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リスキリングとは?企業が取り組むメリットや実施ステップ・具体的な施策を解説
2025/02/04

「リスキリング」とは、従業員が業務に必要な知識・スキルについて、習得する機会を企業が整える取り組みです。IT化やDXの推進により、デジタル人材の重要性が高まっており、企業の成長やイノベーションの創出などのために、従業員を育成する必要性が高まっています。
しかし、リスキリングにはどのようなメリットがあり、どう取り組むべきか分からないことも多いでしょう。そこで本記事では、これからの時代に必要なリスキリングについて詳しく解説します。
目次
- 企業がリスキリングに取り組むステップ・方法
- 経営戦略に基づいた人材像やスキルを設定する
- 現状とのギャップから教育プログラムを策定する
- 教育のために必要なコンテンツを作成・準備する
- 従業員にリスキリングについて丁寧に説明する
- リスキリングを実施して従業員に学んでもらう
- 習得した知識・スキルを現場の業務で活用する
リスキリングとは

リスキリングの概要について、まずは次のポイントから見ていきましょう。
- 新たな知識やスキルを身に付けること
- 「リカレント教育」や「生涯学習」との違い
新たな知識やスキルを身に付けること
「リスキリング」とは、業務において必要とされる、新たな知識やスキルを身に付けることを指します。経済産業省の資料によると、「新しい職業に就くため、もしくは現職で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得すること」と定義されています。
リスキリングは、主にIT関連のスキルや知識の習得を意味することが多く、西洋諸国で2016年ごろからリスキリングの取り組みが盛んになりました。後述するように、IT化やDXの流れが加速したことで、日本国内でもリスキリングが注目されるようになっています。

「リカレント教育」や「生涯学習」との違い
リスキリングは、「リカレント教育」や「生涯学習」と混同されがちですが、企業主導で行われる点が大きく異なります。
• リカレント教育:個人が必要なタイミングで学び直しをする仕組み
• 生涯学習:生涯にわたるあらゆる学び全般
• リスキリング:企業が自社の成長や戦略に基づき、従業員に学習機会を提供
すなわち、「個人主体」か「企業主体」かで役割が変わります。リスキリングは企業が“意図的”に実施するからこそ、大きな戦略効果を生むのが特徴です。
リスキリングが注目される背景・理由

近年では、さまざまな分野でリスキリングが注目されていますが、その背景として次のようなものが考えられます。
- DXの実現のためにデジタル人材が必要になった
- 新型コロナウイルスにより働き方が変わった
- 国際会議でリスキリングが主要な議題になった
DXの実現のためにデジタル人材が必要になった
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術を使ってビジネスを変革するための取り組みを意味します。また近年ではAIやIoT、ビッグデータなども活用して、新たな価値やイノベーションを創出する取り組みも進んでいます。
こうした変革を社内で実現するためには、IT分野以外の業界であってもIT分野の知識・スキルがある人材が必要です。だからこそ企業の取り組みとして、自社の人材に戦略的に学ぶ機会を与えるリスキリングが注目されているのです。
新型コロナウイルスにより働き方が変わった
新型コロナウイルスの流行により、多くの企業で働き方や業務の進め方が変わりました。例えば、オフィス勤務からテレワーク・在宅ワークに移行したり、顧客とのコミュニケーション手段が対面からオンラインへ変わったりするなどです。
こうした劇的な変化は今後も訪れることが想定されるため、企業が柔軟に対応できる体制づくりを目指して、従業員に新たな知識・スキルを身に付けてもらう教育が重要視されるようになっています。
国際会議でリスキリングが主要な議題になった
前述したような社会の変化を受けて、国際会議でもリスキリングが主要な議題として取り上げられるようになりました。
例えば2020年に開催された「世界経済フォーラム年次大会(ダボス会議)」では、「2030年までに地球人口の10億人をリスキリングする」という「リスキリング革命」が宣言されました。これは現在起きている第4次産業革命に対応するために、人々に必要な教育の機会を提供しようという戦略です。
一方で日本国内においては、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「DX白書2023」によると、全社戦略でDXに取り組む企業は2022年度の時点で約55%となっています。アメリカの約7割と比べると遅れを取っているのが現状で、リスキリングによる人材教育の重要性が高まっています。

社内でリスキリングに取り組むメリット

企業がリスキリングに取り組むことで、次のようなメリットが得られることが期待できます。
- 新たなアイデアやイノベーションが生まれる
- 業務効率や生産性の向上が期待できる
- 社内人材の育成と有効活用につながる
- 採用コストを抑えて人材不足に対応できる
新たなアイデアやイノベーションが生まれる
社内でリスキリングを実施することで、従業員が新たな知識やスキルを身に付けることができます。これまでになかった知見が社内で得られるため、新たなアイデアが生まれるようになり、それがイノベーションの創出につながることは珍しくありません。
企業がリスキリングに取り組むことで、時代の変化に対応できないことによる事業の陳腐化や経営悪化を防ぎ、時代に合わせたビジネスが展開しやすくなるでしょう。
業務効率や生産性の向上が期待できる
社内のリスキリング施策は、前述したようにIT化やDXの実現のために行うものです。つまり、リスキリングは既存業務のデジタル化につながり、業務負荷や工数の低減が可能になるということです。
これまで従業員が手作業で行っていた業務を自動化・効率化することで、従業員のリソースを企画やコア業務などクリエイティブな分野に配分できます。その結果、自社の商品・サービスの付加価値を高め、売上向上も期待できるでしょう。
社内人材の育成と有効活用につながる
自社のDXを推進するひとつの方法として、「外部人材の起用」や「新規人材の採用」が広く行われています。しかし、外部人材は優れた知識・スキルがある一方で、自社の企業文化・風土や社風についての理解が浅く、これまでの企業理念や業務フローなどの継続が難しくなる可能性があります。
一方で、社内の従業員に対してリスキリングを行った場合、自社に馴染んだIT人材・DX人材の育成が可能です。その結果、新規人材と企業文化・風土に関する課題が発生せず、既存業務に新たな知識・スキルをスムーズに活かせるようになります。
採用コストを抑えて人材不足に対応できる
DX人材は高度な専門知識を有しているため、採用コストが高額になる傾向があります。さらに、前職で優れたパフォーマンスを発揮できていたとしても、自社に馴染んで同等以上の成果を出せるとは限りません。
社内人材にリスキリングを行うことで、新規採用を行うことなく社内異動などで必要な人材を補充できます。さらに、DXが成功すればさまざまな業務を効率化・自動化できるため、深刻化する人材不足にも低コストで対応できるでしょう。
企業がリスキリングに取り組むステップ・方法

社内でリスキリングを実践する際は、次のようなステップで行うことで、より効果が高まりやすくなるでしょう。
- 経営戦略に基づいた人材像やスキルを設定する
- 現状とのギャップから教育プログラムを策定する
- 教育のために必要なコンテンツを作成・準備する
- 従業員にリスキリングについて丁寧に説明する
- リスキリングを実施して従業員に学んでもらう
- 習得した知識・スキルを現場の業務で活用する
経営戦略に基づいた人材像やスキルを設定する
まずは、自社がリスキリングで目指す方向性を定める必要があります。自社の業種や業態、経営戦略や事業戦略によって、どのような知識・スキルを持つ人材が必要かは異なるため、「画一的な手法」のようなものは存在しません。
自社が抱えている課題や、今後の事業に必要な知識・スキルを見極めることで、リスキリングの方向性が見えやすくなるでしょう。
現状とのギャップから教育プログラムを策定する
先ほど設定した「理想」と、自社の「現状」を比較・分析して、そのギャップを可視化します。自社に足りていない要素を明確化することで、「従業員が学ぶべきこと」が分かりやすくなります。
従業員が現在保有する知識やスキルをデータ化しておけば、従業員ごとの習得度が把握でき、それぞれに合わせた教育の提供も可能です。従業員が習得すべき知識やスキルが明確化したら、効率的に学べる教育プログラムを設計しましょう。
教育のために必要なコンテンツを作成・準備する
教育プログラムの策定と合わせて、教育のためのコンテンツを社内で開発するか、外部コンテンツを利用するかといった、コンテンツの作成方法も重要なポイントです。
主要なコンテンツとしては、紙媒体はもちろんeラーニングや座学研修、従業員による勉強会なども含まれます。なお、良質なプログラムを組んでも受講させる順番が不適切な場合は、習熟度が低下してしまうので注意が必要です。
従業員にリスキリングについて丁寧に説明する
リスキリングを実現するためには、従業員にさまざまな知識やスキルを身に付けてもらう必要があります。しかし、リスキリングは従業員にも相応の負担がかかるため、その必要性やメリットについて丁寧に説明する必要があります。例えば、リスキリングに取り組むことで従業員自身のキャリア展望が開けたり、収入アップにつながったりするなどです。
リスキリングを実施して従業員に学んでもらう
教育プログラムやコンテンツを準備できたら、従業員にリスキリングに取り組んでもらいましょう。前述したように、リスキリングは従業員の負担となるため、強制ではなく本人の意思を尊重することが大切です。
例えば、1on1などで本人の目標や理想のキャリア像とすり合わせながら、必要なコンテンツを学んでもらうなどです。また、就業時間外でリスキリングを行うと不満の原因となるため、可能な限り就業時間中に行うなどの配慮も欠かせません。
習得した知識・スキルを現場の業務で活用する
リスキリングはあくまで手段であって目的ではないため、従業員が習得した知識・スキルを実務で活用してもらうことが大切です。実践することでスキルがさらに強化され、活用できた部分は全社的に共有することで、企業自体のノウハウや知見も蓄積できます。
また、リスキリングは「やりっぱなし」では効果が低下します。リスキリングの成果を振り返って分析・評価したうえで、さらなる取り組みを進めるというサイクルを繰り返すことで、時代に合わせた企業経営・組織運営ができるようになるでしょう。
リスキリングを実践するための具体的な施策

リスキリングを導入するために欠かせない、従業員に「学びの場」を提供する施策として、次のようなものが挙げられます。
- 自社で教育コンテンツを作成する
- 人材育成コンサルティングを活用する
- 外部の教育機関やスクールを受講する
- 自社の関連企業に従業員を出向させる
- コミュニティラーニングの文化を醸成する
- 社内SNSの活用で全社的に情報を共有する
自社で教育コンテンツを作成する
社内リソースに余裕がある場合や、社内で知見がある場合は、リスキリングの教育プログラムやコンテンツを社内で作成できます。コンテンツの内製化により、コストの削減やノウハウの蓄積が見込めるうえに、必要な知識・スキルに合わせてコンテンツを柔軟に変更できます。
しかし、リスキリングのためのコンテンツ開発には専門的な知見が必要になるため、基本的には後述するような外部機関を活用するのがおすすめです。
人材育成コンサルティングを活用する
自社独自の教育プログラムやコンテンツの作成が難しい場合は、外部の人材育成コンサルティングの活用が効果的です。自社が求める人材像に合わせて、研修プログラムの企画・立案や教育の実施など、さまざまなサポートが受けられます。
優れた実績のある人材育成コンサルティングを選ぶことで、リスキリングの効果がより高まります。しかし、人材育成コンサルティングにはコストが必要なため、複数の業者を比較して自社の予算に合うものを選びましょう。
外部の教育機関やスクールを受講する
近年リスキリングや学び直しが注目されているため、社会人向けの教育プログラムを提供している機関やスクールが増えています。そのため、自社の従業員をリスキリング向きの教育機関やスクールに通わせることで、必要な知識・スキルを効果的に習得してもらえます。
ただし、こうしたサービスは「1か月」や「全12回」など区切りがあるが、リスキリングは継続的に繰り返すことが大切です。そのため、講座終了後にどのように社内で学びを継続させるかも検討し、中長期的な観点でリスキリングができる体制の構築が欠かせません。
自社の関連企業に従業員を出向させる
自社の関連企業もしくは提携企業などがある場合は、そこに従業員を出向させて知識・スキルを習得してもらうのもひとつの方法です。普段とは異なる環境で経験を積むことで、自社とは異なる価値観や考え方を従業員が身に付けることができ、組織に新たな風を吹き込むことができます。
ただし、出向により自社のリソースが不足して、業務負荷が増大してしまう可能性があります。また、出向によって得られた知識・スキルを社内でどのように共有・活用するか、さらに出向後に学びを続ける方法について検討することも大切です。
コミュニティラーニングの文化を醸成する
日本企業の特徴として、「学び合わない組織」が挙げられます。これは自主性や学習共有などの意識が不十分であることや、他社と協働的に学ぶ「コミュニティラーニング」の概念の欠落などが理由です。そのままではせっかくリスキリングを行っても、身に付けた知識・スキルを自社の業務に上手く活用できない恐れがあります。
そこで「組織全体の学び」を実現するために、コミュニティラーニング文化の醸成も欠かせません。実際に株式会社Schooが実施した調査によると、コミュニティラーニング文化が醸成されている企業では、「仕事意欲」「ワークエンゲージメント」「キャリア自律意識」など、企業の成長に欠かせない要素に良好な影響を与えています。
社内SNSの活用で全社的に情報を共有する
コミュニティラーニングを醸成するためには、情報共有やコミュニケーションの媒体が必要です。そのために、近年ではコミュニケーションツールを導入する企業が増えていますが、そのなかでも「社内SNS」という手法がおすすめです。社内SNSとは、組織内で利用されるソーシャルネットワーキングサービスで、従業員同士の情報共有やコミュニケーションの促進を目的としています。
まるでX(旧Twitter)やInstagramなどのSNSのように、ビジネス色を抑えて気軽にコミュニケーションできることが社内SNSの魅力です。社内SNSの導入により、全社的な情報共有が容易に行えるようになり、リスキリングで習得した知識・スキルを業務に活かせる環境を構築できるでしょう。
リスキリング文化の醸成に社内SNS「Commune for Work」がおすすめ

企業がリスキリングに取り組むことで、業務効率・生産性の向上や、新たなアイデア・イノベーションの創出などの効果が見込めます。リスキリングの具体的な施策として、人材育成コンサルティングや教育機関・スクールの活用などが考えられますが、社内で情報やノウハウを共有するための体制が整っていなければ、リスキリングの効果は十分に得られません。そこで注目されているのが社内SNSです。
社内SNS「Commune for Work」には、社内SNSとして必要な機能が網羅されています。リスキリングの効果を最大限に高めるためには、社内コミュニケーションによる情報共有が欠かせません。Commune for Workの導入により、従業員同士が気軽に交流できるようになり、それぞれが習得した知識・スキルを共有でき、学び合いの文化を醸成できるでしょう。この機会にぜひ、Commune for Workの導入を検討してみてください。
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