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心理的安全性とは?重要な理由やメリット・具体的な改善方法を解説
2024/04/08
「心理的安全性」とは、組織内で自身の意見や考えを安心して伝えられる状態です。心理的安全性の高い職場をつくることで、従業員の多様なアイデアを活かし、イノベーションの創出につなげられます。心理的安全性の重要性や改善方法について解説します。
目次
- 心理的安全性の高い職場をつくるメリット
- 情報やアイデアの共有が活性化する
- 問題や課題を早期に発見しやすくなる
- メンバーのポテンシャルを最大化できる
- 離職率が低下して人材定着率が高まる
- 新たなイノベーションを容易にする
「心理的安全性」とは、組織内で自身の意見や考えを安心して伝えられる状態を指します。心理的安全性の高い職場をつくることで、従業員の多様なアイデアをビジネスに活かし、イノベーションの創出につなげることができます。本記事では、心理的安全性の重要性や改善方法について詳しく解説します。
心理的安全性とは
「心理的安全性」とは、簡単にいうと組織内における意思疎通のしやすさのことです。まずは心理的安全性の基本について、次の3つの観点から見ていきましょう。
・エイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念
・心理的安全性が注目されはじめた背景
・「心理的安全性」と「ぬるま湯組織」の違い
エイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念
心理的安全性という概念は、ハーバード大学の組織行動学者であるエイミー・エドモンドソン教授によって、1999年に発表された論文で提唱されました。同氏は心理的安全性を「組織内で自身の考えや気持ちを安心して表明できる状態」と定義しています。
具体的には、チーム内の対人関係においてリスクがある行動を取ったとしても、非難されることなく生産的な対話ができることを指します。例えば、慎重な性格からネガティブな発言をしたり、対立する意見を言ったりしても、心理的安全性が高い環境であれば受け入れられるでしょう。結果的に、メンバーが安心して個々の業務に専念できるようになります。
心理的安全性が注目されはじめた背景
心理的安全性という概念は、Google社が2012年から4年かけて実施した「プロジェクトアリストテレス」により、世界的に注目されるようになりました。同プロジェクトの目的は、「チームの成果を高める条件」を明らかにすることです。
その結果、優れた成果を出せるチームは個々の間違いを素直に認めることができ、疑問や異なるアイデアを表明する機会が多い傾向があることが分かりました。重要なポイントは、個々の能力・スキルや働き方などがそれほど大きく影響しなかったという点です。
また、心理的安全性の高い職場の従業員は離職率が低く、生産性・収益性が高いことも分かりました。お互いへの気遣いや意見の表明が不安なくできる環境だからこそ、個々のメンバーが安心してパフォーマンスを発揮することができます。
近年の日本では人材不足が深刻化しており、「限られた人材の有効活用」が喫緊の課題となっているため、心理的安全性の注目度がさらに高まっています。
「心理的安全性」と「ぬるま湯組織」の違い
心理的安全性が高い組織は、何でも発言できて居心地が良いというイメージがあるため、いわゆる「ぬるま湯組織」と混同されることがあります。しかし、両者には「変革への意識」という点で決定的な違いがあります。
そもそもぬるま湯組織とは、変革ではなく既存の慣習やルールを守ることが良いとされている環境を指します。成果が重視されないため、従業員のモチベーションが低い傾向にあります。そのような組織では、他者との対立を避けるために意見を主張せず、相手の誤りも指摘することも稀です。そのため生産性が低く、外部環境の変化に対応できず組織としての成長も見込めません。
一方で心理的安全性が高い組織では、変革やチャレンジのために個々の意見・アイデアを主張することから、対立や衝突が起きることがあります。しかし、互いを受け入れて尊重し合う風土が根付いているため、新たな価値の創出や組織の成長が可能となります。
心理的安全性が低い職場で生まれる4つの不安
心理的安全性が不足している職場では、従業員が次の4つのような不安を抱えやすくなります。
・無知だと思われることへの不安
・無能だと思われることへの不安
・邪魔だと思われることへの不安
・ネガティブだと思われることへの不安
無知だと思われることへの不安
誰でも「分からないこと」はあります。しかし心理的安全性が低い職場では、分からないことを質問すると「無知」だと揶揄されることが多いため、メンバーは不安で必要なことが聞けません。結果的に成果の低下やミスが増えてしまいます。
無能だと思われることへの不安
業務に何らかの失敗はつきものですが、心理的安全性が低い職場では失敗が許されない風潮があります。そのため、自身のミスを隠したり責任転嫁したりするメンバーが増え、イノベーション創出の障壁となります。
邪魔だと思われることへの不安
心理的安全性が低い職場では、「余計な発言かもしれない」「邪魔だと思われるかもしれない」と不安になり、アイデアや提案を出すことが困難になります。結果的に、新たな価値の創出が阻まれてしまいます。
ネガティブだと思われることへの不安
現状を改善するためには、何かを否定すべきときもあります。しかし心理的安全性が低い職場では、改善のための発言が「ネガティブだ」「いつも否定する」などとマイナスに捉えられがちなので、他人と異なる意見を表明しづらくなります。結果的にチームでより良い結果を出せなくなります。
心理的安全性の高い職場をつくるメリット
心理的安全性の高い職場をつくることで、企業は次の5つのようなメリットが得られます。
・情報やアイデアの共有が活性化する
・問題や課題を早期に発見しやすくなる
・メンバーのポテンシャルを最大化できる
・離職率が低下して人材定着率が高まる
・新たなイノベーションが生まれやすくなる
情報やアイデアの共有が活性化する
心理的安全性が高い職場では、自身の意見や考えを伝えるときに、感情的な非難を受ける心配がありません。そのため、従業員同士が積極的にコミュニケーションを取るようになり、社内における情報やアイデアの共有が活性化します。
問題や課題を早期に発見しやすくなる
業務で何らかのミスがあったとしても、心理的安全性が高い職場では問題と合理的に向き合えます。ほかのメンバーから見下されたり糾弾されたりする心配はありません。そのため、従業員は自らの失敗を早い段階で上司に報告し、トラブルのリスクを最小限に抑えることができます。また、社内のコミュニケーションも活発なので、解決につながるアイデアも見つかりやすいでしょう。
メンバーのポテンシャルを最大化できる
従業員が業務に集中するためには、余計な心配や不安を取り除くことが大切です。心理的安全性が高い組織では、互いを認め合って尊重し合う風土が根付いているため、失敗を恐れず安心して業務に望めます。その結果、個々の集中力とパフォーマンスが向上し、組織全体の生産性が高まります。目標意識が高まり、従業員が自ら進んでスキルを磨くことも期待できるでしょう。
離職率が低下して人材定着率が高まる
前述したGoogle社の研究により、心理的安全性が高い組織の従業員は離職率が低い傾向があることが分かっています。自身の能力を活かしやすく個々の意見を尊重できる環境は、優秀な人材にとって特に魅力的です。従業員エンゲージメントの低さや人材不足が深刻化している日本において、心理的安全性は人事戦略の観点からも重要だといえます。
新たなイノベーションを容易にする
心理的安全性が高い職場では、多様な価値観や考え方が尊重されるため、従業員が自由に発言しやすい環境が整っています。そのため、従業員から個性的なアイデアや意見が出やすく、革新的なイノベーションが生まれる可能性が高まります。企業が将来的に優位性を保つための土台として、心理的安全性は重要な役割を果たすといえるでしょう。
組織の心理的安全性を高める方法
組織の安全性を高めるために、チームリーダーやマネージャーは次のような点を意識しましょう。
・質問や相談をしやすい雰囲気をつくる
・否定や非難ではなく建設的に議論する
・すべての人に等しく発言の機会を与える
・風通しを良くして個々の多様性を認める
・助け合いの組織カルチャーを醸成する
質問や相談をしやすい雰囲気をつくる
チームのリーダーが率先し、メンバーが質問・相談しやすい雰囲気をつくりましょう。このとき「いつでも相談していいよ」と言うだけではなく、リーダー自らが積極的にメンバーに話しかけてコミュニケーションを取ることが重要です。上司やリーダーと気軽に話せるという安心感は、組織の心理的安全性を飛躍的に高めるでしょう。
否定や非難ではなく建設的な議論を行う
チームの成績を評価することや、課題の解決策を探すこともリーダーの重要な役割です。ただし「誰のせいで目標を達成できなかったか」のように否定や非難の視点でメンバーと接すると、発言しづらい閉鎖的な雰囲気になってしまいます。「どうすれば改善できるか」のように、問題解決のための建設的な視点を持つことが大切です。
すべての人に等しく発言の機会を与える
それぞれのチームメンバーは役職や経験などが異なるため、発言力に差があることが少なくありません。しかし、ミーティングなどで特定の人ばかり発言していると、新人や立場の弱い人の考えやアイデアを活かせません。発言の機会を平等にするために、リーダーや会議の司会者などが積極的に話しかけて発言を促すことが大切です。
風通しを良くして個々の多様性を認める
上層部が意思決定を行って指示するというトップダウン型の形態では、組織が閉鎖的な雰囲気となります。現場メンバーの意見やアイデアが反映されづらいからです。上層部と現場が対等にコミュニケーションを取ることができ、年齢・性別・役職にとらわれないフェアな人間関係を築ける環境を構築することで、互いに信頼し合えるようになるでしょう。
助け合いの組織カルチャーを醸成する
さまざまな人が業務に携わるチームでは、メンバー同士が協力して互いに助け合うことで、全体の成果が高まります。それぞれのメンバーに、分からないことやできないことがあるのは当然です。「いざというときは助けてもらえる」という安心感があることで、従業員は余裕をもって業務に臨めるでしょう。
心理的安全性を高めるために効果的な施策
組織の安全性を高めるために、経営陣や人事担当者は次のような施策の導入を検討してみましょう。
・1on1ミーティング
・OKR
・ピアボーナス
・社内コミュニティサイトの開設
1on1ミーティング
1on1ミーティングは、上司と部下が1対1で行う面談です。人事評価面談とは異なり、業務や人間関係に関する不安や悩みなどについて話し合います。上司からの一方的な指示や指導ではなく、双方のコミュニケーションを行うことがポイントです。1on1ミーティングを通じて上司と部下の信頼関係を構築することで、心理的安全性が高まりやすくなります。
OKR
OKRとは、「達成目標(Objectives)」と「主要な成果(Key Results)」を設定し、組織と個人が同じ課題に取り組むための制度です。まずは組織全体の大きな目標を設定し、次にそれを実現するために必要な個人目標を設定します。チームで成果を出すための個人の役割が明確化し、全体が同じ目標に向かって進みやすくなるため、心理的安全性の向上が見込めます。
ピアボーナス
ピアボーナスは、従業員同士で報酬やギフトのやり取りができる制度です。心理的安全性の向上には、「チームやメンバーから認められている」という実感も大切です。ピアボーナスの導入によってお互いを認め合える機会が生まれるため、組織の心理的安全性が高まります。さらに、個々のメンバーの「もっと貢献したい」という意欲も刺激できるため、成果も向上するでしょう。
社内コミュニティサイトの開設
社内コミュニティサイトは、従業員同士が気軽にコミュニケーションを取れる場所です。業務用のチャットツールではなく、敢えて別の場所でコミュニケーションを取ることで、SNS感覚で社内の人と繋がりを持つことができます。普段、業務では関わることのない人とも繋がることで、従業員同士の信頼関係や連携を強化できるでしょう。
心理的安全性を高い組織をつくるためのポイント・注意点
組織の心理的安全性を高めるための施策を実施する際は、次の3つのポイントに注意しましょう。
・まずは組織の心理的安全性を測定する
・責任感や緊張感をなくさないようにする
・意見やアイデアの衝突を恐れないようにする
まずは組織の心理的安全性を測定する
まずは自社の心理的安全性を測定してみましょう。Googleのリサーチによると、チームメンバーに次の7つの質問をすることで、チームの心理的安全性のレベルが分かります。
1. チームの中でミスをすると、たいてい非難される。
2. チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
3. チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがある。
4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい。
6. チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
7. チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。
(引用元:「効果的なチームとは何か」を知る)
1・3・5の質問に「いいえ」、それ以外に「はい」と答える数が多いほど、心理的安全性が高い状態だといえます。その数が少ない場合は、積極的な改善施策が必要となるでしょう。
責任感や緊張感を無くさない
心理的安全性が高い組織は、決して「無責任に何を言っても許される」というものではありません。むしろ自身の言動がチームに与える影響が増すため、これまで以上の責任感や成長意欲が求められます。「コミュニケーションを取りやすい環境」は、友達のような距離感とは異なります。常に一定の緊張感を保つように、リーダーがコントロールすることが大切です。
意見やアイデアの衝突を恐れない
多様な意見を取り入れることは、「何でも無条件に肯定する」ということではありません。むしろチームの成果を高めるためには、建設的な意見の衝突が欠かせません。そのため、相手の発言に対して異議がある場合は、それを合理的に伝えるようにしましょう。ただし意見の衝突が発生したときは、メンバーが感情的にならないようリーダーがコントロールすることも重要です。
心理的安全性を高めて組織のパフォーマンスを高める
組織の心理的安全性を高めることで、メンバー同士のコミュニケーションが活性化し、生産性の向上につなげることができます。さらに、離職率の低下による人材定着も見込めるので、近年深刻化している人材不足への対策としても効果的です。心理的安全性を高めるために自社でできる施策を実施し、働きやすい職場環境を実現しましょう。
しかし、具体的に「何から始めるべきか分からない」こともあるかもしれません。そこで「社内コミュニティサイト」の活用が、心理的安全性を向上させる施策としておすすめです。社内コミュニティサイトでは、チームメンバーはもちろん普段の業務で関わらない相手とも気軽にコミュニケーションを取ることができるため、心理的安全性の改善に役立ちます。