イベントレポート
マーケティング
【イベントレポート】前半:BtoC企業におけるコミュニティを活用したユーザーエンゲージメント
2024/08/15
2019年10月3日に「コミュニティタッチで深めるカスタマーエンゲージメント戦略」と題し、パネルイベントを開催いたしました。
当日は、コミュニティ施策を通じて顧客体験の深化に取り組む先行企業様をお招きし、知見や失敗談を共有していただきました。
今回は、その後半部分である「BtoB企業におけるコミュニティタッチ ~オンラインオフライン横断でのコミュニティ形成~」のレポートをお届けします。
【1部:BtoC企業におけるコミュニティを活用したユーザーエンゲージメント施策】
・ベースフード株式会社 マーケティング 太田 里沙 さん
・GMOアドマーケティング株式会社 メディア企画部 大塚 勇さん
Q. まずはじめに、今まで / 今どんな形でユーザーコミュニティ施策を行ってきたか教えて下さい。
大塚さん:コミュニティに働きかけることで新卒採用サービスの登録促進をした例をお話します。
後発の新卒採用サービスでしたので、サービスとしての強みを作りつつ、学生の登録を促進するマーケティング活動が求められました。
そのお題に対して、フットサルのリーグを無料で開催することにしました。フットサルを楽しむ学生は活発なイメージがありますので、企業にとっても欲しい人材がいますし、参加した学生からも我々の企業イメージがアップするような狙いがありました。結果、多くのサービス登録が促進され一定の成果をあげることはできました。
GMOアドマーケティング株式会社 大塚 勇さん
芸大卒後、大手求人広告にデザイナーで入社するも、部署異動で営業へジョブチェンジ。広告の枠にとらわれない採用方法を提案。その後ビール特化型メディアへ転職をし、メディア会員のコミュニティマネジメントやイベント運営などをしながらマネタイズ責任者を務める。2018年にGMOアドマーケティングへ。現職では社内・社外の両面でマーケティング活動に従事。
また、ビールで女の子を幸せにするWEBマガジン&コミュニティにもマネタイズ責任者として携わりました。
一般的なメディアは情報提供側と情報受信側という関係でしたが、ビール女子はビールが好きな女性をコミュニティと定義することで、両者が発信側であり受信側になることがあり、新作ビールの味に関する座談会やリサーチにご協力いただいていたり、様々な企業とコラボでイベントを開催するまで発展しました。
企業イベントを通じてユーザー同士の飲み会が開催されたり様々な波及効果は実感できました。
太田さん:弊社ベースフードはD2Cで栄養バランスの良い主食を販売している会社で、主にユーザー様同士やユーザー様と社員がつながるようなコミュニティを運営しています。
ツールの一つとして、定期購入者様を中心とした「BASE FOOD Labo」というコミュニティアプリでユーザーさん同士がレシピの共有や意見交換を行いつつ、ユーザーさんと社員が交流できる場をつくっています。
ユーザーさんの生の声をカジュアルな形で拾う場としても活用できていますね。また、Twitter で #basefoodcamp というユーザーさん参加型のキャンペーンを行っていたりもします。
さらに、オフラインイベントとの連動した取り組みも行っており、社員とユーザーさんの交流も活発に行うようにしています。ユーザーさんは、BASE FOOD社員と関わることに価値を感じてくれており、社員としてもユーザーさんがどんな人なのかを肌で感じることができています。
Q. BASE FOODのコミュニティ施策は企業としてどのような目的があるのでしょうか。
太田さん:BASE FOOD Laboの当初の目的は、ユーザーのリアルな声を集めることでした。
ベースフード株式会社 太田 里沙さん
大学卒業後、ユニリーバへ入社。日本国内でのマーケティングを担当後、グローバルチームへ移籍しブランドマーケティングに従事。その後スターバックスを経て、2018年1月より現職。ファンベースのマーケティングを意識し、お客さまの声をもとにした各種企画策定やブランドの顧客体験向上を担当している。
ユーザーさんにはどんな人が多くて、どんな食べ方しているのか、そしてどんな悩みをBASE FOODのプロダクトによって解消しているのかを深掘りしたいと思っていました。
最近は投稿も増え、食べ方の工夫もバラエティが増えてきました。食生活を整えるためには食べ続けることが重要なので、食べ方のバリエーションが増えることでユーザーの「飽き」を防ぐことに役立っています。
ユーザーさん同士、そして弊社とのコミュニケーションを活発化させることで、BASE FOODへのエンゲージメントを高め、最終的には定期購買の継続率の向上やLTV(生涯顧客価値)の向上、友人紹介数の増加につなげることを目指しています。
今後はコミュニティのオープン化(アカウント登録なしでも一部のコミュニティコンテンツを閲覧可能にする)も行う予定でして、新規顧客獲得につながる手段として、ユーザー間で共有されたレシピをまだBASE FOODをお試しされていない外部の方にも発信していきたいとも思っています。
Q. 最初はどのようにしてコミュニティ施策に取り組みましたか。
太田さん:1番最初は、フェイスブックグループを作ってみました。
ユーザーの声を拾い、実際に商品開発に活かすことが目的でしたが、正直あまりうまくいかず…(笑)
Q. フェイスブックコミュニティはどこがうまくいかなかったのですか?
太田さん:なかなかコミュニティを活性化させることができなかったのです。
一つ目の理由として、趣味嗜好のコミュニティでは匿名でやりとりしたい人が多いということが挙げられます。フェイスブックでは、プライベートの投稿も見られてしまうので、発言することをためらっていた人も多くいました。
そのため、コミュニティを活性化させるためには匿名性を担保し、発言しやすい場を提供する必要があると思いました。
もう一つの理由は、BASE FOODアカウントとフェイスブックアカウントとの紐付けがスムーズにできなかったことです。コミュニティでやりとりをしても、BASE FOODアカウントでユーザーを特定できなかったので、分析やコミュニティ活動に連動させた施策を行うことができていませんでした。
以上の理由から、データ連携が可能でKPIの設定が可能なツールを求めており、Communeさんを利用することに決めました!
Q. 大塚さんは、どのようにしてコミュニティ施策をはじめられたのですか?
大塚さん:もともとメディアのマネタイズ責任者だった時に、営業先からタイアップ広告のPV数を求められることが多くありました。PV数が足りなかったので、受注できないなどの悔しい経験もありまして…。
そこで、新しい指標として、コミュニティ施策(イベントなど)で指標をエンゲージメントに切り替えよう考えたのが実は背景にあります。自身のメディアパワーが至らなかったので、結果的にユーザーさんに手伝ってもらった感じです(笑)。
ビール好き女子向けの特化型メディアは、一人でやっていたブログから始まり、コンテンツに共感してくれる女子たちが集まって、メディアができ、そしてコミュニティが生まれました。発信側の熱量はコミュニティの最低条件なのかもしれませんね。
Q. コミュニティ施策による効果をどのように定量的に評価していますか。
大塚さん:協賛企業のお金でイベントを行う場合、企業のSNSフォロワー数をKPIにするのはもちろんですが、お客さんのアカウントフォロワー数をはじめとした、お客さん側にもメリットのあるKPIを協賛企業と議論して設定しました。
例えば、イベントを通じてお客様のインスタグラムのフォロワー数を10人以上増やすなどをKPI設定にすると、主催者の我々も協賛企業も「どうやって写真の投稿数を増やそうか?」という思考になり、料理の盛り付け1つをとってもユーザーに寄り添ったことができます。
結果的にイベントも盛り上がるし、ユーザーの協賛企業に対するエンゲージメントが高まります。ただ、ユーザーに寄り添いすぎるのも落とし穴で、余白を作ってユーザーもイベントを主催しているような共犯者意識を持ってもらうようにしていましたね。
太田さん:評価指標は常に見直しながら運用しているという前提のもと、現状は最終的な定期購買の継続率の向上や購買数の増加をみつつ、コミュニティ内に設置してある友人紹介コードからの紹介数の増加も追っています。
オンラインコミュニティ内のKPIとしては、アクティブ数やアクション数をメインにみていますね。
Q. どのような方法でユーザーさんをコミュニティへ招待されていますか。
太田さん:熱量の高い人をまずはコミュニティに入れたいという狙いから、定期購入を一定期間以上続けていただいている方だけに「あなたをBASE FOODの研究員としてLaboにご招待します。」と記載のある特別な招待状をお送りしています。
あとはオフラインのイベントに参加していただいた方など接点のあるユーザーさんに招待を行う場合もあります。
大塚さん:まずはメルマガ、LINE@などの接点でイベント告知を行い、イベント参加者だけをコミュニティに招待していたりもしました。あとはコミュニティの活動報告をメディアの記事にして、そこから応募がきたりと、なるべく自然発生的なコミュニティを意識していましたね。
Q. これは押さえておかないと問題が起きてしまう思っていることはありますか。例えばルールを決めたりなど...!
太田さん:変わりゆくコミュニティ状況に合わせて運営していくため、厳格なガイドラインは作っていません。
ですが、なるべくこちら側に引き込んで一緒に場を盛り上げてもらえるように働きかけを行ったりしています。共通の目的を設定するとコミュニティのユーザーさんは皆協力してくれるので、今後も心がけていきたい部分です。
また、こまめな発信を心がけています。
最近は、開発途中の商品を使った試食会をオフィスでよく開いていて。
社員のみで決めるとどうしてもフェアな判断ができなくなってしまう場合があるので、ユーザー様のフィードバックが欲しいねという話になったらすぐにLaboで募集をするようにしています。
募集すると開発フィードバックへご協力いただけるユーザー様からお返事をいただけるんです。皆さんとてもあたたかくて…!ユーザー様との信頼関係によって、商品やサービスのアップデートが可能になっていると思っています。
大塚さん:私が作ったフレームワークがありまして….!4つに分けて仕組み化を行い、うまく回るように管理しています。
このフレームワークには裏方と現場があり、図では左が裏方、右が現場になってます。
「仕込み」でゴール設定を行い、「仕分け」で「場所、お金、時間」の参加条件を設定します。
例えば、無料で誰でも来ていいイベントです!みたいな告知をした場合、仕込みも仕分けもしていないので、当日誰もイベント会場に来ない!などの大事件が発生してしまいます。あとは変な勧誘が発生したりとか…。
次に「仕切り」でゴールに向けたファシリテートを行い、盛り上がってきたところで次回告知や次に繋がる「仕掛け」を発動していく。仕掛けが最後なのが大事なところで、それまでの文脈に沿った仕掛けを行うことで、自然に次に繋がる施策になると思うんですよね。
このような一連のサイクルを回し続けながら、ユーザーを引き込んでいきます。
Q. いくつか、会場からの具体的な質問を拾ってみましょう。
「コミュニティ内で、悪く言えば、自分のブランディングのために(コミュニティを)利用する人も現れそうですが、その時はどのように対応していますか?」
太田さん:現状は地方でのイベント開催はできていませんが、コミュニティ内で動画や写真共有を積極的に行っており、都市部の人との情報のギャップがないように心がけています。これから、地方展開も検討していきたいです。
大塚さん:地方での活動に意欲的な人に対して、ロゴやシールを送り、イベント開催の権利を付与していました。
こうすることで、地方でのイベント開催レポートが上がってくるようになり、そのレポートを掲載したメディアを通じて、興味を持ってくれる人がさらに増え、コミュニティに参加するようになっていくので、コミュニティが全国へ広がっていくのです。
「コミュニティ内で、悪く言えば、自分のブランディングのために(コミュニティを)利用する人も現れそうですが、その時はどのように対応していますか?」
大塚さん:言い方はアレですが、「活発な人材のリソース」として捉え、スタッフに巻き込むようにしています。
そして、イベントで料理を作ってもらったり、インスタでイベント情報や秘訣、裏技を発信してもらうなどの役割を与えています。そうすることによって、一般の参加者も秘訣や裏技を活用したときにインスタで投稿するような好循環が生まれています。
基本報酬等はお支払いしない形ですが、デザインをはじめとした専門性の高い業務が生じた場合にはご依頼し、報酬をお支払いしたこともあります。
Q.最後になりますが、二人にとってコミュニティとは何ですか。
太田さん:コミュニティは「なまもの」だと考えています。一方的な(企業からの)情報発信が行われる一媒体ではなく、ユーザーさん同士での多様なコミュニケーションが生まれることで日々状況が変わり続けていくものです。ある程度お客様の反応を想定することは重要ですが、無理にコントロールをしようとせずに、様々な施策をうっていくことでトライアンドエラーを繰り返したいと思っています。
大塚さん:コミュニティは味噌汁です!(笑)
味噌汁と同じように、コミュニティにも熱がないと中央に固まり形骸化します。しっかりと熱を持った状態でないと、コミュニティは広がっていかないので、主催側と参加者側の熱量は大前提かなと思いますね。理想のコミュニティは熱量から自然に生まれてくるものなので、コントロールしようと思わないことも大事ですよね。
Q.本日はありがとうございました。
太田さん、大塚さん:ありがとうございました!!
ユーザーコミュニティをやるならCommune(コミューン)
コミュニティタッチについてさらに詳しく知りたい方にオススメの資料を以下のフォームからダウンロードできます!本資料を読むと下記のようなことがわかります。
・コミュニティタッチとは何か
・なぜいまコミュニティタッチなのか
・コミュニティタッチの分類と事例
いま注目される「コミュニティタッチ」とはどのようなものか、なぜ今重要なのか、そして企業がどのようにして活用するのか、について豊富な事例をもとに解説いたします。