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カスタマーサクセス

コミュニティタッチとは?CSの3タッチを連携する「第4のアプローチ」

2024/07/02

コミュニティタッチとは?CSの3タッチを連携する「第4のアプローチ」
コミューン編集部

コミューン編集部

コミュニティタッチとは、オンライン上のユーザーコミュニティを核に、顧客同士の質問解決や活用事例の共有を促進し、CS担当者の直接支援を補完しながら製品価値と継続率を高める「第4のタッチ施策」です。
 
対面重視のハイタッチ、オンライン併用のロータッチ、自己解決を支援するテックタッチだけでは、顧客数拡大に伴う支援コストやナレッジ散逸の課題を埋めきれません。コミュニティタッチを組み込めば、ユーザー同士が自発的にノウハウを蓄積し、最新の成功事例や FAQ が常にアップデートされるため、担当者は戦略的な伴走に集中できます。
 
本稿では、その設計手順と導入メリット、国内 SaaS 企業が成果を上げた具体的事例までを詳しく解説します。

コミュニティタッチが重要になった背景

サブスクリプション型ビジネスが主流となった今、企業の収益構造は「初回購入」よりも「継続利用」の比重が圧倒的に高くなりました。

しかし顧客基盤が拡大するほど、従来のハイタッチ(対面伴走)頼みでは担当者の工数が逼迫し、ロータッチ(オンライン併用)やテックタッチ(セルフサーブ支援)単独では温度感やナレッジの共有が限定的になる、というジレンマが表面化します。

個別支援を厚くすればコストがかさみ、デジタル施策に寄せ過ぎれば顧客が孤立する。このジレンマを解決する新しい発想として急速に注目されているのが、「コミュニティタッチ」です。

オンラインコミュニティを舞台に、顧客同士が経験や悩みを交換し合い、自走的に成果を伸ばす仕組みを整える。これにより、CS チームは戦略案件への伴走やアップセル提案といった、高付加価値領域に集中できます。

本稿では、まずハイタッチ・ロータッチ・テックタッチという従来の三大施策の役割と限界を整理したうえで、それらを横断して相乗効果を引き出す「第4のアプローチ=コミュニティタッチ」の定義と導入メリット、実装ロードマップ、成功事例、そして失敗を回避するポイントまでを体系的に解説します。

第1章|CSを支える3つのタッチ――役割とボトルネック

カスタマーサクセスの実務は、顧客ごとに適切な支援密度を設計する「タッチ戦略」によって成り立っています。

まずハイタッチは、専任 CSM が対面または 1on1 で伴走し、導入設計から ROI 証明まで手厚くリードするモデルです。高単価顧客の成功確率を最大化できますが、1 人当たりの担当社数が限られるためスケールしづらい点が課題となります。

次にロータッチは、ウェビナーやオンライン面談を組み合わせて効率的に並走する手法です。ハイタッチほどの人的コストをかけずに関係性を維持できる半面、コミットメントが浅くなりがちです。

最後にテックタッチは、プロダクト内ガイドやヘルプセンター、チャットボットなどを通じて顧客の自己解決を促進し、問い合わせ件数を大幅に削減します。ただし「成功体験の共有」までは拾い切れず、顧客同士の学びがサイロ化しやすいという弱点があります。

三施策を一覧すると、ハイタッチは深度は深いが面では弱く、テックタッチは面で強いが深度は浅い。ロータッチはその中間を担いますが、顧客基盤が急拡大するとどの施策でも“手の届かないゾーン”が生まれ、結果として LTV のとりこぼしが発生してしまうのです。


第2章|コミュニティタッチの定義――「顧客同士」が主役となる

コミュニティタッチとは、オンラインコミュニティを活用して顧客同士の相互支援を仕組み化し、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの隙間を補完する CS 第四の施策です。

ポイントは「担当者が教える」のではなく「顧客が顧客を導く」構造を意図的につくること。具体的には、製品活用ノウハウや成功事例、障害回避の Tips をユーザーが投稿し合い、他のユーザーがコメントやリアクションで知識を重層化していく仕掛けを設計します。

CS チームはファシリテーターとして議論を活性化しつつ、投稿データを分析してプロダクト改善やマーケティング施策にフィードバック。これにより、

  • 担当者の工数を抑えながらサポートを拡大できる
  • 顧客ニーズがリアルタイムで可視化される
  • ユーザー同士の信頼関係が強化され、エンゲージメントが長期化する

という3つの大きなメリットが得られます。

蓄積された Q&A は、セルフサーブコンテンツとしてテックタッチにも再利用できます。さらに、コミュニティで生まれたエバンジェリストがウェビナー登壇や事例記事に協力することで、ロータッチ/ハイタッチ領域の価値提案も底上げされます。こうして三施策を横串で連動させることで、CS 全体の ROI を高めることができるのです。


第3章|導入で得られる5つの効果

では、コミュニティタッチを導入するとどのような効果が見込めるでしょうか?

まず CS 担当者の工数削減ができます。コミュニティ内の Q&A が一次問合せを肩代わりし、平均で 30〜50% のチケット削減を達成した事例は珍しくありません。

二つ目の効果はナレッジの自動蓄積です。ユーザー投稿は時系列で残るため、FAQ や活用ガイドの最新版が常に生成され続けます。

三つ目はエンゲージメント指標の底上げで、コミュニティ参加者の DAU や NPS が非参加者に比べて 1.3〜1.5 倍に向上する傾向が確認されています。

四つ目はフィードバックループの加速で、新機能のアイデアや不具合報告がリアルタイムで集まり、開発とサクセスが一体となった改善サイクルが実現します。

そして五つ目がブランドロイヤルティの向上です。ユーザー同士の称賛や成功体験の共有は企業が発するメッセージよりも高い信頼を持ち、推奨意向を強く刺激します。これら五つの効果が相互に作用し、解約率の低下やアップセル率の向上といった直接的な収益インパクトへ波及していくのです。

第4章|コミュニティタッチ実装ロードマップ

実装は五つのステップで進めます。

第一に戦略設計。目的を「問い合わせ削減」「アップセル創出」などに明確化し、対象顧客と KPI を定義します。

第二に基盤選定と初期設計。自社 SaaS 連携や SSO、権限管理の要件を洗い出し、カテゴリ設計や投稿ガイドラインを用意します。

第三にコアファンの招致。ローンチ前に愛用顧客を 50〜100 名招待し、成功体験や質問を先行投稿してもらうことで“居心地の良い場”を演出します。

第四に運営フェーズ。AMA(Ask Me Anything)やユーザー共創ワークショップなどの定期イベントを企画し、三タッチと情報を双方向連携させます。

最後が PDCA。投稿数・回答率・閲覧率などをダッシュボード化し、伸び悩む指標を施策でピンポイント改善。成果が見えれば経営層の追加投資を引き出しやすくなり、事業ドライバーとして定着します。

第5章|成功事例で学ぶ運用ベストプラクティス

  • 食品 D2C のベースフードは、限定70名で始めた「BASE FOOD Labo」をレシピ投稿の場に育て、会員 700 名規模へ拡大。平均喫食回数 1.6 倍、買い回り率 44% という成果を上げました。
  • カルビー「絶品部」では発売後の箱買い行動を起点にコミュニティを開設し、ユーザーの晩酌シーンを可視化。これが味開発に反映され、次期製品のヒットを生みました。
  • BtoB SaaS 企業 A 社は、ハイタッチ対象外だった長尾顧客をコミュニティへ誘導し、解約率を 30% 低減。

共通しているのは①コアファン招致から始めた、②運営者が「答える人」でなく「場を整える人」に徹した、③投稿データをプロダクトとマーケの両面に活用した、という三点です。成功の裏には、目的設計と役割分担の明確化があることが分かります。

第6章|KPI設計とROIの測り方

コミュニティタッチの成果を測定するには、エンゲージメント指標、プロダクト指標、収益指標の三層で KPI を構築します。

前者には投稿率・回答率・月次アクティブ率、次に機能利用率やアクティブシート数、最後に NRR(売上継続率)やアップセル率を設定し、Google Looker Studio などで時系列可視化すると効果が鮮明になります。

ROI 計算は「(解約抑止による守りの収益+アップセルによる攻めの収益+サポートコスト削減額)÷コミュニティ運営コスト」で算出できます。問い合わせ 1 件あたり 3,000 円、月 500 件削減できれば年 1,800 万円の原価削減が実現する計算です。

このように定量インパクトを算出し、四半期ごとに経営陣へレポーティングすることで、コミュニティ施策が恒常予算として組み込まれやすくなります。

第7章|よくある失敗6選とその回避策

コミュニティタッチの導入が失速する最大の原因は、「とりあえず会員数を増やせば盛り上がるはずだ」という拡大先行型の発想です。

50名でも濃い議論が回らなければ 5,000 名に拡大しても同じ結果に陥ります。過疎化を防ぐには、ローンチ前に15〜30名ほどのコアファンへヒアリングし、「彼らが最初に語り合いたいテーマは何か」「どんな成功体験を共有したいか」を具体的に洗い出し、初日から Q&A や実践ノウハウ、ユーザーストーリーなど“価値の濃い投稿”を5〜10本並べておくことが欠かせません。ファンは自分たちの声が反映された場を愛着を持って育てようとし、自然発生的にウェルカムコメントやチップスが増えるため、結果として新規参加者のオンボーディングもスムーズになります。

第二の失敗は、マーケティング部門が短期的なリード獲得を目的に宣伝色の強いキャンペーンを連発し、参加者が「また広告か」と感じて離脱してしまうケースです。

コミュニティは“共有・相談・共創”の場であり、情報発信の方向は「企業→顧客」ではなく「顧客↔顧客→企業」が基本です。プロモーション投稿は月間投稿全体の1割以下に抑え、残りはユーザー生成コンテンツが占めるように設計しましょう。告知を出す場合も単なる製品紹介ではなく、ユーザー事例を絡めてアンケートや AMA(Ask Me Anything)に発展させるなど、双方向性を維持する工夫が求められます。

第三の落とし穴は、KPI を定義しないままコミュニティを拡大し、成功を測定できなくなることです。

投稿率・回答率・月次アクティブ数といったエンゲージメント指標に加え、サポートチケット削減数やアップセル率など事業連動 KPI を事前に設定し、週次・月次で数値を確認できるダッシュボードを用意してください。特に解約率や機能利用率といったプロダクト指標を併せて追うと、コミュニティ活動が契約継続や機能深耕にどの程度貢献しているかが一目で分かり、投資対効果を説明しやすくなります。

第四の失敗は、数値を示せず経営の支援が止まるパターンです。

コミュニティ施策は短期で広告のように売上を計上しにくいぶん、ROI フレームで間接効果まで可視化することが必須になります。例えばサポートチケット 1 件の処理コストを 3,000 円と置き、コミュニティ経由で月 400 件を自己解決に誘導できれば、年間 1,440 万円のコスト削減に相当します。これに継続率 2 ポイント向上による ARR 増分やアップセル粗利を加えれば、初年度でも十分に黒字化するモデルを示せるはずです。四半期ごとに経営陣へレポートし、数値・学習・顧客の声の3点セットを共有する体制を整えましょう。

五つ目の落とし穴として、モデレーションポリシーが曖昧だと荒れる、あるいは逆に過度な検閲で発言が萎縮するという両極端に陥りがちです。

ローンチ時に「質問歓迎・批判も建設的に・宣伝は週1回」など具体的行動指針を公開し、違反投稿の判断基準をコミュニティマネージャーとCSチームで共有しておくと、透明性の高い運営が継続できます。炎上リスクを抑えながら率直な意見交換を促すことは、インサイト抽出の質と量を左右する重要な要素です。

最後に忘れがちな失敗が、担当者の人事ローテーションでナレッジが断絶されるケースです。

運営ノウハウや成功テンプレートを Wiki 化し、引き継ぎフローを制度化しておくと、担当者が入れ替わってもコミュニティの温度感を維持できます。さらにカスタマーサクセス・マーケティング・プロダクトの3部門が定例で情報を共有し、コミュニティの示唆を優先度づけに反映する“横断チーム”を設けると、組織レベルでの学習効果が持続します。

これら六つの落とし穴を意識し、ローンチ前の戦略設計から運営ガバナンス、ROI 報告までをワンパッケージで設計することが、コミュニティタッチを成功に導く最短ルートです。

まとめ - カスタマーサクセスにおけるコミュニティタッチ

ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチという三施策は今後も CS の要ですが、顧客基盤の拡大と製品の多機能化が進む現状では、それだけでは支援と学習の網羅が困難です。コミュニティタッチを組み込み、顧客同士のエンゲージメントとナレッジ循環を戦略的に設計することで、CS チームは限られた工数でも LTV を最大化する“レバレッジ構造”を構築できます。

導入は小規模なクローズドコミュニティから始め、成果指標を可視化しながら段階的にスケールさせるのが王道です。ツール選定では、SSO 連携やデータエクスポート、権限管理の柔軟性を重視してください。生成 AI やデータ分析機能を組み合わせれば、投稿内容の自動分類や回答推薦も可能になり、効果はさらに加速します。

CS 戦略の再設計を検討する今こそ、コミュニティタッチを“第四の柱”として据え、顧客とともに成長する次世代モデルへ踏み出しましょう。

コミュニティタッチについてさらに詳しく知りたい方は

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