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アドボカシーマーケティングとは?意味や重要性、実施する方法、ポイントを解説
2024/11/21
最近注目を集めている「アドボカシーマーケティング」について解説します。
定義から求められるようになった背景、メリットや取り組み方、注意点まで解説します。本記事を読むと「アドボカシーマーケティング」について理解することができます。
目次
アドボカシーマーケティングとは
アドボカシーマーケティングという言葉を聞いたことはありますでしょうか。まだ知らないという方もいるかもしれませんが、実はかなり以前から私たちの身近な場所で行われているマーケティング手法なのです。わかりやすくいうと、「顧客や熱心なファンが、あるブランドまたは製品の良いところを周囲に自発的に伝えていくことで、信頼性の高い評判を広めていく」ということです。
たとえば、「話題のカフェで新しいメニューを注文して、その場でSNSに感想を投稿する」のような日常的な行動もアドボカシーマーケティングの一例です。InstagramなどのSNSで行われる個人の発信が持つ影響力はますます大きくなっています。こうした口コミが企業の成長を大きく後押ししている事例も珍しいものではなくなってきました。
アウトドアブランドの「パタゴニア」もアドボカシーマーケティングの良い事例です。同社は環境保護を訴える強いメッセージを発信し、サステナブルを謳った製品を提供しています。これに共感した環境問題に関心を持つ人々が、SNS上で共感コメントや応援メッセージを投稿し、さらに拡散されていくことで多くの人々からブランドに対する友好的な認知と熱い支持を得ることに成功したケースといえます。
アドボケートとは
「アドボケート」とは、前述のアドボカシーマーケティングを実行してくれる人のことを指す言葉です。彼らは企業に頼まれたわけでもないのに、自発的にSNSや周りの人にブランドや商品のことを宣伝してくれる、いわば「広告塔」のような存在です。アドボケートはそのブランドや商品のことが本当に良いと思っているからこそ、その良さを他の人にも知ってもらいたくて行動を起こします。彼らの「ブランドや商品を心から支持する様子」は、ブランドに対する信頼感を高める上でも重要な役割を果たしているのです。
カスタマーアドボカシーとは
カスタマーアドボカシーとは、アドボケートの中でも「顧客」に注目した言葉です。新しい化粧品を購入して使ってみたら良かったと思った人が、SNSでその内容をシェアするようなことがカスタマーアドボカシーです。
企業が届ける良い製品やサービスに満足した顧客は「まだ気づいていない他の人にも教えたい!」という気持ちになるかもしれません。その気持ちが高まって実際に行動にまで移すようになったときこそ、カスタマーアドボカシーと言えます。
このようなカスタマーアドボカシーが活発になればなるほど、アドボケートが増えて、ブランド力の向上に繋がります。
アドボカシーマーケティングが重要視されるようになった背景
アドボカシーマーケティングが注目されるようになった背景には、消費者の購買意思決定プロセスがより複雑化した現代の特徴があります。
インターネットとSNSの普及による消費者行動の変化
インターネットやSNSからの情報収集が当たり前になった今は、購入するモノの選び方でもこれらの影響が大きくなっています。
一昔前までは、企業から発信される一方的な情報をもとに商品を選ぶことが一般的でしたが、今ではSNSなどから実際に使った人の口コミや商品の比較サイトなどを参考に商品を選ぶことができます。会食のお店を決めるときに、まずはインターネットやSNSで評判を調べたり、実際に行ってみた人の投稿を参考にする人は多いのではないでしょうか。
消費者は他の消費者の生の声という選択肢も持つようになったのです。企業にとっては、今までの宣伝広告活動も大事ですが、顧客の声にも耳を傾ける必要性が高くなってきました。このような昨今の時代背景から、顧客の声を活かしたマーケティング手法であるアドボカシーマーケティングが注目されているのです。
サブスクリプションモデルの普及による体験型サービスの台頭
最近では、物を所有したい気持ちよりサービスを「体験すること」に魅力を感じる人が増えています。CDやDVDなどの購入と所有より、月額料金を払うだけで好きなだけコンテンツを享受できる音楽や動画のサブスクリプションサービスの流行がその代表的な例です。
企業側も販売して終わりではなく、顧客と長く良い関係を築けられる観点からサブスクリプションサービスに注目しています。また、サブスクリプションサービスは顧客との接点が長いことから、行動や好みを分析することができます。消費者の体験行動をデータとして分析し、他の消費者に次におすすめする商品を提案することで、サービスからの離脱を防ぐことに活用できるのです。
アドボカシーマーケティングのメリット
アドボカシーマーケティングとは、企業が顧客に商品を売り込むのではなく、顧客が自発的に製品について語り、他者に製品を推奨して、実質的に企業と同じようにマーケティングをしてもらう手法です。
企業による言葉よりも、顧客自身による推奨は、企業にとって何にも代えがたい最強のマーケティング効果を持ちます。
目先の利益ではなく本質的な顧客への価値を追求する
「徹底した顧客第一主義」を採用し、顧客にとっての最大の利益を追求することを前提としているため、時には一時的に自社の不利益となるような「他社製品の推奨」をすることさえあります。顧客からの声を真摯に受け止め、常に改善の努力をすることが以前にも増して求められるようになったといえるでしょう。
アドボカシーマーケティングが目指すのはロイヤルティのはしごを上った状態
まず、消費者が自社製品・サービスを選んでくれると、この消費者は「顧客」になります。次に、継続して商品・サービスを選択してくれるようになると、この顧客は「リピーター」に変化します。その後、長期的な信頼関係を築いていくことで、「リピーター」はやがて「サポーター」へと変化していきます。この段階になると、商品やサービスを自分が購入・利用するだけでなく、他者への推薦も惜しみません。そしてさらにロイヤルティが高まった状態になると、自発的に多くの人に企業や商品の魅力を紹介したり発信したりしてくれる存在となっていきます。これがロイヤルティが極限まで高まった顧客です。アドボカシーマーケティングはこの状態の顧客を増やすことで、自社の支援者を増やしていくという考え方に基づいています。
顧客ロイヤルティの測定
顧客ロイヤルティを図る指標として、「ネットプロモータースコア(NPS)®」などが知られています。企業に対する信頼度や愛着といった要素を数値化する指標とされ、幅広い業界で採用されています。
具体的には「このサービスを身近な人に紹介する可能性はどのくらいありますか?」といった質問項目に対して0~10までの11段階で回答してもらうという手法で、0~6点を「批判者」、7~8点を「中立者」、9~10点を「推奨者」として分類します。
推奨者の割合から批判者の割合を引いた数値をNPS®と呼んでいます。例えば「推奨者が全体の40%」、「批判者が全体の20%」だった場合は、NPS®=20ptとなります。
NTTコムオンラインの「NPS業界別ランキングトップ企業 2021」(*)によると、NPSの業界平均値は対面証券部門で「−57.9pt」、大手携帯キャリアで「−51.9pt」、人材派遣(BtoB)部門で「−44.4pt」、生命保険部門で「−49.1pt」、クレジットカード部門で「−38.6pt」、アパレルEC部門で「−21.7pt」、ネットスーパー部門で「−19.7pt」などになっています。
これらの数値を定期的に集計・分析することで、改善に役立てていくことも重要です。
*参考:NPS業界別ランキングトップ企業 2021
https://www.nttcoms.com/service/nps/report/ (参照 2021-12-06)
アドボカシーを増やす方法
顧客に愛され、積極的に商品やサービスを薦めてもらうためには、どのような工夫ができるでしょうか? 以下の4つのポイントを順番にご説明しましょう。
Point.1 感動体験を提供しよう
Point.2 コミュニティの構築と活性化を図ろう
Point.3 「インセンティブ」の提供を工夫しよう
Point.4 顧客との「エンゲージメント」を高めよう
Point.1 感動体験を提供しよう
消費者が自身の体験を共有したくなるような感動体験を提供してみましょう。新製品や新サービスをリリースの際に、お得意様限定でいち早く体験できる機会を作ることや先行販売することは該当する消費者に特別感を与え、ロイヤルティを高めることができます。お誕生日に特別なプレゼントを贈るなども効果的です。
また、顧客からのお問い合わせやクレーム対応も重要です。もし、商品やサービスに問題があったとしても、顧客の不満や疑問に丁寧に対応することで「この会社は顧客のことを大切にしてくれている」と感じてもらえるからです。
商品や企業への信頼度を高め、もう一度利用したくなるような感動体験を提供することが、顧客にアドボケートになってもらう秘訣です。
Point.2 コミュニティの構築と活性化を図ろう
同じ商品やブランドを愛用する人たちと繋がるコミュニティで、商品やブランドの魅力について語り合える場を設けることも一つの方法です。 顧客同士が交流できることで、ブランドや商品に対する愛着が深まります。
企業側としては、自社のファンの声が集まる場ができるため、新しい商品やサービスの開発に活かせるヒントを見つけられるかもしれません。「私たちの意見が、本当に商品に反映されているんだ!」と感じてもらえるような取り組みが生まれたら顧客との絆を深めることができるでしょう。
重要なのは顧客との繋がりを深め、共に成長していくことです。 顧客が自ら進んでブランドを応援してくれるようなコミュニティを作りましょう。
Point.3 「インセンティブ」の提供を工夫しよう
商品やサービスをもっとたくさんの人に知ってもらいたい場合は、「インセンティブ」が大きなモチベーションになります。
お友達招待キャンペーンなどで、特別クーポンをプレゼントすることや、SNSで商品の感想を投稿してくれた方には限定グッズを贈呈するなどがこれに該当します。このような取り組みは顧客の自ら宣伝する行動を促すきっかけになります。
「インセンティブ」設計には、顧客が魅力的だと思える特典を用意することが重要です。単なる割引ではなく、顧客にとって価値があり、自然と商品について他人に話したくなるような仕掛け作りを目指したいものです。
Point4 顧客との「エンゲージメント」を高めよう
「エンゲージメント」とは、会社と顧客の関係性を意味します。アドボケートを増やすためには、エンゲージメントを高めて顧客の信頼を長く続かせる必要があるので、アドボカシーマーケティングとエンゲージメントは密接な関係にあります。
単なる自身の消費に止まっていた顧客がエンゲージメントを高め、その商品やブランドを理解し愛着を持つことで、アドボケートに成長していくのです。
顧客エンゲージメントを高めるためには、顧客のニーズを理解してそれに応えるサービスや商品を提供し、信頼度を高めることが重要です。また、これらの活動は短期的ではなく中長期的に持続的に取り組む必要があります。
アドボカシーマーケティングを行う際のポイント
顧客に長く愛されて支持されるためには、「信頼関係の構築」「高い顧客満足度の実現」「継続的な関係性の構築」という3つの要素が欠かせません。そのために押さえておきたいことについて説明します。
お客様の声をしっかり捉えて、活かす
どのようなビジネスにおいても、顧客の意見を大切にすることは成功への最短ルートだと言えるでしょう。
実際にその商品やサービスを利用している顧客だからこそ、様々な意見や感想を述べることができます。その声から商品やサービスのセールスポイントと改善点を見つけることでより高品質のサービスや商品を提供することができます。良質なサービスや商品提供は顧客のエンゲージメントを高め、アドボカシーマーケティングに繋がります。
「アドボケート」を探すには
今まで「アドボカシーマーケティング」「アドボケート」について説明してきました。これからは、このようなアドボケートを見つける方法について説明します。
有効な方法の一つが、前の項目でも言及した「ネット・プロモーター・スコア(NPS)」です。
NPSとは、「10点満点で、この商品をどれくらい友達に勧めたいか答えてください」という質問に対して、10~9点と答えた人は私たちの商品をとても気に入ってくれている人、つまり「推奨者」ということになります。反対に、0~6点の人は、批判的な人となりますので、アドボケート候補から外れます。このようにNPS調査でアドボケートを見つけることができます。
SNSで繋がりを深め、共感を育む
InstagramやX(旧Twitter)、FacebookなどのSNSに投稿されている顧客の体験や意見からも顧客の声を集めることができます。オンラインコミュニティでは一方通行の広告と異なるメンバー限定の情報提供やコメント欄で企業と顧客が直接やりとりすることができます。その結果、顧客は企業やブランドに親近感を覚え、一員となったような感覚を味わうこともできます。
さらに、同じ商品に興味を持つ人同士が交流できるため、自然と仲間意識が生まれます。その感覚はコメントした本人だけに限らず、その様子を見ているだけの顧客にも自然と広がります。
ただの消費者という受身の立場を超え、コミュニティメンバーとして、パートナーとして成長していく顧客は、きっと心強いアドボケートとなるのでしょう。
お客様のモチベーションをアップする「インセンティブ」
「インセンティブ」とは、直訳すると「行動を促す刺激、励み」などの意味で、ご褒美と言ってもいいかもしれません。アドボカシーマーケティングでは、友人を紹介してくれた顧客に割引クーポンをプレゼントしたり、SNSでの投稿に対してポイントをプレゼントしたりと、様々な方法で「お得感」や「特別感」を覚えてもらえるように工夫することを「インセンティブの提供」と呼んでいます。
メリットを感じた顧客は、自然とアドボカシー活動を行ってくれるので、企業側は顧客が積極的に参加できるように様々なキャンペーンや仕組みなどを整えると良いでしょう。
アドボカシーマーケティングを実施する上での注意点
まとめ
消費者の発言力が増した現状は企業にとっては脅威であるとともに、強固な支援者が独自に宣伝活動を行ってくれる可能性も孕んでいるという点で大きなチャンスともいえます。
サブスクリプション型のビジネスモデルが浸透していることからもわかる通り、顧客とは細く長く付き合っていくことが求められる時代です。目先の利益に惑わされることなく、顧客と真摯に向き合い、本当に顧客の利益となることは何なのか、を追求していくことが自社の最大の武器となり、大きな収益を生み出すこととなるでしょう。
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