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カスタマーサクセス
ARPUとは?ARPA・ARPPUとの違いから最大化する手法まで徹底解説! – 0からわかるカスタマーサクセス用語集
2024/08/05

スタートアップの決算報告書などでARPUという指標を見かけたことがある方は多いのではないでしょうか。
ARPUは、顧客数の劇的な伸びが期待できなくなった、「一通り行き渡ったサービス」の売上向上には欠かせないKPIだと言われています。特に、マーケティング施策を探る上で重要な指標として扱われます。
本記事ではARPUの概要から似た指標との違い、最大化するための方法まで徹底的に解説します。
目次
ARPUとは?
ARPU(Average Revenue Per User)とは、ユーザー1人当たりの平均売上金額を表す指標で、サービスのマネタイズがどの程度機能しているのかを測ることができます。
「エーアールピーユー」と読む場合が多いですが、「アープ」と読むこともあります。
主に通信事業で使われる指標でしたが、月額課金サービスのビジネスの状態を評価するのに適切であるため、現在ではスマホゲームや動画配信サービス、SaaSビジネスなどにおいてもよく使用されています。
ARPUは「売上÷ユーザー数」という計算式で求められます。
例えば、あるサービスの月間売上総額が1億円でユーザー数が5万人であれば、月間ARPUは2,000円になります。
例)100,000,000 ÷ 50,000 = 2,000 (円)
ARPUが活用されるようになった背景とは?
ARPUはもともと通信キャリア業界で使用されるようになった指標です。
その頃の通信キャリア業界は、NTTdocomo・au・SoftBankの大手3社によって独占されており、市場は飽和しておりました。売上規模は「顧客数 × ユーザー1人あたりの平均売上」で決まりますが、「顧客数」を増加させることが難しい状態だったのです。
そこで、各キャリアは「ユーザー1人あたりの平均売上」を伸ばす方針を取るようになり、指標として「ARPU」が注目されるようになりました。
アプリケーションビジネスやSaaSビジネスにおいても、基本的に売上を伸ばすためには、顧客数を増やす or 1人あたりの売上額を増やす、の2つの方向性しかありません。
事業の初期段階では顧客数が重要視されるケースが一般的ですが、こうしたビジネスモデルでは、ある程度普及が進むと顧客数は伸び悩む側面があるため、事業の成長に伴いARPUが重要視されるようになるのです。
ARPUを最大化するには?
ARPUを最大化するには、分子となる売上額を大きくする必要があります。売上額を大きくするには、以下の2つの方向性が考えられます。
購入頻度の向上
顧客ライフサイクルとは、《サービス・プロダクトの利用期間を基に顧客のフェーズを管理する考え方のこと》です。特に顧客との長期的な関係構築が必要とされるサブスクリプションモデルの場合は、効率的・効果的にカスタマーサクセスを行うために、利用期間ごとに顧客をセグメントすることはとても有効です。
顧客ライフサイクルの分け方は企業によって様々ですが、概ね「導入期」「運用期」「活用期」「定着期」の4つに抽象化することができます。そして、基本的にオンボーディングは、最初期にあたる「導入期」に実施されることになります。 以下、顧客ライフサイクルのそれぞれの期間の特徴と、実施するカスタマーサクセスの内容をまとめました。
アップセル/クロスセルの実現
これらを支える顧客ロイヤルティの向上
「購入頻度の向上」「アップセル/クロスセルの実現」も、ただ闇雲に取り組んではうまくいかないでしょう。鍵となるのは顧客ロイヤルティです。
モノやサービスが溢れ、いくつもの選択肢の中から自分にとって最適な商品・サービスを選ぶことが可能になった現代では、購買の主導権は消費者側にあり、提供者側の欲求だけで顧客を動かすことは不可能です。
ARPUの最大化を実現するためには、前提として、顧客がサービスや企業に対して強い信頼や愛着を感じている、すなわちロイヤルティが高い状態でなければなりません。
そのため、まずは、顧客目線に立ちロイヤルティを高める、その上で再購入やアップセル/クロスセルの提案を行わなければ、売上は増えないでしょう。
反対に顧客ロイヤルティが高まっていない段階で、無理やり再購入やアップセル/クロスセルの提案を仕掛けてしまうと、最悪の場合、ユーザーの離反につながってしまうこともあります。
顧客ロイヤルティを向上させるためには、NPS®を使って顧客ロイヤルティ数値化することが有効です。
NPS®は、顧客ロイヤルティを計測する指標の中で、特に業績成長との相関性が強く確認されています。
2003年にSatmetrix社が、航空会社・運送会社・生命保険会社など、12業種50社以上の企業に対して行った調査によると、ほとんどの企業においてNPS®のスコアと収益成長率に有意な相関関係(相関係数0.70以上)が見られました。特に航空業界においては、相関係数が0.89と非常に高く、非常に強い相関が見られました。
参考:『Net Promoter Score: The Power Behind A Single Number』
このように、NPS®は顧客の行動に対する予測性が非常に高いため、NPS®を継続的に計測し、再購入やアップセル/クロスセルの提案時期を定量的に見極めることが肝心です。
ARPA、ARPPUとの違いとは?
ARPUと似た指標にARPA、ARPPUがあります。
ARPA
ARPAはAverage Revenue Per Accountの略で、ARPUと違い、1ユーザーではなく1アカウントあたりの平均売上金額を表す指標です。
契約者数(ユーザー数)とアカウント数に乖離があるサービス、具体的に言えば、1ユーザーが複数端末で利用できるサービス、あるいは1契約で複数アカウントを発行できるサービスの場合は、ARPAを用いた方がより実態に近い数値になります。
例えば、1ユーザーが複数端末利用できるサービスの代表として、通信キャリアがあげられるでしょう。
現代では、多くの人がスマートフォンやタブレットなど複数端末を所有しています。しかし、ARPU【売上 ÷ 台数】の場合、ユーザー数として台数をカウントするため、1人のユーザーが1端末しか持っていないような計算の仕方になってしまいます。
つまり、1人が複数端末所有している場合でも、それぞれ別のユーザーが所有しているものとして計上してしまうので、ユーザー数を実態よりも多く認識することになってしまうのです。
こうなると、アップセル/クロスセルの機会が多いと誤認してしまったり、新規顧客開拓のチャンスを実態以上に低く見積もってしまったりしてしまうことにつながるでしょう。
対して、ARPA【売上 ÷ 契約者数】の場合は、ユーザー数として契約者数をカウントするので、実態に沿った計算結果を得ることができます。
そのため、1ユーザーが複数端末利用できるサービスの場合は、端末1台当たりの売上高を示すARPUよりも、契約者数1人当たりの売上高を示すARPAに注目した方が妥当性の高い判断ができるのです。
また、1契約で複数アカウントが使用されることの多いBtoBのSaaSビジネスの場合も同様に、1契約ではなく1アカウントを単位とした方が実態に近い数値を把握できます。

ARPPU
ARPPUは、Average Revenue Per Paid Userの略で、有料利用しているユーザー1人当たりの平均売上金額を表す指標です。ロイヤルティの高いユーザーが、どれくらいの金額を支払ってくれるのかを測ることができます。
ARPUとは、分子となる売上額は同じでも、分母となるユーザー数に違いがあります。ARPUが全ユーザーであるのに対し、ARPPUは有料利用している一部のユーザーであるため、必ず ARPPU ≧ ARPU となります。
無料ユーザーと有料ユーザーが混在しているサービスの場合は、ARPPUに着目することが効果的でしょう。代表的なのはソーシャルゲームです。
ARPPUとARPUを比較することで、サービスが何割のユーザーに支えられているのかといった収益構造や、割引キャンペーンや限定サービスといったさまざまな価格設定に対するリアクションなどを見ることができます。
・ARPPUとARPUの差が大きい
分母に無料ユーザーを含むと大きく値が下がるということは、有料利用しているユーザーの割合が小さい、つまり一部のコアユーザーによって支えられているサービスということです。
収益を一部のユーザーに頼っているため、将来的な収益向上は難しい状態でしょう。ソーシャルゲームであれば、非課金ユーザーが課金しやすくなるように期間限定ガチャや特別クーポンを作るなど、課金率を上げる工夫が必要です。
・ARPPUとARPUの差が小さい
分母に無料ユーザーを含んでも大きく値が下がらないということは、有料利用しているユーザーの割合が大きい、つまり多くのユーザーによって支えられているサービスということです。
幅広いユーザーから収益を上げられている状態は理想的と言えるでしょう。さらに安定して収益を上げるためには、新規顧客を開拓するか、既存顧客からの売上額を増加させる(アップセル・クロスセル)必要があります。

ARPUを伸ばすことで、成熟市場で厳しい競争にさらされている製品・サービスでも売上の拡大を図ることが可能です。
しかし、闇雲にARPUを伸ばそうとすることは得策ではありません。顧客ロイヤルティが不十分な状態でアップセル・クロスセルを実現しようとしても、かえって逆効果になってしまう可能性があります。
まずは顧客体験を改善し顧客ロイヤルティを高めることが第一で、その上でアップセルやクロスセルに取り組みARPUを向上させることが必要です。
コミュニティサクセスプラットフォーム「Commune(コミューン)」は、企業のコミュニティ施策における企画・構築・運用を一気通貫でサポートします。既存ユーザーのロイヤルティ向上や売上向上、新規顧客の獲得などの実績が豊富。顧客コミュニケーションを充実させたい多数の企業に選ばれています。
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