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リテンションレートとは?メリットから具体的な手法まで徹底解説! – 0からわかるカスタマーサクセス用語集
2024/07/04
顧客の持つ情報が増大し競合製品が市場に溢れている現代においては、他社商品・サービスへの乗り換えが発生しやすくなっています。そのため、いかに顧客に継続利用してもらえるかが重要になっていると言えるでしょう。そして、顧客に継続利用してもらっている割合を表すのがリテンションレートです。
今回は、リテンションレートとは何か、という点から、具体的なメリット、リテンションレートを高める手法までご説明いたします。
目次
リテンションとは
リテンションレートとは、新規ユーザーのうち、一定期間内にサービスを再び利用したユーザーの割合のことです。
リテンション(Retention)とは、「維持」や「保持」という意味で、リテンションレートを直訳すると「維持率」「保持率」といった意味になります。投資や教育など幅広い場面で使われる言葉ですが、ビジネスシーンでは主にサービスの継続率や定着率を表す指標として使われます。
リテンションレートは、以下の計算式で算出できます。
リテンションレート=(一定期間における)継続顧客数÷新規顧客数×100
例えば、ある1日に新規ユーザーが120人増え、90日後に継続利用していたユーザーが72人の場合、
72÷120×100=60%
となり、90日後のリテンションレートは60%となります。
なぜリテンションレートは指標として重要なのか?
リテンションレートを計測することが重要な理由は、リテンションレートが「顧客がサービスに価値を感じているかどうか」を如実に表す指標だからです。つまり、リテンションレートを見ることで、顧客にきちんと価値を提供できているのかを判断することができるのです。
そもそも顧客にサービスの利用価値を感じてもらうことの大切さは言うまでもありません。利用価値を感じているからこそ、継続して利用してくれるし、アップセルやクロスセルなどの追加発注も行ってくれます。加えて、周囲の人間に積極的に推奨するアドボケーターの役割も担ってくれるのです。
特に近年は、クラウドの登場やデバイスの進化、インターネットの普及による知識体系の共有化などが進んだことで、アプリやWebサービスを生み出すハードルが極端に下がり、多くの競合製品が市場に溢れるようになりました。サービスの乗り換えで発生するコストはほとんど無視できるレベルであり、顧客は利用価値を感じなくなった瞬間にサービスから離脱してしまいます。つまり、顧客に利用価値を感じてもらうことができなければサービスとして成功できないという、シンプルにしてシビアな世界が訪れたのです。
そして、顧客が利用価値を感じているかどうかを測る指標として適しているのがリテンションレートなのです。
例えば、顧客はどんな時にサービスから離脱するでしょうか。考えられる原因として一般的なものを、5つほど列挙してみました。
・役に立たない
そもそもユーザーの課題を解決できていない状態
・使いづらい
操作性が悪く、ストレスを感じている状態
・探しにくい
目的の情報に辿り着きづらい状態
・信頼できない
提供している情報を信頼できない状態
・好ましくない
デザインやブランディングなどの総合的な雰囲気に惹かれていない状態
いずれも共通しているのは、顧客が利用価値を感じていないという点です。つまり、離脱する割合を知ることで、ユーザーがどの程度サービスの利用価値を感じているのか測ることができるのです。
中には、アクティブユーザー数や利用時間などの指標でも代替できると感じる方もいるかもしれません。しかし、これらの指標はキャンペーンやプッシュ通知などの一時的な施策によって左右されやすく、ユーザーの感じる利用価値に関係なく上下してしまう可能性があります。そのため、必ずしも数字がユーザーの感じている利用価値を正確に反映しているとは言えません。
リテンションレートを高めるメリットとは?
リテンションレートを高めることで、様々なメリットを享受できます。具体的に3つ紹介したいと思います。
広告費を抑えられる
新規顧客を獲得しようとすれば、広告の出稿や展示会・セミナーの開催など、多くの人の目につくような宣伝の仕方をしなければなりません。これらのやり方はコストがかかるにも関わらず、あくまで見込み客へのアプローチであるため不確実性も高くなります。
しかし、既存顧客を維持しようとする場合は、一度サービスを利用しているため、キャンペーンやメールマガジンの配信などによって効果的に魅力をアピールすることができます。
マーケティングの世界には、「新規顧客開拓コストは既存顧客の維持に比べて5倍のコストがかかる」という「1:5の法則」がありますが、この法則の通り既存顧客の維持を重視することで広告費を抑えられるのです。
事業の収益が安定する
ユーザー規模は1000人だが3ヶ月後のリテンションレートが9割のサービスと、ユーザー規模は2200人だが3ヶ月後のリテンションレートが4割のサービスの場合、どちらが長期的に安定して収益を上げられるでしょうか。前者のサービスをA、後者のサービスをBとすると、3ヶ月後のユーザー数はAだと900人、Bだと880人になります。さらに3ヶ月経つと、Aは810人、Bは352人になります。
半年後には明らかに両者のユーザー数に差が出ており、BがAと同程度の収益を維持するためにはかなりの数の新規顧客を獲得しなければならないことがわかると思います。果たして、どちらの事業の収益がより安定していると言えるでしょうか。答えは一目瞭然だと思います。このように、リテンションレートを高めることで事業の収益の安定にもつながるのです。
サービスの質が向上する
リテンションレートを高めるためには、必然的に顧客目線でのプロダクト作りが必要になってきます。 なぜなら、顧客が利用し続けたいと感じるように、改善していかなければならないからです。結果として顧客の目線を取り入れた、質の高いプロダクトを提供することが出来るようになります。
リテンションレートを高める具体的な手法とは?
リテンションレートを高めるためには、カスタマージャーニーのあらゆる段階で、できる限り良質な顧客体験を提供する必要があります。具体的な施策としては以下の方法があります。
ユーザーのインサイトを把握する
インサイトとは「ユーザーが抱いている本音」のことです。利用価値を感じてもらうためには、対象となるユーザーが抱えている課題や求めている体験にダイレクトに突き刺さるサービスを提供する必要があります。そのため、まずは、ユーザーのインサイトを徹底的に把握することが大切です。
一見すると当たり前の行為ですが、追求しきれていないケースは意外と多いものです。インサイトの把握において難しいのは、ユーザー自身も完璧に本音を理解できていないことが多々ある点です。行動には必ず何かしらの理由があるわけですが、多くのユーザーはその理由を言語化して理解しようとはしません。皆さんも、自分の行動を「なぜこんなことをしたのだろう」といちいち内省することはあまりないと思います。
そのため、ユーザーが感じている課題や求めている体験を、ユーザー自身が理解できていない範囲にまで踏み込んで汲み取ることが必要です。
有益なインサイトを得る方法として最も効果的なのは、対話やアンケートなどを通して直にユーザーと向き合うことです。アクセス解析ツールなどを使用し行動を数値として可視化するといった方法も有効ですが、数字から人間の感情を読み取るのはかなり難しいものです。日常的なユーザーの行動を徹底的に理解することで、思わぬ気づきを得られるでしょう。
適切なオンボーディングを設計する
オンボーディング(関連記事を読む)とは、ユーザーがサービスについて理解し、操作に慣れて使いこなせるように導くためのプロセスのことです。
新規ユーザーが最も離脱しやすいタイミングが、サービスの使い始めです。どのようなサービスなのか、どのように操作すれば良いのかわからなければ、サービスの利用価値を実感することは難しいでしょう。いつまでも利用価値を実感できないユーザーはすぐに離脱してしまいます。そのため、使い始めこそ細心の注意を払い、ユーザーがサービスを使いこなせるように軌道に乗せてあげる必要があるのです。
オンボーディングを設計する際に大切なのは、提供側が想定するほどユーザーはサービスを理解できていない、という認識を持つことです。そのため、まずはどんなポイントでユーザーがつまずくのか、つぶさに観察することが必要です。その上で、ユーザーがサービスを使いこなし利用価値を感じられるようになるまで、分厚い支援を提供する心構えが重要になります。
ユーザーが感じるストレスを減らす
人は幸福感よりも不快感に敏感に反応する生き物です。そのため、継続して利用してもらうためには、まずは「利用することで嬉しいことがあった」と感じる回数を増やすことよりも「利用することでストレスが溜まった」と感じる回数を減らすことが重要になります。いくら嬉しいと感じる体験を提供したとしても、わずかにでもストレスを感じてしまえば、すぐに離脱してしまうからです。
ユーザーが感じるストレスを減らすためには、ストレスを”ユーザーが要した努力”と捉え直すことが有効です。このように捉え直すことで、ユーザーがストレスを感じるポイントが見えやすくなるからです。
サービスの使い方がわからない時の解決方法を例にとって考えてみましょう。
「メッセージアプリでチャットボットに質問したが、解決できなかったのでお客様センターに電話をかけた。技術担当者がいなかったので電話をかけ直すことになり、その時は無事に解決したが、後日また問題が発生し再び電話をかけることになった」
上記の流れの中で、ユーザーが努力を要したポイントはどこでしょうか。
まずは、チャットボットで解決できずお客様センターに電話をかけたタイミングです。次に、再び電話をかけ直したタイミングで、最後は後日電話をかけたタイミングです。
これらの努力ポイントを減らすことで、ユーザーにとってのストレスも減らすことができるのです。
電話での問い合わせをしなくても済むような方法として、どのようなものが考えられるでしょうか。一つには、解説動画やFAQなどの自助コンテンツの充実が挙げられるでしょう。あるいは、発生頻度の多い問題を体系化し、事前に案内できるような体制を整えておくことも有効です。
このように、ストレスを”ユーザーが要した努力”と捉え直すことで、適切にユーザーのストレスを低減することができます。
まとめ
リテンションレートは、事業を成長させていく上で非常に重要な指標になります。特に、継続して利用してもらうことで事業が成り立つサブスクリプションモデルの場合、リテンションレートが事業の成否を決めると言っても過言ではありません。リテンションレートを高めるためには、既存ユーザーにメリットを届け続ける、離脱しそうなユーザーを引き留める、より便利にサービスを利用できる環境と整える、などの観点から施策を検討することが有効です。
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