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マーケティング
ブランドアンバサダーとは?ファンと共創する新時代のマーケティング戦略
2025/06/24

あなたのブランドに「熱狂的なファン」はいますか? 彼らこそが企業にとって、最強の“広告塔”になる可能性を秘めています。
近年、多くの企業が「ブランドアンバサダー」という新たな枠組みを設け、選ばれたファンと共にブランドの価値を広げるアプローチに力を入れています。SNSの普及や広告への抵抗感が強まる中、信頼と共感をベースに自然な形で商品・サービスの魅力を発信できるアンバサダー施策は、認知向上だけでなく、長期的なロイヤルティ強化にも大いに貢献します。
本記事では、「ブランドアンバサダーとは何か?」という基本から、実際の導入メリットや成功事例、注意点までをまとめてご紹介し、あなたのビジネスに新しい可能性をもたらすヒントをお届けします。
目次
第1章:はじめに―ブランドアンバサダーとは何か
ブランドアンバサダーの基本的な定義
ブランドアンバサダーは、企業やブランドから「公式な大使・親善大使」として任命され、製品やサービスの魅力を多方面に伝えていく存在を指します。
英語の「Ambassador(大使)」が示す通り、「ブランドの良さを体現し、世の中に広めていく人」を意味します。伝統的な広告手法である著名人の起用とも重なる部分はありますが、最も大きな特徴はブランドへの愛着や理解度が深い“ファン”が中心になるという点です。
例えば、SNSで商品の良さを積極的に発信してくれる一般ユーザーを公式に認定し、サンプル配布やイベント出演を通じてクチコミ拡散を促す事例が増えてきました。もはや企業の広告塔として芸能人を起用するだけではなく、「ブランドを本気で応援してくれる顧客」「信頼や共感を軸にブランドを支えるファン」を組織的に巻き込む取り組みが注目されています。
企業の“顔”としての位置づけ
ブランドアンバサダーは、単なる“広告担当”ではなく、企業と生活者をつなぐ“橋渡し役”と捉えられます。
企業の立場では、発信者がブランドの世界観に心から共鳴してくれる人ほど説得力のあるメッセージを伝えられるため、広告を見慣れた消費者に対して大きなインパクトを与えられます。一方で、アンバサダー自身も「好きなブランドを応援する楽しさ」や「企業の内側に触れて新たな経験が得られるメリット」を享受でき、相互にメリットが生まれる関係です。
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企業が公式に任命する“ファン”や“支援者”
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製品やサービスの愛好家として自然なクチコミを発信
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消費者との距離感が近く、リアルな体験談を届ける役割
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長期的にブランドを盛り上げる“大使”として機能
アンバサダー施策の広がり
従来型の広告が飽和状態となり、消費者も宣伝を避ける傾向が強まる中、第三者からのクチコミや共感が商品選択の決め手となる時代が加速しています。こうした背景から、企業は「ブランドを心から愛してくれる人」を味方につける取り組みにシフトしつつあります。ブランドアンバサダー施策は、その最たる例としてさまざまな業種で活用が始まっています。
第2章:なぜ今、ブランドアンバサダーが注目されているのか
消費者行動の変化
SNSや口コミサイトの台頭で、従来のマス広告が届きにくくなっています。人々は興味のない広告をスキップする一方、信頼する知人・フォロワーの紹介や、共感できる体験談に耳を傾ける傾向が強まっています。これがブランドアンバサダーに注目が集まる一番大きな要因といえます。
主な背景要因
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SNS利用の定着とクチコミ影響力の増大
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広告そのものへの免疫・嫌悪感の高まり
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友人やインフルエンサーによる推奨を重視する購買行動
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企業と顧客の双方向コミュニケーションが当たり前の環境
関連記事:ファンベースマーケティングとは?必要性やポイント・事例を紹介
┗アンバサダー施策と親和性の高い“ファンを中心に据える戦略”を理解できます。
マーケティング施策の変化
マーケティング領域も、単に認知度を上げるだけではなく「顧客との長期的な関係構築」「ロイヤルティ向上」が重要視されるようになっています。ブランドアンバサダーは、まさにこうした関係性マーケティングの文脈で強力な効果を発揮します。単発の宣伝契約ではなく、ファンとの持続的なコミュニケーションを通じてブランド価値を高めることが大きなポイントです。
多くの企業は、「とにかく認知されたい」というだけでなく、「自社ブランドの世界観や想いを理解し、ファンになってくれる層を増やしたい」と考えています。アンバサダー施策は、好意的なイメージやストーリーをメッセージとして伝えやすく、人と人との距離感で広がっていくため、広告では生まれにくい共感や愛着を育みやすいのです。
インフルエンサー施策との補完関係
芸能人やSNSで数万人~数十万人のフォロワーを持つインフルエンサーを起用する手法と、ブランドアンバサダーは混同されがちです。しかし根本的な違いとしては、「アンバサダー=ブランドとの長期的コミットメント」「インフルエンサー=ギャラと契約期間をベースに宣伝する」形が一般的です。両者を組み合わせることで、瞬間的な拡散と地道なファン育成の両輪を回せる点も注目されています。
第3章:ブランドアンバサダー導入のメリット
1. 信頼度と共感を高めやすい
企業から一方的に発信される広告情報よりも、「第三者がおすすめしている」情報は受け手にとって大きな説得力を持ちます。熱心なファンが自らの体験をもとに語る言葉は、他の消費者にとって“リアルな声”として響きやすく、ブランドの信頼度を高めます。
2. 低コストかつ高い費用対効果が期待できる
著名人や大規模メディアを使ったプロモーションに比べ、ブランドアンバサダー施策は比較的低予算で始めやすい傾向があります。商品の無償提供や割引クーポンなどのインセンティブで活動を促しやすく、しかも「ファンゆえに長期的に発信を続けてくれる」ケースが多いため、費用対効果が高くなりやすいのです。
3. リアルなフィードバックを得られる
アンバサダーは単なる拡散者にとどまらず、顧客視点のフィードバックを企業に提供してくれる貴重な存在です。使い勝手や改善要望をダイレクトに聞けるので、今後の新商品開発やサービス改善に役立ちます。
メリットのポイント
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第三者推奨で信頼度UP
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広告費用を抑えつつ継続的な拡散
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顧客目線の声を吸い上げられる
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長期的なブランドファンを育成できる
4. エンゲージメント向上とコミュニティ形成
ブランドアンバサダーが増えるほど、SNSやイベントを通じて自然とコミュニティが広がります。彼ら同士が交流し合うことで、ブランドを中心としたコミュニティが形成され、ユーザー同士で新たな使用シーンやアイデアが生まれやすくなります。結果的に、企業だけでは生み出しにくい“共創”や“継続的な盛り上がり”を作りやすいのです。
関連記事:コミュニティがエンゲージメントを高める2つの理由
┗アンバサダーによる発信とコミュニティ形成が、LTVとロイヤルティ向上にどう効くのかを解説しています。
第4章:デメリット・注意点
1. アンバサダーの選定が難しい
ブランドアンバサダーの最大の難所は「適切な人材を見つけること」です。単にフォロワー数が多いだけでは不十分で、ブランドイメージや世界観に共感し、長期間にわたってポジティブな発信を続けてくれる人物を探すには時間と手間がかかります。
2. 不祥事リスクやイメージ低下のリスク
芸能人に限らず、アンバサダー個人がSNSで不適切な発言をしたり、炎上を招いたりすると、ブランドにも少なからず悪影響があります。とくに「一般のファン」をアンバサダーとして起用する場合、本人のSNSリテラシーが低いと誤解やトラブルを招く可能性があるので、事前のコミュニケーションとルール設定が欠かせません。
3. 運用負荷の増大
アンバサダーとの連絡や報酬管理、投稿内容のモニタリングなど、運用面での工数が増える点は注意が必要です。担当者が十分なリソースを割けないまま施策を拡大すると、アンバサダーが行き届いたサポートを受けられず、活動意欲が下がったり、方向性がブレたりするリスクがあります。
デメリットへの対策
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アンバサダー選定時の基準を明確化
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コミュニケーションルールやSNSガイドラインの提示
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社内体制を整え、運用リソースを確保
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複数人を起用してリスクを分散する
4. 宣伝臭の強さに注意
アンバサダー施策が成功する鍵は「ナチュラルな推奨」にあります。しかし企業の意向が強すぎたり、全員が同じタイミングで同じ文面を投稿したりすると、消費者に「やらせ感」を与えかねません。ブランドアンバサダーの自主性や発信スタイルを尊重し、「本音で語ってもらう」仕組みづくりを徹底する必要があります。
第5章:ブランドアンバサダー施策の進め方
1. 目的と目標の明確化
まずは「なぜアンバサダー施策を行うのか?」を明確にします。新規顧客を増やしたいのか、既存顧客のロイヤルティを高めたいのか、あるいはブランドイメージを刷新したいのか。目的によって選定するアンバサダーのタイプやKPIが変わります。また社内合意形成の段階で、効果測定指標(例:SNSエンゲージメント率、コミュニティ参加数、売上増加率など)を設定しましょう。
2. アンバサダー候補の探し方
SNS上のファンをリサーチする、顧客データベースからロイヤル顧客を抽出する、社内で社員アンバサダーを募集するなど、発掘経路はさまざまです。共通して重要なのは、ブランドへの興味関心が強く、発信意欲がある人物を探すことです。
候補を見極める基準
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ブランドに対する熱量が高いか
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発信内容がブランドイメージに合っているか
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SNSやブログでのエンゲージメントが安定しているか
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コミュニケーションが誠実・ポジティブか
3. 契約形態・インセンティブ設計
アンバサダー活動を継続してもらうために、どんな報酬や特典を用意するかも大切です。必ずしも高額な金銭報酬が必要というわけではなく、商品サンプル提供やイベント招待、限定グッズなどがモチベーションにつながることもあります。ただし、「投稿回数○回で○円」という不自然な条件付けは、宣伝臭を高めかねないため慎重に検討しましょう。
4. 運用とコミュニケーション
アンバサダーに活動を依頼して終わりではなく、定期的にフィードバックを交換し、ブランドの新情報やキャンペーンを共有することが大切です。成果や反応をモニタリングしつつ、困りごとや疑問があれば迅速にサポートする体制を整えましょう。良好な関係性を築くほど、アンバサダーから自主的なアイデアや提案が上がる可能性も高まります。
関連記事:アンバサダーマーケティングとは?基礎知識と成功事例・導入の流れ
┗選定・報酬設計・投稿管理など、運用面の設計に役立つ実践ガイドです。
第6章:成功事例
1. ネスカフェアンバサダー
ネスレ日本が展開する「ネスカフェアンバサダー」は、オフィスや地域コミュニティなどでコーヒーマシンを設置してもらい、口コミを促す仕組みを整えた施策です。公式キャラクターのような存在を社外に育成することで、多くの利用者にコーヒー体験を広めつつ、新規顧客の獲得にも成功しました。商品提供の仕組みが整っているため、導入者は負担が少なく、継続的にコーヒーを楽しめるのがポイントです。
2. カルビー「じゃがり校」
カルビーが「じゃがり校」と呼ばれるファンコミュニティを組成し、アンバサダー的な立ち位置の会員と一緒にイベント企画や商品アイデアの検証を行っています。ファンが自ら「カルビー愛」を発信し、同時に新商品のテストマーケティングにも協力。ユーザー同士が交流を深め、会員のロイヤルティを高めている好例です。
3. Dellアンバサダープログラム
パソコンブランドのDellが実施するアンバサダープログラムでは、PCのモニター使用権や製品のフィードバック機会を提供しつつ、ユーザーがSNSやブログで感想を発信していく流れを整えました。製品を実際に使った率直な意見が多くの潜在顧客の参考になり、Dellの製品認知度・信頼度向上につながっています。
成功事例の共通点
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企業とファンの「双方向のやりとり」を促進
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実際の商品体験やイベント参加を通じて楽しく活動
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ファンの声を商品開発やマーケティングに反映
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SNSやコミュニティを活用して自然な形でクチコミ拡大
4. ファッションブランド×著名アンバサダー
CHANELなどのラグジュアリーブランドでは、女優やモデルを長期的にアンバサダーとして起用し、ブランドの“顔”になってもらう例が多く見られます。単なる広告契約ではなく、ブランドの歴史や価値観を深く理解してもらい、新作発表やイベントで積極的に発信することで、ブランドストーリーを世界規模で届ける戦略です。
関連記事:顧客インサイトとは?見つけ方・成功事例まとめ
┗成功施策の裏にある「ファンの気持ち」を可視化する手法を学べます。
第7章:まとめ―ブランドアンバサダー施策の可能性と展望
ブランドアンバサダーがもたらす価値
ブランドアンバサダー施策は、一時的な販促ではなく、顧客との長期的なつながりを基盤にする点が魅力です。信頼関係に裏打ちされたクチコミは、従来の広告では得られない深い共感や認知拡大をもたらし、企業にとってもアンバサダー本人にとってもウィンウィンな効果を期待できます。
導入の成功ポイント
企業は、アンバサダーを「ただの宣伝担当」ではなく「ブランドの一部を担うパートナー」と位置づけることが大切です。そのためにも、選定基準やコミュニケーション方針を明確にし、リスク管理を怠らず、ファンのモチベーションを保つ施策を設計する必要があります。
今後の展開
情報の流通スピードがさらに上がると、ブランドと顧客との距離はますます近づきます。その中で、共感や価値観の共有を軸にブランドが“愛される”存在になることは、長期的な競争力の源泉となるでしょう。ブランドアンバサダーの活用は、その起爆剤としてますます注目されるはずです。
最後に押さえておきたい点
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目的・KPI設定を明確にしたうえで施策を計画
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ファンの自主性・リアルな声を尊重し、自然なクチコミを促す
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アンバサダーとの継続的なコミュニケーションが成功のカギ
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ロイヤル顧客の存在が企業のブランド価値を左右する時代である
本記事では、ブランドアンバサダーとは何かという定義から、注目される背景、導入のメリットとデメリット、実践ステップ、成功事例までを網羅的にご紹介しました。
マーケティング担当者であれば、新規顧客獲得も既存顧客のロイヤルティ強化も狙えるブランドアンバサダー施策を、ぜひ一度自社に取り入れて検討してみてください。広告費に大きく依存しない形でブランドの魅力を広め、ファンとの結びつきを高められる有効な手段として期待できます。企業とアンバサダー、そしてその周囲の顧客との三者が良好な関係を構築できれば、ブランドにとって欠かせない“仲間”を得ることができるでしょう。
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