカギ。Commune Engage が描くロイヤルティプログラムの新潮流
2025/12/04

顧客の生活行動は多様化し、企業と生活者の関係はオンライン・オフラインを横断しながら、より複雑で連続的なものへと変化しています。そんな中で、ロイヤルティプログラムはもはや「購買回数を増やすための仕組み」だけではなくなっています。こうした背景から、近年は“非購買行動”にこそブランド理解の鍵があるという視点が注目を集めています。
Communeが提供するCommune Engage は、LINEミニアプリを基盤とし、気軽に参加できる導線設計と多様な行動データの取得を特長としています。 SNSでの発信、イベント参加、お気に入り登録、アンケート回答などなど。 購買に至るまでの行動を丁寧に捉え、ブランドとの関係性をデータとして蓄積していく仕組みが評価されています。
本記事ではコミューン・コミュニティラボ所長黒田悠介が、Engage 担当の近藤翔太に「ロイヤルティプログラムの再発明」について聞きました。
(取材・編集:澤山モッツァレラ[Commune])
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豊富な経験を持つ専任チームが、戦略設計からKPI設定、運営実務の代行まで一貫サポート。
成果につながるコミュニティ運営を実現します。
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目次
ロイヤルティプログラム導入企業が増えているワケ
黒田: 最初に、今回のテーマであるロイヤルティプログラムの現状について伺います。各社で導入が増えている印象がありますが、背景にはどんな変化があるのでしょうか。
近藤:クライアント様に伺う限り、背景は大きく分けて二つあると考えています。一つは、企業が主体的にファーストパーティーデータ、ゼロパーティーデータに近い情報を取得する動きが加速していること。
もう一つは、自社の「場」に顧客のアテンションを引き続けたいニーズがあることです。商品やサービスが増え、生活者が接触するチャネルも多様化していますよね。その中で、自社から継続的に働きかける接点を確保する重要度が高まったが大きな理由です。
以前は、ウェブ広告などでの一時的な獲得が主眼でした。今は、LTVを維持・拡大する際に「どれだけ継続的な注意を引き続けられるか」が重要になっています。ポイントやインセンティブが、そうした行動を後押しする仕組みとして機能しているわけです。
黒田:たしかに。購買という“結果”だけを追っていると、行動の手前にある体験や関心が見えなくなる。そこを可視化しようとする企業が増えている印象があります。
近藤:購買だけを指標にすると、「買った/買わなかった」以外の情報が落ちてしまいます。比較・検討、SNS での発信、イベント参加など、購買の前後に存在する行動には、顧客の興味・熱量が表れます。そこに価値を置く企業が増えていると感じています。
顧客行動が多様化するなかで、購買基点の施策だけでは設計が難しくなっています。だからこそブランドに関わる多様な行動を捉え、それに報いるという思想が、ロイヤルティプログラム再評価の背景になっているのだと思います。
黒田: その“再評価”がより加速しているのは、Cookie規制など、データ取得を取り巻く状況の変化も関係しているのでしょうか。
近藤: そうですね。サードパーティーデータに依存できなくなり、企業が自らデータを取りにいく必要性が増しています。一方、データを「買う」コストはどんどん上がっています。だからこそ、自社で継続的に接点を持てる仕組みをつくる動きが強まっています。
黒田: なるほど。 “知るため”だけではなく、“自分たちで関係をつくり続けるため”のロイヤルティプログラム。そこを支えるのがCommune Engage の役割になっている、と。
近藤: ロイヤルティプログラムは単なるポイント制度ではなく、「ブランドと生活者の関係性を更新する装置」へと進みつつあります。その背景にあるのが、アテンションの獲得競争、データ取得環境の変化、LTV式思考の浸透、といった要素だと考えています。
「非購買行動」に光を当てる
黒田:ポイントプログラムという仕組み自体は昔からありますが、Commune Engage としてはどんな部分を重視しているのでしょうか?
近藤:そうですね、企業が自社へのロイヤルティを高めるために独自ポイントを発行し、顧客がそのポイントを使ってお得にサービスを受けられる。ここまでは従来型のプログラムと同じです。ただ、私たちが特にご評価いただいているのは、「購買と購買のあいだ」にある行動をポイント化できる点です。
たとえばSNSでのシェアや、ECサイトでの商品のお気に入り登録、あるいはイベントへの来場など、購入以外の行動を“貢献”として可視化できる。これまで見落とされていた非購買行動をトラッキングし、購買行動との相関関係を探ることができる点が大きな特徴です。
黒田:なるほど。購買行動の前後にある“関与行動”や“貢献行動”を可視化していくということですね。
近藤:そうです。たとえば、LTVの高いユーザーは平均して「お気に入りを5商品登録している」といった傾向が見えたとします。であれば、他のユーザーにもその行動を促すことで、結果的に購買機会を増やすことができる。こうした“行動と成果の相関”をデータから解き明かしていけるのが、Commune Engage の面白さでもあります。
黒田:Xでいう「10人フォローしたユーザーは離脱しにくい」という話に近いですね。ブランドごとの“マジックナンバー”が見つけられる可能性がある。
近藤:まさにそうです。各ブランドにとってのマジックナンバー、つまり「LTVを高めるための重要な行動パターン」を解き明かしに行く。これがCommune Engage が目指している本質です。
黒田:企業にとっては顧客理解が深まり、ユーザーにとっては自分の“貢献”が見える。双方にメリットがありますね。
近藤:はい。直接的な購買行動だけでなく、その前後の行動にもきちんと報いることで、顧客との関係がより長く、温かいものになっていくと思っています。
LINEミニアプリで参加ハードルを下げる
黒田: ロイヤルティプログラムの前提として「非購買行動の捉え方」が重要だという話がありました。ここで気になっているのが、Commune Engage が LINEミニアプリで提供している理由です。一般的には、ブランド独自アプリという選択肢もあると思いますが、なぜLINEなのでしょうか。
近藤:一番の理由は参加ハードルを最小化するためです。会員プログラムにおいて、最初の参加・導入プロセスは離脱がいちばん起きやすいポイントです。そこをどれだけ滑らかにできるかが、継続利用に大きく影響します。
LINEミニアプリであればQRコードを読み取り、2クリック程度で開始できるという利点があります。これにより、氏名・住所・メール登録・アプリDL…といった面倒なステップを踏まずに、ユーザーが体験を始められます。
黒田:2クリックで始められるのは大きいですね。ブランド側からすると、せっかく店頭やSNSで案内しても、アプリDLや会員登録で落ちてしまうケースは多いですよね。
近藤:あるToCサービスのアプリ導線では、レジで「アプリをDLすれば500円クーポンがもらえる」と案内されたのですが、QR読み込み→ DLを待つ → 会員情報を登録(氏名・住所・電話番号)→ メール認証でメールアプリ開く → 再ログイン → 利用開始 ……と、ここでようやくクーポン読み込み画面になりました。この時点で「やっぱりやめよう」と思ってしまうのは自然だと思います。
LINEミニアプリはすでにLINEアカウントを持っていれば、そのまま開始できます。店舗・イベントなどのリアルな接点でも、QRで入れる導線はかなり有効です。離脱率を下げるという意味で、LINEはとても合理的だと考えています。
黒田:ミニアプリは“アプリを育てる”という負荷も小さく、ユーザー側にも負担が少ない。ブランドと生活者の関係を継続させる仕組みに適していると言えそうです。
近藤: LINEはすでに生活インフラなので、新しく習慣をつくる必要がないという点も大きいです。購買のみのトラッキングだと、何をしてほしいかトリガーが出せない。非購買行動をトリガーにする設計ができるため、生活者が気軽に参加し、行動を続けやすいわけです。
黒田:LINEミニアプリを起点にすれば、OMO(Online Merges with Offline)も組みやすそうですね。
近藤:イベント・店舗・ECなど、タッチポイントをまたいだ設計も可能です。たとえば、店頭でのQRスキャンからプログラムに参加させ、SNSやECでの行動をそのままポイント化する、といった連動が自然にできます。これにより、“買う瞬間”だけでなく、“関わっている時間そのもの”をデータとして理解できるようになります。 LINEミニアプリは、「関係の入口を広げ、行動を積み上げる」 という思想にフィットしていると思います。
導入事例から見える特徴
黒田:実際の導入企業についても伺いたいです。各社はどんな目的や課題感からCommune Engage を採択されているのでしょうか?
近藤:共通しているのは、「マジックナンバー的な観点」を持っている点ですね。つまり、購買以外の行動とLTV(顧客生涯価値)の相関を解き明かしたいという意識です。ただ、各社で着目しているチャネルは異なります。
たとえば玉乃光酒造さんの場合は、「どこで、どのような貢献行動を取ってもらうか」という観点で設計しています。年に一度の日本酒イベント「たまこく」への参加や、EC・直営店・スーパーマーケットなどでの購買をすべて紐づけて可視化したいという意図です。年一回の“酒フェス”のような非日常的接点と、日常の購買行動の両方を軸に見ていく形ですね。
黒田:なるほど、アパレル企業様の例ではいかがでしょうか。
近藤:はい。アパレル企業様は、主に二つの行動データに注目しています。ひとつはInstagramでの発信、もうひとつはイベントへの来場です。
その企業様は直営店とECをどちらもShopifyで管理しているので、購買データの基盤は共通なんです。そこにイベントやSNSでの発信データを紐づけて、「行動」と「購買」の因果関係を解き明かしたい、という狙いがあります。
黒田:広い意味での顧客理解ですね。モチベーションやジャーニーの理解といった、定性的な部分まで踏み込みたいという。
近藤:そうですね。単にデータを取ることが目的ではなく、自社を愛してくれている人、強く行動を起こしてくれている方にきちんと報いたいという気持ちも強いですね。
黒田:なるほど。先ほどの“報いる”という話につながりますね。
近藤:企業側としては、自社のマジックナンバーを特定しLTVを高める施策を見出すと同時に、熱量の高いファンにきちんと報いる仕組みを作りたい、という思いがあります。そうした行動を可視化し、報酬設計で応えることで、ブランドへの思いをより強めてもらいたい。
黒田:私もそのブランドが大好きなんですが、様々な事情で購入までは至らず、SNSで紹介したり人に薦めたりする形で“応援”しています。そうした購買以外の行動が評価されるとユーザーとしても嬉しいですし、企業側も新しい気づきを得られますよね。
メーカー活用の可能性
黒田:小売や飲食といった業界では導入が進みそうですが、メーカーでの活用可能性についてはどうお考えですか?
近藤:今後の注力領域ですね。小売や飲食は自社で決済タッチポイントを持っているため、オンライン・オフラインを統合しやすいですが、メーカーはそこが弱い。小売を介して販売するため、自社では購買データを直接取れないのが現状です。
黒田:たしかに、メーカーは最も“顧客から遠い”立場にあります。
近藤:たとえばマツモトキヨシ様やココカラファイン様のアプリでは、リテールメディアとして取得されたデータを提供しています。小売がメディア化し、データ単価もどんどん上がっている。結果として、メーカーは自社でファーストパーティーデータを取りに行く動機がどんどん強まっているんです。
黒田:自前でデータを取れないと、マーケティングコストが高止まりしてしまうわけですね。
近藤:そうですね。加えて、交渉力の弱いメーカーは小売に依存せざるを得ないため、ますます自立的なデータ基盤を作る必要性が出てきています。Commune Engage のように購買以外の行動データを取れる仕組みは、メーカーにとって非常に大きな意味を持つと思っています。
黒田:ファーストパーティーデータの話が中心でしたが、ゼロパーティーデータ、たとえばアンケートの回答などもCommune Engage で取れるものですか?
近藤:はい、アンケートに答えてもらうとポイントが入る仕組みを用意しています。これは非購買行動の一つとして組み込まれていて、ユーザーとの対話を通じたデータ収集にも活かせます。購買データを持たない企業が、顧客理解を深めてロイヤルティを育てるための新しい手段として、Commune Engage を活かせると思っています。
黒田:ここまでの話で、ファーストパーティーデータの重要性が何度も出てきましたが、改めて「なぜ今それが求められているのか」を整理しておきたいです。
近藤:ポイントは3つあります。まず1つ目はサードパーティーデータが取れなくなっていることです。Cookie規制やプライバシーポリシーの厳格化によって、これまで低コストで取得できていた個人データが使えなくなりつつある。
2つ目は、データを「買う」コストが上がっていることです。先ほど話に出たように、小売企業が自社アプリをメディア化して、取得した購買データをメーカーに販売している。Tカードのようなデータビジネスがどんどん増え、データ単価が高騰しています。
黒田:「外部から買うにも高い」「内部でも取れない」で板挟み状態ですね。
近藤:そうなんです。そして3つ目が、今後はChat GPTのようなAIエージェントや口コミ比較サイトなど、仲介的な仕組みを通じて消費が行われるようになることです。結果、安全なブランドが選ばれやすくなり、より選ばれるブランドがさらに選ばれていく“寡占化のスパイラル”が進むと思います。
黒田:なるほど。つまり、外部アルゴリズムの“気まぐれ”によって、自社の売上や露出が左右されるリスクが高まるわけですね。
近藤:はい。だからこそ、自社で直接顧客とつながり、働きかけられるアセットを持っておく必要がある。これがファーストパーティーデータを取る最大の理由です。自分たちの手で関係性をコントロールできる範囲を広げておかないと、「選ばれない企業」になってしまう危険があると思います。
行動の“先”を育てるロイヤルティプログラムへ
黒田:最後に、今後の機能拡張やアップデートの構想についてお聞きしたいです。
近藤:ありがとうございます。今後やるべきことは大きく二つです。
一つは、トラッキングできる行動のバリエーションを増やすこと。たとえば、オフラインでのチェックイン、アフィリエイト連携、TikTokなど新しいチャネルへの対応など。どのチャンネルで誰がどんな行動を取るとポイントが入るか。この「行動を媒介にしたトラッキング構造」を、より多様にしていきたいと考えています。
もう一つは、リテンション(継続利用)の仕組みを強化することです。たとえば、プログラムに登録したものの一人しか行動し続けていない状態は、不健全だと考えています。より多くの方が継続的に参加してくれるようにするための仕掛けを設ける必要があります。
黒田:たとえばどういった手法が考えられますか?
近藤:一旦、暫定的に入れているのはログインボーナス機能です。連続ログイン日数に応じてポイントがもらえる仕組みで、一定日数で少し多めのポイントがもらえるようにしています。
ゲーミフィケーションやリテンション施策を通じて、“継続行動を促す体験”を設計する、という方向性になると思います。ユーザーが「もう一度開きたくなる」「続けたくなる」仕組みを自然に組み込んでいくことで、プログラム自体の健全性とLTVの双方を高めたいと考えています。
黒田:あらゆる行動をゲーミフィケーションの文脈で再設計していくと、行動分析にもつながりそうですね。最後に、少し抽象的な質問をさせてください。企業と生活者の関係性って、今後どう変化していくと思いますか?
近藤:より“直接的な関係”に近づいていくんだろうなと思います。企業と顧客の間にいろんなプラットフォームが介在してきましたけど、結局最後はダイレクトにつながる方向に向かう。
とはいえ、私自身が生活者の立場で「この企業は信頼できる/できない」という物差しで見ているかというと、そうではなくて。どちらかというと「AとBならAを選ぶ」みたいに、相対的に判断している感覚がありますね。
黒田:わかります。選択肢が増えすぎた今、主導権は完全に消費者側に移っていますもんね。
近藤:そうですね。だからこそ単に販促ではなく、選ばれ続けるための関係構築の手段なんだと思います。情報量が爆発的に増えている中で、生活者自身も常に多くの選択肢に晒されている。競合ももはや同業種だけではなくて、スマホゲームやNetflixのような“時間の奪い合い”も起きているわけです。
黒田:なるほど。信頼とは「裏切られない」という期待値の安定に近くなっているのかもしれませんね。
近藤:そうですね。生活者は「考えずに選べる安心感」を求めている。企業側はその信頼を積み上げるために、いかに日常の中で自然に寄り添えるかが鍵になってくる。結局、「このジャンルはこのブランドでいいや」という状態をどう作るか。選択の自動化が進む時代だからこそ、その“無意識の信頼”を得られる関係を築くのが、これからの企業に求められる姿だと思います。
黒田:非常に示唆的なお話でした。ありがとうございました。
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