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【イベントレポート】カルビー株式会社『かっぱえびせんのロイヤル顧客が新商品を開発? カルビーが取り組む、企業とユーザーを繋ぐコミュニティ施策とは』

2024/05/24

【イベントレポート】カルビー株式会社『かっぱえびせんのロイヤル顧客が新商品を開発? カルビーが取り組む、企業とユーザーを繋ぐコミュニティ施策とは』
コミューン編集部

コミューン編集部

※この記事は、2024年1月31日に開催した、ウェビナー「かっぱえびせんのロイヤル顧客が新商品を開発? カルビーが取り組む、企業とユーザーを繋ぐコミュニティ施策とは」の様子をまとめております。

登壇者情報

カルビー株式会社とかっぱえびせんブランドのご紹介

カルビー株式会社 塩﨑高広氏(以下、塩﨑):カルビー株式会社は1949年に創業した菓子・食品のメーカーです。1955年にかっぱえびせんの元祖になる「かっぱあられ」を販売開始し、改良を重ねてえびを練り込んだかっぱえびせんが出来ました。その後、ポテトチップス、フルグラ、じゃがりこといったロングセラーのブランドが多く立ち上がりました。

私は2008年に新卒でカルビーに入社し、研修後営業を4年半、営業企画課でリテールサポートをしていました。そのあとマーケティングチームに移動し、ポテトチップスチームで4年、2022年からかっぱえびせんチームのブランドマネージャーになりました。

かっぱえびせんの認知率は99%で誰もが知っているブランドですが、実は2018年頃に少し売り上げが停滞していました。

森岡毅さんの著書『確率思考の戦略論』では、ブランドが成功する為には、認知・配荷・選好性(プリファレンス)の掛け合わせが一番の近道と言われています。かっぱえびせんは認知・配荷には問題がなさそうですが、選好性については、指名買いされていたり、価格が多少高くても購入意向が高かったり、メディア露出で話題になったりしていたのですが、スナック菓子なので価格の安さが重視されており、価格競争に巻き込まれていました。

そこで、絶品かっぱえびせんシリーズを立ち上げました。

絶品かっぱえびせんシリーズ

塩﨑:2020年の4月に「“あなたの特別なお酒の時間”を充実させるかっぱえびせん」というコンセプトで絶品かっぱえびせんシリーズを立ち上げました。ちょうどコロナが始まったタイミングだったので、おうち時間をかっぱえびせんでもっと楽しんでいただけないか、ということで発売しました。

ターゲットは「お酒が大好きなイケオジ」という特定の層に限定しました。イケオジとは見た目がイケメンのオジ様ではなく、「お酒のために日々仕事を頑張っている愛らしい方」です。

絶品シリーズでは上質感やこだわり感を大事にしており、えびを多く練り込んだ濃い味わいで、太めの生地で硬めの食感を楽しむことができ、浜御塩やわさびなどお酒が進む素材を使い、大人のお酒の時間を楽しんでいただけるようなシリーズになりました。

絶品かっぱえびせんシリーズ

コミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」でファンと交流

塩﨑:「絶品部 やめられない、とまらない課」というコミュニティを運営しています。お酒と絶品かっぱえびせんをこよなく愛するイケオジ達が集う、ファンとの新しい部署です。投稿にファン自身が投稿したり、いいねをしたりコミュニケーションをとることができます。

絶品部では、「絶品日報」として、絶品シリーズを食べたら投稿したり、店頭で新商品を見つけたら投稿してくれたり、トッピングや食べ合わせを報告してくれたりと、活発にやりとりされています。

また、絶品シリーズに限らず、おつまみや行きつけのお店など晩酌の様子を自由に投稿する「晩酌報告」、コミュニティ名の募集や好きな味のアンケートを実施したりイベントを企画する「イケオジ企画会議」というカテゴリも用意しています。

コミュニティの導線はパッケージからの流入が多いですが、かっぱえびせんのブランドサイト、絶品かっぱえびせんのブランドサイト、公式X、弊社のアプリからの通知でも流入を促しています。

絶品部 やめられない、とまらない課
出典: 絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」

絶品部 やめられない、とまらない課
出典: 絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」への動線

コミュニティのきっかけは熱量の高いファンの存在

塩﨑:コミュニティを始めるきっかけとして3つのステップがありました。

一つめは、絶品シリーズの発売後、パッケージの裏のお客様相談室へのご相談のお問い合わせから熱狂的なファンの存在に気づいたことです。

通常スナック商品は1袋ずつ買うことが多いのですが、絶品かっぱえびせんに関しては箱買いをしたり、お店にある商品を全部購入したり、空き袋を片手に30店舗を回って「この商品ないですか?」と探し回ったりと、熱狂的なファンの方々がいることがわかりました。

二つめは、ファンマーケティングで有名な企業の担当者にお話をする機会があった際に上記お話をお伝えしたところ、「このファンの人たちに直接会いましたか?ファンの方に会うのは百利あって一害なしですよ」とアドバイスをいただきました。この時ファンと直接会えていなかったので、ファンと直接会話し、一緒に施策に取り組んで最終的に応援もされているそのブランドや担当者が羨ましい!思いました。

三つめは、社内のマーケティング部門でもデジタル化の加速に伴い、ファンマーケティングを推進していく流れがありました。ファンマーケティングで推していただくブランドを増やそうとしていたので、コミュニティ導入の社内の理解は早く、導入にも合意を得ることができました。

熱狂的なファンと顔を突き合わせて直接対話をしたいという思いと、ブランドとお客様の深いキャッチボールができる「場」を作りたいという思いがあったので、コミュニティである必要がありました。

ブランド担当者のモチベーションに繋がるファンとの会話

塩﨑:コミュニティを始めたことで、新商品の感想だけでなく、具体的に何が良かったのかという通常の消費者調査では聞きづらいことを教えてもらうことができました。

また、今はメーカーの1商品の細かいこだわりに興味を持ってもらえる時代ではないと思うのですが、絶品部のみなさんは、絶品かっぱえびせんやかっぱえびせんの情報を親身になって聴き、共感してくれ、さらに周りの方にシェアしてくださいました。

最後に、熱狂的なファンと直接会話し、熱意を聞くことができるのはブランド担当者としてとても嬉しく、モチベーションも上がりました。

商談の場でも、ファンの方の声を活用することで採用率アップにも繋がりました。

パネルディスカッション

コミュニティの運営体制・社内の理解度向上

コミューン株式会社 芳田佳奈(以下、芳田):コミュニティの運営体制について教えてください。

塩﨑:運用自体はかっぱえびせんチームで運営しています。ブランド担当1名が日々の商品開発・企画をしつつ、メインでコミュニティの運営をしています。私含めて3名がフォローしています。

絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」の運営体制

芳田:担当の方は業務の何%くらいをコミュニティ運営に使っているのでしょうか。

塩﨑:ファンの方の投稿には全部返信をするようにしているので、投稿量にはよると思うのですが日常業務の10〜20%くらいをコミュニティ業務に割いていると思います。共創プロジェクトやイベントなどがあれば割合が増えていきます。

芳田:イベントの企画はかっぱえびせんチームで考えられていますか?

塩﨑:チームでも考えますし、月一でのコミューンさんとの定例で相談したり、コミューンさんから活性化の提案をしていただいたりした上で決めています。

芳田:他のチームや開発チームで横軸で連携することはありますか?

塩﨑:今開発チームと主だった連携はできていないのですが、共創プロジェクトの時は開発のメンバーにオンラインミーティングに参加してもらい、ファンの方と直接やりとりしてもらったりはしています。

芳田:コミュニティは会社の方向性とはあっていたと思うのですが、社内で動きにくかったことはありますか?

塩﨑:双方向でコミュニケーションを取れるファンコミュニティは今までなかったので、社内で少し声が上がることはありました。しかし、絶品かっぱえびせんに関しては熱狂的なファンが多いことは初めからわかっていたので、そこを伝えて理解を得ました。

コミュニティを通して得られた成果

芳田:コミュニティを通じて得られた成果を教えてください。

塩﨑:ファンとの会話でターゲット像がより明確になりました。そもそも絶品かっぱえびせんはお酒との相性がよく、ビールメーカーとコラボができたらいいなと思っていました。絶品かっぱえびせんはスナックの中では上質感、高級感のイメージを持たれているのは調査からもわかっていたので、例えば、生ビールとコラボするのが良いかと思っていたのですが、コミュニティでファンの方の声を見てみると、実際は第3のビールで楽しんでいる方が多いことがわかりました。低単価で日常でのお酒時間を楽しむというニーズがあるということをコミュニティで理解することができました。

芳田:仮説の検証は難しく、検証は調査会社を使ったりしているが難しい現状があることが多いのですがコミュニティでできるのは嬉しい気づきですよね。

塩﨑:実際のデータでも明らかになっており、絶品かっぱえびせんと一緒に買われているお酒は第3のビールが圧倒的に上位を占めてていて、生ビールは下位というわかりやすい結果になっていたので、そのような気づきからコミュニティで検証したりしていきました。

絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」で得られた成果

芳田:続いて、絶品かっぱえびせんの資産や方向性をコミュニティを通して検討したということですが、詳しく教えていただけますか。

塩﨑:コミュニティでのファンの声を参考にして商品の方向性を決めています。絶品シリーズの気に入っているところを聞いたアンケートで上位にきたのは、「かっぱえびせんであること」、「(パッケージの)絶品のエンブレム、」、「ビール好きが認めているところ」という結果で、ブランドの資産になるところをキープしなければならないとわかりました。

別のアンケートではパッケージの魅力を聞いたのですが、ビールとの相性が良いことからビールグラスの写真を大きく入れたパッケージは実際のところ評価が低かったので、他の案をブラッシュアップしていくことになりました。残すべきところと変えていくところを確認するのにコミュニティを活用できました。

芳田:以前はアンケート調査会社さんを使っていたということなのですが、直接ファンの声を聞けるので、より質の高い回答を得られたり、スピード感も早くなりましたよね。

塩﨑:調査会社さんを使おうとすると時間がかかったり、費用も結構かかるので簡単にできるものではありませんでした。やりたいタイミングでいつでもファンの方の声を聞けて、アンケートの回答も得られて、精度もある程度高いというのがファンコミュニティの良さのひとつだと思います。

芳田:そうですね。あと、ファンからすると自分たちの声を聞いてくれるというのも嬉しいと思います。

塩﨑:今後のリニューアルは回答結果を使いながら行うので、「みなさんから頂いた意見をもとにこういったリニューアルを行いました」というのを投稿したいと思っています。

絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」で得られた成果

共創商品の開発プロセスについて

芳田:ファンと一緒に商品を開発した共創プロジェクトについて教えていただけますか。

塩﨑:共創プロジェクトでファンの方と作った商品を2023年12月に発売しました。元々は絶品部のコミュニティで誰でも味を応募できるようにした所、50案程応募いただきました。そこからコンセプトや塩との相性や味の再現性などの観点から社内で4案に絞り、新味共創プロジェクトに参加していただける方を募集しました。そのプロジェクトの中でオンライン投票をして4案の中から2案に絞り、そこから実際に試作品を作ってファンの方のご自宅にお送りしてオンライン試食会を実施し、実際に食べながらご意見をいただき投票をお願いしました。その後、絞り込んだ味をいただいた意見を元にブラッシュアップして発売しました。

芳田:どのようなファン層の方が何名参加されたのでしょうか。

塩﨑:コミュニティ内でも活発に活動してくださっていたり、絶品かっぱえびせんが好きというロイヤリティの高い方が参加してくださいました。当時絶品部には300名ほどの会員がいて、新味共創プロジェクトには40名ほどの方に参加していただきました。

芳田:発売までどれくらいの期間かかったのでしょうか。

塩﨑:味を募集してから発売するまで約1年です。

絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」で得られた成果

芳田:発売後はどのような反響がありましたか。

塩﨑:実際に発売した商品は「瀬戸の塩と帆立貝柱味」です。帆立の貝柱味というのがファンの方に最終的に選んでいただいた味で、試食会の時から大きな味の変更はせずに発売しています。

販売実績も非常によく、同年に発売した燻製唐辛子味と比較すると130%の売り上げになりました。ファンの方が友達に勧めてくれたり、何袋もまとめて買ってくださったという報告もコミュニティ内でしてくれました。

メディア露出に関しても、メディアに対するオンラインレクにファンの方にも出ていただいて、熱い気持ちを直接伝えていただいて話題になりました。広告換算効果も燻製唐辛子味比200%以上になりました。

ファンの方々も商品発売時は投稿がとても盛り上がり、「参加できて名誉に思う」、「また参加したい」といった声もあり、ロイヤリティUPに繋がりました。

また、このプロジェクトをきっかけに初めて絶品かっぱえびせんを買った方や、新たに絶品部に入ってくださる方もいました。

芳田:今後も同じような取り組みをやっていきたいですか。

塩﨑:今回期待していた以上の効果や実績もあり、本当にやってよかったと思っています。ブラッシュアップさせてもっと楽しんでいただけるような企画を来年も実施したいです。

絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」で得られた成果

今後の展望

芳田:今後の展望について教えてください。

塩﨑:コミュニティの登録人数など目の前の数字を意識するのではなく、熱狂的なファンと一緒にブランドを盛り上げていくということをしっかりやっていきたいです。消費者と直接コミュニケーションを取れる場を今まで持っていなかったので、このコミュニティをしっかり活用し、成功例やお客様の声などをコミュニティの外に発信して影響範囲を大きくしていきたいと思っています。

左下の図にあるようにコミュニティにいる方に推奨度や熱狂度をお聞きしており、熱狂度と推奨意向が高い方が年間でたくさん絶品かっぱえびせんを購入しているのですが、左下のセグメントにいる人の推奨度、熱狂度が上がり、右上に行くためにはどのような施策を実施すればいいのかをコミュニティの中で確認していきたいと思っています。それが成功したら、コミュニティ外のもっと広範囲でアクションできないかというのを今後詰めていきたいです。

絶品かっぱえびせんのファンコミュニティ「絶品部 やめられない、とまらない課」の今後の展望

質疑応答

Q. かっぱえびせんの認知度が99%とのことですが、調査対象は何歳以上ですか?

調査対象は10代から60代です。99%と言うのは1年間に1個以上スナックを買った人を対象にしたアンケートです。社内の他のブランドと比較しても、かっぱえびせんの認知度は高いです。

Q. 絶品シリーズをリリースされた背景を教えてください

コロナで家で過ごす時間が増えたり、人とのコミュニケーションが減っているという社会背景の中、絶品かっぱえびせんという商品を通してお客様のストレス解消を担えたらというところで発売に至りました。かっぱえびせん自体がお酒と一緒に楽しまれているというデータはあったので、お酒時間を楽しめるようなスペックにしてリリースしました。

お話を聞かせていただいた塩﨑さん、ありがとうございました!

 

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