コラム
マーケティング
従業員エンゲージメント向上の成功事例。明日から使える施策と失敗しないための注意点
2025/11/24

従業員エンゲージメントとは、組織や仕事への「自発的な貢献意欲」と「心理的な結びつき」を指します。
人材の流動化や労働人口の減少が進む今、社員が前向きに働ける環境をつくれるかどうかは、企業の成長に直結する重要テーマになっています。一方で、「サーベイを取っても改善につながらない」「福利厚生を整えても効果が見えない」と悩む企業は少なくありません。エンゲージメントは単発施策だけで高まるものではなく、コミュニケーション、組織文化、マネジメントの質が総合的に影響するためです。
本記事では、こうした課題を抱える経営者・人事担当者に向けて、従業員エンゲージメントの基本概念から国内外の成功事例、実践に向けたステップまでを簡潔に整理します。明日からの改善に役立つ視点をお届けしますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
従業員エンゲージメントとは?その定義と本質
従業員エンゲージメントとは、従業員が組織に対して抱く“自発的な貢献意欲”と“心理的なつながり”を指します。単なる「仕事が好き」「職場に満足している」といった感情的な満足度とは異なり、組織のビジョンや価値観に共感し、「この会社の成功に自分も関わりたい」と前向きに行動する姿勢そのものがエンゲージメントの中核です。
たとえば、同じ業務を行っていても言われたことだけをこなす状態と、目的を理解し、より良いやり方を自ら考えて動く状態では、成果も組織の温度も大きく変わります。後者を生む土台が、従業員エンゲージメントです。
よくある誤解:「従業員満足度(ES)」との決定的な違い
従業員エンゲージメントは「従業員満足度(Employee Satisfaction)」と混同されることが多い概念ですが、両者は本質的にまったく異なります。
まず従業員満足度は、従業員が 会社から与えられるもの 、たとえば給与、福利厚生、職場環境などにどれだけ満足しているかを測る指標です。言い換えると、企業から従業員への“一方向の提供”に対する評価です。給与に満足していたり、環境が快適だと感じていたりしても、それが必ずしも「仕事への熱意」や「組織への貢献姿勢」につながるわけではありません。
一方で従業員エンゲージメントは、従業員が会社の目標に共感し、自ら進んで貢献しようとする意欲や熱量を示します。企業と従業員のあいだで生まれる“相互の関係性”を測るものといえます。「目標達成に貢献したいと思うか」「自分の仕事に誇りを持てているか」といった感覚が中心となり、組織の成果と強く結びつきます。
つまり、従業員満足度は「居心地の良さ」の指標であり、従業員エンゲージメントは「貢献意欲」の指標です。満足度が高くてもパフォーマンスが必ずしも上がらないことがある一方、エンゲージメントが高い組織は、生産性や業績に明確なプラスの影響をもたらします。
データが示すエンゲージメントの重要性
エンゲージメントの重要性は、感覚論ではなく、具体的なデータによって裏付けられています。世界的な調査会社Gallupが2020年に発表したメタ分析によると、エンゲージメント・スコアが上位25%の企業は、下位25%の企業と比較して以下の成果を上げています(参照)。
- 生産性: 21%向上
- 顧客評価: 10%向上
- 売上: 20%向上
- 離職率: 最大59%低下(離職率の高い組織の場合)
これらの数字は、従業員エンゲージメントへの投資が、単なるコストではなく、企業の競争力を根底から支える戦略的な投資であることを明確に示しています。
なぜ今、従業員エンゲージメントが経営課題なのか?
従業員エンゲージメントがこれほどまでに注目される背景には、日本企業を取り巻く深刻な環境変化があります。もはやエンゲージメントは「あれば良いもの」ではなく、「なければ生き残れない」経営の必須要素となりつつあります。
人的資本経営へのシフト、情報開示の義務化
2023年3月期決算から、上場企業などを対象に「人的資本の情報開示」が義務化されました。これは、従業員を単なる「コスト」ではなく、企業の価値創造の源泉である「資本」と捉え、その価値を最大化する経営(人的資本経営)への転換を国が後押ししていることを意味します。
開示項目には「従業員エンゲージメント」も含まれており、投資家や株主は、企業の持続的成長性を判断する材料としてエンゲージメント・スコアを注視し始めています。つまり、エンゲージメントの向上は、社内だけの問題ではなく、企業価値を左右する重要なIR活動の一環となっているのです。
働き方の多様化と、コミュニケーションの希薄化
リモートワークやハイブリッドワークの普及は、働き方に柔軟性をもたらした一方で、新たな課題も生み出しました。特に、偶発的な雑談や非公式なコミュニケーションが減少し、従業員同士のつながりや、組織への帰属意識が希薄化しやすくなっています。
ある調査では、リモートワーク環境下で「孤独感を感じる」と回答した従業員が約40%にのぼるという結果も出ています(参照)。このような状況下で、意図的に従業員同士のつながりを創出し、組織との心理的な結びつきを強化するエンゲージメント施策の重要性は、かつてなく高まっています。
労働人口の減少と人材獲得競争の激化
ご存知の通り、日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少を続けており、企業間の人材獲得競争は激化の一途をたどっています。優秀な人材を惹きつけ、定着させるためには、もはや高い給与や安定性だけでは不十分です。
現代の働き手、特にミレニアル世代やZ世代は、「自己成長の実感」「社会への貢献」「良好な人間関係」といった要素を重視する傾向が強いとされています。従業員エンゲージメントを高め、「この会社で働き続けたい」と思える魅力的な組織文化を築くことこそが、最も効果的なリテンション戦略(人材定着戦略)となるのです。
経営指標で語るメリット――エンゲージメントがもたらす4つのリターン
従業員エンゲージメントへの投資は、具体的にどのような経営上のリターンをもたらすのでしょうか。ここでは、エンゲージメントが企業の財務・非財務指標に与える4つのポジティブな影響を、データと共に解説します。
① 生産性の向上とイノベーションの促進
エンゲージメントの高い従業員は、自身の業務にオーナーシップを持ち、より良い成果を出すために創意工夫を凝らします。その結果、個人のパフォーマンスが向上するだけでなく、チーム全体の生産性も向上します。前述のGallup社のデータが示す通り、その差は**最大21%**にも及びます。
さらに、心理的安全性が確保されたエンゲージメントの高い組織では、従業員が失敗を恐れずに新しいアイデアを提案しやすくなります。これが、企業のイノベーションを促進し、新たな事業やサービスを生み出す土壌となるのです。
② 離職率の低下と採用コストの削減
エンゲージメントの高い従業員は、自社への愛着と帰属意識が強く、離職する可能性が低いことが分かっています。エンゲージメント・スコアが高い企業では、離職率が24%~59%も低いというデータは、その強力な効果を物語っています(Gallup社)。
従業員1名の離職・採用にかかるコストは、年収の30%~50%とも言われます。離職率を1%改善するだけでも、企業にとっては大きなコスト削減に繋がります。エンゲージメント向上は、採用コストと教育コストを抑制し、経営の安定化に直接貢献するのです。
③ 顧客満足度(CS)と売上の向上
「従業員満足なくして顧客満足なし」という言葉がありますが、エンゲージメントはまさにこの言葉を体現します。エンゲージメントの高い従業員は、自社の製品やサービスに誇りを持ち、情熱をもって顧客に接します。その熱意は顧客にも伝わり、結果として顧客満足度やブランドロイヤルティの向上に繋がります。
実際に、エンゲージメントの高い企業は、顧客からの評価が10%高く、売上も20%高いという相関関係が確認されています。従業員の熱意が、巡り巡って企業の収益を押し上げるのです。
④ 従業員のウェルビーイング向上
エンゲージメントは、企業の業績だけでなく、従業員自身の心身の健康(ウェルビーイング)にも良い影響を与えます。仕事へのやりがいや自己成長の実感は、ストレスを軽減し、メンタルヘルスを良好に保つ上で重要な要素です。エンゲージメントの高い職場は、従業員が活き活きと働ける健全な環境であり、それがさらなる生産性向上に繋がるという好循環を生み出します。
潜むリスクと克服戦略――施策が形骸化する「4つの罠」
エンゲージメント向上の重要性を理解し、いざ施策を導入しようとしても、多くの企業が陥りがちな「罠」が存在します。ここでは、よくある失敗パターンとその克服戦略をセットで解説します。
測定が目的化してしまう
エンゲージメントを可視化するためにサーベイ(調査)は有効なツールですが、これを実施するだけで満足してしまうケースが後を絶ちません。従業員は何度もアンケートに答えさせられるものの、会社からのフィードバックや具体的な改善アクションが見えないため、「またか」と疲弊し、形骸化してしまいます。
サーベイはあくまで「健康診断」と位置づけ、結果を基にした対話とアクションプランの策定までをワンセットで設計しましょう。結果を全社や各部署に透明性高く共有し、課題解決のためのワークショップを開催するなど、従業員を巻き込んだ改善プロセスを構築することが不可欠です。
人事に丸投げしてしまう
エンゲージメントは全社的な課題であるにもかかわらず、「これは人事部の仕事」と捉え、経営層がコミットしないケースです。経営層からの明確なメッセージや本気度が伝わらなければ、現場の従業員も施策を「やらされ仕事」と感じてしまい、本質的な変化は生まれません。
経営層が自らの言葉で、「なぜエンゲージメントが重要なのか、会社としてどこを目指すのか」を繰り返し発信します。経営会議のアジェンダにエンゲージメントを定期的に取り上げ、進捗をレビューする体制を整えることで、経営の本気度を社内に示します。
現場のキーパーソンを巻き込めていない
従業員のエンゲージメントに最も大きな影響を与えるのは、直属の上司であるマネージャーです。しかし、マネージャー自身が施策の目的を理解していなかったり、多忙を理由に関与できなかったりすると施策は現場に浸透しません。
マネージャー向けの研修を実施し、エンゲージメントの重要性や、1on1ミーティング、フィードバック、目標設定といった具体的なスキルを習得する機会を提供しましょう。また、マネージャーの評価項目に「部下の育成」や「チームのエンゲージメント」を加えることも有効です。
単発の施策で終わってしまう
社内運動会や懇親会といったイベントは、一時的に組織の一体感を高める効果はありますが、それだけでエンゲージメントが継続的に向上することはありません。根本的な課題(人事評価制度、コミュニケーションの仕組みなど)に手つかずのまま、イベント頼りの施策に終始してしまうと、効果は長続きしません。
エンゲージメント向上を継続的なプロセスとして捉え、長期的な視点でロードマップを描きましょう。イベントなどの「点」の施策と、コミュニケーションの仕組み化や制度改定といった「線」の施策を組み合わせ、組織文化そのものを変革していくアプローチが求められます。
国内外の成功事例と数字
理論やデータだけでなく、実際に企業がどのようにエンゲージメント向上に取り組んでいるのかを見ていきましょう。ここでは、BtoCとBtoBから、特筆すべき成功事例を2社ご紹介します。
事例1:スターバックスコーヒージャパン(BtoC)
スターバックスの最も強力な施策は、パートナー全員が“Our Mission / Promises / Values” を自分の言葉で語れる文化を徹底して育てていることです。「人がブランドをつくる」価値観の内面化とストーリーテリングができることが、同社の従業員エンゲージメントを大きく高めています。(参照)
主な施策
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創業ストーリー(パイクプレイスの“鍵”)などの象徴的メタファーを通じ、価値観を共有。
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採用段階から“価値観の一致”を重視した選考。
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本社パートナーも店舗研修を行い、顧客体験の源泉を身体で理解する仕組み。
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“Have Fun”“Work Life Blend”といった世界観を、日常行動レベルまで落とし込む。
成果:価値観の共通言語が強固になり、役職・雇用形態・部門を超えた一体感(One Starbucks)が実現。ブランド体験の質が高い水準で均質化し、離職率の低さ・顧客満足の高さにつながっている。
事例2:株式会社LIXIL(BtoB)
LIXIL社は、「従業員一人ひとりが誇りを持って働ける環境」を企業成長の中核と位置づけ、PurposeとBehaviors、従業員の声を起点にしたEmployee Listening、ウェルビーイング・EX(従業員エクスペリエンス)施策を三位一体で推進しています。年次サーベイ「LIXIL Voice」を軸に、トップとの対話機会やイントラ整備、表彰制度・人事制度改革まで連動させることで、エンゲージメント向上と組織活性を実現しているのが特徴です。
① Purpose/BehaviorsとEmployee Listening
LIXILは、企業の存在意義である「LIXIL’s Purpose」と、全従業員に共通する行動規範「LIXIL Behaviors」を掲げ、評価制度にも組み込むことで“何のために・どう働くか”の基準を明確にしています。これと連動して、全従業員を対象にした意識調査「LIXIL Voice」を年1回実施し、エンゲージメント・インクルージョン・ウェルビーイングを結果指標として継続的に把握・改善しています。
2025年3月期には回答率90%を達成し、エンゲージメント72%、インクルージョン71%、ウェルビーイング77%と、グローバル企業として高水準のスコアを実現。更に、部門単位で23件のアクションプランが策定され、経営方針の浸透やコミュニケーション活性化につながっています。
② ウェルビーイング/EX向上施策
心身の健康と働きがいを高めるため、独自の健康指標「カラダシル」の導入、カフェテリアプランやGLTD、健康経営施策を展開。情報プラットフォーム「ウェルビーイング情報ライブラリー」や毎月14日の「ウェルビーイングデー」を通じて、健康・働き方・相談窓口などの情報発信と対話機会を提供しています。
従業員が自分の健康状態を把握し、主体的に行動を変える土台が整備され、ウェルビーイング指標の向上に寄与。加えて、LWTJでのイントラ開設により、戦略・業績・重点施策が一元化され、経営と現場が「同じものを見て話す」状態を実現しています。
③ 経営との一体感と挑戦を支える仕組み
CEOと従業員が対話する「Connect with Kinya」をハイブリッド開催し、900名超が参加するグローバルイベントに成長。さらに全従業員対象の表彰制度「LIXIL AWARDS」では、850件以上のプロジェクトを表彰し、約4,800人が受賞しています。並行して職務等級制度への移行や報酬制度の見直し、子ども手当拡充などの人事制度改革も推進しています。
トップメッセージへの直接アクセスと、挑戦を正当に称える仕組みによって、経営戦略と日々の業務のつながりが強化され、「会社の方向性に納得し、自分ごととして取り組める」環境を実現。エンゲージメント向上だけでなく、若手・女性の登用や組織の自走性向上にも好影響を与えています。
まとめと行動プラン:あなたの次の一手は?
本記事で見てきたように、従業員エンゲージメントは、もはや単なる人事施策ではなく、企業の持続的成長を左右する経営戦略そのものです。
- 本質: 従業員と企業の「相互の信頼と貢献の絆」
- ROI効果: 生産性21%向上、離職率最大59%低下
- 成功の鍵: 経営のコミットメントと、測定・対話・改善の継続的なサイクル
エンゲージメントの高い組織は、変化に強く、イノベーションを生み出し、顧客からも従業員からも選ばれ続けます。
今日からできる!エンゲージメント向上の3ステップ
この重要な取り組みを、どこから始めればよいのでしょうか。まずは、以下の3つのアクションから着手してみてください。
① チームの「小さな声」に耳を傾ける
まずは、あなたのチームのメンバーと1対1で話す時間(1on1ミーティング)を設けてみましょう。「最近、仕事でやりがいを感じたことは?」「何か困っていることはない?」といった簡単な問いかけからで構いません。課題を解決すること以上に、「会社は自分のことを見てくれている」という安心感を育むことが第一歩です。
② 会社の「ビジョン」と自分の「仕事」をつなぐ
チームミーティングなどで、「私たちの会社の目標はこれで、そのために今、この仕事をしている」という繋がりを、あなた自身の言葉で語ってみてください。従業員が自分の仕事の意義を実感できたとき、エンゲージメントの火が灯ります。
③ 「感謝」と「称賛」を仕組み化する
日々の業務の中での小さな成功や貢献を、積極的に見つけて称賛しましょう。朝礼で発表する、チャットツールで「ありがとう」スタンプを送るなど、簡単なことで構いません。感謝と承認が当たり前に行われる文化が、ポジティブな職場環境の土台となります。
Commune (コミューン) は、企業と従業員のエンゲージメント向上を支援するコミュニティサクセスプラットフォームです。社内SNSや情報共有ポータル、表彰制度などをノーコードで構築し、従業員同士の横のつながりや、会社と従業員の継続的な対話を促進します。
部門や拠点を超えたコミュニケーションを活性化させ、ビジョンの浸透やナレッジの共有を円滑にすることで、従業員一人ひとりが「組織の一員である」という実感と誇りを持てる環境づくりをサポートします。
Commune (コミューン) の詳しい情報が気になる方は、以下のフォームから資料をダウンロードしてください。
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